最終章 虚世界の王
第321話 使えるものを使って何が悪い?
恭介達が瑞穂に来て70日目、恭介はアンチノミーに乗ってコロシアムに来ていた。
「ルーナ、言われた通りに
『その通りだよ。アザトースと戦うにあたって、ナイアルラトホテップ以上の敵と戦う練習は必須だから、恭介君にはミラーデュエルで自分のデータと戦ってもらう』
「またベタなことをさせるじゃんか。仮想アザトースみたいな敵は準備できなかったのか?」
『困ったことにね、ナイアルラトホテップもアザトースのいる場所しか知らなかったんだ。ナイアルラトホテップがアザトースと接触する時、アザトースはいつも寝てたから戦闘のデータが何もないんだ』
ルーナがアザトースのいる次元に行く方法を突き止めたが、今日3期パイロットが帰艦したばかりで出発する訳にはいかないから、明日出発することが決まった。
3期パイロット達がメインで戦う訳ではないし、ここまで来たらさっさとアザトースを倒して戦争を終わらせたいというのが3期パイロットの総意なのだ。
ついでに言えば、ネクロノミコン断章はミスカトニックアーカイブにあったけれど、ネクロノミコンそのものはアザトースが持っていることがわかり、断章ですらナイアルラトホテップをコピーできるのだから、そんな危険物を放置できないという判断もある。
出発前日に何ができるかルーナが考えた結果、ナイアルラトホテップよりも強い恭介のデータを抽出し、それを敵として恭介と戦わせることでアザトースと戦うウォーミングアップにしてもらうことにした訳だ。
「ないものねだりをしたって仕方ないか。今回は縛りなしで良いんだよな?」
『そうだね。あっちも
「わかった」
恭介は本当に自分と戦うことになるのかと思いつつ、ルーナが開いた入場門を通ってコロシアムの中に入った。
コロシアムの中には、オリジナルと違って黒い
オリジナルの
なお、
戦闘開始の合図になったのは、双方のホーミングランチャー形態のビヨンドロマンの砲撃だった。
互いに
(スペックは一緒。思考回路も一緒だとしたら、差を出すには意外性しかないか)
初手に続き、次は
そして、選択したのがゴーレムチェンジャーでヤルダバオトに乗り換えるというものだ。
普段の恭介ならば、アンチノミーを相手にアンチノミーに対して属性で有利でもないヤルダバオトに乗り換えることはないし、強敵が相手ならギフトを発動して一気に勝負に出る。
しかし、それは早速良い結果を出すことになる。
敵もゴーレムチェンジャーを使えるらしく、アンチノミーに属性で有利なソリチュードに乗り換えたのだ。
水属性のソリチュードに対し、土属性のヤルダバオトは属性的に相性が良い。
それも考慮しての選択だったが、見事に恭介は自分のコピーに作戦の読み合いで勝ってみせた。
自分ならば不利な属性で無理に戦わないから、恭介は再びゴーレムチェンジャーを使われる前に全武装で一斉掃射した。
本来ならば恭介のコピーも
そうなれば隙ができる訳だが、恭介のコピーだって致命的な隙を見せるような実力ではない。
だからこそ、恭介はここで練習の成果を発揮することにした。
(時よ止まれ)
時空神の権能を使い、自身の攻撃を囮として更に全武装で一斉掃射したのだ。
自分ができることを相手ができるということは、時空神の権能も使える可能性がある。
それを考慮して最初は様子見がてら一瞬だけ時を止めて攻撃し、それが命中した瞬間に時間停止を解除してみた訳だが、恭介のコピーは時空神の権能を使わず、あっさりと被弾してしまった。
「ルーナ、敵は俺のコピーじゃなかったのか?」
『恭介君、私の権能に期待し過ぎだよ。いくら私がすごい神だからって別の神の権能を再現できる訳じゃないんだ。神の権能はそれぞれのものであり、神聖不可侵なものだからね』
「ふーん」
『なんだい? 言いたいことがあるなら聞こうじゃないか』
ルーナは恭介が何か言いたいことを言わずにいると察し、モヤモヤするから言ってくれと促した。
いや、正確にはどんなことを言われるか想像できているけれど、言わずにいる今の恭介の表情にムッとして訊ねずにはいられなかったのだ。
「思ったよりもルーナの力って大したことないなって」
『ほう、恭介君は言ってはいけないことを』
モニターに映るルーナの言葉が途切れ、次の瞬間には恭介の乗るヤルダバオトのコックピットの中にルーナが現れた。
(時よ止まれ)
自分に迫るルーナの手がギリギリのところで止まり、恭介はルーナの手を退けてルーナの額にデコピンを3発打ち込んでから時間停止を解除した。
「痛い!? 恭介君、時空神の権能を使ったね!?」
「使えるものを使って何が悪い?」
「ぐぬぬ、恭介君をわからせるつもりが反撃されるだなんて…」
「相性の問題だからしょうがないさ」
「ふんっ、絶対に対策してやるんだからねっ」
それだけ言い残してルーナはコックピットから姿を消した。
その直後にヤルダバオトのモニターにはバトルスコアが表示された。
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バトルスコア(バトルメモリー・ミラージュデュエル)
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討伐タイム:4分33秒
対戦相手:明日葉恭介=レプリカ
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×10枚
資源カード(素材)100×10枚
100万ゴールド
ノーダメージボーナス:ワープチケット
権能使用ボーナス:ヒールキャンディー×10
デイリークエストボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:いつかわからせてやるんだからねっ
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「別に喧嘩を売ったつもりはないんだがな」
恭介はルーナのコメントを呼んで苦笑し、コロシアムを脱出してから瑞穂の格納庫に戻った。
ヤルダバオトのコックピットから恭介が出てきたら、麗華が恭介を出迎えた。
最初は笑顔だった麗華だが、ピクっと反応して恭介の匂いを嗅ぎ始める。
「麗華、どうしたんだ?」
「恭介さんからルーナの臭いがする」
(犬並みの嗅覚!?)
麗華がそう言った瞬間、格納庫のモニターに勝ち誇った顔のルーナが現れる。
『フッフッフ。自分のコピーを倒した恭介君への報酬として、恭介君にハグしてあげたのさ』
「ダウト。悔しくって顕現して何かやらかそうとした結果、恭介さんに撃退されたんでしょ?」
『…麗華ちゃんが怖い。なんなの? 全部見てたの?』
「フフン、恭介さんがルーナにおとなしくハグされるとは思えないからね。そんなことだろうと思っただけ」
『くっ、覚えてろよ~』
捨て台詞を残してルーナはモニターから消えた。
その直後に麗華は恭介に抱き着いた。
「ハグされてないのはわかってるけど、恭介さんは私のものだから上書きするの」
「そっか。ちなみに、俺はルーナが現れた時に時間を止めてデコピン3発打ち込んどいた」
「驚いたルーナの顔が簡単に思い浮かぶよ。よしっ、私も充電完了! 行って来るね!」
「気を付けてな。普段自分がやらない戦い方をすると敵の隙を突けるぞ」
麗華はルーナの臭いを消すという口実で恭介に抱き着きつつ、自分もコロシアムに向かうからそのために気合をチャージしようと恭介に抱き着いていた。
恭介は麗華を見送った後、
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