第206話 精神が肉体を凌駕してる…。ヤンデレって面白っ!

 時間は少し遡り、麗華がコロシアム5連戦に挑んでいる頃、明日奈はレース会場からコロシアムに移動して来た。


『明日奈ちゃん、レース2連戦したんだから休んだ方が良いんじゃない?』


「煩い」


 先程まで明日奈はマグマ&ウェーブとクレイジーサーキットを連続して評価Sを取得したにもかかわらず、ほとんど休まずにコロシアムに来たのだ。


 フォルフォルだって育成中に明日奈が潰れては困るから、休憩を促すのは当然である。


『別に挑むなとは言ってないよ。ただ、休憩しないで挑んだって最高のパフォーマンスはできないよ?』


「煩い! トゥモロー様を振り向かせるには休んでる時間が惜しいの!」


『略奪愛かー。私、ワクワクするよ』


「私が強くなってカレーのオマケに騙されてるトゥモロー様の目を覚まさせるのよ。ウフフ」


『精神が肉体を凌駕してる…。ヤンデレって面白っ!』


 ブツブツと言って笑う明日奈は、10人いれば10人は狂気が宿っていると判断するぐらい危ない目をしていた。


 フォルフォルは基本的にゲスであり、恭介と麗華のラブコメも良いけど三角関係による略奪もありとか考えているため、この状況を楽しんでいる。


『それで、コロシアム5連戦でもするの?』


「コロシアムはファーストキルボーナスが期待できないから、バトルメモリーに挑むわ。コロニーフォールが良いかしら」


『コロニーフォールね。了解』


 入場門が開いてすぐに明日奈はナグルファルを操縦し、その中に入っていく。


 観察して楽しんでいるものの、フォルフォルが明日奈の体調を考慮して制限時間をこっそり2時間から1時間に削った短縮版にした。


 明日奈に文句を言われたとしても、どうとでも論破できる自信があったからそうしたのだ。


 制限時間以外にも、コロニーフォールのルールは変わっている。


 例えば、モンスターはタワー6~10階層に出たもののみでイベント専用アイテムを落とすという部分はモンスターは挑戦者が出会った全てのモンスターのみで、イベント専用アイテムを落とすという風に変わっている。


『コロニーフォール、始め!』


 移動した時にフォルフォルのアナウンスが聞こえたが、そこは戦争によって滅んだことで廃棄された小惑星コロニーだった。


 ナグルファルのモニターの右上には、大気圏突入までの時間がカウントダウン形式で表示されている。


 メイン部分にはミッション進捗率とマップ、複数のアイコンが映し出されており、必要な情報は全てモニターに出ていた。


 中心にある白三角アイコンが自分であり、明日奈は小惑星コロニーの東端にいることがわかった。


 また、黒丸アイコンのモンスターの群れが押し寄せて来たことを知り、明日奈は臨戦態勢に移行する。


「私のアイテムになりたいモンスターは何かしら?」


 そう口にした声はとても冷たく、どんなモンスターが来ても容赦なくる気満々である。


 最初に明日奈を狙ってやって来たのはナーガの群れだった。


「斬り甲斐がありそうな群れね」


 それだけ言ってから、明日奈は九頭蛇剣ヒュドラソードとソードウイングを使ってナーガの群れをバラバラにしていく。


 その中心にはナーガウォーリアもいたけれど、雑魚モブと変わらない肉片に変えられてしまった。


 ナーガの群れを倒した結果、明日奈は大量のドリルを手に入れた。


 このドリルは地面に三脚を立ててから地面に打ち込む装置であり、明日奈は等間隔に設置して次々に起動させる。


 ナーガはタワー探索において23階層のモンスターということもあり、第2回代理戦争で使われたドリルよりも出力が高かった。


  そのおかげで反対側まで穴が貫通して生じた亀裂もどんどん広がっていき、小惑星コロニーの東端が割れて大気圏に突入するベース部分から分離した。


 ミッションが進んだことにより、モニターに表示される進捗率が0%から11%になった。


「ふーん。悪くないわね。ナーガ、もっと出て来なさいよ」


 一気に11%も進捗率が伸びたから、強力なビーム兵器のない明日奈にとっては予想外の進展と言える。


 だからこそ、ドリルをドロップするナーガに出て来いと言った訳だ。


 だがちょっと待ってほしい。


 こういう時に限って仕事をするのが物欲センサーというものである。


 西に向かって進む明日奈が見つけたのは、他国のゴーレム同士の戦闘している場面だった。


 (私の記録を邪魔する者は消して良し)


 一度決めてしまえば明日奈に迷いはない。


「1機壊してはトゥモロー様にお祈り。2機壊してはトゥモロー様にお祈り」


『狂気オブ狂気じゃないか』


 モニターの端の方では、フォルフォルは明日奈の唱える言葉を聞いて戦慄していた。


 邪魔者を消した後、明日奈はクレタブルに遭遇した。


 無重力のせいで地面に足が着いておらず、じたばたと足を動かす様は滑稽と言える。


「牛は解体して出荷よ」


 九頭蛇剣ヒュドラソードでサイコロカットしてしまえば、クレタブルのドロップアイテムとして巨大爆弾の絵が描かれたカードがナグルファルのサイドポケットに転送されて来た。


 都合が良いことに、先程見つけたゴーレム達の戦場には罅割れた所もあったので、明日奈はそこに巨大爆弾をセットして離れてから使った。


 派手な爆発音が生じ、小惑星コロニーが広範囲にわたって削り取られていた。


 結果として、ナグルファルのモニターに表示される進捗率が15%から23%になった。


 4%分だけ別のゴーレムが働いているようだが、明日奈は既に19%分働いていることを考えれば微々たる成果と言えよう。


 爆発が派手だったせいか、爆心地に向かってあちこちからモンスターが集まって来る。


 (ワイバーンの群れとクラーケン、メテオビーズが来たようね)


 これだけのモンスターが集まってしまうと、パンゲアのクルーならば絶望する者もいるだろう。


 しかし、キレッキレな状態の明日奈ならばこれぐらいの状況には動じない。


 メテオビーズの攻撃をクラーケンに当たるよう誘導し、怒ったクラーケンがメテオビーズに反撃すればある程度放置して戦わせておけば良い。


 その間にワイバーンの群れを薙ぎ払い、明日奈はドロップアイテムの回収に勤しむ。


 4つの属性の個体がいるワイバーンから手に入るアイテムは、ランダムカードと呼ばれるガチャアイテムだ。


 使うことで他のモンスターを倒した時に手に入る専用アイテムに変わるから、明日奈はガンガン使っていく。


 それにより、ウォーターカッターが5つとウインドブースターが4つ、巨大爆弾とドリルが3つずつという結果になった。


 豪快にアイテムを使っていくことで、進捗率が60%まで進んだ。


 アイテムを使った小惑星コロニーの破壊活動に巻き込まれ、ダメージを負っていたクラーケンとメテオビーズも虫の息になっていたから、明日奈はそれらもきっちり倒してみせる。


 (グラップテンタクルとメテオフォールね。良いアイテムじゃないの)


 突如現れた巨大な触手が惑星を握るグラップテンタクルに加え、隕石を召喚して小惑星コロニーにぶつけるメテオフォールが手に入り、明日奈の笑みは悪魔の逸れに引けを取らないものになった。


 早速、メテオフォールから使ってみたところ、猛スピードの隕石が小惑星コロニーにぶつかって体積が減るだけでなく、小惑星コロニー全体に罅が入った。


 そこにグラップテンタクルを使えば、小惑星コロニーが砕けてコロニーフォールは終了する。


『終了だよ! 脱出してからスコア発表に移るね!』


 フォルフォルがコロニーフォール終了を宣言すると、ナグルファルはコロシアムの外に転送された。


 その後すぐにバトルスコアがナグルファルのモニターに表示される。



-----------------------------------------

バトルスコア(バトルメモリー・コロニーフォール)

-----------------------------------------

貢献率:86%

モンスター討伐数:109体

ゴーレム撃墜数:6機

協調性:◎

-----------------------------------------

総合評価:S

-----------------------------------------

報酬:資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

   100万ゴールド

ぶっちぎりボーナス:ギフトレベルアップチケットⅣ

ゴーレム撃墜ボーナス:黒金剛アダマンタイト×80

ギフト:偶像崇拝アイドルファンLv16(stay)

コメント:私はとんでもない化け物を育ててしまったのかもしれない

-----------------------------------------



「誰が化け物よ。そんなことよりもギフトレベルアップチケットⅣね。これでギフトレベルが20まで上がるわ」


 ギフトレベルが上がれば上がる程、恭介と同じ戦場で戦える可能性が上がる。


 即死しないパイロットはそれだけで貴重なのだ。


 明日奈が格納庫に戻った時、恭介と麗奈の姿はそこになかったが、ハーロットの武器が強化されていることに気づいてしまった。


 むしゃくしゃした明日奈はそのままトレーニングルームに向かい、ハイライトのない目でサンドバッグをひたすら殴っていた姿が複数のパイロットに目撃された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る