第214話 さーて、ぼったくりタイムのはじまりだぁぁぁ!

 夕食の時間が近づき、瑞穂クルーが食堂に集まったタイミングでラミアスが申し訳なさそうに恭介に近づく。


「ラミアス、どうした?」


「パンゲアからの救難信号です」


「パンゲア? あぁ、蟹頭がいる戦艦だっけ? 高天原に敵を引き連れて来てんの?」


「残念ながらその通りです。現在、パンゲアの5機全てが出撃してクトゥルフ神話の敵と戦ってるようですが、状況はあまり芳しくないようですね」


 待機室パイロットルームのモニターには、クトゥルフ神話の侵略者達に襲われるパンゲアとそれを守る5機のゴーレムが映し出された。


 パンゲアという青い戦艦だが、ルーナの力を借りて一時的に背景に同化できる性能があったが、どうやら敵に見つかってしまって劣勢のようである。


 そして、その画面が割れて黒髪の真面目そうな軍人が現れた。


『こちらパンゲアのキャプテンを務めるノアです! 高天原に救援を求めます!』


「恭介さんと麗華さん、いかがされますか? 高天原の所有者が判断するべき案件かと存じます」


「助けるのは構わない。ただし、パンゲアが今までに戦果を挙げて来なかったのにそれをただ匿うのはこの場にいる者が納得しないだろう。それなりの報酬は貰うぞ」


『勿論です。助けていただくのですから、払えるものならなんでも払いましょう』


 その瞬間、晶がニヤリと笑った。


「今、なんでもって言った?」


「晶、ネタに走ってる場合じゃないぞ。それとも、晶が助けに行くか?」


「そうだね。さっきは3期パイロットの4人に行ってもらった訳だし、ここは先輩の僕達が行こうか。ね、サーヤ?」


「…私もですか。まあ、構いませんが」


 余計なことを言ったのは晶だから、自分は関係ないのではと思わなくもなかったけれど、3期パイロット4人が戦って強くなったアピールをしたのに、自分だけが呑気に待機する訳にはいかないから、沙耶も出撃することに決めた。


 沙耶と晶が格納庫に移動し、それぞれのゴーレムに乗り込んでカタパルトへと移動する。


 準備が整ったところで、ラミアスのアナウンスが2人のコックピット内に響く。


『進路クリア。ガイアドレイク、発進どうぞ!』


「筧沙耶、ガイアドレイク、発進します!」


 カタパルトから射出され、ガイアドレイクが瑞穂から出撃し、高天原から宇宙空間に飛び出してから晶が続く。


『進路クリア。サルガタナス、発進どうぞ!』


『尾根晶、サルガタナス、行きまーす!』


 サルガタナスも宇宙空間に飛び出し、沙耶のガイアドレイクの後ろに続く。


 パンゲアを襲う敵集団の内訳だが、ティンダロスの猟犬と忌まわしき狩人だ。


 ムッシュ達も以前よりは強くなっているが、恭介達のような一騎当千の実力はないからその数に苦戦している。


「晶さん、私が敵の数を減らします。撃ち漏らしを狙撃して下さい」


『OK』


 手短に作戦を決め、沙耶はガイアドレイクを機械地龍形態に変形させる。


 それから、左から右へ薙ぎ払うようにガイアドレイクの口からビームを放てば、5機の隙を突こうとしているティンダロスの猟犬と忌まわしき狩人の数がどんどん減っていく。


『狙撃開始するよー』


 緩い口調で晶が狙撃することで、ビームで撃ち漏らした敵も倒されて戦況が変わった。


 ちなみに、晶の武器は合成銃キメラガンからウィンダムに変わっている。


 合成銃キメラガン幽怪鳥砲ペリュトンキャノンを合成したことで、ウィンダムになった。


 ウィンダムには実弾とビームだけでなく、小型化したペリュトンを模った爆発するゴーストを飛ばせる性能がある。


 この戦いではビームで敵をサクサク撃ち落していた。


『沙耶さん、晶さん、パンゲアのパイロット達はかなり消耗したそうで、残りの敵を任せたいと言ってます』


「舐め腐ってますね。この貸しは高くつきますよ」


『あらー、うちのサーヤを怒らせちゃったかー。まあ、僕も同感なんだけどねー』


『足手纏いが多くいても仕方ないと思いますので、ここは一気に貸しを作ることにしましょう』


『ラミアスも結構言うよね』


 晶の言う通りで、2人に聞こえて来るラミアスの声には怒りが感じられた。


『当然です。瑞穂クルーの足元にも及ばない者達が迷惑に迷惑を重ねて来るのですから、怒りたくなっても不思議ではありません』


「そうですね。私達だってこうして出撃することで恩義に報いてるのですから、彼等には早急に役に立ってもらわなければいけません」


『うーん、早急にかー。囮かな?』


『晶君もなかなか私達に近い発言するよね』


 突然モニターに出て来たフォルフォルは、晶がパンゲアを囮にすると言ったことを自分達寄りと評価した。


 そんな話をしている内に5機のゴーレムがパンゲアに戻り、麗華達の前には後続の敵がやって来た。


『沙耶さん、晶さん、敵の正体がわかりましたのでお伝えします。C111ロイガーとC112ツァールです』


『ねえ知ってる? 彼等には双子の卑猥なるものって別名があるんだよ』


「微塵も役に立たない発言をするぐらいなら黙ってて下さい」


『フォルフォル、君には失望したよ』


『辛辣辛辣ゥ!』


 沙耶と晶に冷たい目で見られ、フォルフォルは逃げるようにモニターから姿を消した。


 ロイガーの見た目は泣き叫ぶ触手と巨大な翼のついた紫色の塊と呼ぶべきものであり、ツァールは色違いで青緑色の塊だった。


 デフォルトの姿に戻ったガイアドレイクとサルガタナスを見て、ロイガーとツァールが選んだ行動とは融合だった。


「やらせません!」


 沙耶は死蛇腹剣アポピスソード蟷螂大鎌エンプーサイズを合成し、新たにユーザーパーと呼ばれる武器を手に入れた。


 これは蛇腹剣と大鎌デスサイズに変形自在なだけでなく、敵を斬った時にランダムなデバフがかかる性能を持つ。


 ロイガーとツァールが融合してしまえば、間違いなくパワーアップするだろうから、沙耶は融合しようとする2体に向かって蛇腹剣形態のユーザーパーを横に薙ぎ、それを阻止する。


 斬りつけられたことにより、ロイガーは動きが鈍ってツァールは顔色が紫になって毒によるスリップダメージが入ったらしい。


 沙耶に2体のヘイトが向いた隙を突き、晶はサルガタナスの透明化機能を使って背後に忍び寄り、小型ペリュトン爆弾を連射してロイガーとツァールの肉体を欠損させた。


 勿論、サルガタナスの性能を考えればヒット&アウェイが鉄板だから、攻撃した直後にサルガタナスは姿を消している。


 これにはロイガーとツァールも不意打ちされた怒りをどうにもできず、泣き叫ぶ触手を振るってお互い以外を近づかせない。


「その程度で攻撃を防げると思ったら大間違いです。ギフト発動」


 未来幻視ヴィジョンによって敵の攻撃を予測できたため、沙耶は大鎌デスサイズ形態に変えたユーザーパーで触手を斬り落としながら2体に接近し、ギフトの効果が切れるまでに致命的なダメージを与えた。


『とどめいただき!』


 晶が確実にとどめを刺すべく、再び小型ペリュトン爆弾を発射すれば、ロイガーとツァールの体が修復不可能な程にバラバラになった。


『沙耶さん、晶さん、お疲れ様でした。周辺に後続の敵はいないようです。帰艦して下さい』


『「了解」』


 ラミアスからの連絡を受けて沙耶と晶が瑞穂に着艦すれば、2人のゴーレムのコックピットにバトルスコアが表示される。



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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)

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出動時間:18分34秒

撃破数:ティンダロスの猟犬30体

    忌まわしき狩人15体

    ロイガー1体

    ツァール1体

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×6枚

   資源カード(素材)100×6枚

   60万ゴールド

ファーストキルボーナス:ゲルプテスタメントの設計図

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:未来幻視ヴィジョンLv29(up)

コメント:さーて、ぼったくりタイムのはじまりだぁぁぁ!

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 (よく考えてみればフォルフォルは別に関係ないですよね)


 巻き込まれたのは瑞穂クルーである自分達であって、いつも自分達を見てニヤニヤしているフォルフォルではないから、そのコメントを見て沙耶は疑問に思った。


 それでも、弱肉強食な現状でただ助けてもらおうなんて考えは甘いから、きっちり払ってもらうべきものは払ってもらおうと思う沙耶だった。

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