第31章 ドリームランド侵攻作戦

第301話 目には目を歯には歯を

 恭介達が瑞穂に来て66日目、沙耶と晶が帰艦してから瑞穂は高天原を出航してハイパードライブを始めた。


 その理由としては、ドリームランドにいるナイアルラトホテップから高天原に挑戦状が叩きつけられたからである。


 挑戦状は宇宙空間に3Dホログラムで映し出されたが、その内容は瑞穂がドリームランドに攻め込んで来なければ、暇過ぎて地球を消滅しに行くというものだった。


 ルーナは10ある内の9つの分身を解除して自身の力を強めたけれど、ナイアルラトホテップを相手に慢心はいけないと判断して恭介達にドリームランド侵攻作戦を提示した。


 3期パイロットがスケープゴートチケットを使わされた以上、やられっ放しでいるのは性に合わないから恭介達もルーナの作戦に乗って高天原を出発した訳だ。


 ドリームランドに到着するのは明日だから、恭介はルーナが新しく用意したコンテンツに挑むべくアンチノミーに乗ってコロシアムに来た。


「ルーナ、今日はアンチノミーに乗って来て良いってどういうことだ?」


『新しいコンテンツの縛りがギフト使用禁止だけだからだよ』


「ということは、ルーナ的に難易度が高いのか」


『私的にってどういうことかな? かな?』


 恭介の発言にムッとしたらしく、ルーナは言いたいことがあるならはっきり言ってみろと言外に告げた。


 ルーナがその気ならば恭介に遠慮する気はないので、ストレートに言うことにした。


「ほら、ルーナの難しくしたって大して難しくないから」


『ほほう、言ってしまったね恭介君? 今から挑戦する亡国脱出は本気の本気で難しいからね。辛くてうっかりギフトを使っちゃわないように気を付けてね』


「ハードルを上げ過ぎじゃないか? これでそこまで苦労せずに俺がクリアしたら恥ずかしいのはルーナだぞ?」


 心配するような表情で恭介が言えば、モニターに映るルーナは地団太を踏む。


『ムキーッ、恭介君の意地悪! 痛い目に遭っても知らないんだからね! はい、入場門を開いたよ!』


「やりがいのあるコンテンツであるように期待にしておくよ」


 恭介はルーナとの会話を切り上げ、アンチノミーを操縦して入場門の中に進んだ。


 入場門の先には日本の横須賀基地そっくりな場所があった。


『亡国脱出、開始!』


 ルーナのアナウンスが聞こえた直後、アンチノミーのモニターにはフィールドを脱出するまでのカウントダウンと基地の損壊率並びに自分と敵のアイコンが表示された。


 (敵のアイコンだらけなんだが…)


 自分のアイコンは白く、敵のアイコンは赤くモニターに映る。


 モニターは赤いアイコンだらけであり、アンチノミーの周囲には白いゴーレム軍団がいて一斉に恭介に攻撃し始める。


 白いゴーレム軍団はざっと見た限りでは、ゲヘナキーパーとブランスレイヤーばかりである。


 亡国脱出は敵のゴーレム軍団にほとんど陥落させられた国で30分生き残りつつ、基地のカタパルトを守って30分後にそれを使って宇宙に脱出すればクリアできる。


 恭介はアンチノミーのXの翼の武装に加え、腰の両側にある4つのビットも使って敵の数を減らしていく。


 (敵の数が多過ぎて面倒だけど、これだけで済むなら大したことない)


 そう思えるからこそ、恭介はルーナがまだ敵戦力を出し惜しみしていると考えた。


 この程度で自分を苦戦させられると思っているなら、それはルーナの頭がお花畑としか言いようがないからである。


 実際、ゲヘナキーパーとブランスレイヤーの数が減って来たところで違うゴーレムが現れた。


 それはコロシアムのマルチプレイ40戦目に出て来るブランカイザーに加え、恭介が初めて見るゴーレムだった。


 モノアイに角のようなアンテナがある頭部を持ち、両腕がガトリングガンで背中には舵輪のようなフライトユニットを背負っている。


『ブランカイザーと一緒に現れたのはホワイトルインだよ。スペックが同程度の2機に対し、カタパルトを守りながら1人で立ち向かってね』


「問題ない」


 ルーナがホワイトルインについて簡単な説明をした時、恭介は既に動き出していてビヨンドロマンをホーミングランチャーに変えてブランカイザーを集中攻撃していた。


 ブランカイザーが逃げるコースを予測し、存在理砲レゾンテートルを放てばブランカイザーはビームの挟撃によって爆散した。


 そうなれば、敵はホワイトルインだけになる。


 ブランカイザーがやられそうだと判断し、恭介に対して両腕のガトリングガンからビームを放つだけでなく、背中の舵輪のようなフライトユニットからビットを射出し、ホワイトルインは恭介のことを追い詰めようとした。


 しかし、恭介はそれらの攻撃を遅く感じていた。


 (密度が足りないな。これなら躱せる)


 全ての攻撃を躱しつつ、ホーミングランチャーを連射してまずは順番にビットから撃ち落していった。


 そうすることでホワイトルインの攻撃が両腕のガトリングガンだけになり、恭介は乱射されるビームを躱しながら確実に近付き、悪魔の翼の蛇腹剣でホワイトルインの両腕を切断してみせた。


 背中のフライトユニットと両腕を使えなくされれば、ホワイトルインにまともな攻撃手段はない。


 それゆえ、ホワイトルインは恭介との間に広がる差を超えられないと判断したのか、自爆という傍迷惑な手段を選んだ。


 いやらしいことに、自爆の被害は大きくて損壊率が一気に20%に到達してしまった。


 自爆するとわかって恭介はホワイトルインから離れたため被害は受けなかったが、あともう少しの所でカタパルトの稼働に支障が出たので、下手したら脱出できない可能性があったと言えよう。


 (カタパルトから付かず離れずの位置での戦闘を維持するのが肝か)


 モニターのカウントダウンでは、カタパルトが使用可能になるまで残り5分と表示されている。


 ホワイトルインの自爆をやり過ごしてホッとした時、アンチノミーのセンサーがビームによる攻撃を恭介に告げた。


 それを最低限の動きで躱した時、恭介の視界にはブランカイザーとホワイトルインよりもスペックの高そうなゴーレムがいた。


 (なるほど。歪認識鎧グノーシスと同じ機能があるんだな)


 目の前にいるゴーレムには、ヤルダバオト専用兵装ユニットの歪認識鎧グノーシスと同じく背景に同化できる機能があると理解し、恭介はゴーレムチェンジャーを使ってヤルダバオトに乗り換える。


 (目には目を歯には歯を)


 そんな風に思って恭介も背景と同化すれば、今度は姿を現したゴーレムが困惑する。


 いきなり攻撃していたゴーレムが別の機体に変わり、それどころか姿を消したら困惑するに決まっている。


 新しく現れたゴーレムの見た目はX型の翼を生やし、両手に銃剣、両脚のつま先は剣になっている。


 敵の背後に回り込み、恭介はプロヴィデンスとゲルプスティグマを合成して手に入れたドグマをビームキャノンに変形させ、背景との同化を解除した瞬間に発射した。


 ヤルダバオトが翼から動きを鈍らせる粉も出していたため、思うように回避できなかった敵はあっけなく爆散した。


『そんなっ、ホロウビアンカが!?』


「30分経ったか。カタパルトで脱出しよう」


 ショックを受けているルーナを放置して、恭介はヤルダバオトをカタパルトに乗せた。


 その直後にヤルダバオトはカタパルトから射出され、そのまま宇宙に離脱した。


 コンテンツをクリアしたことにより、ルーナのアナウンスが恭介に届く。


『はい、しゅーりょー』


 やる気のない声が聞こえると同時に、ヤルダバオトがコロシアム前に転送されてコックピットのモニターにはバトルスコアが表示される。



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バトルスコア(バトルメモリー・亡国脱出)

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脱出タイム:30分15秒

基地損壊率:20%

撃墜機体:ゲヘナキーパー20機

     ブランスレイヤー20機

     ブランカイザー1機

     ホワイトルイン1機

     ホロウビアンカ1機

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×15枚

   資源カード(素材)100×15枚

   150万ゴールド

ノーダメージボーナス:アップグレードパッチ(瑞穂)

ギフト無使用ボーナス:アップグレードパッチ(高天原)

最短記録ボーナス:アップグレードパッチ(ラミアス)

デイリークエストボーナス:魔石4種セット×100

ギフト:黒竜人機ドライザーLv50(stay)

コメント:負け犬の私は恭介君の靴でも舐めればよろしいでしょうか?

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「卑屈過ぎだろ」


『卑屈にもなるさ。ホワイトルインの自爆以外ピンチらしいピンチにもならなかったのに、最高難易度とか言っちゃった30分前の私を殴ってでも止めたいよ』


「とにかく靴は舐めなくて良いから。そんなことされたら面倒なことになる」


 自分の敗北を認めたルーナに対し、余計なことはするなと告げてから恭介は瑞穂の格納庫に戻った。

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