第126話 知ってるか? そういうのを捨て台詞って言うんだぜ
リヴァイアサンの次に現れたのはローブを着た知的な悪魔だった。
モノクルをかけ、腕を組んだ状態で現れたのを見てなんとなくイラっとする者もいるだろう。
(これがラプラスデーモンか。なんか鼻につく奴だな)
どうやら恭介も見た目でイラっとしたらしい。
「見える見える。未来が見える」
恭介は無言でラストリゾートをガトリングガンに変形させ、ラプラスデーモンに向かって銃撃を開始する。
「フンフンフンフンフンフンフンフン!」
腰をカクカク振るだけで銃撃を躱すラプラスデーモンに対し、恭介は撃ち続けながら接近する。
恭介が近づいた分だけラプラスデーモンが距離を取るから、ラプラスデーモンになかなか銃弾が当たらない。
それゆえ、恭介はガトリングガンをショットガンに変えて銃撃を続ける。
ラストリゾートが換装にかける時間は一瞬だから、ラプラスデーモンは拡散する攻撃に反応するが遅れてダメージを負った。
「どうしたよ? 未来が見えるんじゃなかったのか?」
「お黙りなさい!」
攻撃を当てられたことが余程悔しかったようで、ラプラスデーモンは怒りに声を荒げて人差し指でドラキオンを指差す。
その指からレーザーが射出されるが、恭介の操縦はドラキオンに被弾を許さない。
避けながらもショットガンで反撃するから、ラプラスデーモンも次は当たるまいと安全マージンを確保して躱す。
結果として、ラプラスデーモンの攻撃頻度が減り、恭介とラプラスデーモンの攻守が変わった。
その際にドラキオンが一気にラプラスデーモンに近づき、ショットガンをビームランチャーに変形させてビームを撃った。
攻撃を読んで躱そうとしたけれど、ドラキオンのトップスピードには勝てなかったため、ラプラスデーモンはビームを躱し切れず、左翼に風穴を開けられて地面に降り立って片膝をついた。
「未来が見えても体がついて来ないなら意味がない」
「おのれぇぇぇぇぇ!」
図星だったらしく、知性を感じさせない怒号と共にラプラスデーモンが立ち上がり、そのまま地団太を踏み始める。
それがただの地団太なら問題ないのだが、地団太を踏んだ先で魔法陣が展開され、空から巨大な脚が現れてドラキオンを踏み潰そうと何度も上下に動いた。
その脚をビームランチャーで撃ち抜けば、地団太を踏んでいたラプラスデーモンの脚にダメージが反映される。
「ぐっ、脚が!?」
ビームランチャーからビームソードに変形させ、恭介はラプラスデーモンに接近してバラバラに斬り捨てた。
『未来が見えても体がついて来ないなら意味がない(キリッ)』
「だ ま れ」
『あっはい』
フォルフォルは恭介語録に加えるべき名言を口にした結果、冷徹な眼差しを向けられておとなしくモニターから消えた。
バラバラになったラプラスデーモンが光になって消え、その代わりに百の頭を持つ赤い地龍が現れた。
(ヒュドラだってうんざりだってのに、ラードーンはそれ以上の相手なんだよな)
ラードーンは全ての口から火球を創り出し、それを時間差で射出し始めた。
恭介はビームソードで躱し切れない火の球だけを斬り、ラードーンの背後に回り込む。
ビームソードで火の球を斬っている時、恭介は自分とドラキオン以外の時間の流れが遅くなったような気がしたけれど、本当に早業としか言いようがない見事な腕前だった。
巨体ゆえになかなか体の向きを変えられないラードーンに対し、恭介はドラキオンを操縦して後ろ側に回り込み、ラードーンの頭部を次々に切断し始めた。
こうすることにより、攻撃できる頭を減らして躱す負担を軽くしたのだ。
「「「…「「ラダァァァン!」」…」」」
首をぐるりと曲げ、自分の背後で攻撃するドラキオンを狙って火の球を放つラードーンだが、恭介は自爆を狙ってビームソードを使わずに躱し始める。
ドラキオンに一方的な展開でやられていたことに苛立ち、ラードーンは火の球の勢いを強めていた。
それもあって自爆によるダメージは着実に溜まり、とてもではないが無視できないものになっていた。
「「「…「「ラララダァン!」」…」」」
自分だけがダメージを受けるなんてふざけるなと思ったのか、ラードーンは火の球による攻撃を止めて空に巨大な炎の塊を創り出した。
炎の塊はよく見ると林檎を模っており、どんどん膨らみ始めた。
(嫌な予感しかしないぞこれ!)
このまま好きにさせてはいけないと判断し、恭介は炎の塊の膨張を阻止するべくラードーンの残った頭部を次々に斬り始めた。
頭が地面に斬り落とされる度に、炎の塊の膨張速度が落ちて形が不安定になっていく。
しかし、全ての頭を斬り落とすよりも先に、炎の塊の全体がパンパンに膨れ上がってしまった。
炎の塊が破裂するまでに全ての頭は斬り落とせないと判断し、恭介はラードーンの腹の下に潜り込み、ラストリゾートをビームランチャーに変形させてから連射する。
ラードーンは炎の塊を爆発させ、自分諸共ドラキオンを倒すつもりだったようだが、恭介が全ての脚を撃ち抜いてラードーンの脚はカックンとなって転んだ。
その際、炎の塊はギリギリのところでラードーンのコントロールを離れて破裂した。
炎の塊から林檎型の炎が次々と地面に降り注ぎ、それによるダメージがラードーンを追い詰める。
「道連れなんてお断りだ。くたばりたきゃ勝手にくたばれ」
林檎型の炎が全て落ち切ってから、まだ機能しているラードーンの頭を全てビームランチャーで薙ぎ払い、ラードーンは痛みによるショックが限界を超えて動かなくなった。
すぐにラードーンの体が光の粒子になって消え、恭介の5連戦はようやく終わりを迎えた。
ドラキオンのモニターにコロシアムバトルスコアが表示され、恭介はそれを確認し始める。
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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)
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討伐対象:①ジズ②ベヒーモス③リヴァイアサン
④ラプラスデーモン⑤ラードーン
部位破壊:①嘴/翼(左右)②尻尾/角(左右)
③目(左右)/角(左右)/牙(全て)/爪(全て)/逆鱗
④翼(左右)/角(左右)/四肢⑤頭(全て)
討伐タイム:59分44秒
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総合評価:S
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報酬:100万ゴールド
資源カード(食料)100×10枚
資源カード(素材)100×10枚
ファーストキルボーナス:
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:どうすれば恭介君の進撃を止められるんだろう?
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フォルフォルのコメントには、どんなモンスターを出せば恭介の歩みを止められるのか思いつかないという諦めにも近い感情が滲んでいた。
実際、モニターに現れたフォルフォルの目が死んでいる。
『私的にすっごく強いモンスターを5体用意したんだ。それなのに、1時間以内に無傷で倒されるとか予想外だよ』
「フォルフォルにそんな顔をさせられたって思えば、溜飲が下がるってもんだ」
『これで勝ったと思わないでよ』
「知ってるか? そういうのを捨て台詞って言うんだぜ」
『キィィィィィ!』
ハンカチを噛んで悔しがる仕草をするが、どことなくわざとらしく恭介は感じた。
先程までの5連戦で疲れたため、恭介はギフトを解除してリュージュのコックピットに戻った。
それから、コロシアムの外に出て
恭介がリュージュのコックピットから出て来れば、麗華と沙耶が恭介を興奮したように出迎えた。
「すごいよ恭介さん! あんなのモーションアシストがなきゃ不可能だって!」
「火の球を斬り続けた時の兄さんはヤバかったです! あれを超える戦闘なんて想像もつきません!」
「流石に俺も疲れたわ。甘い物欲しい」
甘い物が食べたいぐらいで済むレベルの戦闘ではなかったのだが、恭介はデスゲームに巻き込まれて以来、パイロットとして信じられない程の成長を遂げているから、それで済むのかもしれない。
「ちょっと待ってて。部屋からオレンジジュース持って来る」
麗華はすぐにペットボトル入りのオレンジジュースを持って戻って来て、それを恭介に渡した。
恭介はそれを一気に半分程飲み、ぷはーっと声を上げた。
「麗華、ありがとう。元気が出て来た」
「どういたしまして。じゃあ、今度は私と沙耶さんの戦いを見守っててね」
「おう。気を付けてな」
「「はい!」」
恭介に見送られ、麗華と沙耶が共にゴーレムに乗り込んでコロシアムに出発した。
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