第134話 俺の好きな小説に書いてあった。ワイバーンはお肉であると!

 24階層の内装は峡谷と呼ぶべきものであり、恭介も麗華も自分の目を疑った。


「ここってタワーの中だよな?」


『そのはずだよ。昇降機で上がって来たんだし』


 自分達のゴーレムを運んで来た昇降機がある以上、ここがタワーの24階層であることは間違いない。


 疑いたくなる気持ちを切り替え、恭介達は先へ進む。


 それから数分の内に、24階層で出現するモンスターが空からやって来た。


 (来たな、ワイバーン)


 GBOにおいて、ワイバーンは前肢と翼が一体化した翼竜として現れる。


 他のゲームや漫画等では尻尾の針に毒があるが、GBOではその針の攻撃を受けるとゴーレムの耐久値がガリガリ削れる仕様になっている。


 ついでに言えば、ワイバーンの体は赤青黄緑の4色のいずれかであり、ドラゴンには威力で劣るが自らの属性のブレスを吐ける。


 空からやって来たワイバーンは2体いて、それぞれの体の色は赤と黄色だった。


『ワイバーンが雑魚モブとして現れるのは嫌だなぁ』


「俺の好きな小説に書いてあった。ワイバーンはお肉であると!」


『恭介さん、ワイバーンのお肉なんてGBOにはなかったよ?』


「フォルフォルならその辺の遊び心があるはず! 麗華は黄色の奴を頼む!」


『了解!』


 ワイバーンが射程圏内に入ったため、恭介と麗華は会話を中断して戦闘に突入した。


 赤いワイバーンは火属性のブレスを吐くが、恭介がグレートブルーのビームでブレスごと押し返した。


 口内に炎が逆流し、そのすぐ後に水属性のビームが直撃したことでワイバーンは頭をやられて地面に墜落した。


 麗華が戦っている個体の方は、尻尾を駆使してセラフの耐久値を削りにかかっていた。


 しかし、麗華が冷静にその動きを見て躱しており、躱した直後に三対の翼の銃から一斉に射撃を喰らってこちらも地面に墜落した。


 その結果、2人の乗るゴーレムのサイドポケットに目録が転送された。


「言ってみるものだな。ワイバーンの肉がドロップしたぞ」


『私もドロップした。食堂に提供すれば料理してくれるって』


『フフン、私はファンタジー肉を食べたいという気持ちをわかってるからね。ワイバーンの肉は食材としてドロップするようにしたよ』


「褒めて遣わす」


『きょ、恭介君に褒められた(トクン)』


『そういうの要らない。ハウス』


 フォルフォルが上機嫌の恭介に褒められ、少女漫画的描写を口にするものだから、イラっとした麗華にばっさりと言われた。


 そんなやり取りをしている間に、追加のワイバーンが恭介達を襲う。


 最初の2体は様子見だったようだが、今度は8体が一気に恭介と麗華を襲う。


「ギフト発動」


 恭介がギフトの発動を宣言し、彼はナグルファルのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。


 8体のワイバーンに対し、恭介は包囲される前に次々とラストリゾートを大太刀に変えて斬り捨てた。


『恭介さん、頑張り過ぎじゃない? 私の出番がなかったよ』


「あの数に包囲されるのは面倒だからな。ギフトを使ってるからサクサク行くぞ」


『は~い』


 黄竜人機ドラキオンのレベルアップを考えれば、今日のタワー探索でも使っておいた方が良いのは間違いない。


 だが、恭介がドラキオンに乗ったことでその後の24階層の難易度が一気に下がった。


 ワイバーンの肉は溜まる一方であり、貴金属とガラクタがごちゃ混ぜに蓄えられた巣にはワイバーン派生種のアンピプテラがいた。


 アンピプテラはワイバーンと違って二枚舌であり、牙が鋭く尻尾の針がない。


 青い鱗から水属性であることは丸わかりなので、恭介は飛翔しようとするアンピプテラに急接近し、ラストリゾートをウォーハンマーに変形させてその頭に振り下ろした。


 属性的に相性が良かったこともあり、アンピプテラはの頭はトマトのように潰れて倒れた。


 (アンピプテラも肉をドロップするのか。夜は食べ比べだな)


 そんなことを思いつつ、恭介はガラクタの中にしれっと紛れ込んでいた宝箱を見つけてその蓋を開けた。


 22回で運を使ってしまったのか、今回は5万ゴールドの宝箱を引き当てた。


 その中身は?の文字が大きく書かれた設計図カードだった。


「何これ? 初めて見るんだけど」


『どうしたの? 宝箱から何が出たの?』


「設計図なのは間違いないがよくわからん。フォルフォル、解説」


『はーい。それはね、ランダム設計図だよ。GBOにはない私が用意したオリジナルアイテムさ。格納庫に持ち帰った時、ランダムで何かしらの設計図になるんだよ。楽しみが増えたね』


「焦らしアイテムか。それならさっさと探索を済ませよう」


 帰るまでどんな設計図になるかわからないとフォルフォルに言われ、恭介達は早急に25階層をクリアすべく先を急いだ。


 昇降機前にはツインヘッドワイバーンがいたが、ランダム設計図が楽しみな麗華が瞬殺したのですぐに昇降機に乗り込めた。


 25階層はボスモンスターが待ち構えており、それは2体のアークデーモンだった。


 デーモンと比べて貫禄があり、頭から生えた2本の角や一対の翼はデーモンに加えて立派である。


「チッ、ふざけんな!」


 アークデーモン達が配下のモンスターを召喚途中だと気づき、恭介はラストリゾートをガトリングガンに変形して銃撃を始めた。


 片方のアークデーモンは狡賢い個体だったらしく、恭介が銃撃を始めた時にもう片方のアークデーモンを肉壁にできる位置に移動していた。


 それによって肉壁にされた方はあっさり倒せたけれど、狡賢い方は生き残ってローパーとスプリガン、ラミア、アンピプテラの召喚に成功した。


「麗華、周りの4体は俺がやる。アークデーモンは任せた」


『了解』


 2人の乗っているゴーレムのスペックを考えれば、恭介の指示した割り振りが妥当である。


 恭介は真っ先にアンピプテラを連射で仕留め、続いてラストリゾートを蛇腹剣に変形させてからラミアの首を刎ねた。


 ローパーとスプリガンの対処を後にした理由だが、脅威度が高い順に倒しただけだ。


 ローパーが触手を伸ばしてドラキオンを絡め取ろうとするが、恭介はその触手を避けてスプリガンを自分の身代わりになるように動いた。


 結果として、スプリガンがローパーに絡め取られてスプリガンが抵抗する状態になった。


 (これも誰得な絵面だよな)


「ホデュアァァァァァ!」


 どういう訳かローパーがスプリガンを掘っているのだ。


 恭介のジト目がモニター上で困惑しているフォルフォルに注がれる。


『私が狙ってやった訳じゃないんだ! 特殊性癖個体の特殊なプレイなんだ!』


「特殊って言えば解決するとでも?」


『私は悪くねえ! 私は悪くねえ!!』


 フォルフォルは本当に自分の関与はないんだと主張するため、恭介はこれ以上何も言わずにローパーとスプリガンをビームソードに変形させたラストリゾートでバッサリと斬り捨てた。


『ギフト発動』


 麗華は金力変換マネーイズパワーを発動し、壁際に追い詰めたアークデーモンに10万ゴールドを支払って強化したビームを放った。


 アークデーモンの心臓部に大きな風穴が開き、それが原因で狡賢い方のアークデーモンも力尽きた。


 恭介達は戦利品回収を済ませ、26階層まで昇降機で移動してから魔法陣でタワーの外に脱出した。


 それと同時に、タワー探索スコアが2人の乗るゴーレムのモニターに表示された。



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タワー探索スコア(マルチプレイ)

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踏破階層:21階層~25階層

モンスター討伐数:121体

協調性:◎

宝箱発見:○

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総合評価:S

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報酬:聖銀ミスリル100個

   100万ゴールド

   資源カード(食料)100×1枚

   資源カード(素材)100×1枚

ボスファーストキルボーナス:アップデート無料チケット(格納庫)

宝箱発見ボーナス:魔石4種セット×120

デイリークエストボーナス:50万ゴールド

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv25(up)

コメント:ワイバーンのお肉が大量だね。グフフ

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 (コメント欄が不穏だな。ワイバーンの肉に何かあるのか?)


 フォルフォルのコメントを読み、恭介は今まで興味のあったワイバーンの肉に不安を抱いた。


 麗華からギフトがレベルアップし、アップデート無料チケット(待機室パイロットルーム)が手に入ったという報告を受け、恭介も同じように報告した。


 格納庫に戻り、恭介達はランダム設計図がどうなったか調べる前に待機室パイロットルームと格納庫をver.7にアップデートした。


 待機室パイロットルームはショップチャンネルの商品が拡充し、モニターに検索チャンネルが追加された。


 解禁された検索チャンネルにより、スマホがなくともあらゆる情報を検索できるようになった訳だ。


 格納庫の方は、ゴーレムの作成と修理にかかる鉱物マテリアルが30%カットされるようになった。


 地味なアップデートだけれど、これはこれでありがたいものである。


 そして、お待ちかねのランダム設計図の結果を確認する時が来た。

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