第292話 初手ぶっぱは麗華ちゃんの嗜みだよね
瑞穂の格納庫に戻って来た恭介は、早速レースの報酬で手に入れた武器を合成していく。
その結果、ウェイルスカイとインビジブルトゥルース、アンヒールドスカーとコンフューズドガイアの組み合わせで合成作業が行われた。
ウェイルスカイとインビジブルトゥルースを合成してできたのは、ビヨンドカオスと呼ばれる武器だった。
ビヨンドロマンと同様にロマン武器ならどの武器にも自在に変形可能であり、ビヨンドロマンとの違いは火力よりも技巧を優先したところである。
つまり、力のビヨンドロマンと技のビヨンドカオスという訳だ。
アンヒールドスカーとコンフューズドガイアを合成してできたのは、ライトニングメナスと呼ばれる変形武器だ。
ビームライフルとビームキャノン、
スペックで劣る者がライトニングメナスによる攻撃に当たれば、その電気エネルギーによって生物も非生物も一部制御が不能になるから、まともに喰らうのは避けたいだろう。
合成作業を終えて恭介がネメシスのコックピットから出て来れば、麗華が微笑みながら恭介を待っていた。
「お疲れ様。ルルイエメモリアルの最後はすごいことになってたね」
「まあな。殺さずともゴールできる自信があったからやったけど、もう一度やりたいとは思わないな」
「だよね。でも、そのおかげでソリチュードとネメシスの武器を強化できたみたいだね」
「ああ。これでアンチノミーを使用禁止にされてもなんとかなる」
その言葉を聞いて、麗華はモニターに目の笑っていない笑みを向ける。
「ルーナ、どういうこと? 縛りはギフト使用禁止だけじゃなかったの?」
『新人戦のレベルが低かったから、恭介君にはギフト使用禁止だけじゃ物足りないと思って縛りを追加してみたんだ。でも、私は悪くない。提案したのは私でも、実行に移したのは恭介君なんだから』
「恭介さんが乗ると思って提案してる時点で悪意があるわ。恭介さんもあまり無理しないでね?」
「心配かけてすまん。やれなくはないと思ったし、ナイアルラトホテップと戦うならあらゆる状況を想定しておかないとと思ってな」
恭介は上位単一個体として残っているのがナイアルラトホテップだけだとルーナから聞かされていたため、ある程度自分に負荷をかけたトレーニングもしておかなければいざという時に困ると思い、いつもよりも縛りを多くしたのだ。
決して恭介がスリルにそそられてやった訳ではないとわかり、麗華は恭介の言い分に納得した。
「今度は私がレースして来るね」
「気を付けてな」
「うん」
麗華は恭介に返事をしてからヴォイドに乗り込み、レース会場に向かった。
その直後にヴォイドのモニターにルーナが現れる。
『スパイラルパレスと新人戦のコースのどちらに挑戦する?』
「スパイラルパレスに挑戦するわ」
『麗華ちゃんも縛り増やす?』
「条件次第ね」
自分は恭介と比べてレースの技能では劣るから、麗華は条件が酷いものなら普通の縛りプレイだけにしたいと考えている。
正直なところ、2周目を走り終えるまでに全員を周回遅れにするのも大変だから、これ以上エグい条件は上乗せしたくないのだ。
『そこまで難しい条件じゃないよ。自分以外の全ての敵を走行不能にするって条件だから、2周目を走り終えるまでに全員周回遅れにするなら、方向性はあまり変わらないんじゃない?』
「私がレースで敵を倒すと野蛮とか言うくせに、この縛りを用意するのはどうかと思うの」
『細かいことは気にしちゃ駄目だよ。ギフトを使用禁止にしてないんだから良いじゃないか。はい、入場門を開いたよ』
ルーナは麗華にジト目を向けられて自身が劣勢であるとわかっているから、入場門を開いてさっさと麗華をスパイラルパレスに送り込むことにした。
麗華も早くギフトレベルを50にしたいから、これ以上ルーナに文句を言わずにヴォイドを操縦してスパイラルパレスに移動した。
スパイラルパレスのスタート地点には既に7機のゴーレムが位置に着いており、ヴォイドが位置に着くのを待っている。
配置は1位から順に風属性のプライドルシファー、火属性のラースサタン、水属性のエンヴィーレヴィアタン、土属性のスロウスベルフェゴール、火属性のグリードマモン、風属性のグラトニーベルゼブブ、水属性のメランコリーアスタロト、麗華のヴォイドという順番である。
麗華が位置に着いたことでレース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1,GO!』
ヴォイドが信号をオンにすることにより、ヴォイド以外のゴーレムがまともに操縦できなくなった。
麗華はスタートダッシュを決めつつ、インジャスティスをガトリングガンに変形させて発射し、メランコリーアスタロトとグラトニーベルゼブブ、ラースサタン、プライドルシファーの4機をスタートで撃墜させた。
『初手ぶっぱは麗華ちゃんの嗜みだよね』
「だ ま れ」
『あっはい』
これ以上余計なことを喋るなという圧に負け、ルーナはおとなしくモニターから消えた。
厄介な4機を撃墜して1位になり、麗華は生き残った2~4位の争いを放置してシグルドリーヴァに乗り換えて進む。
スパイラルパレスは螺旋状のコースをひたすら進むしかないから、三半規管が弱いとそれだけでまともに走れない。
麗華も恭介と同様にこれまでのゴーレム操作で三半規管もしっかり鍛えられていたので、特に不調になることもなく先に進むことができた。
シグルドリーヴァが半周した辺りで、最初のギミックとして勢いの強い逆風が吹き始めた。
逆風が強くても、シグルドリーヴァはドライザーに次ぐスピードで動けるから、恭介のようにドリルで空気抵抗をなくさずともそのまま飛んで行ける。
逆風はどんどん強まっていったが、麗華が2周目に突入することでパタリと止まり、その代わりにコースの天井と地面の蓋が一斉に開いてランダムにビームが放たれるようになった。
ビームは何処を飛んでいても発射されるため、運が悪いと進んでいる真下や真正面にビームが発射されてダメージを負ってしまう。
半周してから少し進んだ地点で、グリードマモンとスロウスベルフェゴールがボロボロの状態で交戦中だった。
(悪いけど両方仕留めさせてもらうわ)
麗華は全武装で一斉掃射して2機を撃墜し、素早く
スパイラルパレスは直線コースがほとんどないから、エンヴィーレヴィアタンを狙撃するのは難易度が高い。
しかし、やらなければ縛りプレイの条件を達成できないから、麗華はアルテマバヨネットをホーミングランチャーに変形させて準備を整える。
「ギフト発動」
絶対に仕留めなければならないから、麗華はマイノグーラ戦での反省もあって300万ゴールドをコストに
ただ仕留めるだけなら300万ゴールドも要らないのだが、エンヴィーレヴィアタンは翼から展開したエネルギーフィールドは一定以上の火力がないとエネルギーを吸収して自身の攻撃に任意のタイミングで上乗せできるから、高火力の一撃で仕留めなければならないのだ。
その一撃がエンヴィーレヴィアタンのエネルギーフィールドを突き破り、そのままエンヴィーレヴィアタンを爆散させた。
これで2つの縛りをクリアできたため、麗華は安心して3周目に入れた。
3周目にはブランスレイヤーとアサルトノワールが邪魔しに来たが、その2機も返り討ちにして麗華はゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂のスナイプクイーン、福神漬け&シグルドリーヴァだぁぁぁぁぁ!』
麗華はスパイラルパレスを速やかに脱出し、モニターに映し出されたレーススコアをチェックする。
-----------------------------------------
レーススコア(ソロプレイ・スパイラルパレス)
-----------------------------------------
走行タイム:42分48秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:21回
他パイロット周回遅れ人数:7人
-----------------------------------------
総合評価:S
-----------------------------------------
報酬:資源カード(食料)100×15枚
資源カード(素材)100×15枚
150万ゴールド
全滅ボーナス:魔石4種セット×100
ぶっちぎりボーナス:武器合成キット
超ぶっちぎりボーナス:ブリッツトンファー
デイリークエストボーナス:スケープゴートチケット
ギフト:
コメント:ここでギフトレベルが2つ上がるとか金遣いが荒いね
-----------------------------------------
(好きで金遣いが荒い訳じゃないのに)
ルーナのコメントにムッとした麗華は、瑞穂の格納庫に戻って恭介に甘えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます