第218話 金だ金だよ、金ぇぇぇぇぇ!

 恭介が良い報酬を獲得したので、麗華も負けじと良い報酬を求めてコロシアムにやって来た。


「ルーナ、今日もコロシアム5連戦に挑むわ」


『恭介君に続いて麗華ちゃんが2番目の完全制覇者になるつもりなんだね。はい、開いたよ』


 麗華はルーナが無駄口を叩かずに入場門を開いたから、ブリュンヒルデを操縦してその中に入った。


 コロシアムには黄色い蟷螂の特徴を持つエンプーサがいた。


 片足は真鍮製であり、もう片方の脚は大きな鉤爪がある。


 両腕は蟷螂の鎌になっており、背中から蝙蝠の翼を生やす姿は化け物と呼ぶに相応しい。


「その塊の中にビクンビクン来る雄はいない」


「黙って消えなさい」


 ブリュンヒルデの全武装で一斉掃射すれば、エンプーサの体は蜂の巣になって1戦目が終わった。


『瞬殺瞬殺ゥ!』


「ハウス」


『はーい』


 ただ言うことを聞かない駄犬に命じるようにルーナに言えば、彼女はモニターから消えた。


 それと同時にフレースヴェルグが現れる。


 (風属性が相手ならエクリプスね)


 火属性のエクリプスを操縦できるようになった今、麗華は風属性のモンスターと戦うことになった場合はゴーレムチェンジャーを使うようにしている。


 ゴーレムチェンジャーを使うことで、麗華はブリュンヒルデからエクリプスのコックピットに移った。


 麗華の乗り換えをフレースヴェルグが待つ理由はないので、無数の風の刃をエクリプスに向かって放ち始めた。


「その攻撃を待ってたの」


 盾形態のアヴェンジャーを構え、麗華はフレースヴェルグの攻撃を全てそれで受け止める。


 恭介が戦った時は偏差射撃をしてみせたが、麗華は避けずに全てアヴェンジャーで防ぐからその必要もない。


「フレェェェェェ!」


 攻撃が全くエクリプスに届かないことに苛立ち、フレースヴェルグが叫んだ。


 風の刃の威力は上がるけれど、アヴェンジャーを破壊するだけの威力はない。


 ずっと全力で攻撃し続けたものの、ちっともダメージを与えられずにフレースヴェルグはいきぎれしてしまう。


 (復讐するは我にありってね)


 アヴェンジャーをビームライフルに変形させ、両翼と頭部を撃ち抜けば戦闘が終わった。


 フレースヴェルグの体が消えるのと同時に、コロシアムを埋め尽くす程巨大なミドガルズオルムが現れた。


 火属性のエクリプスでは不利だから、麗華はブリュンヒルデに乗り換える。


 こういう時に土属性のゴーレムがあればと思わなくもないが、それでも麗華にとってそれはドラキオン以外に考えられないから、ブリュンヒルデで戦うのだ。


 ミドガルズオルムはブリュンヒルデを見て水のレーザーを放つ。


 ブリュンヒルデをを追うように撃つものだから、麗華は攻撃を混沌衛砲カオスサテライトに任せて回避に専念する。


 最初は混沌衛砲カオスサテライトの攻撃を無視してブリュンヒルデを攻撃していたが、ダメージが蓄積するにつれて鬱陶しく思うようになり、ミドガルズオルムの狙いが混沌衛砲カオスサテライトに移った。


 (地道に削るわよ)


 麗華はヴォーパルバヨネットと四対の翼の銃でミドガルズオルムに攻撃し、混沌衛砲カオスサテライトへの攻撃を強制的にずらす。


 やりたいことが何もできなくてイライラしていたせいで、ミドガルズオルムの攻撃精度は更に落ちている。


 水のレーザーによる攻撃を止めたミドガルズオルムは、イライラを体で表現することにしたのかじたばたし始めた。


 じたばたするだけで攻撃になるのかと思う者もいるかもしれないが、世界を何周も巻いているなんて話もある存在だから、その巨体でじたばたすれば地震が起きる。


 それどころか、少し触れるだけでも吹き飛ばせるだけの運動エネルギーがあるので、不用意に近づけないのだ。


 そんなミドガルズオルムの攻撃を避けるため、麗華はブリュンヒルデをコロシアム上空に移動させる。


 これから先は暴れているミドガルズオルムに遠くから射撃し、じわじわとその体力を削る作業になった。


 30分程かかり、ようやくミドガルズオルムの巨体が音を立てて倒れた時には麗華も少しぐったりしていた。


「タフ過ぎるでしょ。恭介さんの土精霊槌ノームハンマーって本当にすごいのね」


『私はてっきり金力変換マネーイズパワーを使うと思ってたんだけどね』


「それも考えてはいたけど、地道に削って倒せる相手にわざわざ使って最終戦の敵に使えないようにすると、戦略を自分で減らすことになるからそうならないようにしたのよ」


『なるほどねぇ。あっ、掲示板で一部の変態に好かれてるエキドナが現れたよ』


 (余計な情報はいらないわよ)


 掲示板には多種多様な趣味を持つ者が集まるから、麗華はそっとしておきたいのだ。


 ミドガルズオルムの巨体が光になって消え、その代わりに現れたエキドナはいきなり自分の子供として知られるネメアズライオンを口から吐き出し始める。


「お゛お゛お゛え゛っ」


「汚いものを見せんじゃないわよ!」


 全武装でエキドナとネメアズライオンの両方を攻撃したことにより、ネメアズライオンは体が蜂の巣になって生まれると同時に死んだが、それが肉壁になってエキドナには息があった。


「お゛お゛」


「やらせないわ!」


 再び全武装で攻撃すれば、エキドナも蜂の巣になって力尽きた。


「ふぅ。本当に酷いものを見させられたわ」


『こんなエキドナが好きな人もいるんだって。人間ってヤバいね』


「ヤバイ人がいるのは否定しないわ」


 麗華も知り合いの中にヤバいと思う者がいない訳でもなかったから、ルーナの発言を否定したりしなかった。


 エキドナに変わって次のモンスターが現れた瞬間、今度はサプライズのアナウンスがなかったので麗華は安心した。


 現れたのは全身緑色で上半身が人間で下半身が蛇、肩から無数の蛇が生やしたテュポーンである。


 風属性のテュポーンと戦うため、麗華は再びエクリプスに乗り換える。


「我が風をその身に受けよ!」


 テュポーンが突風のブレスを放つが、盾に戻ったアヴェンジャーを使って麗華がそれを防ぐ。


 肩の蛇達も風を吐き出すけれど、突風のブレスは属性的相性で劣勢にあるためアヴェンジャーを傷つけることができない。


 突風のブレスが通用しないと思ったため、テュポーンは攻撃方法を変える。


「落ちろぉぉぉぉぉ!」


 今度は叫ぶことで衝撃波を放つが、麗華はアヴェンジャーを構えてその衝撃に耐えてみせた。


 ここまでの攻撃でアヴェンジャーはビームライフルに変形できるだけのダメージを吸収したから、エクリプスの反撃が始まる。


 ビームライフルに変形したアヴェンジャーを構えたエクリプスを見て、テュポーンは焦り始める。


「おのれぇぇぇ!」


「ギフト発動」


 再び突風のブレスを放つテュポーンに対し、麗華はそれを躱しながら100万ゴールドをコストに金力変換マネーイズパワーを発動する。


 準備が整えばブレスなんて怖くないから、強化されたビームで突風のブレスを消し飛ばしてテュポーンの頭部を撃ち抜いた。


 その結果、テュポーンの体が地面に派手な音を立てて落下した。


 テュポーンの体が光になって消えれば、5連戦が終わったためエクリプスのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①エンプーサ②フレースヴェルグ

     ③ミドガルズオルム④エキドナ

     ⑤テュポーン

部位破壊:①全身②嘴/翼(左右)③全身

     ④全身⑤頭

討伐タイム:46分32秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ファーストキルボーナス:ハーロット専用兵装ユニット偉大獣砲セリオンキャノン

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×50

デイリークエストボーナス:50万ゴールド

ギフト:金力変換マネーイズパワーLv36(up)

コメント:金だ金だよ、金ぇぇぇぇぇ!

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「ルーナ、私を金の亡者みたいに言わないでくれるかしら?」


 バトルスコアに記載されたコメントに物申したくなり、麗華は先程からモニターでチラチラとこちらの様子を伺うルーナに声をかける。


『だって最後の一撃は札束ビンタじゃん』


「ゴールドって札束じゃないでしょ?」


『うわっ、麗華ちゃんが揚げ足取って来た。嫌らしい』


「いつもは人のことを揶揄うくせに、自分がやられると人を悪者扱いするのは違うでしょ」


 図星だったらしく、ルーナは何も言わずにモニターから姿を消した。


 ルーナを論破できたことに加え、サブのゴーレムであるハーロットにも専用兵装の偉大獣砲セリオンキャノンが加わったことで機嫌を良くした麗華は、鼻歌を歌いながら瑞穂の格納庫に戻った。

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