第204話 ゲス過ぎてクトゥルフ神話の邪神扱いされれば良いのに

 午後になり、恭介はコロシアムにバトルメモリーを挑むべくやって来た。


『あっ、遂に麗華ちゃんと婚約した恭介君じゃないか。三角関係が次のステップに進んで私はとっても興奮してるよ』


「息を吐くようにゲスなことを言ってて悲しくならないか?」


『全っ然』


「ゲス過ぎてクトゥルフ神話の邪神扱いされれば良いのに」


 渾身のゲス顔を披露するルーナに対し、恭介もサラッと毒を吐いた。


『酷いなぁ。私は地球のラストゴッドなんだよ? もうちょっと崇めてくれても良いじゃん。供物は君達のラブコメでOK』


「馬鹿なこと言ってないで入場門を開け。デュエルトーナメントに挑戦する」


『デュエルトーナメントね。了解。あっ、そうだ。新人戦の相手だと強化したところで恭介君は物足りないと思うから、敵として出て来るゴーレムは変えてあるよ』


「ふーん。そこでサービスするぐらいならレースのコースを増やしてくれれば良いのに」


『グフッ』


 痛い所を突かれ、ルーナは血を噴き出すエフェクトを入れた。


 恭介にとって、他のコンテンツよりもレースの方が優先度は高い。


 それはルーナも重々承知しているが、他のパイロットの成長も考えるとバトルメモリーへのリソース配分はこれぐらいが適正なのだ。


 ちなみに、恭介がデュエルトーナメントに挑戦するにあたり、ルールは元々のものから以下のように変わっている。



 ・1対1の試合はどちらかが死ぬまで4回相手を変えて行われる

 ・各試合ごとに制限時間は設けられていない

 ・トーナメントの組み合わせはこれまでの戦闘に基づいて決まる

 ・試合が終わってもゴーレムの損耗はアイテム以外で回復できない

 ・ゴーレムのサイズはタワー探索時と同じ



 重要なのは3つ目のルールだろう。


 これがある限り、恭介はデュエルトーナメントで物足りないと感じないはずである。


 ルーナが入場門を開き、恭介はドラグレンを操作してそのまま中に入っていく。


 移動先のコロシアムで恭介が目にしたゴーレムは、ブリザードルインズで登場したのとは属性違いである水属性のベルセルクだった。


『ドラグレン対ベルセルク、試合開始!』


 自分の操縦するゴーレムの弱点属性で敵が攻めて来たのだから、恭介は開始の合図と共にゴーレムチェンジャーで風属性のドラストムに乗り換える。


 ベルセルクは2本の大剣を振り回して攻撃するが、ドラストムの嵐の壁に防がれてしまう。


 (大剣から壊そうか)


 翼から爆発する粉塵を飛ばし、ベルセルクの2本の大剣を覆う。


 その瞬間に起爆することで、ベルセルクの両腕ごと大剣が爆散した。


 武器を持たないベルセルクはただの木偶だから、大鎌デスサイズ形態のアンヒールドスカーでバッサリと斬り捨て、ベルセルクは真っ二つになった。


『勝者はドラストム! 戦闘報酬は後で確認してね♪』


 ルーナのアナウンスが届くのと同時に、コロシアムのモンスターと同様に真っ二つになったベルセルクが消えて、その代わりに新たなゴーレムが恭介の前に現れる。


 それは火属性のテスタメントだった。


 このデュエルトーナメントでは、恭介が操縦するゴーレムと属性的に相性の良い敵しか出ないようだ。


『ドラストム対テスタメント、試合開始!』


 再び恭介はゴーレムチェンジャーを使い、ドラストムからドラクールに乗り換える。


 これで火属性のテスタメントに対し、水属性のドラクールは有利に戦える。


 テスタメントは遠距離重視で実弾とビームを切り替えられる銃を装備しており、ドラクールに接近されまいと距離を取って射撃を始める。


 ドラクールのスペックならば、テスタメントの射撃なんて容易く躱せるから、わざわざウェイルスカイを盾形態にせずともテスタメントに接近できてしまう。


 敵わないと思ったのか、ドラクールに背を向けて逃げ始めるテスタメントに対し、恭介は慈悲なんて与えず十字剣形態のウェイルスカイの刃を伸ばし、テスタメントのコックピットを貫いた。


『勝者はドラクール! 2連勝だね! 戦闘報酬は後で見てね♪』


 ルーナのアナウンスが届くのと同時に、テスタメントが消えるのと入れ替わりで土属性のベルフェゴールが現れる。


 やはりドラクールに対して属性的に有利な土属性のゴーレムが相手だから、ゴーレムチェンジャーがなければ苦しい戦いになるだろう。


『ドラクール対ベルフェゴール、試合開始!』


 開始直後に恭介はゴーレムチェンジャーを使い、ドラクールからドラストムに乗り換えた。


 防御特化のベルフェゴールは、攻撃を反射できる盾を4枚ずつ衛星のように展開して恭介の攻撃から機体を守り始める。


 アンヒールドスカーをビームキャノンに変え、恭介はベルフェゴールの盾ごと破壊するつもりでビームを放つ。


 (確かにベルフェゴールの盾による反射は厄介だが、それなら反射できないレベルの攻撃をすれば良いだけだ)


 土属性に対して風属性は相性が良いから、反射できる盾を持っていると言えど耐久値はガリガリと削れていく。


 恭介は自分の撃ったビームを反射されたぐらいでやられるパイロットではないから、ビームキャノンで耐久値をある程度削りながら接近し、射程圏内に入ったらアンヒールドスカーをパイルバンカーに変形させる。


「ロマンを感じさせてやるよ」


 そう言って恭介がパイルバンカーを発射すれば、4枚の盾ごとベルフェゴールのコックピットを貫いた。


『ロマンを感じさせてやるよ。濡れるッ!』


「黙ってろ」


『はーい』


 はしゃぐルーナを黙らせている内に、アナウンスが恭介の耳に届く。


『勝者はドラストム! 戦闘報酬は後で見てもらうとして、次が最終戦だね♪』


 次に現れたゴーレムは、キメラパークで登場した機体とは属性違いである火属性のゲヘナキーパーだった。


 カラーリングが赤くなって大剣を装備するだけでも、地獄の門番らしさが増している。


『ドラストム対ゲヘナキーパー、試合開始!』


『ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!』


 頭頂部には赤いパトランプが光り始め、音を発すると同時にドラストムの動きを鈍らせようとする。


 ゴーレムの動きを鈍らせる音が聞こえようと、パイロットの動きが鈍る訳ではない。


 それゆえ、動きの鈍ったドラストムに接近して大剣を振り下ろそうとするゲヘナキーパーに対し、恭介はゴーレムチェンジャーを使ってドラクールに乗り換えればデバフはリセットされる。


 ドラクールの動きが悪くなるよりも先に、ドリルに変形させたウェイルスカイを突き出せば、ゲヘナキーパーのコックピットをドリルが貫通してゲヘナキーパーは沈黙した。


『そこまで! 勝者はドラクール! 4連勝おめでとぉぉぉぉぉ!』


 ゴーレムチェンジャーがあったからこそ、ゲヘナキーパーのデバフをリセットできたのだから、恭介のデュエルトーナメントの勝因はゴーレムチェンジャーに違いない。


 全ての戦いを終えた恭介は、モニターに映り出したスコアをチェックする。



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バトルスコア(バトルメモリー・デュエルトーナメント)

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討伐タイム:9分47秒

ゴーレム撃墜数:4機

撃墜ゴーレム一覧:ベルセルク(黒金剛アダマンタイト/水)

         テスタメント(黒金剛アダマンタイト/火)

         ベルフェゴール(黒金剛アダマンタイト/土)

         ゲヘナキーパー(黒金剛アダマンタイト/火)

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

   100万ゴールド

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

最短記録ボーナス:ドラグレン専用兵装ユニット赤不動砲アチャラナータ

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv38(stay)

コメント:ドラキオン以外を使う時のことも考えないとね

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 (それは言えてる。ドラキオンには時間制限があるからなぁ)


 ルーナのコメントにもある通り、ドラキオンは切り札だが1日に1回しか使えないという制限がある。


 すなわち、普段使いできる強力な武器があるに越したことないのだ。


 瑞穂の格納庫に戻ると、ドラグレンのコックピット下の大砲が強化されており、ドラグレンの竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムと同様に陽電子砲を発射できるようになっていた。


 ドラキオンと違って1つしか付いていないけれど、それでもあるのとないのでは大違いである。


 恭介はドラグレンが強化されたことでご機嫌になり、それを見ていた麗華は自分も頑張るんだとやる気になってブリュンヒルデに乗り込んだ。

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