第273話 大盤振る舞いだ。召されな

 格納庫に戻って来た麗華は、ベースゴーレムに乗り換えて設計図を挿入して土属性のパラノイアに変更した。


 作業自体はすぐに終わったため、麗華がすぐにコックピットから出て来た。


「お疲れ様。てっきり麗華は縛りプレイなしかと思ったけど、そうじゃなかったみたいだな」


「うん。2周走り終わるまでに全員周回遅れにすれば良いって風に条件が変わったの」


「あぁ、なるほど。だから序盤で厄介な4機を優先して撃墜した訳だ」


「そうだよ。流石に私もスタートダッシュしながら全機落とすのは難しかったから、2周目までの間に周回遅れにできなさそうなゴーレムだけ先に倒したの」


 グローリアとドミネーター、アザゼル、リフレインは対戦した7機の内で厄介な機体だったから、麗華の判断は正しいと言えよう。


 恭介も借りに自分が麗華と同じ立場なら、同じ4機を攻撃しただろうと思って納得した。


「どうする? このまま宝探しの地下15階層に挑むか? 今のところ最下層がそこらしいけど」


「挑む。上手くいけば4機目のゴーレムを強化できそうだし」


「そうだな。じゃあ、行こう」


 話はまとまり、恭介と麗華はそれぞれアンチノミーとシグルドリーヴァに搭乗してタワーに向かった。


 昇降機に乗って現状の最下層である地下15階層に到着したが、そこは忘れられた神殿と表現すべき場所だった。


『サプライズミッション! 1時間以内にエキドナのティアラを奪え!』


『「げっ、エキドナ?」』


 ミッションが聞こえた時、恭介と麗華のリアクションはシンクロした。


 エキドナは口からモンスターを吐き出すように産み落とし、それに自分を守らせるモンスターだ。


 コロシアムのソロプレイで両者共に戦ったことがあるから、エキドナを相手にすることが面倒であることをよく理解している。


 地下15階層のノーマルミッションがなんだったのか気になるところではあるけれど、それを質問している時間すら惜しいから、恭介達は急いで先に進んだ。


 すぐに恭介達を出迎えるべく、ネメアズライオンとオルトロスが現れた。


「邪魔!」


 ビヨンドロマンをホーミングランチャーに変え、恭介がそれを放てばネメアズライオンとオルトロスは一瞬で胸部を撃ち抜かれて力尽きた。


『恭介さん、ハイペース過ぎない?』


「大丈夫だ。魔石なら大量にある。それよりも、エキドナの子供達に囲まれる方がずっと困る」


『そうだね。次は私もやるから』


「わかった」


 恭介だけに戦わせる訳にはいかないから、麗華が次は自分も戦うと意思表示をした。


 神殿は幸いなことに一本道だったが、その前方ではヒュドラが立ち塞がり2人の行く手を阻む。


『ここは私に任せて!』


 ゴーレムチェンジャーを使って恭介が機体を乗り換えるよりも先に、麗華が全武装を一斉に発射することでヒュドラの全ての首と胴体に穴を開ける。


 ヒュドラも恭介達を止める壁にはなり得ず、二度目の戦闘もあっさりと終わってしまった。


『ま、まだ慌てるような時間じゃない。落ち着くのよルーナ。素数を数えて落ち着くのよ』


 (ネタを被せるんじゃない。作品が違うだろうが)


 そんな風に思っても、恭介は決してツッコんだりしなかった。


 ツッコめばルーナが喜ぶからである。


 ヒュドラを倒して先に進むと広間があり、先の通路に続く道を塞ぐようにラードーンが立ちはだかる。


「大盤振る舞いだ。召されな」


 そう言って恭介はホーミングランチャー形態のビヨンドロマンを連射した。


 100本の首があろうと、5回連射すればラードーンは大慌てである。


 本体が大き過ぎて素早く小回りを利かせて避けることもできないから、追撃する太いビームによってどんどん首が撃ち抜かれていく。


『これでも喰らえ!』


 麗華はゴーレムチェンジャーでヴォイドに乗り換えており、ビームキャノン形態のインジャスティスでラードーンの心臓部を撃ち抜いた。


 恭介が大盤振る舞いしたからこそ、麗華はどっしり構えてラードーンの心臓を狙い撃ちできた訳である。


 ラードーンの死体が消える前に麗華は屑再利用リサイクルを発動し、死体をワンサイズ小さいラードーンのオブジェに作り替えた。


 それから残骸換金リサイクルを使うことにより、ちゃっかり稼ぐことに成功していた。


 ラードーンが守っていた道を進むと神殿の内装が豪華なものに変わり、最奥部にはティアラを頭に乗せたエキドナがキマイラとケルベロスを口から産み落としているところだった。


「汚ねえもん見せるなよ」


『止めてよね』


 恭介はビヨンドロマンを蛇腹剣に変え、先に産み落とされたキマイラの息の根を止めた。


 麗華はそのすぐ後にインジャスティスをガトリングガンに変形し、それでケルベロスを蜂の巣にした。


 これまでに6体産み落としていたこともあり、エキドナはかなり息を荒くしていて壁となるモンスターを召喚できずにいた。


「これで終わりだ」


 存在理砲レゾンテートルがエキドナの心臓部を撃ち抜けば、エキドナが光の粒子になって消えてそのティアラがアンチノミーのサイドポケットに転送された。


 これによって宝探しのミッションをクリアした扱いになり、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示された。



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宝探しスコア(マルチプレイ)

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ミッション:1時間以内にエキドナのティアラを奪え!

残り時間:42分18秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ランダムボーナス:設計図合成キット

サプライズボーナス:ドミネーターの設計図

レアモンスターキルボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:黒竜人機ドライザーLv50(stay)

コメント:私は地下15階層を20分かけずにクリアされて大変遺憾です

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「知らんがな」


『酷いや恭介君! ボスラッシュにして挑戦者を弱らせるはずなのに、どの戦いでも涼しい顔で戦うなんてあんまりだよ!』


「それはルーナの設計ミスだろ。面倒に感じたのは事実だけど、俺と麗奈が組んだらこの程度は余裕だ。クトゥルフ神話の上位単一個体の方がよっぽど強い」


『ぐぬぬ、私の作品がクトゥルフ神話の侵略者達に負けるなんて悔しい』


 ルーナは恭介の容赦ない意見を受けて地団太を踏んだけれど、恭介はそれをスルーして麗華と共に地下15階層を脱出し、瑞穂の格納庫に帰還した。


 それから、恭介はベルフェゴールに乗り換えてドミネーターの設計図と合成した。


 その結果、完成したのはヤルダバオトと呼ばれるゴーレムで、生物と非生物を問わず動きを鈍らせる粉を操作する6枚の翼と4つの盾を衛星のようにして自分を守らせるのが特徴だ。


 武器はカラミティというビームソードとビームウィップ、ビームキャノンに自在に変形できる物を装備している。


 恭介がヤルダバオトのコックピットから出た時、麗華も4機目のゴーレムの調整を終えてコックピットから出て来たところだった。


「麗華もゴーレムが随分と変わったな」


「うん。宝探しで手に入れたサイファーの設計図とパラノイアの設計図を合成したら、アルスマグナができたの。恭介さんと一緒で全ての属性を使えた方が今後は良いと思ってね」


 アルスマグナは妖精の翅のような翼を生やしたゴーレムであり、その翼からは泡が放出される。


 その泡に触れるとランダムなデバフが発動するから、ランプオブカースに似ているけれどその効果範囲はアルスマグナの翼の方が広いと言えよう。


 武器はブラインドランチャーと呼ばれる特殊なビームランチャーであり、発射の瞬間に発光して敵に目潰しする初見の相手が避けにくいものだ。


「全属性使えるのは便利だから良いと思う。それにしても、これはまた独特な機体だな。俺のヤルダバオトも時間稼ぎが得意そうだから、今までのゴーレムとは変わった系統かな」


「似たような機体が多くても対策されちゃうから、変わってる機体もあった方が良いよ」


「そうだな。お互いに4機目も順調に強化できたことだし、そろそろ昼食にしよう」


「そうだね。私、お腹ペコペコ~」


 恭介と麗華は丁度良い時間になっていたことに気づき、そのまま食堂に向かった。

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