第156話 そんなこと言ったってしょうがないじゃないか

 食後に格納庫をver.8にアップデートしたため、ゴーレムの作成と修理にかかる鉱物マテリアルが30%カットになった。


 準備を整えてから、恭介と麗華は宝探しに挑むべくタワーに向かう。


 麗華が乗るゴーレムはブリュンヒルデではなく、アリトンとパイモン、アマイモン、オリエンスの設計図を午前のタワー探索でゲットした設計図合成キットで合成したソロモンである。


 ソロモンは有翼人型ゴーレムであり、合成元のゴーレムとは異なって属性を燃料とする魔石によって選択できる。


 その最大の特徴はソロモンの武器で、合成元のゴーレム全ての武器に変形できるゴエティアだ。


 機体自体のスペックはブリュンヒルデと同等かやや下であり、一対の翼はブリュンヒルデと同じく銃になっている。


 宝探しならばそこまで敵が強くないので、試運転に丁度良いと乗って来たのだ。


 その一方、恭介は今日の黄竜人機ドラキオンを使ってしまったため、もうドラキオンには乗れない。


 ギフトレベルが30になったことにより、解禁された力とは土精霊槌ノームハンマーである。


 ラストリゾートによる攻撃とは関係なく、発動者が望むサイズの槌が召喚されて任意の対象を攻撃する。


 土精霊ノームの名前を冠するだけであり、シミュレーターでチェックした限りでは無敵の一撃だった。


 今までに倒して来たボスモンスターなら一撃で屠れる程だが、1時間に1回しか使えないので使いどころを見極めなければならない。


 それはさておき、恭介はドラグレン、麗華はソロモンに乗ってタワーの地下9階層にやって来た。


 地下9階層は海底洞窟であり、昇降機から降りた瞬間に恭介達の耳にアナウンスが届く。


『サプライズミッション! 1時間以内にカリュブディスの卵を奪え!』


「うわっ、サプライズミッションかよ。フォルフォル、ちなみに元々の地下9階層のミッションはなんだったの?」


『元々は1時間以内にコカトリスの卵を奪うミッションだね』


「難易度上がり過ぎじゃね?」


『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか』


 フォルフォルはそれだけ言ってモニターから消えた。


 モニターの説明によれば、洞窟の最奥部にいるカリュブディスが守る卵を奪うことがミッションだった。


「ゴーレムを変えるか」


 ドラグレンは火属性のゴーレムであり、地下9階層では水属性のモンスターのみが出て来ると判断したため、恭介はゴーレムチェンジャーを使って風属性のタラリアに乗り換えた。


 海底洞窟の中はうっすらと天井が青く光っているだけで、普段と比べてそれほど明るくない。


 奇襲に備えるためには、モニターに映るセンサーの情報もしっかりとチェックする必要があるだろう。


 恭介達が最初に遭遇したのはシースネークの群れであり、通路脇の水路から一斉に飛び出して来た。


「左は俺がやる」


『右は私だね』


 役割分担はすぐに決まり、恭介が左側の水路から出て来たシースネーク達を大鎌デスサイズ形態のグリムリーパーで斬り伏せる。


 右側の水路から飛び出して来たシースネーク達は、麗華がゴエティアを大鎌デスサイズ形態に変えて斬り伏せた。


「麗華、使い心地はどうだ?」


『良いと思う。これならサブゴーレムとして使っていける気がする』


「それは良かった」


 時間は限られているので、恭介達は海底洞窟の奥へと進んで行く。


 通路ではサファギンやサファギンモンクも現れたが、今更その程度のモンスターに困る実力ではないから、恭介も麗華もサクサク倒して広間に出た。


 広間にはケルピーによく似た外見のシーホースが10体いた。


「ケルピーに似てるがあいつは雑魚モブだ。半分ずつやるぞ」


『わかった!』


 広間は周りが海水で埋め尽くされており、水の中に潜られると厄介だから恭介も麗華も武器をそれぞれライフルとガトリングガンに変えて攻撃する。


 恭介達の攻撃速度が勝り、シーホースは水の中に逃げ込む前に倒されてしまった。


 シーホース達を倒した恭介と麗華は、通路を進んで最奥部に到達する。


 最奥部は手前の足場以外全て海水で満たされており、空を飛べないゴーレムにとっては戦いにくい場所である。


 その最奥部にいるのは卵を守らんと警戒するカリュブディスだ。


 巨大で前面にある大きなモノアイと口の部分は鋭い牙が生え揃っているところが、普通の蛸と異なる特徴として挙げられる。


「ギョエェェェェェ!」


 カリュブディスは鳴いた後に大きな口を開け、全力で息を吸い込み始めた。


 その行動は水も空気も関係なく吸い込んでおり、空を飛ぶタラリアとソロモンも徐々にだが吸い寄せられている。


 (前にコロシアムで戦った時と同じか。さっさと仕留めなければ)


 恭介は高度を上げてカリュブディスのモノアイを狙える位置に移動し、そこからモノアイを狙撃した。


 吸い込むことだけに集中していたせいで、カリュブディスはそれを避けられずモノアイを撃ち抜かれて絶叫する。


「ギョエェェェェェェェェェェ!」


 絶叫することで吸い込みが中断されてカリュブディスが大きく跳ねたのを見て、麗華はゴエティアを大鎌デスサイズに変形させて着水するまでに1本でも多くの脚を切断していく。


 恭介は弱点のモノアイを重点的に攻撃し続け、とにかくダメージを稼ぐことに集中していた。


 その結果、カリュブディスが着水した時には力尽きており、その体はぷかりと水面に浮かび上がった。


 カリュブディスの死体は光になって消え、戦利品としてカリュブディスの卵がタラリアのサイドポケットに転送された。


 これによって宝探しのミッションをクリアした扱いになり、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示された。



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宝探しスコア(マルチプレイ)

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ミッション:1時間以内にカリュブディスの卵を奪え

残り時間:29分42秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:50万ゴールド

   資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

ランダムボーナス:リペアチケット

サプライズボーナス:ギフトレベルアップチケットⅢ

レアモンスターキルボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv30(stay)

コメント:ギフトレベルアップチケットがここまで役に立たないなんてね

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 (それは俺のせいじゃないだろ)


 ギフトレベルアップチケットⅢは、ギフトレベル15以下のパイロットのみ使用可能なギフトレベルを3上げられる消費アイテムであり、恭介にとっては無用の長物だった。


「麗華、何が手に入った?」


『50万ゴールドとギフトレベルアップチケットⅢ、魔石4種セット×50だよ』


「麗華も微妙だったのか」


『うん。チケットは沙耶さんと晶さんにあげるしかないね』


 午前中のタワー探索の結果、恭介はドラキオンの隠された力を解禁され、麗華はソロモンの設計図を手に入れた。


 そこまでの実績があったから、今日は2人にこれ以上の成果を求めてはいけないと調整が入ったのかもしれない。


 恭介達はこれ以上地下9階層に要る理由がなかったので、タワーを脱出してから瑞穂に戻った。


 瑞穂に戻って来たのは沙耶と晶の方が遅かったため、恭介達が2人を出迎えてギフトレベルアップチケットⅢを渡した。


 それにより、沙耶の未来幻視ヴィジョンはLv12からLv15に上がり、晶の堅牢動盾シールドはLv10からLv13に上がった。


 沙耶も晶も貰いっ放しだと申し訳なく思い、それぞれ増設装置アップデーターにゴールドを投入して医務室とトレーニングルームをver.7からver.8にアップデートした。


 アップデートしたおかげで、医務室は入るだけであらゆる症状が緩和されるようになった。


 気怠い程度ならば、入るだけで元気になるぐらいの効力がある。


 トレーニングルームにはキックターゲットとバッティングセンターのコーナーが増え、少しだけサッカーや野球の気分を味わえるようになった。


「日本にいた時よりも瑞穂の方が良い生活してるよな」


「だよね」


「わかります」


「それな」


 恭介が口にした言葉に対し、麗華達は間違いないと頷いた。

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