第133話 物欲センサーはどんな敵よりも強い
午後になり、恭介と麗華は各々のゴーレムに乗ってタワーの21階層にやって来た。
午前は宝探しを終えた後、午後のタワー探索のためにシミュレーターで準備できたから、対策はばっちりである。
コロシアムに挑むのでも良かったが、デイリークエストがタワー探索で2階層以上を連続踏破してA評価を貰うことだったため、コロシアムのマルチプレイを明日以降に回したのだ。
「21階層はジャングルなんだな」
『そうだね。どこに潜んでるかわからないから燃やしちゃう?』
『うわぁ、麗華ちゃんってば環境破壊推奨大臣なの? 野蛮なレディは嫌われるよ』
『煩いわね。好きで環境破壊する訳じゃないわ。敵の地の利を減らすために仕方なくよ』
恭介に野蛮だなんて思われたくないから、フォルフォルがちょっかいを出して来るのに対してすぐに反論した。
麗華の意見を聞き、恭介はフォルフォルに訊ねる。
「フォルフォル、タワー内で環境破壊したとしても現実には影響があるのか?」
『ないよ』
「よし、やろう」
フォルフォルの回答で不安要素が取り除かれたので、恭介はリュージュを機械竜形態に変形させてジャングルに向かってビームを連発する。
火属性のビームにより、ジャングルがあっという間に火の海になった。
『うぅ、ひどいや。この階層にはローパーもいて触手プレイ展開も楽しみだったのに』
「ゴーレム相手の触手プレイとか誰得?」
『視聴者の中にはニッチな性癖を持った人はいるでしょ。だって、ドラゴンカーセックスなんて言葉もあるんだから』
「そんな視聴者への気遣いなんか要らないだろ」
よくわからない気配りを発揮するフォルフォルに対し、恭介がジト目を向けたくなるのは当然だろう。
とにかく、21階層のジャングルが火の海になり、昇降機前にいたトリフィドタンクも全身火傷の瀕死の状態だったため、恭介達はサクッと倒して22階層に移動した。
22階層は岩山と呼ぶべき内装で、恭介と麗華を出迎えたのは無骨な棍棒を持ったトロールだった。
「的がデカいと攻撃が楽だな」
『だよね~』
トロールは知性こそ感じられないが再生能力持ちであり、一撃で仕留められないとダメージを回復してしまう。
それゆえ、恭介はナイトメアでトロールの首を斬り落とし、麗華は
何度かトロールとの戦闘を終えたところで、恭介は不自然な岩を見つけた。
『恭介さん、何か見つけたの?』
「まあな。あの岩が自然にできた感じがしなくてな。形が整い過ぎてる」
『あぁ、確かに。二十四面体なんて自然にできないよね』
「ということで壊してみる」
ナイトメアを銃形態に変え、恭介は二十四面体の形をした岩の中心を撃ち抜いた。
その直後に岩がパカリと割れ、中から黄色くて醜いマッシブな妖精と宝箱が現れた。
「ビンゴ。エピックトロールと宝箱だ」
『エピックトロールは私がやる!』
土属性のエピックトロールは相性が良いから、麗華がそう言ってビームでエピックトロールを一撃で仕留めた。
宝箱の守護者としての役割を果たす間もなく、あっさりと倒されたエピックトロールを見て、モニターにはフォルフォルが無言でハンカチを取り出して悔しさをアピールするように噛んでいた。
恭介はそれをスルーして宝箱を開くと、サイドポケットに10万ゴールドとスケープゴートチケットが転送されて来た。
「おっ、当たりだ」
『何が当たったの?』
「スケープゴートチケット。ついでに10万ゴールド」
『すごい! これで沙耶さんが気にしなくて済むね!』
沙耶は自分のためにスケープゴートチケットが使われたことを気にしていたため、恭介が改めてスケープゴートチケットを手に入れたと聞けば、麗華の言う通りホッとするに違いない。
「そうだな。というかフォルフォル、その絵面だと顎外れてないか?」
『それぐらい驚いたんだよ。でも、気を付けてね。クトゥルフ神話の化け物達にやられて助かったとしても、スケープゴートチケットは心の傷までカバーしてくれないから』
「わかってるさ」
沙耶も助かった後に精神的ショックで気絶したのだから、スケープゴートチケットで助かっても精神まで無事であるとは恭介も考えていない。
それから、恭介達は探索を再開してトロールを何度か倒すと昇降機と一回り大きなトロールを発見した。
「トロールグレート。デカいな」
『とりあえず狙ってみるね』
麗華が
ところが、トロールグレートが頭を動かしたせいで右耳を吹き飛ばすだけに留まった。
その傷もすぐに再生し、トロールグレートはニタリと挑発するような笑みを浮かべた。
「俺が気を引く。麗華はその隙を狙え」
『了解』
恭介がリュージュを竜人形態に変形させた後、トロールグレートに接近して蛇腹剣にしたナイトメアで斬りつける。
「ウガァ?」
「サンドバッグになってもらうぞ肉人形」
「フンガァァァ!」
トロールグレートはトロールよりはマシな脳みそを持っているから、自分が恭介に馬鹿にされたことを理解した。
怒りのままに棍棒を振り回すが、恭介は巧みにリュージュを操縦するから当たらない。
ヘイトを恭介が稼いでいる内に、麗華はトロールの背後に回り込んでその頭に向かってビームを放った。
今度は避けられることもなく、トロールの頭を撃ち抜いて戦闘が終了した。
「ナイスショット」
『ううん、恭介さんのおかげだよ。こっちこそありがとね』
「よし、23階層に行くぞ」
『行こう!』
23階層に着いた恭介達だが、いきなり槍を持ったナーガに囲まれた。
「手荒な歓迎ありがとな!」
恭介は蛇腹剣にしたナイトメアで薙ぎ払い、先頭にいた5体を斬り捨てた。
その直後に麗華が
5分程かけて昇降機付近のナーガを掃討し、恭介と麗華は溜息をついた。
「いきなりだったな」
『そうだね。もっと雑魚が相手なら手間もかからなかったんだけど』
「今後戦う相手を考えれば、囲まれた敵が強くて勝てませんでしたなんて言ってられないんだ。俺達が強くなるしかないな」
『うん。差し当たってはセラフよりも強いゴーレムに乗りたいな』
セラフはGBOにおいて天使シリーズの最強クラスなのだが、これからの戦いを考えるともっと強いゴーレムに乗りたいという麗華の気持ちは頷ける。
「そうなると、セラフに合成できるゴーレムの設計図が欲しいところだ。次の宝箱、麗華が開けるか?」
『それなんだけど、私が宝箱を開けるよりも恭介さんが開けた方が良い結果になりそうだから、恭介さんに開けてもらいたいな』
「わかった。物欲センサーが発揮しないと良いんだが」
『物欲センサーはどんな敵よりも強い』
麗華の言葉に重みがあった。
今までの人生において、何度も物欲センサーに阻まれたであろうことは想像に難くない。
いつまでもこの場にいたって仕方ないから、恭介達はタワー探索を再開して地下水道と呼ぶべきエリアを進んで行く。
ナーガは泳ぐことができるらしく、
無論、恭介達はそれら全てを返り討ちにして、あからさまに怪しい曲がり角で赤い鱗が目立つラミアに襲われた。
「私の子を返せぇぇぇぇぇ!」
ラミアは遭遇と同時に炎の壁を前方に展開し、その壁が恭介達に向かって進んで来た。
ゴーレムチェンジャーを使って恭介はリュージュからナグルファルに乗り換え、グレートブルーの水属性のビームで炎の壁ごとラミアを撃ち抜いた。
『後味が悪い敵だったね』
「そうだな。でも、こんなのを気にしてたら駄目だ。先に進もう」
恭介達は気持ちを切り替え、地下水道の終点である昇降機を見つけた。
その前には当然守護者たる存在が待ち構えており、それは筋骨隆々のナーガだった。
「ナーガウォリアーだ。シミュレーション通りなら飛び道具は槍の投擲だけだから注意してくれ」
『うん』
「むんっ」
簡単に打ち合わせをしていると、ナーガウォリアーは自分の槍をセラフに向かって投げつけた。
「おいおい、マジかよ」
恭介はグレートブルーでセラフ目掛けて飛んで来る槍を弾き落とした。
その直後に麗華が
『流石は恭介さん。抜群の対応だったよ』
「麗華もな。見事な反撃だった」
戦利品がセラフのコックピットのサイドポケットに転送されたのを確認し、恭介達は24階層に進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます