第14章 明かされた目的
第131話 …そうですね。今は
ホームに来て30日目、恭介は麗華と沙耶を交えて朝食を取ってから、晶と3期パイロットがいる彼等のホームの
「恭介君、麗華ちゃん、サーヤ、久し振り~」
「久し振りってそんなに日は経ってないだろ」
「そこはほら、僕だけ恭介君達とホームが違うから寂しかったんだよ」
「ちやほやされたいからって帰ったのにな」
何気なく恭介が言った言葉に対し、晶の目が虚ろになった。
「…ちやほやされたよ。国のお偉方から」
「そうなるから俺は帰りたくなかったんだよ。多分、俺達に資源を送るようメッセンジャーの役割を任されただろうけど、答えはNOだ」
「だよねー。僕もそう言ったんだけどね。まあ、義理は果たしたんだし結果が伴わなくたって良いさ。さて、そろそろ3期パイロットを紹介しても良いかな?」
「頼んだ」
晶の後ろに並んでいた3期パイロット4人が前に出る。
まず、ダークブラウンの髪をお団子にしている女性から名乗り始める。
「
「お、おう。
「自分の推しの分身がギフトレベル×10秒だけ現れて、私のお願いを聞いて動いてくれます。ちなみに、昨日のチュートリアルではトゥモロー様がリュージュに乗って現れました!」
(様付けされちゃってるんだけどどうすれば良いんだ? 俺、アイドルじゃないんだが)
自分の分身が現れるというところは気になったけれど、今まで様付けされる機会なんてなかったから、恭介は明日奈とどう接して良いかわからず何も言えなかった。
その代わりに麗華が恭介の腕を取って口を開く。
「恭介さんは私のものです」
「…そうですね。今は」
『ハハッ、煎餅と緑茶を持って来ておいて正解だったね!』
「黙ってろフォルフォル」
『あっはい』
麗華と明日奈が睨み合い、面白くなって来たと楽しそうに見物するフォルフォルに対して恭介は黙るよう命令した。
力関係で言えば、拉致加害者であるフォルフォルの方が上でも恭介がいないとデスゲームは盛り上がらないから、フォルフォルは恭介にとって越えてはいけないラインを越えたりしない。
ちなみに、麗華が明日奈を警戒する理由だが、胸のサイズが自分より明らかに大きいからだ。
恭介がおっぱい星人だとは思っていないけれど、どうしても万乳引力の法則で男性は女性の胸に目が行くと考えている。
実際のところ、麗華は恭介に胸を見られたことがないし、恭介が沙耶の胸を見たこともないことから、その警戒は杞憂だったりする。
明日奈の自己紹介が終わったら、次は痩せ気味の男性が名乗り始める。
「初めまして。
「ご丁寧にどうも。午後十時騎士団の方ですよね。ちなみに、
「ご存じだったんですね。
「バトルでもそうですが、特にレースで役立ちそうですね」
「はい。早急に使いこなしてみせますよ」
「頼もしいです。よろしくお願いします」
恭介が仁志と握手すると、明日奈が血走った目で仁志を見た。
自分は握手してもらっていないのにと目が訴えているが、恭介はその目が怖かったので気づかないふりをした。
仁志の自己紹介が終わり、次は沙耶よりも更にキャリアウーマンらしいショートカットの女性が名乗る。
「
「よろしくお願いします」
(なんでこの人不機嫌そうなの?)
遥の機嫌が悪い理由だが、自虐ネタで付けたパイロットネームを自分の口から言わなければいけなかったことに加え、ギフトが
バンコーンは晩婚から取ったものであり、遥自身仕事ばかりしていて気づけば30代半ばになっていたため、バンコーンと改めて名乗るのは精神的にダメージを負ったらしい。
また、
つまり、遥の機嫌の悪さに恭介は全く関係ないのである。
明日奈の自己紹介の時とは違う意味で空気が悪くなりそうな中、あまり特徴らしい特徴がない男性が名乗る。
「田辺潤です。パイロットネームはタナー=ボッターで、ギフトは
「
「その通りです。ギフトレベル×5秒間、任意の対象に不幸が訪れます」
「対策できない点が地味に凶悪ですね」
「GBO時代も似たようなことがありましたから、私のイメージは変わりそうにありません」
「ゴーレムの操縦で印象を変えられるよう頑張って下さい」
潤とGBOのレースで戦ったことがあったため、直接話すのは初めてだけれど恭介は潤の実力を理解していた。
実力を知っていると言えば、恭介は明日奈ともレースで戦ったことがあるので彼女の実力も理解している。
GBOとリアルは違うところもあるが、3期パイロットは即戦力が来てくれたのではないかと思う1期と2期パイロットだった。
なお、年齢は明日奈が29で仁志が30、遥が35、潤が31であり、日本チームは上から順番に遥>潤>仁志>明日奈>恭介、晶>沙耶>麗華ということになる。
恭介達のことは既に知られているため、簡単に自己紹介するだけに留まった。
そこにフォルフォルが現れる。
『自己紹介が終わったようだね。そろそろ私から第3回デスゲームでの変更点について説明しても良いかな?』
「変更点?」
フォルフォルの口から変更点という言葉が飛び出し、恭介はそれを警戒して眉間に皺を寄せる。
『別に悪い話じゃないと思うよ。今回のデスゲームでは、3期パイロットが育つまで代理戦争を新人戦の名称に改め、3期パイロットだけしか参加できなくすることにしたんだ』
「1期と2期パイロットがいる以上、日本とF国は他の国と比べて3期パイロットの数が少ないはずだ。その人数差はどうなる?」
『安心して良いよ。新人戦に参加できるのはどの国も4人までにしたから。そうすれば、新人戦でいきなり3期パイロットの大半が失われることはなくなるよね』
「少しは考えたようだな。でも、そうなると1期と2期パイロットはなんでデスゲームに呼ばれたんだって話になるんじゃないか?」
恭介の疑問はもっともだろう。
パイロットが拉致られてデスゲームに参加している理由だが、それは各種コンテンツをクリアして資源カードを手に入れ、それを自分達の国に送るためだ。
その中でも特に資源カードが手に入る代理戦争に参加できないならば、1期と2期パイロットがこのデスゲームに参加させられる理由としては微妙である。
当然、新人戦なんて仕組みを用意した以上、自分達がデスゲームに参戦せざるを得ない理由があると判断し、恭介はフォルフォルに疑問をぶつけたのだ。
『2期パイロットの2人には3期パイロットのメンターになってもらうよ。操縦スタイルが近い者同士で組んでもらうね。沙耶ちゃんは明日奈ちゃんと仁志君だね。晶君には遥ちゃんと潤君だよ。よろしくね』
「沙耶と晶の役割はわかったけど、俺と麗華はどうなんだ? 1期パイロットは何もする必要がないって訳じゃないんだろ?」
『勿論だよ。君達にはスペシャルなミッションがあるから楽しみにしててね』
「勿体ぶるじゃないか。この場で言えない内容なのか?」
『まあね。聞く権限を持たない者が聞けば、記憶が消去されてしばらく気絶する羽目になる。ここまで言えば、この場で言わない理由はわかるでしょ?』
2期と3期パイロットに話せない何かがあるとわかったため、恭介はこの場での質問を中断した。
「わかった。後で改めて質問する。それ以外に説明事項はないのか?」
『1期~3期に共通して伝えられる情報は以上だね。今回も私のことを楽しませてくれることを期待するよ』
それだけ言ってフォルフォルは画面から消えた。
新人戦で日本チームは3期パイロット全員に出番があるとわかったため、沙耶と晶が主導して3期パイロットの育成が始まった。
恭介と麗華はこの場に居てもやることがないから、自分達のホームに戻った。
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