第236話 もう手遅れだよ。掲示板経由で瑞穂の黒い凶星がバズってる

 恭介達が瑞穂に来て53日目、瑞穂とパンゲアは高天原に戻って来たが、恭介は今日もマーヴェリックに乗ってコロシアムに来ていた。


「今日も5連戦に挑む。入場門を開いてくれ」


『恭介君達は本当に勤勉だねぇ。パンゲアクルーなんてまだ誰も起きてないのに』


「それはだらしないな。瑞穂クルーは全員起きてるのに」


『そういうところも差が出るポイントなんだろうね。はい、入場門を開いたよ』


 ルーナが開いた入場門を通り抜け、恭介はコロシアムの中に移動した。


 そこで恭介を待ち構えていたのは、ソロモンの武装とデザインを豪華にした黄色いゴーレムだった。


『初めて見るでしょ? これはダビデだよ。ソロモンの合成元ゴーレム4機の上位互換機体を合成したら、ソロモンの上位互換機体であるダビデになるんだ』


 ダビデが構える武器は当然ソロモンの武器の上位互換であり、バテシバという変形武器だ。


 戦斧バトルアックスとビームウィップ、ガトリングガン、大鎌デスサイズに変形可能であり、今は戦斧バトルアックス形態になっている。


「ギフト発動」


 恭介が黒竜人機ドライザーの発動を宣言し、彼はマーヴェリックのコックピットからドライザーのコックピットの中に移った。


 すぐに風属性のスイッチを押され、ドライザーは風属性に変質して機体の色も緑になった。


 自身にとって苦手な属性のゴーレムが現れたことを理解し、ダビデはバテシバをガトリングガンに変形させて連射し始める。


 ところが、発射される弾丸は嵐の鎧に阻まれてドライザーには届かない。


 そうなることがわかっていたから、恭介はそのままダビデに接近してビームソードに変形させたラストリゾートでダビデの上半身と下半身を真っ二つにした。


「ソロモンの上位互換の割に大したことないな」


『ドライザーに乗ってるからそう言えるんだからね? スペック的にはハーロットと同等だからね?』


「ハーロットの信号が使えないなら、武器が強化されようともハーロットよりも脅威度は低い」


『当たらなければどうということはないって意味ですね。わかります』


 そんなやり取りをしている内に、2戦目の相手としてダビデに比べてサイズの小さな風属性のゴーレムが現れた。


 二対の翼はハープを模っており、両手にはシンバルを模ったチャクラムを有していた。


「こいつも初見だな」


『アルベリヒだね。仁志君のオーケストラとエインヘリヤルを合成すると完成するんだ』


 ルーナの説明を聞いている内に、アルベリヒは二対の翼から音符を模った火薬の塊をドライザーに向かって飛ばす。


 直感的に触れたら不味いと思ったため、恭介は火属性のスイッチを押してドライザーを火属性に変えてから、ビームライフルに変えたラストリゾートでそれを撃ち抜いた。


 その瞬間、ドラストムの翼から出る粉と同じ火力の爆発が生じる。


 (ハープの翼が厄介だな。あのチャクラムも普通の投擲武器とは考えない方が良さそうだ)


 恭介がそのように考察していると、アルベリヒが両手のチャクラムをドライザーに投げつける。


 ブーメランのように手元に戻って来るタイプの武器だと仮説を立て、躱したところを背後から攻撃されたくないから恭介は赤不動砲アチャラナータをチャクラムとアルベリヒが同一直線上に並ぶ場所で発射した。


 それはドライザーのスペックを考えれば非常に効率的であり、2つのチャクラムを破壊した直後に陽電子砲がアルベリヒを貫いて爆発させた。


『初見のゴーレムを相手にして一方的な戦闘を行う。これが瑞穂の黄色い弾丸、いや、瑞穂の黒い凶星きょうせいだね』


「新たな二つ名を付けようとするんじゃない」


『良いじゃん。恭介君を瑞穂の黄色い弾丸って呼ぶには、恭介君がドラキオン以外に乗り過ぎなんだもん。それに、ギフトが変質した以上二つ名も更新されるべきだ』


「中二病から脱却したいのに、もっと中二病の沼に嵌めようとするのは止めてくれる?」


 ジト目の恭介に対し、ルーナがとても良い笑みを返す。


『もう手遅れだよ。掲示板経由で瑞穂の黒い凶星がバズってる』


「なん…だと…!?」


 ドライザーに乗っていなかったら、恭介は膝から崩れ落ちそうになる程のショックを受けた。


 それでも、まだゴーレムとの戦いが3つ残っているので気持ちを切り替えた。


 3戦目の敵として現れたのは、八芒星のフライトユニットを背負った火属性のゴーレムだ。


「失せろ」


 水属性のスイッチで水属性になったドライザーが、そのゴーレムの動き出した瞬間に竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムを発射して撃破していた。


『オクタグラムゥゥゥゥゥ! どうしてだよぉ!? 見せ場を奪わないで上げてよぉぉぉ!』


「むしゃくしゃしてやった。まだまだすっきりしない」


『まごうことなきやつあたり!? 理不尽!』


 驚異的な反射神経により、恭介はオクタグラムを撃墜してしまった。


 これにはルーナも思わず叫んでしまうが、恭介も二つ名を勝手に更新されたイライラから少しも悪びれた様子がなかった。


 瞬殺されてしまったオクタグラムだが、潤がサブのゴーレムにしているアスタリスクとテスタメントを合成することで完成するゴーレムだ。


 まともに活動できなかったのは非常に残念だけれど、それもこれもルーナが恭介の新しい二つ名を勝手に名付けて広めたのが悪い。


 撃破されてしまった機体のことをこれ以上考えても仕方がないので、ルーナは気持ちを切り替えて4戦目のゴーレムが現れるのを待つことにした。


 そして現れた4戦目のゴーレムは、黒と白の模様がタイガーパターンのベルセルクだった。


 普通のベルセルクと違うのはカラーリングだけでなく、頭部が虎になっている点と武器が両手に大剣ではなく大十字剣であることだろう。


『今回も初見だね。ティグリスベルセルクだよ。アサルトノワールとブランスレイヤーを合成した敵限定のゴーレムなんだ』


 ルーナが解説している途中でティグリスベルセルクは動き出しており、大十字剣剣の先端をウェイルスカイのように伸ばしてドライザーを攻撃した。


 その攻撃を察知した時、恭介はラストリゾートをソードブレイカーに変えて刃を櫛状になった峰で受け止めてへし折った。


 勿論それだけで終わるはずもなく、三対の翼からビットを射出してビームを放てば、得物を破壊されて防ぎようがないティグリスベルセルクに全弾命中して返り討ちという結末になった。


「次はまだか?」


『こちら現場のルーナ。恭介君のイライラはまだ解消されてない模様』


「ハウス」


『クゥ~ン…』


 しょんぼりした犬の鳴き声を真似しているルーナがいても、恭介はそれをスルーして最後の敵が現れるのを待っている。


 それから少ししてから現れた最後のゴーレムは、水属性の人型ゴーレムだった。


 両肩にはガトリングガンが備え付けられており、左腕にパイルバンカーと右腕にエネルギーシールド、一対の翼はソードウィングになっているため、武器庫のようなゴーレムと言える。


『レジサイドだねぇぇぇぇぇ!?』


 ルーナが馬鹿みたいに驚いた理由だが、恭介がドライザーを土属性に変えて土精霊槌ノームハンマーでレジサイドをぺしゃんこにしてしまったからだ。


 解説しようとした対象がその次の瞬間に圧倒的な力で破壊されてしまえば、ルーナのような反応になるのも仕方あるまい。


「ふぅ、すっきりした」


 恭介がそう言った時には5連戦が終わったため、ドライザーのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①ダビデ②アルベリヒ③オクタグラム

     ④ティグリスベルセルク⑤レジサイド

部位破壊:①全て②全て③全て④全て⑤全て

討伐タイム:9分29秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ファーストキルボーナス:レジサイドの設計図

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

デイリークエストボーナス:リペアチケット

ギフト:黒竜人機ドライザーLv48(up)

コメント:私、恭介君を怒らせたら駄目ってわからされたよ

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 (レジサイドは3機目のベースゴーレムに使おう)


 コメント欄でルーナがわからされた発言をしていたけれど、恭介はそれに対してコメントせずにレジサイドの説明を読んで3機目のベースゴーレムの強化先として採用した。


 ギフトを解除して恭介が瑞穂に戻った時、モニターに映るルーナがやつれていたけれど、彼女に同情の余地はないのでスルーされたとだけ言っておこう。

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