第269話 追撃一丁!
暗黒惑星ゾスの外からやって来たナグとイェブは腐った肉の塊みたいな外見をしているが、実際にはガスを圧縮して体を構成している。
不定形のナグとイェブが地表付近にいる沙耶達を見て小刻みに震えた。
『イェブ、どういうことかなー? ここには変な奴が3体しかいないよー』
『どういうことだろうね、ナグ? 俺達が倒そうとしてた奴等がみんな死んでるよ』
「私と晶さんでナグを倒します。等々力さんはギフトを使ってイェブをお願いします」
『了解!』
『わかりました。ギフト発動』
麗華が指示を出した直後、明日奈は
『トゥモロー様、右の肉塊を倒します。ご助力下さい』
(ギフトの産物でも兄さんのように敬うんですね)
沙耶は先に戦闘を始めた明日奈とアンチノミーを見て、明日奈がどれだけ恭介を崇めているのか理解した。
別に結果を出してくれれば構わないから、沙耶はこの場において深く考えるのを止めた。
明日奈のことよりも、対峙するナグを倒すことに専念すべきだからである。
『イェブが苦戦してるなー。それなら最初から飛ばしてくよー』
ナグはそう言った瞬間、体の形状をオーガのように変化させた。
体の変化と共にナグの両手には大剣が握られており、ナグの体とは異なってその大剣は黒くて硬そうな見た目だった。
『はーい、ドーン』
「やらせないよ」
ナグが振り下ろした両腕の大剣は、半分から先が前方に弾丸のように射出された。
晶はそれをカタルシスのペリュトン爆弾で迎撃し、ナグの飛ばした攻撃と相殺する。
攻撃が相殺した時に発生した爆発の後ろから、沙耶が
『おもしろーい。でも効かなーい』
爆炎が流れて沙耶と晶が目にしたのは、ナグが体を操作して体の中心に自ら穴を作ってビームを素通りさせた姿だった。
(なるほど。攻撃が当たらないように体を操作するんですね。だったら当たるようにすれば良い話です)
「ギフト発動」
ナグが攻撃を見てから避けるならば、更にそれを予測して攻撃すれば良いと考えて沙耶は
それによって見通した未来の情報を基に、沙耶はナグに接近戦を挑む。
「晶さん、援護をお願いします」
『了解!』
『こっち来んなー』
ナグが再生させた大剣を振り回し、その度に剣先が分離して弾丸のようにレイダードレイクを攻撃するが、晶が後方からナグの攻撃を狙撃して相殺するから沙耶にダメージはない。
尻尾の蛇腹剣と
ところが、沙耶は
『痛ぁぁぁぁぁぁい! よくもやったなぁぁぁぁぁ!』
先程まではのんびりした口調だったが、そこに怒りが混じって声質が荒くなった。
変化は声だけでなく、ナグの体が一回り小さくなってフルプレートアーマーを着て剣と盾を持った重騎士の姿になった。
先程の形態で握っていた大剣と同じく全身が黒く染まっており、ナグはレイダードレイクの尻尾の蛇腹剣と
今回は体を分割させずに硬化させることにより、ダメージを受けないようにしたらしい。
だが、硬くなって体を柔軟に操作できなくなるならば、沙耶は
実際、今度は体に穴を開けてビームを素通りさせられず、ナグは沙耶の攻撃をまともに喰らってしまった。
『追撃一丁!』
晶の声が聞こえた瞬間には沙耶がナグの正面から離れており、それと入れ替わるようにしてカタルシスから放たれたミサイルがナグに着弾した。
着弾と同時に派手に爆発が生じたため、ナグの体は完全に爆発に巻き込まれた。
ダメージを受け流せなかったナグの体は爆炎の中で引火してしまい、そのまま跡形もなくなった。
「ナグの討伐完了です。晶さん、抜群の後方支援でした」
『ドヤァ』
「ドヤるだけの腕だったのは確かですが、力を抜くのは帰還してからです。イェブの方はどうでしょうか」
『アンチノミーが派手に戦って等々力さんが死角からファントムペインで刺す。これを繰り返してるみたいだね』
晶がそう言った時、沙耶の頭にも痛みに苦しむイェブの声が届いた。
『クソッ、痛い! 痛い痛い痛い痛い! ナグも殺された! 許せない!』
イェブはナグが沙耶と麗華に倒されたことを知り、その怒りを自分が負ったダメージに対する怒りに上乗せして体を膨張させ始める。
バラバラになっていた体が結合し、それが風船のように膨らみ始めたことから沙耶達はこれから起こることを察した。
その予想はラミアスのアナウンスによって裏付けられる。
『沙耶さん、晶さん、明日奈さん、C135イェブの体に高エネルギー反応です! 自爆に巻き込まれないように退避して下さい!』
『逃がさない!』
『チッ』
明日奈はイェブから距離を取ろうとするが、イェブの膨張する速度が想像以上に速くて射程圏外への脱出が難しい。
『ギフト発動』
イェブが爆発する寸前に晶が
『これでさっきのヘイト操作が甘かったことは堪忍してくれるかな?』
『ありがとうございました。今回助けてもらえましたので、もうグダグダ言いません』
『それは良かったよ』
『沙耶さん、晶さん、明日奈さん、お疲れ様でした。暗黒惑星ゾスから生体反応が消えました。侵攻作戦は終了です。帰艦して下さい』
沙耶達は瑞穂に戻り、それと同時に各々のゴーレムのコックピットにはバトルスコアが表示された。
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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)
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出動時間:1時間39分27秒
撃破数:シャン256体
チャウグナー・フォーン1体
キノトグリス1体
オトゥーム1体
イスタシャ1体
リサリア1体
イオド1体
ハスターリク1体
ディタラ1体
イグ1体
バイアティス64体
ナグ1体
イェブ1体
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総合評価:A
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報酬:資源カード(食料)100×13枚
資源カード(素材)100×13枚
130万ゴールド
ファーストキルボーナス:アノニマスウエポン
武器合成キット
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×130
ギフト:
コメント:作戦成功おめでとう! パーフェクトまであと少しだったね!
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(評価Aだったのは、3人がスケープゴートチケットを使うことになったのを指してるんでしょうね)
沙耶は総合評価とコメントを見て、報酬が豪華だったにもかかわらず素直に喜ぶことができなかった。
コックピットから沙耶達が出て来たところに、仁志達が合流して頭を下げる。
「やられてしまってすみませんでした」
「申し訳ございませんでした」
「次はこうならないようにします」
謝る3人に対して沙耶が代表して口を開く。
「頭を上げて下さい。ハスターリクの攻撃を防ぐには3人のゴーレムだと厳しかったようです。今回の反省を生かし、自分の乗るゴーレムは作戦開始までに少しでも良い機体にして下さい。強いゴーレムに乗れば生存確率が上がるのは今回の作戦でわかったはずです。切り替えて行きましょう」
「「「はい!」」」
沙耶の言葉に仁志達は素直に返事をした。
元々反抗的な態度を取っている訳ではなかったが、前回の作戦で負傷した沙耶と晶が無傷であり、自分達は負傷どころかスケープゴートチケットがなければ死んでいたので、仁志達も次は同じ目に遭いたくないと強く思ったのだ。
そこに恭介と麗華、ラミアスも合流し、沙耶達を労ってから反省会を始めた。
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