第155話 俺のターンは終わらない

 転移門ゲートでタワー前に移動し、そこからタワーの26階層へと移動したところ、恭介と麗華は26階層が広間になっていることに気づいた。


「あれ? ここって広間だったっけ?」


『君達が強過ぎるから、楽しんでもらえるように改修したのさ。26~29階層は待ち構えてる個体は1体だけだよ』


「ふーん」


『なんだい?』


「別に」


 恭介にジト目を向けられ、モニター上のフォルフォルは逃げるように姿を消した。


 難易度調整はしないと言っていたくせに、恭介達のためを思ってなんて建前を用意して難易度調整を行ったのだから無理もあるまい。


 フォルフォルが26階層から先を調整したタイミングは、恭介と麗華がシミュレーターで予習した後なのだから恭介がジト目を向けるのも当然だ。


 とりあえず、恭介は難易度調整した分だけ報酬が良い物になっていることに期待して26階層の敵と戦うことにした。


 広間には脚がキャタピラの黄色い人型兵器が待ち構えていた。


 その兵器の額にはダイヤのマークが刻まれており、両手のマシンガンと背中のミサイルシステムが攻撃スタイルを明らかにしていた。


『エースオブダイヤ、マイル』


『土属性のゴーレムなら私がやるよ。恭介さんは手を出さないでね』


「了解」


 名乗ったエースオブダイヤは前に出たブリュンヒルデに照準を定め、両手のマシンガンとミサイルで一斉に攻撃を始める。


 それに対し、麗華はブリュンヒルデのビットを三角錐の陣形に展開した。


 エネルギーバリアでそれらのの攻撃を防いだ後、バリアを解除して切替竜銃スイッチドラガンと四対の翼の銃からビームを放ち、エースオブダイヤに全弾命中させた。


『オタッシャデー!』


 エースオブダイヤが爆散し、26階層での戦いは終わった。


「麗華、お疲れ様」


『ありがとう。…恭介さん、それって宝箱?』


「怪しいところを見つけちゃってな。攻撃したら壁が壊れて宝箱が出て来た」


『もう、私の戦いを見ててほしかったのに』


「すまん。一瞬だけ光ったから時間制限があると思ってこちらを優先させてもらった」


 恭介にそう言われてしまえば、麗華もこれ以上文句は言わなかった。


 フォルフォルの性格の悪さを考えれば、戦闘に夢中になっている瞬間だけ現れる宝箱を仕掛けていてもおかしくないと思ったからである。


 宝箱の蓋を開けてみると、10万ゴールドがドラグレンのサイドポケットに転送される。


 一番ランクの高い宝箱であることは間違いない。


 それと一緒に現れたのはアマイモンの設計図だった。


「麗華、一番良い宝箱でアマイモンの設計図が出て来た」


『ということは、オリエンスが手に入れば四大元素を司る悪魔のゴーレムの設計図をコンプリートできるね』


「それ以上はいけない」


『そうだね。ごめん』


 欲しいなんて言えば物欲センサーが働くかもしれないから、恭介は先回りして麗華に待ったをかけた。


 実際には訳あって欲しいのだけれど、それを口に出したりしていないので恭介達の基準ではセーフである。


 27階層に進んでみれば、次に待ち構えていたのは緑色の騎士型兵器だった。


 額にはスペードのマークが刻まれており、手にはそれぞれ片手剣と盾を装備している。


『ジャックオブスペード、マイル』


「次は俺のターンだ」


 26階層は麗華に譲ったため、次は自分の番だと恭介が宣言して前に出た。


 ファルスピースを戦槌ウォーハンマーに変形させ、ジャックオブスペードの振り下ろしを横に周りながら躱して遠心力を上乗せしたスマッシュを放つ。


 ジャックオブスペードは盾で防ぐのが遅れてしまい、理想的な構えができなかったせいで盾が壊れて左半身がひしゃげた。


「俺のターンは終わらない」


『俺のターンは終わらない。名言いただきました!』


 フォルフォルが恭介語録に加えようとモニターに現れるが、恭介はそれを無視してコックピット下からビームを放ってジャックオブスペードを倒した。


 戦利品を回収すればこの階層に用はないから、恭介達は28階層に移動する。


 28階層には両手に杖を持った青く煌びやかな女型兵器が待ち構えていた。


 その額にはハートのマークが刻まれており、杖を振るったことで出現した氷の玉座にその兵器が偉そうに座る。


『クイーンオブハートノゴゼンデアル。ズガタカイ』


「ギフト発動」


 イラっと来た恭介が黄竜人機ドラキオンを発動し、そのままラストリゾートをビームランチャーに変えてクイーンオブハートを撃ち抜いた。


 クイーンオブハートが力尽きたことにより、氷の玉座は砕け散った。


「よし、次行こう。次はこの流れだとキングオブクラブで火属性だろうな」


『そうだね』


 ここまで来れば、26~29階層の敵の法則を理解できない者は少ないだろう。


 土属性のエースオブダイヤ、風属性のジャックオブスペード、水属性のクイーンオブハートと順番で来たのなら、その次が火属性のキングオブクラブと考えるのは自然な流れである。


 29階層に2人が移動してみると、そこにはビームランチャーとビームソードを装備した赤い王様と呼ぶべき兵器が待ち構えていた。


「麗華、こいつも俺がやって良い? それともアリトンに乗り換えて戦うか?」


『アリトンはまだ訓練中だから止めとく。恭介さんにお願いするよ』


「了解」


『ハナシハスンダヨウダナ。キングオブクラブノマエニヒレフセ』


 それだけ言ってキングオブクラブはブリュンヒルデに向かってビームを放った。


 セリフだけ聞けば恭介と戦うように思えなくもないが、キングオブクラブは属性的に相性の良いブリュンヒルデを先に倒すことにしたようだ。


 もっとも、キングオブクラブの攻撃は大して速くなかったから、あっさりと麗華のブリュンヒルデに避けられてしまったのだが。


 そして、恭介が敵のミスによって生じた隙を見逃すはずがなく、ラストリゾートでキングオブクラブの頭部を撃ち抜いて倒した。


 キングオブクラブが倒れて光の粒子になるのと入れ替わりで、どこからともなく宝箱が現れた。


 この宝箱の出現条件は、29階層において無傷かつ3分以内にキングオブクラブを倒すことだ。


 条件を達成できなかった場合、ランダムに隠された宝箱を見つける手間が増えるのだが、恭介が一撃で仕留めたため宝箱は簡単に手に入った。


 宝箱を開けてみたところ、10万ゴールドとオリエンスの設計図がドラキオンのサイドポケットに転送された。


 フォルフォルが無言でハンカチを噛み、悔しそうな表情でモニターから恭介を見るけれど、恭介はそれを無視して麗華と共に30階層に進んだ。


 30階層には4枚のカードを衛星のように展開する豪華な服装のロイヤルデーモンがいた。


「出でよ従僕!」


 恭介達を見るや否や、ロイヤルデーモンは4枚のカードからエースオブダイヤ、ジャックオブスペード、クイーンオブハート、火属性のキングオブクラブを召喚した。


「麗華、ロイヤルデーモンは任せた。俺が周りの雑魚を片付ける」


『うん!』


 即座に役割を決め、恭介は最初に倒しやすくてムカつくクイーンオブハートの額を撃ち抜いた。


 続いて属性的に不利なジャックオブスペードを仕留めるべく、ラストリゾートをガトリングガンに変形させて銃撃を始める。


 風属性の盾で弾丸を防ごうともドラキオンのスペックなら銃撃を無力化されることはない。


『ワレヲムシスルナ!』


『ダンマクウスイゾ!』


 キングオブクラブとエースオブダイヤが恭介を攻撃するが、恭介はジャックオブスペードに接近してフレンドリーファイアを狙った。


 結果として、キングオブクラブが連射していた内の一撃がジャックオブスペードの右脚を撃ち抜き、エースオブダイヤの銃弾がジャックオブスペードの背中に命中する羽目になった。


「終わりだ」


 フレンドリーファイアで生じた隙を狙い、ラストリゾートを蛇腹剣に変形させて横薙ぎを放ち、ジャックオブスペードとついでにエースオブダイヤを一刀両断した。


 残るキングオブクラブをビームランチャーに変えたラストリゾートで仕留めた時、麗華は金力変換マネーイズパワーで強化した一撃でロイヤルデーモンを倒していた。


 恭介達は戦利品回収を済ませ、31階層まで昇降機で移動してから魔法陣でタワーの外に脱出した。


 それと同時に、タワー探索スコアが2人の乗るゴーレムのモニターに表示された。



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タワー探索スコア(マルチプレイ)

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踏破階層:26階層~30階層

モンスター討伐数:7体

協調性:◎

宝箱発見:○

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総合評価:S

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報酬:黒金剛アダマンタイト100個

   100万ゴールド

   資源カード(食料)100×2枚

   資源カード(素材)100×2枚

ボスファーストキルボーナス:アップデート無料チケット(格納庫)

宝箱発見ボーナス:魔石4種セット×120

デイリークエストボーナス:50万ゴールド

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv30(up)

コメント:おめでとう。ドラキオンの隠された力が解禁されたよ

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 (ドラキオンの隠された力が解禁!? マジか!)


 タワーから戻って来た時、麗華達が目にしたのはご機嫌な恭介だったのは言うまでもない。

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