第268話 いい加減当たらないってわかりゅ? あっ、わからないよね、ごめんねー
チャウグナー・フォーンとキノトグリス、オトゥームを倒した第一小隊はその後も
「もうすぐ半周して合流地点ですが、単一個体が序盤を除いてなかなか出て来ませんね。ここも死体が放置された戦場の跡って感じです」
『戦国時代にしてはしょぼいなって感想です』
『そう油断させといて、実は地下から襲って来るとかありませんかね?』
『第一小隊の皆さん、気を付けて下さい、その先にC131ハスターリクの反応があります』
ラミアスのアナウンスが聞こえて沙耶達は周囲を見回したが、ハスターリクらしい敵は見当たらなかった。
「田辺さんの言う通り、地下からの攻撃かもしれません。高度を上げましょう」
『『了解』』
嫌な予感がして沙耶達が高度を上げた直後、地上に転がっている死体がパンと音を立てて次々に破裂し始めた。
「攻撃を受けてるようですね」
『何処からですか? ビームも実弾も見えませんでしたが』
『目に見えない攻撃ですか。厄介ですね』
何処から攻撃があったのか探しているが、沙耶達は一向に見つけられなかった。
そこに第二小隊が合流する。
『サーヤ、応援に来たよ。ハスターリクが見つからないんだって?』
「そうなんです。地上では
『不可視の敵ってのは厄介だね。ラミアス、何処にいるとか具体的にはわからないの?』
『申し訳ございません。第一小隊と第二小隊の集まってる一帯から、C131ハスターリクの反応がすることまでしかわかりません』
ラミアスがそう告げた直後、コンダクターとタイラントドレイク、ダビデが予兆もなく弾けた。
『『「え?」』』
『落ち着いて下さい。仁志さんと遥さん、潤さんはスケープゴートチケットのおかげで無事に瑞穂の格納庫に戻って来てます。それよりも、今の攻撃によってその周辺にC131ハスターリクの反応が強まりました。近くにいるはずです』
ラミアスは沙耶達がパニックにならないように、努めて冷静にやられた3人が無事に瑞穂に戻ったことを報告した。
仁志達のことが心配な気持ちはあっても、沙耶達は自分達を攻撃する未知の手段で攻撃するハスターリクを警戒せねばなるまい。
それでもハスターリクが見つからず、沙耶達が周囲を警戒しているとラミアスが追加で報告する。
『特定しました。C131ハスターリクはウイルスです。ウイルスが爆発することで有機物と無機物を問わず侵入して内側から爆発する仕組みで攻撃しております』
「ラミアス、私と晶さん、等々力さんが攻撃されなかった理由はわかりますか?」
『おそらくですが、機体スペックや性能、属性によるものかと思います。レイダードレイクは第一小隊と第二小隊を合わせて最もスペックが高いですから、ある程度のスペック以下の物体にしかハスターリクのウイルスは侵入できないのでしょう。アスタロトは展開しているフィールドのおかげでウイルスが入り込めず、ゲイザーは火属性でウイルスが死滅したようです』
「わかりました。それでは、この辺一帯を消毒するために破壊します」
ラミアスの説明を受け、沙耶はハスターリクを倒す手段を考え付いた。
晶と明日奈も他に対策が考えられなかったため、沙耶達はそれぞれの武装をフル稼働して周辺を破壊し始める。
弾けた
『沙耶さん、晶さん、明日奈さん、C131ハスターリクの反応が消えました。ただ、その周辺に新たな敵性反応です。C132ディタラとC133イグが接近しております』
ラミアスのアナウンスの直後、地表にできた穴の1つから四足歩行の蜥蜴らしき見た目のディタラと蛇人間のイグが姿を見せた。
ディタラを蜥蜴らしき見た目と表現したのは、鱗の隙間から無数の触手を生やしており、から普通の蜥蜴ではないということである。
『シュロロォォォ』
イグの声が静かに周囲へと広がった後、地中からバイアティスがうじゃうじゃ飛び出して来た。
『爬虫類多過ぎ問題』
『あれだけ倒したのにまだいたんですね』
「1体も残さず駆逐しましょう。私がディタラをやります。イグは晶さん、バイアティスの群れは等々力さんにお任せします」
『『了解』』
素早く役割分担を済ませ、沙耶はディタラに向かい合う。
ディタラは鱗の隙間から生やした触手を鋭くしてからレイダードレイクに向けて伸ばし始めるから、沙耶はそれを躱しながら触手の根本を尻尾の蛇腹剣で切断した。
切断された触手がピチピチ跳ねるが、しばらくすると柔軟性を失って固くなってから動きを止める。
最初は触手をレイダードレイクに突き刺そうとしたディタラだったが、それが上手くいかないとわかると地面に落ちている固くなった触手を残った触手で拾い上げ、それを投げ槍の要領でレイダードレイクに投擲し始めた。
(切断した触手の再利用ですか、そうですか)
避け続けて槍替わりの触手がなくなるのを待ち、投擲が終了したタイミングで沙耶はレイダードレイクを機械竜形態に変形させて口からビームを放つ。
それが延々と投擲して一休みしていたディタラの頭部に命中し、その頭部が消し飛んだ。
頭部を失ってもまだ胴体が痙攣していたため、沙耶は
串刺しにした状態で爪の先からビームを放てば、生命力の高いディタラも力尽きて動かなくなった。
その一方、イグと戦っていた晶はこれ以上バイアティスを呼び出されると明日奈の負担が増えるから、追加でバイアティスを呼ぼうとして止まったイグにペリュトン爆弾を発射した。
イグは熱源を感知して回避しようとしたのだが、ペリュトン爆弾の攻撃範囲は広くて紙一重で躱しても爆発されたら巻き込まれてしまう。
一度それで失敗してダメージを負ってから、イグはバイアティスを呼ぶのを諦めて口から強酸弾を発射してアスタロトを撃ち落とそうとした。
『いい加減当たらないってわかりゅ? あっ、わからないよね、ごめんねー』
晶の煽りに苛立ったイグのコントロールが雑になり、晶がわざと低めの位置を飛んでいるからイグの攻撃が大量にいるバイアティス達にも命中する。
フレンドリーファイアが決まったのはこれが初めてではなく、明日奈の仕事はこのようにして何度か減ったから明日奈は晶と合流した。
『手伝います』
『ありがとね。ヘイトはばっちり稼いでるから、狙えるものならあの首取っちゃって良いよ』
『では、そうさせてもらいます』
明日奈は少しでも戦果を挙げて恭介に褒めてもらおうと思っているから、晶が狙われている内に死角からイグを狙う気満々である。
晶も晶で明日奈がイグを強襲した時、それにイグが反応した隙を狙うつもりだから中々腹黒い。
イグは敵がアスタロト以外にゲイザーも増えたとわかったから、晶のみと戦っている時には使わなかった攻撃手段を用い始める。
それが鱗の全方位射出だ。
しかも、鱗は強酸弾同様にいつの間にか強酸濡れになっており、少しでも触れればゴーレムの機体を融かせるから厄介だ。
イグの全方位攻撃により、明日奈は簡単にイグに接近できなくなったが、晶はアスタロトの展開するフィールドのおかげで楽に回避し、ミサイルを放ってその爆発でイグに大ダメージを与えた。
『ダメ押しもあるよ』
今度はペリュトン爆弾を放てば、爆発のダメージで怯んでいるイグに命中してイグは力尽きた。
イグが力尽きたところで、明日奈が晶に抗議の通信を入れる。
『晶さん、私のことを囮に使いませんでしたか?』
『使ってないってば。ヘイトは稼いでたけど、全方位攻撃だったら当然僕以外にも攻撃は向かうじゃん』
『…そういうことにしておきましょう』
晶と明日奈が話しているところに沙耶も合流したが、ラミアスからミッション終了の案内が貰えず沙耶が訊ねる。
「ラミアス、まだ敵がいるんですか?」
『つい先程まではイグがラストでした。ところが、元々暗黒惑星ゾスにいなかった単一個体2体が接近中です。敵はC134ナグとC135イェブです』
(単一個体の多く現れる惑星ですね。戦国時代に突入した惑星なんて次は絶対嫌です)
沙耶は溜息をつき、視界の端からやって来る2体の敵に備えた。
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