第129話 事実を事実として口にできない世の中に絶望した!
麗華と沙耶がコロシアムに着いたら、フォルフォルが2人のゴーレムのモニターに現れる。
『今日も君達が組んで戦うんだね。仲良しさんだ』
「そうね。じゃあ、入場門を開きなさい。ギルタブリルとミルメコレオ、ハンババの3連戦よ」
『麗華ちゃんの対応が冷たい件について』
「私と恭介さんの混浴を監視してるような変態に優しくする訳ないでしょ」
麗華が冷ややかな視線を向けて言えば、フォルフォルは心外だと言わんばかりの表情で応じる。
『別に麗華ちゃんの体目当てじゃないからね?』
『では、兄さんの体目当てですか。それもどうかと思いますが』
『違うってば。私は混浴中におっぱじめてくれないかなって思いながら見てるだけだよ』
「最低ね。塵すら残さず消えれば良いのに」
『クズオブクズですね。最低です』
麗華と沙耶からツンドラ気候を想起させる視線を向けられてしまい、フォルフォルはやれやれと首を振る。
「君達の蔑む視線は私の業界ではご褒美ではないんだ。またね」
入場門を開いたフォルフォルはモニターから姿を消したため、麗華達は入場門を通ってコロシアムの中に入った。
コロシアムの中心には
蠍の殻は緑色であり、人間の頭部から生えた髪も緑であることから風属性であることが一目でわかる。
「沙耶さん、ここは私がメインでやります」
『わかりました』
沙耶は昨日、ショップチャンネルで新しい設計図を購入した。
その設計図はデルピュネと呼ばれる竜人型ゴーレムのものであり、尻尾が蛇腹剣になっている。
デルピュネを構成する鉱物マテリアルも
麗華の
「むん!」
飛んでいるセラフに対し、尻尾から針を弾丸のように飛ばして応戦するギルタブリルだが、セラフの方が攻撃手段は多い上にギルタブリルの攻撃はセラフのスペックであれば躱せる。
麗華が尻尾の根本に銃弾を集中させて千切れてしまえば、ギルタブリルに遠距離攻撃手段はなくなる。
「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一方的にギルタブリルがダメージを受け続けたストレスに発狂するも、攻撃手段がないのでギルタブリルはそのまま力尽きた。
ギルタブリルの体が光の粒子になって消えると同時に、今度は上半身が獅子で下半身が蟻のモンスターが現れる。
このモンスターがミルメコレオであり、全身が黄色いことから土属性モンスターであることが伺える。
『次は私も戦います』
「お願いします」
正直なことを言えば、風属性のセラフだけで倒した方が早いけれど、そうすると沙耶が戦う回数が減ってしまう。
それではデルピュネのテストができないから、麗華は沙耶にも戦ってもらうのだ。
「ガォォォォォ!」
ミルメコレオが吠えるのと同時にその足元から大量の砂が噴き出し、それがミルメコレオを形成してセラフを追いかける。
砂の分身でセラフを足止めし、その間に自身はデルピュネを倒すつもりのようだ。
ミルメコレオはデルピュネに接近し、獅子の爪でデルピュネを切り裂こうとする。
『甘いですね』
沙耶は斜め後ろに飛んで回避しつつ、尻尾の蛇腹剣を伸ばしてミルメコレオの繰り出した右前脚を斬る。
伸ばした蛇腹剣を元に戻す際に引いて斬るため、同じ部位が何度も攻撃されて切断できた訳だ。
「ガォン!?」
想定外の攻撃で右前脚を斬られてしまい、ミルメコレオは驚いた。
その驚きと痛みで砂の分身のコントロールが疎かになり、砂の分身は地面にドサリと音を立てて落ちた。
フリーになった麗華は、隙だらけのミルメコレオに
「あっ、やっちゃった」
『
「煩い」
『事実を事実として口にできない世の中に絶望した!』
それだけ言い捨ててフォルフォルはモニターから消えた。
ミルメコレオの体が消えれば、それと入れ替わるようにしてコロシアムの中央には全身が赤い合成巨人が現れた。
ハンババと呼ばれるこのモンスターは、頭部は牛で両腕は獅子の前脚、下半身はハゲワシであり、尻尾から蛇が生えている。
「沙耶さん、この戦いはサポートに回ります」
『了解です。援護をお願いします』
火属性のハンババに対して風属性のセラフは相性が悪い。
無論、セラフのスペックを考慮すれば倒すことも十分可能だが、そこは沙耶の見せ場を作るために麗華がサポートに徹する訳である。
「モオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!」
「沙耶さん、高度を上げて下さい!」
『はい!』
麗華と沙耶がハンババから離れて高度を上げたのは、その咆哮と同時にコロシアムが炎に包まれたからだ。
麗華がその攻撃を避けるのは勿論のことだが、沙耶のデルピュネだってわざわざダメージを受ける必要はない。
ハンババが炎を操ってセラフとデルピュネを攻撃し始める。
『ギフト発動』
沙耶は
勿論、躱すだけではハンババに勝てないから、尻尾の蛇腹剣でハンババの尻尾を斬り落とした。
「モオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!」
ハンババは尻尾を切断された痛みで叫び、炎で狙うのを沙耶の乗るデルピュネだけに絞った。
「私を無視するとは良い度胸ね」
麗華は
相性が悪い風属性の弾丸でも、
沙耶は見通した未来が終わるまでにハンババの2本の角を切断し、ハンババを更にイライラさせる。
「隙あり」
「モオ゛!?」
ハンババの背後から麗華がビームを放ち、それが命中してハンババは前に倒れ込んだ。
『これで終わりです』
ハンババの体が光になって消えて3連戦が終わったため、コロシアムバトルスコアが麗華達のゴーレムのモニターに表示された。
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コロシアムバトルスコア(マルチプレイ)
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討伐対象:①ギルタブリル②ミルメコレオ
③ハンババ
部位破壊:①尻尾②前脚(右)③角(左右)/尻尾
討伐タイム:27分23秒
協調性:◎
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総合評価:S
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報酬:60万ゴールド
資源カード(食料)100×6枚
資源カード(素材)100×6枚
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×36
ギフト:
コメント:ホームに帰ったら重大発表があるよ
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「重大発表なんて勿体ぶらないでよね」
『恭介君と一緒に訊きたいと思って配慮したのに』
「ふーん。少なくとも私だけじゃなくて恭介さんにも関係あるのね」
『しまった!』
情報を引き出されたフォルフォルはうっかりしていた風を装っているが、実際のところはバレても良いと思っているから何も問題はなかった。
『麗華さん、
「良かったです。フォルフォルから重大発表があるらしいので、ホームに戻りましょう」
『わかりました』
麗華達は格納庫に戻って恭介と合流した。
「お疲れ様。沙耶のテストが無事に終わって良かったよ」
「私がついてるんだもの。大丈夫に決まってるよ」
「そうだな。麗華のおかげだ。ありがとう」
「エヘヘ」
『ラブコメ中失礼するよ。君達に重大発表があるんだ』
突然フォルフォルが格納庫のモニターに現れ、ニヤニヤしながらそう言った。
「重大発表? どうせ第3回デスゲームが明日から開催とか言うだけだろ?」
『…恭介君、わかってても言わないのがお約束じゃない?』
「フォルフォルの都合なんざ知らん。それで、他に何か連絡事項はないのか?」
『参加国が半分になったよ。C国とR国、IN国、BR国、EG国にはデスゲームの舞台に相応しいパイロットが残ってないってそれらの国の担当が参加辞退を申し出たからね』
恭介に自分のノリを押し付けるのは難しいと判断し、フォルフォルはおとなしく連絡事項を伝えた。
麗華も気になったことがあって質問する。
「ねえ、辞退した国はGBOのサーバーがない国と同じようになるの?」
『その通りだよ。限りある資源を巡って醜い争いをせずに済むんだから、活動を停止するぐらい別に構わないでしょ?』
「私からも質問です。3期パイロットは何人ですか?」
『沙耶ちゃんも良い質問するね。日本は4人、F国は7人、それ以外の国は8人だよ。これ以上言うとネタバレになってつまらないから、後は明日を楽しみに待っててね。バイバイ』
言いたいことを言ってフォルフォルがモニターから消えたため、とりあえず恭介達は昼食を取りながら作戦会議をすることにした。
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