第219話 馬鹿なことやってないで働け
麗華がコックピットから出て来た時、ラミアスが格納庫にやって来た。
「総員、第一種戦闘配備。繰り返します。総員、第一種戦闘配備。侵略者が現れました」
「総員って言っても、格納庫にあるゴーレムを見る感じでは俺と麗華しかいないな」
「地味に嫌なタイミングで攻めて来るよね。ラミアス、敵戦力について教えて」
「承知しました。C113ガタノソアとC114イソグサ、C115ゾス=オムモグのゾス三神です」
(ゾス三神ってことは、パンゲアを追って来たっぽいな)
ジェスパーから恭介が聞いた話では、パンゲアは高天原に来る前にルルイエで偵察を行っていた。
勿論、パンゲアの戦力では侵攻作戦を仕掛けるのは難しいから、あくまで敵戦力を調査する偵察だけを行うつもりだった。
ところが、偵察中に敵に悟られてしまい、ルルイエから全力で逃げたものの敵を引き連れて高天原の近くまで来てしまった。
だからこそ、パンゲアは大量の敵に襲われて高天原に救援要請をした訳だ。
「やれやれだな。麗華、行けるか?」
「全然へっちゃら。恭介さんと一緒なら何処にだって行くよ」
「頼もしいね。じゃあ、行こうか」
「うん」
恭介と麗華がそれぞれのゴーレムに乗り込むと、そこにラミアスの声が届く。
『恭介さん、麗華さん、当てにしてないとは思いますけどパンゲアのクルーは全員コンテンツで強化中のようです』
「大丈夫だ。単一個体が敵の時点で、パンドラクルーは最初から戦力に数えてない」
『そうでしたか。お手数をおかけしますが敵の迎撃をお願いします』
「任せろ」
恭介がドラストムをカタパルトの上に待機させたところで、ラミアスから発進許可が出る。
『進路クリア。ドラストム、発進どうぞ!』
「明日葉恭介、ドラストム、出るぞ!」
カタパルトから射出され、ドラストムが高真柄の外に飛び出してから麗華もその後に続く。
『進路クリア。ハーロット、発進どうぞ!』
『更科麗華、ハーロット、出るわよ!』
すぐにハーロットがドラストムに追いつき、恭介と麗華はクトゥルフ神話の侵略者達を迎撃し始める。
ゾス三神は三角形を意識したフォーメーションで向かってきたが、恭介は手始めにそれらを囲うように爆発する粉をばら撒く。
もっとも、ハーロットが水属性になっている以上、赤い竜も青い竜にカラーチェンジしているのだが。
それはさておき、
爆発の範囲は思っていたよりも広く、ガタノソアとイソグサに目立つ火傷を負わせ、ゾス=オムモグに至っては爆散していた。
(まず1体倒せたか)
「麗華、イソグサは任せて良いか?」
『大丈夫』
「わかった。気を付けて戦ってくれ」
『恭介さんもね』
戦う相手が同数になったことから、自分が戦う敵を素早く決めて恭介はガタノソアと向かい合う。
ガタノソアは電子機器に挿入するコンセントを大量に生やした見た目をしており、そのコンセントが爆発でなくなったところには苦痛に歪む人面が見えた。
(悪趣味な外見だな。長く見るものじゃない)
ギフトレベルが40を超え、恭介の精神はかなりタフなものになっている。
したがって、恭介がガタノソアを目にして皮膚が硬化して石のようになり、脳と主要器官だけを生かされるなんてことにはならない。
仮に、ギフトレベルが30に満たない者が見れば意識を保ったまま永遠に身動きもできないまま生きなければならないだろう。
なんにせよ、ガタノソアなんて生かしておくだけ危険だから、恭介はさっさと倒す決断をする。
ガタノソアが次々にコンセントを伸ばしてドラストムを攻撃して来るけれど、恭介は
それによってどんどん表に出て来る人面の数が増えるが、その人面を見ないように黙々とコンセントがなくなるまで切断し続けた。
『合体、合体、合体』
「する訳ないだろ」
頭に響くガタノソアの声にきっぱりNOと叩きつけ、恭介はドラストムの爆発する粉でコンセントがなくなって丸裸のガタノソアを包囲する。
ガタノソアは逃げようとするが、
「終わりだ」
粉を起爆させることで、ガタノソアはまともに爆発によるダメージを受けてしまい、肉片すら残さずに存在が消失した。
『まったくもう、私が切断されたコンセントを回収してなかったら、ルルイエの情報が手に入らなかったんだから感謝してよね?』
「情報収集は大事だが、最優先は敵の討伐だ。情報収集に気を取られて要らぬダメージを受ける事態は避けたい」
『そんなマジレスしないでよ。私の苦労を労ってほしかっただけなんだから』
ちょっといじけたようにルーナが言うものだから、恭介もルーナの集めた情報で助けられている自覚があったので、ルーナのリクエストに応えることにした。
「よくやった。偉いぞ」
『恭介君ってば下げてから上げるなんて上級者みたいだね。わ、私がそれで落ちると思ったら大間違いだよ(トゥンク)』
わざとらしい心の音にイラっと来たけれど、麗奈のことが心配だったから恭介はルーナの発言をスルーしてハーロットとイソグサの戦いに目を向ける。
視線の先では、麗華がイソグサの四肢を
イソグサは人型の蛙の見た目に見合った存在なので、四肢を切断されると口から長い舌を伸ばして攻撃した。
その舌は煙を発する液体を纏っていたため、麗華はアポカリプスをビームキャノンに変えて発射する。
それが舌と一緒に頭部を破壊すれば、イソグサは活動を停止した。
残った体をルーナが回収した後、ラミアスの声が2人の乗るゴーレムのコックピットに届く。
『恭介さん、麗華さん、お疲れ様でした。後続の敵性反応はありません。帰艦して下さい』
「終わったか。腹が減ったな」
『そうだね。お昼には丁度良い時間だよ』
麗華の言う通りで時刻は正午を少し過ぎた頃だったため、恭介達はすぐに瑞穂に戻った。
それと同時に恭介と麗華のゴーレムのコックピットにバトルスコアが表示されるたため、2人は確認を行う。
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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)
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出動時間:18分51秒
撃破数:ガタノソア1体
イソグサ1体
ゾス=オムモグ1体
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×9枚
資源カード(素材)100×9枚
90万ゴールド
ファーストキルボーナス:アップデート無料チケットⅡ(フリー)
スケープゴートチケット
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×120
ギフト:
コメント:1期パイロットの戦闘力は53万です
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「何を持って戦闘力が53万と算出されたのか」
『私の独断と偏見だね』
「フ○ーザがゴーレムと同等か? 世界観が違い過ぎて比較できんぞ」
『シミュレーターで対戦できるようにしてみる?』
「馬鹿なことやってないで働け」
『クゥーン…』
犬のような声を出しながら、ルーナはモニターから姿を消した。
コックピットを出た後、恭介と麗華はお互いの報酬にアップデート無料チケットⅡ(フリー)があると知ったため、それぞれ
それにより、2つの施設はver.8から上限のver.10になった。
瑞穂の設備が豪華になれば、クルーのモチベーションも上がる。
満足した恭介達は食堂に移動し、仲良く本日のおすすめランチを食べた。
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