第132話 誰だってそー思う。私もそー思う

 自分達のホームの格納庫に戻って来ると、フォルフォルがモニターに現れて恭介と麗華を出迎えた。


『さっきぶりだね。早速だけど、君達にしか開示できない話をしようか』


「聞かせてもらおう。俺達だけに解禁されたコンテンツがあるんだな?」


『コンテンツって言うと少し語弊があるかな。正確には私達が用意した訳じゃないからね』


「フォルフォルが用意してない? どういうことだ?」


 今までのデスゲームでは、全てのコンテンツをフォルフォルが用意していた。


 今から説明を受ける内容はそうではないと言われ、恭介だけでなく麗華も警戒心を強める。


『実はね、デスゲームってのは強いパイロットを育成するための舞台でしかなかったんだ。本当にやってほしいのは外敵との戦争だから』


「外敵? 戦争?」


「もしかして、ホームが戦艦になるって話は外敵との戦争をするためなの?」


 麗華の質問を受けてフォルフォルは目を丸くする。


『君ってば本当に麗華ちゃん? そんなに察しが良いなんて具合でも悪くない?』


「馬鹿にしないでくれる? それよりもさっさと説明しなさい」


『そうだね。平たく言うと、地球の外から来る侵略者と地球軍に戦ってもらうためのパイロットを育てるのがデスゲームの目的だったんだ。恭介君と麗華ちゃんには、他のパイロットに先行して侵略者と戦ってもらうよ』


「待った。同じ1期パイロットのムッシュはどうなんだ?」


『ムッシュは微妙にパイロットスキルが足りないから、沙耶ちゃんと晶君みたいに3期パイロットのメンターをしてもらってる。それと、侵略者との戦いはあくまであちらから仕掛けられた時に行う。だから、それまでは今まで通りに私が用意したコンテンツで資源を稼いでね』


 フォルフォルに言われ、恭介と麗華はムッシュならばそうなるだろうと納得した。


 恭介は直接戦ったことがないけれど、ムッシュの腕前は今の沙耶と大して変わらない。


 しっかり準備すれば、沙耶でもムッシュを討ち取ることはできるだろう。


 だからこそ、ムッシュが沙耶や晶と同じく3期パイロットのメンターになった訳だ。


 そこまで説明を聞き、恭介はまだ解消されていない疑問について触れる。


「フォルフォル、地球軍と侵略者の戦いならなんで地球に縛りなんて設けた? 多くの国の時間を止め、こんなデスゲームをしないで総力戦にすれば良かったんじゃないか?」


『そういう訳にもいかないのさ。侵略者は地球上の生物の恐怖を自らの力に変えるからね。有象無象の時を止めて背水の陣にして、少数精鋭で挑めば侵略者の強化を最小限に留められると私は判断したんだ』


「侵略者って何者だ?」


『クトゥルフ神話って知ってる?』


「一気に続きを聞きたくなくなって来た」


 予想外の名前が出て来たため、恭介はこれ以上聞きたくないと思った。


『誰だってそー思う。私もそー思う』


「だったらもう喋んな」


『喋るよ。侵略者ってのはあの神話の生物さ。君達には彼等に地球を侵略されぬよう、ゴーレムで立ち向かってもらうんだ』


「そんな連中と戦おうとするお前は何者だよ。フォルフォルは乗っ取ったフォールンゲームズのマスコットキャラだろ?」


『まだ私の正体を告げるには条件を満たしてない。とりあえず、襲撃に備えて強くなってね。それじゃ』


 フォルフォルはそう言ってモニターから消えた。


「恭介さん…」


 麗華は今の話を聞いて不安になったらしく、恭介に抱き着いた。


「大丈夫だ。俺が麗華を守るから」


「わ、私も、恭介さんを守る」


 恭介に守ると断言されて麗華は嬉しくなり、麗華も恭介を守ると言った。


 とんでもない話を聞いてしまったけれど、やるべきことは変わらないから恭介と麗華はそれぞれのゴーレムに乗り込み、宝探しをするべくタワーへと向かった。


 昇降機で地下5階層に移動したら、恭介達の耳にアナウンスが届く。


『ミッション! 1時間以内にデーモンの血を奪え!』


 デーモンの血というアイテムは、GBOには存在しなかった。


 モニターに映る紫色の血液の入った試験管に加え、目の前の広間にこれでもかと存在するレッサーデーモン達が争っているのを見て、恭介と麗華はミッションの内容を理解した。


「デーモンの血はレッサーデーモンを進化させて手に入れろってことだろうな」


『そうだね。蠱毒みたいに最後の1体がデーモンになれるんだと思う』


「じゃあ、さっさと片付けようか」


『うん』


 恭介は今、リュージュじゃなくてタラリアに乗っている。


 今日の宝探しでタラリアの試運転をするつもりなのだ。


 早速、グリムリーパーをライフル形態に変形し、レッサーデーモン達のクリティカルヒットするポイントを明らかにする。


 そのポイントを麗華が次々に撃ち抜いていくものだから、恭介は大したものだと感心した。


 自分も負けていられないので、現れたポイントを狙撃してレッサーデーモンの数を減らしていく。


 レッサーデーモン達は恭介と麗華の存在に気づき、6~9階層を召喚して自分達の戦いの邪魔をさせないように対応し始める。


「モンスターハウスも真っ青だな」


『大丈夫。敵は雑魚だよ』


「それな」


 四属性のモンスターが出て来たのなら、麗華と役割分担をした方が良いので恭介はゴーレムチェンジャーを使い、タラリアからナグルファルに乗り換える。


 レッドキャップとサファギンは恭介が担当し、ハニワンとシルクモスは麗華の担当という訳だ。


 ナグルファルに装備させているグレートブルーは、刃が伸縮自在であることと分離してトンファーになる十字剣であること以外にも、3つ目の特性として剣先からビームも放つというものがある。


 それゆえ、斬る瞬間にビームを放てば周囲の敵もまとめて攻撃できる。


 麗華も切替竜銃スイッチドラガンと三対の翼の銃を巧みに使い、サクサクと自分の担当する敵を倒していった。


 足止めの雑魚モブ達を倒した時、恭介達の視界にはレッサーデーモンが2体しか残っていなかった。


 どちらとも満身創痍であり、同時に全身が光り出した。


 片方はデーモンに進化し、もう片方はどういう訳かデーモンネクロマンサーに進化した。


「レッサーデーモンからデーモンネクロマンサーになるってどゆこと?」


『報酬が少し豪華になるかもね。どちらにせよ討伐あるのみだよ』


「それもそうだな。俺がデーモンネクロマンサーをやる」


『了解。私はデーモンをやるね』


 役割分担を素早く決めたら、恭介と麗華はそれぞれデーモンネクロマンサーとデーモンが手下を召喚する前に攻撃を仕掛ける。


 デーモンネクロマンサーは慌てて召喚用の魔法陣を展開したが、その時には既に恭介のグレートブルーから放たれたビームが腹部を貫通しており、魔法陣は維持できずに消滅した。


 その一方、麗華もデーモンにヘッドショットを決めていたため、広間からモンスターはいなくなった。


 ナグルファルのサイドポケットには腐ったデーモンの血というアイテムが転送され、セラフのサイドポケットにはデーモンの血が転送された。


 宝探しのミッションをクリアしたことで、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示される。



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宝探しスコア(マルチプレイ)

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ミッション:1時間以内にデーモンの血を奪え

残り時間:9分12秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:50万ゴールド

   資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

ランダムボーナス:武器合成キット

レアモンスターキルボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv24(up)

コメント:溜まってた経験値でギフトがレベルアップしたよ

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 (クトゥルフ神話の化け物を相手にドラキオンで144分の稼働か。足りないな)


 恭介は楽観的に考えたりしないため、黄竜人機ドラキオンのギフトレベルを上げなければと短期的な目標を設定した。


 宝探しが終わったため、恭介達は格納庫に帰還した。

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