第203話 外堀が埋められてる! 麗華を追い込んだのもこの時のためだったのか!?
格納庫に戻って来た麗華はムスッとしていたので、出迎えた恭介は気になって訊ねる。
「麗華、どうしたんだ? ルーナに何か言われたのか?」
「言われたっちゃ言われたんだけど…」
麗華がどう伝えれば良いのか悩んでいた時、格納庫のモニターにニヤニヤしたルーナが姿を見せる。
『恭介君、麗華ちゃんはキャプテン義体作成キットを手に入れたことをどう報告しようか悩んでるんだ。ラミアスが義体を手に入れたなら、きっとバインバインの体で恭介君を誘惑すると思ってるんだよ』
「ルーナ、勝手なこと言わないで!」
抗議する麗華だが、ぶっちゃけ図星である。
モニターに映るラミアスの乳揺れを見る限り、それに義体を与えたなら自分にとっての脅威になると思ったのだ。
ルーナは麗華の抗議をスルーして説明を続ける。
『嫉妬深い麗華ちゃんのために補足説明すると、キャプテン義体作成キットで造られる義体は特殊素材でできるから極めて人間の体に似せてあるよ。もっとも、アンドロイドだから骨格も含めて人間とは比べ物にならない程頑丈だけどね。ちなみに、行為はできても子供はできないから安心してね』
「余計なことは言わないで良いって言ってるでしょうが!」
子供はできずとも行為ができるなんて情報は余計だから、麗華はルーナにキレた。
フォローするようでむしろ追い込むあたり、相変わらずルーナはゲスとしか言いようがない。
モニターが半分に割れ、ラミアスが右半分に姿を見せる。
『私個人としては、体をいただけると助かります。それがあれば皆様に対してできる支援も増えますので』
『それは恭介君の性欲の発散も含むのかな?』
『…瑞穂のエースパイロットにお喜びいただけるのであれば、いくらでも体を差し出しましょう』
「もう止めてよ!」
ルーナが意地悪な質問をラミアスにすれば、ラミアスはあくまで支援するポジションとしてそれが瑞穂のためになるならばと首を縦に振った。
ラミアスの回答が自分にとって望ましくないものだから、麗華は涙目である。
恭介は麗華を抱き締めて落ち着かせつつ、ルーナにツンドラよりも冷たい視線を向ける。
「ルーナ、瑞穂を掻き回すな。俺を下半身直結野郎と一緒にするな。これ以上は言わなくてもわかるよな?」
『Sir, Yes Sir!』
緊張した様子で敬礼したルーナは、絶対にこれ以上言ってはいけないと判断してモニターから消えた。
「麗華、落ち着くんだ。ルーナはもう黙らせたから」
「うん…」
「俺がルーナの言ったようなことをすると思うのか?」
「しない」
「そうだろ? それならもう大丈夫だ」
麗華が落ち着いたと思ったから、恭介は離れようとした。
しかし、今度は麗華が恭介を離さなかった。
「もうちょっとこのままでいさせて」
「しょうがないな」
それで麗華の機嫌が直るならば良いと思い、恭介はリクエストに応じることにした。
しばらく麗華のためにじっとした後、恭介はラミアスに声をかける。
「ラミアス、俺はお前にルーナが言ったような命令を下すことはない。今まで通りにフォローしてくれれば良い」
『承知しました』
ラミアスは賢いAIなので、麗華を不安にさせるような発言はこの場で口にしなかった。
だが、頭の中では必要とあらばルーナに言った通り、恭介がそれで瑞穂のために頑張ってくれるならいくらでも体を差し出すつもりだった。
これは優先順位や行動原理の問題なので、ちょっとやそっとじゃ変えられないものなのだ。
恭介に甘えて完全に気持ちが落ち着いたため、麗華はキャプテン義体作成キットを使った。
冷静に考えて、人手が増えるメリットは多いからである。
キャプテン義体作成キットによってラミアスの義体が創造され、瑞穂にラミアスが現れた。
それと同時に
「体があるというのは良いものですね。キャプテンラミアス、今まで以上に恭介さん達を支援させていただきます」
「よろしく頼む」
ラミアスに敬礼され、恭介も敬礼を返した。
その後、恭介は午前中の残った時間でバトルメモリーに挑むのは少し厳しいと判断し、麗華と一緒にショップチャンネルを見ることに決め、モニターを操作する。
○設計図関連
・レオンロックの設計図 250万ゴールド
・イーグルノクターンの設計図 250万ゴールド
・イグニスオペラの設計図 250万ゴールド
・クルーエルラプソディの設計図 250万ゴールド
・設計図合成キット 100万ゴールド
○鉱物マテリアル
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○武器関連
・ビームランチャー(
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・蛇腹剣(
・パイルバンカー(
・武器合成キット 100万ゴールド
○魔石
・4種セット×10 1万ゴールド
・4種セット×50 5万ゴールド
・4種セット×100 10万ゴールド
○チケット
・リペアチケット 100万ゴールド
・ワープチケット 100万ゴールド
○その他
・ベースゴーレム 100万ゴールド
・婚約指輪(デザインも選べます) 500万ゴールド
(ちょっと待って。色々ツッコミを入れさせてほしい)
恭介はショップチャンネルの取り扱っている商品の変化に驚いた。
昨日までは設計図と武器という項目だったのに、今日になったらそれぞれ設計図関連と武器関連になっており、設計図合成キットと武器合成キットが追加されていた。
それはまあ、関連性があるしあった方が助かるものだから良いとしよう。
問題はその他の項目だ。
ベースゴーレムと婚約指輪が追加されていることが謎である。
ベースゴーレムが追加されたことは、2期と3期パイロット達にとって良いことだろうから、それ自体を恭介がとやかく言うつもりはない。
しかし、婚約指輪がショップチャンネルで買えるというのはどうなのかと思ったのだ。
その上、ベースゴーレムの次に出る商品が婚約指輪というのもどうかと思った訳である。
チラッと恭介が隣にいる麗華を見ると、その目は婚約指輪をロックオンしていた。
いつの間にか麗華は恭介の手を握っており、その行動によって婚約指輪を買ってほしいと主張している。
その時、ショップチャンネルにルーナがひょっこりと現れた。
『婚約指輪は期間限定商品だよ。500万ゴールドで2人分の指輪を用意してあげるからね。しかも、今ならデザインも好きなものを選べるんだ』
(外堀が埋められてる! 麗華を追い込んだのもこの時のためだったのか!?)
恭介はルーナの作戦に戦慄した。
ラミアスに義体を与えて麗華を不安にさせ、そこに婚約指輪をチラつかせることで恭介と麗華を婚約させようという作戦だったのだ。
ルーナにまんまと嵌められた感じは否めないが、恭介は今日までの濃密な46日間を麗華と共に過ごして来て、隣に麗華がいることを自然に思えるようになっていた。
下半身直結野郎と軽蔑する父親のせいで、恋愛に前向きな姿勢を取れなかった恭介にとって麗華はかなり貴重な存在と言える。
ルーナに嵌められたとはいえ、ここまでお膳立てされて恭介が婚約指輪をスルーする訳にはいかない。
「麗華、こんな俺だけど結婚してくれるか?」
「うん!」
婚約指輪を貰えるということは、自分が恭介の心を射止めたことに他ならない。
麗華はようやく恭介を自分のものにできたと実感し、心の底から笑顔になっていた。
独占欲の強い麗華は婚約指輪を貰えるとわかり、やっと安心できた訳である。
デザインは2つを重ねると1つの指輪になるものを選び、その指輪には細工としてダイヤモンドも使われていた。
お互いに左手の薬指に嵌め合うことで、晴れて恭介と麗華は婚約者になれた。
『コングラチュレーション! 婚約してくれて良かったよ! 高天原が完成したら、結婚式の準備も始めようね!』
「ルーナは呼ばないけどな」
『アイエエエ!? ナカマハズレ!? ナカマハズレナンデ!?』
「呼んだら絶対面倒事しか起こさないからに決まってるだろうが」
「ルーナは招待客リストから真っ先に排除するよ」
用法が違うのではというツッコミはさておき、恭介も麗華もルーナだけは呼びたくないという意見で一致した。
ルーナが騒いでいる内に2期と3期パイロットが
恭介と麗華の指に婚約指輪を見つけ、明日奈の目からハイライトが消え、遥が仁志の腕を引っ張ってショップチャンネルを見たのは言うまでもない。
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