第127話 大丈夫です。私は助けられたままで終わる女じゃありませんので
麗華と沙耶がコロシアムに着いた瞬間、フォルフォルが2人のゴーレムのモニターに現れる。
『おやおや、君達が組んで戦うんだね』
「なんだって良いでしょ。早く入場門を開きなさい。カトブレパスとアポピスの2連戦よ」
『沙耶ちゃんの復帰戦で2連戦って大丈夫なの? ゴーレムに乗るのも危険なんじゃないの?』
『大丈夫です。私は助けられたままで終わる女じゃありませんので』
『ヒュー♪』
フォルフォルは言うじゃないかと口笛を吹いて煽るが、沙耶はそれでキレたりしない。
いや、正確にはフォルフォルのことを厄介な天候ぐらいにしか思っていないのだ。
天候に腹を立てたって変わる訳でもないから、無駄なことはしないだけである。
実際のところ、沙耶はゴーレムに乗るのが全く怖くないなんてことはなく、正直なことを言えば死の恐怖を完全に克服できていない。
それでも、助けられた命で足手纏いのままいることに我慢できないから、自らを奮い立たせてゴーレムに乗っている。
恭介にスケープゴートチケットを使わせたことを失敗だったと思わせたくないという沙耶のプライドが、ゴーレムに彼女の足を運んだ。
フォルフォルもこれ以上余計なことを言えば、麗華にキレられる未来を容易に想像できたため、入場門を開いてモニターから姿を消した。
「行きましょう」
『そうですね』
2人の乗ったゴーレムが入場門を通り抜け、コロシアムの中へと移動した。
コロシアムの中心には豚の頭をした青い水牛がぐでーッとした状態で待機していた。
カトブレパスと呼ばれるこのモンスターは、毛で隠された目で視線を向けた鉱物の耐久度がガリガリ削る特性を持つ。
麗華はカトブレパスが視線を向ける前に目を潰す必要があると判断し、
「ブレァァァァァ!?」
見た目通りに素早く動けなかったため、カトブレパスは両目を潰された痛みで叫んだ。
その叫びに呼応するように、カトブレパスを中心に水溜まりが出現してあっという間にコロシアムの地面を侵食していく。
『ギフト発動』
水溜まりに触れてはいけないことを
『反撃なんてさせません』
それが見事に決まったことで、カトブレパスが暴れ始める。
「ブレァァァァァ!」
沙耶のラセツは土属性であり、その武器も土属性ならば水属性のカトブレパスが受けたダメージは大きい。
カトブレパスがどうにか沙耶を振り落とそうと藻掻いているけれど、麗華の存在を忘れているのはミスだと言えよう。
「さよなら」
それにより、許容できるダメージ量を超えてカトブレパスはドサリと音を立てて地面に倒れた。
光の粒子になって消えていくカトブレパスと共に水溜まりも消えたため、麗華と沙耶はホッとした。
ちなみに、この水溜まりは触れた鉱物の耐久値をじわじわと削る効果があった。
カトブレパスの目よりも耐久値の減り方はゆっくりだけれど、水溜まりは広範囲に広がっているため、触れている面積が広ければ広い程耐久値が削られていく点は厄介と言えた。
水溜まりも消えてから、麗華達の前に現れたのはアポピスだ。
前回戦った時、黄色く輝くドラキオンを見てアポピスは不俱戴天の敵と出会ったような目つきになったが、今回は特に興奮することなくセラフとラセツのどちらから攻撃しようかと見比べてている。
「シュルル…」
アポピスは飛んでいるセラフよりも、ラセツの方が攻撃しやすいと判断してそちらを狙う。
ラセツを丸呑みするつもりで大口を開くものだから、麗華はその隙をチャンスと捉えて
「ジュラァァァァァ!?」
口内への攻撃が痛かったらしく、アポピスは涙目になって地面をのたうち回る。
『この暴れ方では私が近づきにくいですね』
「沙耶さんは見てて良いよ。ギフト発動」
麗華は10万ゴールドをコストにして、強烈な一撃をアポピスの頭部に命中させた。
頭部が消し飛んで生きていられるような生命力はなく、残されたアポピスは光になって消えた。
予定していた戦闘が終わったため、コロシアムバトルスコアが各々のゴーレムのモニターに表示された。
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コロシアムバトルスコア(マルチプレイ)
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討伐対象:①カトブレパス②アポピス
部位破壊:①目(左右)/尻尾②頭
討伐タイム:18分9秒
協調性:◎
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総合評価:S
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報酬:40万ゴールド
資源カード(食料)100×4枚
資源カード(素材)100×4枚
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×24
ギフト:
コメント:麗華ちゃんが相手をして良いモンスターじゃなかったよね
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フォルフォルのコメントは間違っていない。
カトブレパスもアポピスも今の麗華が戦うような相手ではないからだ。
しかし、沙耶にコロシアムでソロプレイさせる訳にも行かなかったし、麗華がタワー探索に付き合うのも効率が悪かったから、コロシアムのマルチプレイを行うのが妥当だったのである。
『麗華さん、ギフトのレベルが上がりました』
「おめでとうございます。私も上がって14になりました」
『羨ましいです。私なんてまだLv9ですから』
「私の場合、レベルアップにはゴールドが求められます。ロマン砲が好きじゃない人にとっては羨ましいとは思われないでしょうね」
『それはそうでしょうね。私はロマン砲も面白くて良いと思いますけど』
沙耶はロマン砲肯定派らしく、麗華の
もっとも、GBOなんてゲームをやっている者ならば、別にロマン砲に興味や憧れを持っていても何もおかしくはないのだが。
「そうですか? 私は
『隣の芝生は青く見えるってことでしょうね。でも、一番羨ましいのは兄さんのギフトです』
「そうですよね。
『言えてますね。兄さんとドラキオンの組み合わせだから強い訳で、私とラセツの組み合わせなら今も実現してますけど大したことありませんから』
沙耶が自分を卑下するような言い方をするので、麗華はこの話題を止めるべく声をかける。
「これから沙耶さんはもっと強くなりますよ。さて、恭介さんも待ってるでしょうから撤収しましょう」
『わかりました』
麗華と沙耶はコロシアムの外に出て、
2人が戻って来てコックピットから出て来ると、恭介が微笑みながら出迎える。
「お疲れ様。2人のコンビネーションは良かったぞ。沙耶は冷静に対処できてたし、麗華は沙耶が稼いでくれたヘイトを利用してきっちり決めてたからな」
「恭介さんの戦いに比べればまだまだだよ」
「兄さんに比べればまだまだですね」
「…持ち上げられたって何も出ないぞ。そんなことより、ショップチャンネルに気になる物を見つけたんだ。見に行こう」
労いの言葉をかけたら、麗華と沙耶に急に持ち上げられたため恭介は困ったように笑った。
照れ臭く感じたこともあり、恭介はショップチャンネルの話を持ち出し、麗華と沙耶を連れて
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