第217話 よくぞ生き残って来た我が精鋭よ
恭介達が瑞穂に来て49日目、朝食を取って身支度を整えた恭介と麗華は屋敷から瑞穂に移動した。
「レースして来る」
「楽しんで来てね」
格納庫で麗華に送り出された恭介は、ドラグレンに乗ってレース会場に向かった。
今日はパンゲアを傘下に入れたことを記念して、新しいコースが追加されたのだ。
起きてすぐにその知らせをルーナから聞いてから、恭介はずっとご機嫌だった。
シミュレーターにはまだ実装されていないため、初見でチャレンジするしかないと知っていてもすぐに挑みたいと思うぐらいにはレースができることに喜んでいる。
「デーモンキャッスルに挑む」
『だよね。言うと思ってた。早速案内するよ』
ルーナは無駄口を叩かずにさっさと入場門を開いた。
ご機嫌な恭介をわざわざイラつかせても、一時の快楽を得る代わりに大きなリスクを負いかねない。
だからこそ、おとなしく入場門を開いたのだ。
開かれた入場門をくぐり、恭介はデーモンキャッスルに移動した。
デーモンキャッスルとは、タワー探索の際に出て来る各種デーモンが邪魔者として登場する城型コースである。
勿論だが、各種デーモンが召喚できるモンスターもコースに現れるので、今までのどのコースよりも出現するモンスターの種類は多い。
スタート地点には既に7機のゴーレムが位置に着いており、ドラグレンが位置に着くのを待っている。
1位の位置には水属性のブラウアリトン。
アリトンの上位互換であるこの機体は、武器としてビームウィップを装備している。
ただの鞭とは違って熱で焼き切ることもできるから、拘束されたら機体の損傷は覚悟した方が良い。
2位の位置には火属性のロッソオリエンス。
イザベラが使っていたこの機体はオリエンスの上位互換であり、武器のガトリングガンが実弾ではなくビームに変わっている。
ただし、エネルギー消費が激しいから、魔石に余裕がない者にとって扱いにくいと言える。
3位の位置には土属性のゲルプアマイモン。
アマイモンの上位互換であるこの機体は、大気中のマナを吸収してサイズを大きくできる斬馬刀を装備している。
戦う際に斬馬刀のサイズを見た目通りに考えていると、うっかり斬られてしまうかもしれないので注意が必要だ。
4位の位置には風属性のグリューンパイモン。
パイモンの上位互換であるこの機体は、大気中のマナを吸収して斬撃を放てる
戦う際は
5位の位置には風属性のメラクス。
メビィとアラクネ、スフィンクスを合成したゴーレムであり、これら3つの特性が合わさった機体と言える。
デフォルトの姿がアラクネロボットなのだが、航空戦闘機に変形できる。
更に言えば、どちらの形態でもエネルギーを消費することでビームを吸収するシールドを展開できるから、機動力と守りにのバランスが取れていると言える。
6位の位置には火属性のセンジュ。
明日奈がサブのゴーレムとして使用しているため、両肩から出現させられる光の腕を警戒しないと足元を掬われるのは理解できている。
7位の位置には土属性のガイアドレイク。
こちらも沙耶が乗っている機体であり、機械地龍形態のビームは要注意であることを恭介もよく知っている。
レースに参加する全てのゴーレムの準備が整ったため、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1』
「ギフト発動」
恭介がギフトの発動を宣言し、彼はドラグレンのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。
『GO!』
スタートの合図と同時にドラキオンがスタートダッシュを決めた時、その後ろではハードな戦いが始まっていた。
1位のブラウアリトンが2位のロッソオリエンスのガトリングガンを警戒し、ビームウィップで攻撃していたら、3位のゲルプアマイモンと4位のグリューンパイモンが2機まとめて切断しようと攻撃する。
5位のメラクスはいち早く戦線から離脱するべく、航空戦闘機に変形して1位~4位の争いを無視して飛んで行こうとする。
それを邪魔するのが6位のセンジュであり、メラクスを両肩から光の腕を生やして必死に捕まえようと必死だ。
7位のガイアドレイクは、可能な限り多くのゴーレムが同一直線上に並ぶよう移動してから、機械地龍形態でビームを放つ。
その結果、メラクスを捕まえることに意識を向けていたセンジュに加え、カオスな状態で近くの攻撃を避けるのに必死だったブラウアリトンが撃ち抜かれて爆散した。
そんな状況になっているとは知る由もない恭介は、デーモンキャッスルを進んでいた。
最初に恭介を邪魔しに現れたのはデーモンだった。
デーモンが魔法陣を展開した時、既にデーモンはドラキオンに追い抜かされていた。
しかも、ドラキオンがトップスピードだったことで纏っていた風によって吹き飛ばされてしまい、配下の召喚にも失敗した。
(まさかこの程度で俺のドラキオンを邪魔できると思ってないよな?)
恭介がそう思った時、デーモンキャッスルの天井が下がって床の位置が上がり始めた。
それだけに留まらず、両側の壁の幅も少しずつだが狭まって来た。
(ゴーレムを押し潰すギミック? それともルートを誘導するつもりか?)
ギミックの意図はまだ特定できないが、恭介がやるべきはレースを1秒でも早くゴールすることだけだ。
コースを進んで行くにつれ、天井からギロチン、床から銃撃、両側の壁から飛び出す槍といったギミックが増えていく。
それらに加え、天井と床、左右の壁が狭まっていく速度も緩急をつけるようになり、タイミングを掴むのが難しくなっていった。
デーモンも何度か現れたが、毎回風圧で吹き飛ばしているのでそれは特に脅威ではない。
(1周目にしては難易度が高いのかもしれないな。2周目が楽しみだ)
1周目が無事に終わり、恭介が2周目に突入することで天井と床、左右の壁の狭まる速度が上がった。
しかし、狭まるだけじゃなくて広がりもしたため、天井と床、左右の壁の位置が変わるのはギミックの出現から自分の操縦するゴーレムにその攻撃が届くまでのタイミングをずらすためだとわかった。
スタート付近ではセンジュとブラウアリトンの残骸を見つけ、それからもう少し先ではゲルプアマイモンとグリューンパイモンの残骸も見つかった。
損傷具合からかなり派手にやられたことがわかる。
(既に半分がリタイアしてるってのは荒いレースじゃないか)
2周目も半周したところで、デーモンネクロマンサーとデーモンをまとめて風圧で吹き飛ばし、そのタイミングで発動したギミックで2体が力尽きた。
恭介の方がデーモン達よりもこのコースを上手く利用できているのだが、それもレースに対する意気込みの違いから来る結果なのだろう。
その時、突然天井と床、左右の壁が同じタイミングで同じだけ狭まり、前方から強烈なビームが放たれた。
(あって良かった
溜め込んだエネルギーは攻撃に上乗せせず、今回は加速に使った。
そのおかげでラップタイムが縮まり、恭介は1周目よりも速く2周目を終えられた。
先程のビームでやられたロッソオリエンスとガイアドレイクを除けば、残る敵はメラクスだけだ。
恭介はメラクスを追い抜いてみせると気合を入れて3周目に挑む。
3周目はアークデーモンも登場するようになり、1周目と2周目でデーモンやデーモンネクロマンサーが召喚したモンスターもぞろぞろ現れる。
そこにギミックも加わったせいで、メラクスは思うように先に進めていなかった。
恭介は半周したところでメラクスを見つけ、メラクスに群れるモンスター達によって生じた隙間を突破し、メラクスを追い抜いた。
ビームのギミックはクールタイムがあるようで、恭介がゴールを視界に捉えた時点で発射準備が始まったが、それが放たれるよりも先に恭介はゴールした。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』
アナウンスが聞こえたら、ビームを喰らいたくないので恭介はコースから脱出した。
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レーススコア(ソロプレイ・デーモンキャッスル)
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走行タイム:29分59秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:0回
他パイロット周回遅れ人数:7人
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×5枚
資源カード(素材)100×5枚
50万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×50
ぶっちぎりボーナス:兵器強化パック(瑞穂)
ギフト:
コメント:よくぞ生き残って来た我が精鋭よ
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「この程度なら余裕だわ」
『それは恭介君だけだからね!? ビームが1回しか発射されないで済むのは恭介君くらいだから!』
ルーナは恭介だから余裕だと言えるのであって、他のパイロットでは同じような感想を言えないんだと抗議した。
恭介はそれを適当に聞き流し、兵器強化パックによって瑞穂のあらゆる兵器の火力が上がったことに興味を示していた。
レース会場から戻って来ると、麗華だけでなくラミアスも笑顔で恭介を出迎えたのは今回のぶっちぎりボーナスが理由なのは間違いない。
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