第14話 一体私を誰だと思ってるんだい? フォルフォルさんだぞ?
タワーを脱出して安全が確保できたから、恭介はコックピットのモニター画面に表示されたスコアに目を通し始める。
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タワー探索スコア(マルチプレイ)
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踏破階層:1階層~2階層
モンスター討伐数:124体
協調性:◎
宝箱発見:〇
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総合評価:S
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報酬:
2万5千ゴールド
資源カード(食料)5×1
資源カード(素材)5×1
宝箱発見ボーナス:アップデート無料チケット(格納庫)
ギフト:
コメント:ボケにリアクションくれないと悪戯しちゃうぞ
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(何これ面倒臭い)
モニターに表示されるスコアを一通り見た後、ひょっこり現れたフォルフォルを見て恭介はイラっとした。
『ボケにリアクションくれないと悪戯しちゃうぞ』
「わざわざ言わんでよろしい。ちゃんとコメントは読んでるさ」
『えー? それにしてはリアクション薄くなーい?』
「フォルフォルこそ、俺にリアクションを求めるなら俺に寄り添ったボケをしてみろよ」
独り善がりなボケじゃリアクションも適当になるのは当然だと言われ、フォルフォルはふむふむと言いながら腕を組んでいた。
これは宿題として持ち帰らせてもらうと言ってモニターから消えたので、恭介はライカンスロープを操縦して
麗華もその後に続いて戻って来た。
2人共ゴーレムの調整を始め、魔石の補充や損傷のチェックを行った。
恭介はライカンスロープをジャック・オ・ランタンに変更したため、ゴーレムの見た目が狼男っぽいものからカボチャを頭に被った墓守に変化した。
武器は銃剣から
ゴーレムから降りて麗華と合流し、宝箱発見ボーナスで手に入れた格納庫の無料アップデートチケットを使ってみた。
その結果、格納庫の見た目がどこかのロボットアニメで見たようなデザインに代わり、ロボット好きの恭介的が目を輝かせた。
「これは良いものだ。実に良いものだ」
「明日葉さん、設備的な改良はないの?」
「あるぞ。ゴーレムの作成と修理にかかる鉱物マテリアルの量が5%カットされる」
「おぉ、地味だけど馬鹿にできないね」
「だろ?」
恭介達はついでにこのまま
まずは麗華が私室をアップデートした。
「よし、私もシミュレーターが使えるね。それに、私室が豪華になると嬉しい」
「そうだな。俺ももう一段階アップデートするか。1万5千ゴールドってことは、私室のアップデートは5千ゴールドずつ上がるようだ」
「こ、ここで1万5千ゴールド出したら、貯金が心許なくなる…」
麗華はギフトの威力の担保と更なる私室の充実を天秤にかけて前者を選んだ。
次の食堂のアップデートは2万ゴールドかかるとわかり、恭介と麗華は1万ゴールドずつ支払ってアップデートした。
「私の貯金が2万5千ゴールドか。明日葉さん、貯金はおいくら?」
「黙秘権を行使する」
「ちょっとぉ!? 私は言ったのになんで教えてくれないの!?」
「それは更科が勝手に言っただけだろ。俺の貯金額を聞いても更科を傷つけるだけだろうから、言わない方が良い」
「そ、そんなに稼いでるのね。おのれ、これが格差社会か」
ぐぬぬと悔しがる麗華をスルーし、恭介はアップデートした食堂の中に入った。
食堂を二度アップデートすると、日替わりセットが朝昼晩で異なる料理を食べられるようになる。
それだけでなく、デザートも付くようになるから、恭介も麗華もこれだけで機嫌が良くなる。
「デザートが付くのは嬉しい。昼はピーチゼリーか」
「マジでそれ! ところで、明日葉さんは甘いの平気なんだね」
「甘い物は好きだぞ。それに、脳を働かせるのに甘い物は欠かせないし」
「ふーん。そこまで考えてはいなかったけど、甘い物は心の癒しだもの。早く食べましょう」
麗華は純粋に甘い物が好きだったが、恭介は普通に好きなだけじゃなくて好む理由もあった。
恭介の考えに感心しつつ、麗華は用意されたランチセットを持って席に移動した。
2人揃ってから昼食を取り、ピーチゼリーまで食べ終えたことで恭介も麗華も充実した気分になった。
麗華はふと気になることがあったので、それを口に出してみる。
「他の国の食事ってどうなってるんだろう?」
その質問に応じたのは、食堂にあるモニターに映り出したフォルフォルである。
『私をお呼びのようだね?』
「呼んでないわ」
『いやいや、他の国の食事が知りたいって言っただろう? 麗華君と同じ状況の恭介君が知る訳ないんだから、その質問先は必然的に私になる。つまり、私を呼んでると言っても過言ではない。おわかり?』
「何その顔。めっちゃ腹立つ」
物わかりの悪い子供に話すような口調だが、その表情は話し相手を馬鹿にしているとしか思えないものだった。
それが麗華を苛立たせた。
フォルフォルと言い争っていても時間の無駄だから、恭介は割り込むように口を開く。
「フォルフォル、それでどうなんだ? これぐらいの質問なら答えても問題ないだろ?」
『そうだね。食堂の内装は全参加国共通で、料理の種類も全て同じだ。勿論、アップデートしたバージョンが同じならって前提だし、日替わりセットとして出て来る順番はそれぞれバラバラなんだけどね』
「お国柄とかは関係ないのか?」
『そこまで君達全員のことを考えたりしないよ。君達がいるここは私がもてなすために用意したんじゃなくて、代理戦争のために用意したんだからね』
言われてみれば納得のいく説明である。
フォルフォルがフランクに喋るから忘れてしまいそうになるが、恭介達は国の代わりにGBOを現実にしたデスゲームをするために拉致されたのだ。
拉致した側が拉致した相手を気遣い、ディテールまで凝ったもてなしをする必要なんてないだろう。
「なるほど。ところで、俺達って日本にいる人と連絡を取れたりしないのか?」
『へぇ、意外だな。恭介君は父親と連絡を取りたがる人種じゃないと思ってたんだけど』
「母や友人の可能性があるのに父親って断定するあたり、フォルフォルはマジで性格悪いな」
『いやぁ、それほどでもあるよ』
恭介が眉間に皺を寄せるのを見て、フォルフォルはその顔が見たかったと言わんばかりに胸を張っていた。
状況がわからないせいで、麗華は首を傾げるばかりである。
「明日葉さん、どういうこと?」
「更科には関係ないとも言えないか。俺の父親が今の日本の首相なんだ」
「え? でも、首相の苗字は筧で明日葉さんとは違うよね?」
できれば黙っておきたい事柄ではあったが、デスゲームのために拉致られた以上、ここまで聞かれて麗華に黙っておく訳にはいかない。
そのように判断して恭介は端的に事情を説明した。
だが、それが端的過ぎたため麗華はまだ首を傾げている。
説明不足だけど喋るのは気が進まない恭介に代わり、ニヤニヤしたフォルフォルが喋り出す。
『あのね、恭介君のお父さんは恭介君のお母さんと若い頃に一夜限りの過ち的なまぐわいをしてね、恭介君が生まれたんだよ』
「言い方をどうにかしろよ!」
下世話なフレーズを選んで行われたフォルフォルの説明に対し、恭介がツッコむのは無理もなかった。
「じゃあ、いわゆる愛人の子ってこと?」
「おぉふ、更科もなかなか言葉を選ばないじゃないか」
フォルフォルと違った麗華のストレートな言葉に、恭介は精神的ダメージを負った。
フォルフォルは笑いを隠さずに話を続ける。
『少し違うから補足してあげよう。彼の母親は今の筧首相の妻の姉だ。酔っ払った筧首相が妹と姉を間違えてヤっちゃったんだ☆』
「お前なんでそんなことまで知ってるんだよ。俺は誰にも言ってないぞ?」
『一体私を誰だと思ってるんだい? フォルフォルさんだぞ?』
「知らねえよ。とりあえず、話を戻して質問に答えてくれ。俺達が日本にいる人と連絡を取れるのか?」
これ以上自分の身の上話なんてしたくないから、恭介は先程の質問の回答を促した。
『できるよ。
「そうか。わかった」
話を切り上げた恭介が
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