第213話 あっ、フレンドリーファイア

 麗華はコックピットから出てすぐに恭介に相談する。


「恭介さん、ベースゴーレムを手に入れたんだけど、3機目をどうしたら良いと思う?」


「5連戦お疲れ様。麗華って設計図合成キットは今何個あるんだっけ?」


「2つだよ。さっきのサプライズ撃破ボーナスでもう1つ手に入ったの」


「なるほど。確か、麗華は昨日の戦いでジャンクセージの設計図も手に入れたよな? それなら、さっきショップチャンネルを除いた時にドレイクシリーズ3つ見つけたから、エクリプスを完成させられると思うぞ」


「それにする!」


 恭介のアドバイスを聞いて麗華は即断した。


 待機室パイロットルームに移動してショップチャンネルを開き、サイバードレイクとエクスドレイク、エースドレイクの設計図3つがセット価格の250万ゴールドで購入した。


 それから格納庫に戻り、麗華は二度の合成を行って火属性のエクリプスを完成させた。


 機体を構成する鉱物マテリアルは、最初から黒金剛アダマンタイトである。


 調整作業を終えた麗華がコックピットから出て来たので、恭介は気になったことを訊ねる。


「なんでエクリプスを火属性にしたんだ? 悪いと思った訳じゃなくて、土属性もあったのに火属性にしたから気になってな」


「私の中で土属性のゴーレムって言えば、恭介さんのドラキオン一択だもん。だから、火属性にしたの」


「ありがとう」


 自分にとってドラキオンは特別なゴーレムだから、自分のドラキオンをそこまで評価してくれたことが嬉しかったため、恭介は恥ずかしそうに笑った。


 そこに2期と3期のパイロットも戻って来て、麗華の3機目のゴーレムがエクリプスになったことを知って羨ましがる者は多かった。


 彼等もレースやコロシアムやバトルメモリーを通じ、新たなゴーレムの設計図を手に入れたことで機体や武器を変えていた。


 昼食を取って食休みを済ませた後、艦長室にいるラミアスが待機室パイロットルームにやって来る。


「総員、第一種戦闘配備。繰り返します。総員、第一種戦闘配備。高天原の近くに侵略者が現れました」


「ラミアス、敵の詳細を頼む」


「承知しました。C005ダーク・ワンとC009の黒い仔山羊の集団です。それぞれ25体ずつの合計50体で、ダーク・ワンは強化された個体のみ確認できております」


 そこまでの報告を聞いて、明日奈が遥に訊ねる。


「3期4人で行けますよね?」


「そうね。明日葉さん、我々4人で出撃します」


「わかった。もしもの時は沙耶と晶に援護に出てもらうことにする」


「「了解」」


 沙耶と晶も恭介の考えに頷き、今回の戦闘は3期パイロット4人だけで挑むことになった。


 4人が格納庫に移動して各々のゴーレムに乗り、準備が整ったところでラミアスのアナウンスがそれぞれのコックピット内に響く。


『進路クリア。センジュ、発進どうぞ!』


「等々力明日奈、センジュ、出るわ!」


 カタパルトから射出され、センジュが瑞穂から出撃し、高天原から宇宙空間に飛び出してから仁志達が続く。


『山上仁志、オーケストラ、発進する!』


『笛吹遥、アリコーン、出るわよ!』


『田辺潤、ガルーダ、行きます』


 オーケストラとアリコーン、ガルーダも宇宙空間に飛び出す。


 明日奈のセンジュは、サブで使っているアシュラとダイダラボッチの設計図を合成したことによって完成したゴーレムだ。


 サブのゴーレムゆえに、属性はいつも使っている火属性ではない。


 センジュという機体名ではあるものの、腕の数は6本である。


 ただし、両肩にある開閉可能な穴から属性を帯びた光の腕を作成可能であり、燃料の消費さえ気にしなければ腕は合計で最大994本まで生やせる。


 操作が難しいことから、元の腕と合計して10本を扱うのがやっとだろう。


 ちなみに、明日奈が土属性を使っていることにより、遥はサブのゴーレムである火属性のアリコーンに搭乗している。


 仁志のオーケストラだが、これはクルーエルラプソディとレオンロック、イーグルノクターン、イグニスオペラを合成したゴーレムだ。


 オーケストラは指揮者をモチーフにしたゴーレムなのだが、所々に楽器を基にしたデザインが見受けられる。


 ヴァイオリンの見た目をした翼だったり、指揮棒に似たレイピアを持っていたりする。


 合成素材として使ったレオンロックの設計図は遥が仁志に譲ったものであり、今の遥はメインのゴーレムとしてタイクーンを使用している。


 タイクーンはロイヤルガードとベルセルクを合成したゴーレムなのだが、土属性ということもあって今回は明日奈と属性が被らぬように遥がアリコーンに乗っている。


 潤のガルーダについて言えば、メインで乗っていたティターニアとヤタガラスの合成によって完成した風属性の機体だ。


 いよいよ潤もメインのゴーレムでは女型の機体ではなくなり、強そうな翼人型ゴーレムに乗っている。


 今回の出撃では恭介達が瑞穂に残っているだけでなく、高天原が光の結界を展開できることから特に護衛のことを考えずに迎撃すれば良いため、3期パイロットにとっても少し気が楽だ。


『皆さん、油断せずに行きますよ』


「はい」


『了解!』


『わかりました』


 気が楽でも油断して良いことにはならないから、3期パイロットのリーダーである遥が全員の気を引き締める。


 ダーク・ワンは一番弱くてキュクロの見た目をしており、それが14体いる。


 ブリキドールの見た目の個体が8体いて、イフリートの見た目をした個体が2体おり、残る1体はパワーの見た目をしていた。


「ダークワンは私が引き受けるので、黒い仔山羊を3人にお任せします」


『わかりました。お願いしますね』


 明日奈の申し出に対し、遥はやれると判断してそれを許可した。


 許可を得た明日奈は先行し、センジュの両肩から光の腕が大量に生え、それらが次々にダーク・ワンを握り潰す。


 あっという間にキュクロとブリキドールの見た目をした個体全てが倒され、残るダーク・ワンは3体だけになった。


 イフリートの見た目をした2体は、やられた味方の残骸を吸収しようと接近したが、センジュの腕の本数が多過ぎて結局握り潰された。


 (さて、残り1体ね)


 プチプチとダーク・ワンを倒し続けた明日奈は、他の個体よりも素早く動くパワーに似た個体の迎撃を始める。


 光の腕故に傷つけられようとセンジュ本体にダメージはないから、全ての腕で1体を叩き潰すように攻め方を変える。


 多少強くなったところで、クトゥルフ神話の単一個体と比べれば雑魚だから、5分とかからず追い詰められて叩き潰された。


 (ギフトを使わずともこれぐらい余裕ね)


 襲撃して来た敵勢力を半減させたところで、明日奈はドヤ顔になっていた。


 その一方、黒い仔山羊の相手をしている遥達も、特にギフトを使わずに敵の数を減らせている。


『サブゴーレムでも余裕があるわ』


『少しは俺達も成長してるってことじゃね?』


『あっ、フレンドリーファイア』


『『流石』』


 潤は不幸招来バッドラックを使わずとも、自分を襲おうと囲む黒い仔山羊達にフレンドリーファイアが当たるので、遥と仁志はいつも通りだと褒めた。


 倒した黒い仔山羊をダーク・ワンに吸収されることがないから、今この戦場にいる敵が強化されることはない。


 20分もかからず、3期パイロット4人だけで敵戦力の掃討が完了した。


『皆さん、お疲れ様でした。周辺に敵の反応はありません。帰艦して下さい』


『『『「了解」』』』


 ラミアスからの連絡を受けて4人が瑞穂に着艦すると同時に、各々のゴーレムのコックピットにバトルスコアが表示される。



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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)

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出動時間:18分34秒

撃破数:ダーク・ワン25体

    黒い仔山羊25体

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

   50万ゴールド

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:偶像崇拝アイドルファンLv23(stay)

コメント:君達の成長を感じる一戦だったよ

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 (フォルフォルよりもトゥモロー様に褒めてもらいたいわ)


 恭介トゥモローガチ恋勢の明日奈はやっぱりブレず、表情を少しも変えなかった。


 コックピットから出た後、恭介に褒められて明日奈は恍惚の笑みを浮かべた。


 それを見た周囲はやはりガチ恋勢の扱いって難しいと思うのだった。

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