第302話 これが麗華ちゃんのやり方かぁぁぁぁぁ!
恭介が格納庫に戻って来た時、麗華の隣にはご機嫌なラミアスも待っていた。
「恭介さん、お疲れ様」
「恭介さん、お疲れ様でした。恭介さんのおかげでもっと皆さんのお役に立てるようになりました。お礼を申し上げます」
「そうか。アップグレードパッチは俺が貰った時には適用されてたのか」
「その通りです。恭介さんのおかげで私は今まで以上に人間らしくなり、瑞穂は機動力と武装の威力が向上し、高天原はより安全性と過ごしやすさが向上しました」
そう言ったラミアスの表情は確かに今までよりも豊かになっていたから、おそらくその通りなのだろう。
ラミアスと瑞穂、高天原のアップグレードがなされて良いことはあっても悪いことはない。
だからこそ、恭介もそれは良かったと頷いた。
「それじゃ、私も亡国脱出に挑んで来るね」
「気を付けてな。俺がクリアした分、ルーナがムキになって難易度を変えないとも限らないし」
『そんなことしないよ!』
「わかった。気を付けるね」
『無視しないでよぉ!』
格納庫のモニターにルーナが現れたが、麗華はそれをスルーして恭介に返事をした。
縛りプレイを持ちかけられるとは思ったが、そのまま挑めたらラッキーだと考えて麗華はシグルドリーヴァに乗り込んでコロシアムまで移動した。
「ルーナ、亡国脱出に挑むから入場門を開いて」
『はーい。今回の縛りはゴーレムチェンジャーの禁止だけだよ』
「ふーん、そう来るんだ。だったらこうするわ」
ルーナから縛りの条件を聞き、麗華はシグルドリーヴァからヴォイドに乗り換えた。
麗華が最も操縦しやすいのシグルドリーヴァだが、亡国脱出で出て来る敵はいずれもゴーレムであることを考えるとヴォイドの方が楽だと判断してのことだ。
ヴォイドにスペックで劣るゴーレムならば、信号を入れることで言うことを聞かなくなるのだから麗華がヴォイドを選んだのは至極当然である。
ルーナは麗華がヴォイドに乗り換えると思っていたから、それについて特に物申すことはなかった。
その代わりに重要な情報を麗華に伝える。
『麗華ちゃんがこれから挑むマップと恭介君が挑んだマップは違うからね』
「…それがルーナのやり方なのね」
『ちょっと待って。何か私のことを誤解してる気がするよ。元々、亡国脱出はルールこそ変わらないけどマップはランダムで変わる設定なのさ。ただし、前回と同じマップは出ないってだけだね』
「そう説明することで難易度調整をしてないって言いたいのよね。別に良いのよ。ルーナがそう言い張りたいならね」
麗華に煽られて最初はキョトンとしたが、すぐにルーナは苦笑し始める。
『麗華ちゃんが私を煽るようになるなんてね。恭介君に似て来たじゃないか』
「仲良し夫婦だもの。似たところが出て来ても何もおかしくないわ」
『うっ、この夫婦手強い』
ルーナがオーバーリアクションで仰け反るけれど、麗華は会話を切り上げてヴォイドを操縦し、ゲートの中に進んで行った。
入場門の先には、A国の不夜城近辺にあるとされる空軍基地にそっくりな場所があった。
『亡国脱出、開始!』
ルーナのアナウンスが聞こえた直後、ヴォイドのモニターにはフィールドを脱出するまでのカウントダウンと基地の損壊率並びに自分と敵のアイコンが表示された。
(敵がうじゃうじゃいるけどヴォイドの敵じゃないわ)
自分のアイコンは白く、敵のアイコンは赤くモニターに映る訳だが、ヴォイドのモニターには赤いアイコンばかり映っており、実際にヴォイドの周囲には黒いゴーレム軍団がいる。
黒いゴーレム軍団はざっと見た限りでは、ゲヘナキーパーとアサルトノワールばかりである。
崩壊の祖国で戦った2種類のゴーレム達は、いずれもヴォイドにスペックで劣っている。
それゆえ、ヴォイドが信号をオンにすればいかに群れていようとも麗華の敵にはなり得ない。
動かない敵を仕留めるだけの簡単な作業が終わったところで、ゲヘナキーパーともアサルトノワールとも違う2機のゴーレムが現れた。
片方は崩壊の祖国に現れたダークヴィランであり、もう片方はアザゼルに似たゴーレムだった。
『ダークヴィランは見たことあるよね。もう片方はブラックアザゼルだよ』
ブラックアザゼルは両腕が大砲、両脚がビームウィップに変形するだけでなく、機械飛龍形態にもなれる悪魔型ゴーレムである。
アザゼルとの違いは無属性であることに加え、両脚が
(1対2だろうと関係ないわ)
ダークヴィランもブラックアザゼルもヴォイドの信号を入れれば、動かなくなったのでスペックでヴォイドには敵わないのだろう。
麗華は動かない2機のゴーレムに対し、ガトリングガンに変形させたインジャスティスで攻撃して蜂の巣にした。
その様子を見てモニターに現れたルーナがシャウトする。
『これが麗華ちゃんのやり方かぁぁぁぁぁ!』
「ルーナ、煩い」
『あっはい』
麗華の声のトーンが冷え切っていたため、ルーナはおとなしくモニターから消えた。
蜂の巣になったダークヴィランとブラックアザゼルは爆散してしまい、ヴォイドの前には何も残らなかった。
ホワイトルインのように自爆する余裕もなかったから、基地損壊率は未だに0%のままだ。
この点だけ見れば、恭介の挑戦した時よりも順調に亡国脱出が進んでいると言えよう。
そんな時、ヴォイドの頭上からビームが放たれた。
「危ないわね」
『危ないって言う割にはあっさり躱したじゃん』
「当然よ。最後の1機は不意打ちで来ると思って警戒してたもの」
『恭介君見てるー? 奥さんがすっかり戦闘のプロになってるよー』
ルーナは麗華の鋭い読みに苦笑し、瑞穂で待機している恭介に向かって話した。
無論、コックピット内で喋っている内容は、
それはそれとして、最後に現れた1機はホロウビアンカと比べて明らかにハイスペックな黒いゴーレムだった。
コメットゲイザーの頭部とフライトユニットに加え、トリスタンの八角形のビットが周囲を周り、ネクサスによく似た四肢と胴体を有している。
コックピット下にはネクサスと同様に大砲があり、それ以外にも蛇腹剣を装備している。
『ネロカルネージだよ。最後の1機が現れるまで基地損壊率が0%だと現れるレアエネミーだね。やったじゃん』
「面倒な敵が出て来て喜ぶ神経してないから」
『そーなの? 恭介君ならこれぐらいないと温いって顔するけど』
「ルーナがそう思いたいならそうなんでしょうね」
ネロカルネージが2つのビットを使ってヴォイドを攻撃したから、麗華は会話を切り上げてそれに対処する。
ヴォイドの信号が効かないということは、スペック的に並んでいることを意味するから、ルーナと喋っている余裕なんてないのだ。
コックピット下の大砲による攻撃に備えつつ、麗華は2つのビットを破壊するべく、ガトリングガン形態のインジャスティスを乱射する。
単発で当たらないなら乱射すれば良いという考え方は、ネロカルネージを焦らせるには十分だった。
2つのビットを破壊されまいと慌ててコックピット下の大砲を撃つネロカルネージに対し、麗華は冷静に砲撃を避けてそれらを破壊した。
ビットがなければ追い込むような攻撃はできず、ネロカルネージは大砲を冷却している間に蛇腹剣でしか攻撃できない。
敵の蛇腹剣を蛇腹剣に変形させたインジャスティスで絡め取ったら、麗華は
「ギフト発動」
200万ゴールドをコストにギフトを発動し、ビームキャノン形態のインジャスティスから極太のビームを放てば、ネロカルネージのコックピットに当たってそのまま爆散した。
既に30分経過していたことから、麗華はヴォイドをカタパルトまで移動させてそのまま宇宙に離脱した。
コンテンツをクリアしたことにより、ルーナのアナウンスが麗華に届く。
『はい、終了』
アナウンスと同時に、ヴォイドがコロシアム前に転送されてコックピットのモニターにはバトルスコアが表示される。
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バトルスコア(バトルメモリー・亡国脱出)
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脱出タイム:31分7秒
基地損壊率:0%
撃墜機体:ゲヘナキーパー20機
アサルトノワール20機
ダークヴィラン1機
ブラックアザゼル1機
ネロカルネージ1機
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×15枚
資源カード(素材)100×15枚
150万ゴールド
ノーダメージボーナス:火力支援兵装ユニット
ギフト無使用ボーナス:防御支援兵装ユニット
デイリークエストボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:君達って実は人生2回目だったりしない?
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「そんな訳ないでしょうが」
ルーナのコメントに対し、麗華はバッサリと切り捨てて瑞穂の格納庫に戻った。
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