第233話 私にもアドバイスを求めに来てほしかった。私が彼等を育てたって言いたかった
帰還した麗華がブリュンヒルデに乗り換え、リミットブレイクキットを使ったことでブリュンヒルデの姿が変わる。
今までは四対の翼を持つ戦乙女と呼ぶべき見た目だったのだが、それが五対の翼を持つ戦女神と呼ぶべきデザインに変わった。
専用兵装だった
変化はそれだけに留まらず、ヴォーパルバヨネットがアルテマバヨネットに強化された。
アルテマバヨネットはヴォーパルバヨネットよりも火力が上昇しただけでなく、銃と剣ならば自在に変形させられるという点で麗華は気に入った。
調整作業が終わり、麗華は満足した表情でシグルドリーヴァのコックピットから出て来た。
「お疲れ様。満ち足りた表情になってるってことは、ブリュンヒルデの強化は良い結果になったらしいな」
「うん。新しくシグルドリーヴァになったよ。スペックだけで言えばラストリゾートの代わりにファルスピースを装備したドラキオンと変わらないかな。アルテマバヨネットは銃と剣だけならどんな種類にも変形させられるから、本当にもう少しでドラキオンと同じスペックだった」
「いやいや、シグルドリーヴァにはビットもあるんだから、ドラキオンと同等かそれ以上だろ。
「そうだよ。
「ドラキオンとドライザーとは違って普段から使えることも考慮すると、見せ札としては最強かもな」
恭介にシグルドリーヴァがここまで評価されれば嬉しくないはずがなく、麗華は満面の笑みになった。
そこにコロシアムでの戦闘を終えた沙耶と晶が帰って来た。
コックピットから出て来た2人は、恭介達を見つけて駆け寄る。
「兄さんと麗華さんに相談があります!」
「恭介君と麗華ちゃんに相談があるんだ!」
「…とりあえず、
何やら真剣な雰囲気がしたため、立ち話で済ます物でもないだろうと思った恭介は4人で
麗華は移動してすぐに全員分の飲み物を用意し、沙耶と晶に話しかける。
「それで、2人は私達にどんな相談があるの?」
「このままでは3期に実力で負けてしまうかもしれません。私達は2期の先輩として、彼らよりも強くありたいです。自己鍛錬は毎日欠かしてませんので、兄さん達にゴーレムの強化について相談させてほしいです」
「ルルイエ侵攻作戦でも被弾しちゃったからね。僕達も次こそは作戦終了時まで被弾しないようにしたいんだ。知恵を貸してほしいな」
ニューイングランド侵攻作戦の時はスケープゴートチケットのお世話になり、ルルイエ侵攻作戦の時は脚部に被弾して中破してしまったことから、沙耶達は焦りを感じているようだ。
3期パイロットの4人はクトゥルフと戦っていないけれど、彼等の被害は比較的軽微なもので済んだ。
それに対し、先輩である自分達が中破されたという状況では、威厳を保てないという風に考えているのだろう。
「アドバイスをするにあたって、まずは今あるリソースを確認したい。何があって何がないのか教えてくれ」
恭介はそれがわからなければ何もできないと伝え、沙耶と晶はその通りだと思ったので今使える物全てを恭介と麗華に開示した。
沙耶達は先程のコロシアムのマルチプレイで26戦目から最後まで戦ったらしい。
その報酬はそれぞれ、ネビロスの設計図とデルタドレイクの設計図だった。
それ以外にも設計図や武器はあったことから、設計図合成キットや武器合成キットも使って強化していく方向になった。
「沙耶の場合、晶が手に入れたデルタドレイクと自分が元々持ってたイプシロンドレイクを合成し、合成できたフォースドレイクを更にガイアドレイクと合成すれば良い。そうすれば、レイダードレイクが完成する」
今あるリソースの中から、どの設計図を組み合わせれば強いゴーレムの設計図が手に入るか頭の中で考え、とりあえず沙耶のガイアドレイクを強化する算段が整ったので恭介はそれを口にした。
デルタドレイクは三角形のバリアシステムを背負った竜人型ゴーレムであり、イプシロンドレイクはεを模ったソードブレイカーを背負った竜人型ゴーレムだ。
2つのゴーレムは守りと攻めで対局にある機体同士だが、それを合成することで盾ごと敵を攻撃できるソードブレイカーと防御に特化したビットを有するフォースドレイクが完成する。
それをガイアドレイクと合成することで、機械竜形態のビームしか特徴らしい特徴のないガイアドレイクは他にも特徴を備えたレイダードレイクに変わるのだ。
レイダードレイクはガイアドレイクと同様に機械竜形態にも変形可能だが、竜人型で着脱自在のビットになっている二対の翼によるバリアと蛇腹剣になる尻尾も特徴的だ。
デフォルトの武器は使わず、ユーザーパーを使うことでより強化されるから、この機体でルルイエ侵攻作戦に参加したならば火力と防御面の強化で被弾はしないで済むだろう。
「ありがとうございます。早速調整して来ます」
沙耶は強くなれる見通しが立ったため、ご機嫌な様子で格納庫に向かって行った。
次は晶のゴーレムについてだが、晶の場合はネビロスとサルガタナスを合成すればアスタロトが完成するため、ゴーレムを強化する道筋だけはすぐに決まっていた。
考えるべきは晶が今使っている武器のウィンダムの強化だ。
沙耶のユーザーパーと違い、ウィンダムには他の武器と合成することで強化できる組み合わせがいくつかあった。
どの組み合わせによって完成する武器もそこそこ強いが、晶にとって最良の選択となるように考える必要があったため、晶の方が沙耶の時よりも時間がかかった。
「晶が優先する基準で決めてくれ。火力を上げるか使える武器の種類を増やすか」
「火力を上げたいな。僕は恭介君みたいに器用じゃないからね」
「俺のことは置いとけ。火力ならカタルシスだな。ウィンダムとバリアントキャノンを合成すればできる」
「なるほど。それじゃ、僕も調整して来るよ」
晶も恭介のアドバイスを聞き、悩むことなくそれに従うことにして格納庫に向かって行った。
「沙耶も晶も俺の意見をそのまま採用するみたいだが、本当にそれで良いんだろうか?」
「良いと思うからすぐに動いたんだよ。恭介さんはゴーレムの第一人者だもん」
「第一人者はGBO制作陣だと思うから、俺はせいぜいゴーレムマニアじゃないか?」
「誰がどう見ても文句の付け所のない戦果を挙げてるんだから、第一人者で良いんだよ」
謙遜する恭介だが、麗華に褒められて恥ずかしそうに笑った。
実際のところ、恭介は日本のゴーレム制作プロジェクトが今すぐにでも日本に来てほしいパイロットランキングで堂々の1位を飾っている。
好きこそものの上手なれなんて言葉があるように、恭介はゴーレムが好きでのめり込んだからこそ今の実力を手にしている。
そこにギフトの力まで加わったら、ルーナだってその発言を無視できないぐらいの力があるのだから、是非ともそんな恭介の助言を欲しいと考えるのは当然である。
それはさておき、恭介と麗華は沙耶達が調整した後のゴーレムを見るべく格納庫に移動した。
ゴーレムを調整した後、わざわざ沙耶と晶が戻って来る必要もないので、自ら格納庫に見に行ったのだ。
格納庫では沙耶達の作業が既に終わっていた。
恭介達が格納庫に入った時、沙耶のガイアドレイクはレイダードレイクに変わっており、晶のサルガタナスもカタルシスを装備したアスタロトに変化していた。
(自分で言っといてどうかと思うけど、アスタロトとカタルシスの組み合わせってエグいな)
どうして恭介がそのように思ったのかと言えば、アスタロトは自身に何かが近づけば近づく程そのスピードの落ちるフィールドを展開できるので、自身が装備する銃を撃てば逆に発射後のタイミングで銃弾が加速するからだ。
カタルシスは実弾とビーム、砲撃、ペリュトンのゴースト、ミサイルを選択して撃てる複合銃であり、敵を抹殺して清浄な世界を作るという意味での
コックピットから2人が出て来た時、どちらも満足した表情になっていた。
「兄さん、アドバイスを下さってありがとうございました」
「ありがとね、恭介君。午後になったら早速試して来るから見ててほしいな」
「わかってる。ちゃんと見届けるさ」
恭介もアドバイスしたからそれで終わりだなんて思っていないから、元々午後は2人の試運転の様子を見守るつもりだった。
格納庫のモニターにはルーナが映っており、ハンカチを噛んで悔しそうにしていた。
『私にもアドバイスを求めに来てほしかった。私が彼等を育てたって言いたかった』
その声は麗華の耳に届いていたけれど、聞こえなかったふりをして恭介達と一緒に食堂に移動した。
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