第6話 そうだけどそうじゃない!
恭介のモニター画面には以下のスコアが映し出された。
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プラクティスタワー探索スコア(マルチプレイ)
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踏破タイム:48分14秒
モンスター討伐数:30体
協調性:◎
隠し部屋発見:〇
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総合評価:S
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報酬:
1万ゴールド
隠し部屋発見ボーナス:ライカンスロープの設計図
ギフト:
コメント:俺がゴーレムだ!
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(チッ、早速揶揄ってきやがった)
総合評価が最高評価のSであることや、隠し部屋発見ボーナスが貰えたこと、ギフトレベルが上がったことは嬉しかった。
しかし、GBO時代には存在しなかったコメント欄の文字にフォルフォルの悪意を感じて恭介は心の中で舌打ちした。
『それじゃ解説するよ~。恭介君、そんなコメント欄を見て眉間に皺を寄せてないで私の話を聞いて~』
「うざい。さっさと解説してくれ」
恭介が追加で煽って来るフォルフォルに苛立ちを隠さないでいると、フォルフォルも流石にこれ以上は煽らず解説を始める。
『基本的にスコアはGBOと一緒だよ。違うのはギフト欄とコメント欄だね。ギフト欄には君達のギフト名とそのレベルが表示されるようにしてあるよ。今回は2人ともギフトを使ってギフトがレベルアップしたよね。ギフトの所をタッチすれば、ギフトのレベルアップによる変化が説明されるから見ておいてね』
そう言われてすぐに恭介はモニターに映るギフトの文字をタッチした。
(操作時間が倍になってる!)
レベルアップで操縦時間が倍になるのか、6分ずつ増えていくのかまでは現段階ではわからないが、これだけでも恭介の機嫌が良くなった。
『コメント欄は私からのコメントが表示されるよ。学期末の成績表で担任の先生からコメントがあるよね? あれと一緒だと思ってくれて構わない』
「担任の先生は学生をおちょくるようなコメントはしないっての」
『そこはほら、私と君の関係じゃないか』
「拉致した奴と被害者の関係だな」
『そうだけどそうじゃない!』
フォルフォルは間違っていないけど言いたいことは違うんだと抗議した。
恭介は言いたいことを少しだけ言えたから、気持ちを切り替えて質問する。
「俺のギフトはレベルアップで操縦時間が増えた。これは倍々式に増えるのか? それとも6分ずつ増えるのか?」
『後者だよ。倍々式だったらドラキオンを操縦できる時間が24時間を超えちゃうでしょ? レベルマックスでも1時間にしなきゃゲームバランスが壊れちゃうじゃないか』
「そりゃそうか。そこまで都合良くはいかないよな」
『うんうん。恭介君はちゃんと受け入れてくれて助かるよ。他の国の代表なんてクレームばかりで私の話を聞いてくれないからね』
フォルフォルはげんなりした表情を見せた。
無視できない話を聞いて麗華が訊ねる。
『他9ヶ国とやり取りをしてるのもフォルフォルってこと?』
『そうだよ。正確には私の分身だけどね。あぁ、ここにいる私も分身だよ。本体は全体の管理をしてるんだ』
(フォルフォルの本体って何者なんだろうな。いや、考えてもわからないか)
自宅でゲームしていたら、どこともわからない場所に誘拐してGBOを現実化したデスゲームをやるような存在だ。
恭介は自分には手に負えないのでそれ以上考えるのを止め、今度は麗華に話しかける。
「麗華、
『千ゴールドあたりの威力加算値が1.5ポイントになったわ』
「ということは、ギフトレベル10で千ゴールドあたりの威力加算値が5ポイントになる訳だ」
『その通り。恭介君は頭の回転が速いね。私の説明する出番を減らさないでおくれよ』
「先に言われるのが嫌なら勿体ぶらずに説明しろよな」
まったくもって恭介の言う通りだ。
フォルフォルは恭介に正論を突き付けられてと唸った。
それでもすぐに表情が元通りになり、役割を果たすべく恭介達に話しかける。
『さて、これでチュートリアルは終わりだよ。
フォルフォルが言った通り、
格納庫に戻ってきたら、2人は各々のゴーレムを定位置に戻して事後作業を始める。
コックピットのモニターには自分の乗るゴーレムの全体図が表示され、耐久度が削れていないかチェックするのだ。
恭介はライカンスロープの設計図を手に入れたので、ベースファイターからライカンスロープにゴーレムを変更する。
ベースファイターの設計図が入ったカードを抜き取り、ライカンスロープの設計図が入ったカードを設計図リーダーと交換する。
その際にゴーレムの構成マテリアルも
これだけでもベースファイターの安っぽいコックピットがアップデートされ、コックピットの外に出てみると赤くカラーリングされた狼男型のゴーレムに外見が変わっていた。
GBOにおいて、ライカンスロープは四足歩行と二足歩行をの両方ができるゴーレムとして知られている。
二足歩行時は銃剣を普通に使えるが、四足歩行をする際には銃剣を背中に固定して弾丸を発射するか、四足歩行時のみ出現する鉤爪で戦う。
ベースファイターの次に搭乗するゴーレムとして、ライカンスロープは選ばれる確率の高い機体だ。
特に近接戦闘を好むパイロットが選ぶ傾向にある。
だからこそ、遠距離攻撃が得意な麗華は羨ましがらないかと思えばそうでもなかった。
「良いなぁ。ベースシリーズ卒業良いなぁ」
「まあまあ。そっちだって
「そりゃそうだけどさ、やっぱりベースシリーズってマテリアルを刷新してもベースシリーズなんだもん」
「こればっかりは運だろ。隠し部屋発見ボーナスでライカンスロープの設計図が手に入ったんだし」
「ぐぬぬ。私のリアルラックは並だからなぁ」
麗華は悔しさ半分羨ましさ半分といった感じで唸った。
この話題を続けていても非生産的だから、恭介は話題を変える。
「それよりも
「そうだった。行こう」
麗華も
カードリーダーに全ての資源カードを挿入したところ、モニターにフォルフォルが現れた。
『おめでとう。これで日本に資源が送られたよ』
画面が半分に割れ、国会議事堂前にカードの通りの資源が積み上がった状態で出現する映像が映し出された。
「テレポーテーション?」
「イリュージョン?」
「イリュージョンは脱出マジックだろ」
「こりゃ失敬」
麗華が表現するのに丁度良い言葉を見つけられず、それでも絞り出した言葉は恭介にあっさりとツッコまれた。
『君達、夫婦漫才でも始めたのかい?』
「始めてない。それよりも食堂はいつになったら解放される? あれがなきゃ俺達飢え死に一直線だぞ」
『恭介君は本当に私の想定したプロセスを越すのが好きだね。食堂なら
「そうか。それを聞いて安心したぞ」
恭介は
(食堂の増設が1万ゴールド、私室の増設は5千ゴールドか)
増設したい施設の値段を調べてから、恭介は麗華に声をかける。
「更科、5,000ゴールド出せ。食堂の増設を折半するぞ」
「わかった」
腹が減っては戦ができないので、麗華はすぐに5千ゴールド払った。
麗華の分と併せて1万ゴールド払い込み、格納庫とは反対側の壁に食堂に繋がるドアが現れた。
(増設するのに音も振動もない。どんな技術を使ってるんだか)
リアリティのないことが現実に起きたため、フォルフォルの技術力を思い知らされた恭介は苦笑するしかなかった。
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