第197話 レガアエモ~、レガアエモ~、レガアエモ~、ムダンガ~♪
場面は戻って北上する恭介達だが、しばらくすると巨大な穴を見つけた。
その穴には錆びた鉄でできた球体が埋め込まれていた。
『侵攻組の皆さん、気を付けて下さい! 穴の中の存在は敵です! C107のグロースです!』
ラミアスが球体の正体を突き止めた直後、球体の表面に巨大で真っ赤なモノアイが現れる。
どうやら今までは目を閉じていたらしい。
『レガアエモ~、レガアエモ~、レガアエモ~、ムダンガ~♪』
グロースの歌が聞こえた直後、2つの爆発音が恭介の背後で聞こえた。
『恭介さん! ガイアドレイクとサルガタナスが爆発した!』
『恭介さん、麗華さん、落ち着いて下さい! 沙耶さんと晶さんは瑞穂の私室のベッドに移動してます! 2人を乗せたゴーレムも格納庫に戻って来ました! スケープゴートチケットのおかげで無事です!』
(沙耶と晶が即死? 冗談だろ?)
スケープゴートチケットが使われたということは、脳内に直接流されたグロースの歌に即死効果があるということだ。
恭介と麗華にも聞こえていたが、それでも2人とそのゴーレムが爆発しなかったということは何か理由があるのだろう。
しかし、今はそれをじっくりと考えている場合ではない。
「くたばれ」
恭介は
『ギギャァァァァァァァァァァ!?』
至近距離から強烈な攻撃を2発同時に喰らえば、グロースのモノアイは破壊されるどころかその反対側まで貫通した。
「麗華、言いたいことは後で聞く! 確実に倒すぞ!」
『了解!』
沙耶と晶をやられてしまったことは、恭介と麗華にとって色々と思うところがある。
だが、今はそれを考えている時ではなく、まずは目の前の危険生物を確実に亡き者にすることに専念しなければならない。
それは麗華もわかっていたため、沙耶達を瑞穂送りにされた怒りを全武装からの一斉掃射に乗せた。
蜂の巣にされてグロースがボロボロと崩れ落ち、グロースの残骸はルーナが回収した。
『恭介君、麗華ちゃん、一旦瑞穂に戻ろう。現時点でニューイングランドは半壊してる。無理にこのまま進むよりも、一旦休息すべきだと思う。沙耶ちゃんと晶君が心配でしょ?』
『恭介さん、麗華さん、今のところ敵は沈黙しております。帰艦して下さい』
「…そうしよう」
『うん』
ルーナとラミアスから帰艦を促され、恭介と麗華はニューイングランドを脱出して瑞穂に戻った。
それと同時に、2人のゴーレムのコックピットにバトルスコアが表示される。
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バトルスコア(VSクトゥルフ神話)
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出動時間:1時間28分42秒
撃破数:クトーニアン55体
黒い仔山羊47体
マガ鳥38体
レンの蜘蛛80体
忌まわしき狩人32体
ディープワン79体
アトラク=ナクア1体
イタカ1体
ラーン=テゴス1体
グロース1体
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×12枚
資源カード(素材)100×12枚
120万ゴールド
ファーストキルボーナス:スケープゴートチケット×2
ギフトレベルアップチケットⅤ×2
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×120
ギフト:
コメント:干渉できる範囲で報酬を釣り上げたよ。上手く使ってね
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(ルーナがおふざけなしで使えるアイテムをくれた? これはよっぽどのことだぞ)
バトルスコアを確認し、ニューイングランド侵攻作戦がどれだけ重要なのか恭介は改めて理解させられた。
確かに今までも有用なアイテムを報酬としてもらうことはあったが、ここまでピンポイントで必要なものが与えられたことはなかったのだ。
それはつまり、ルーナも本気で今回の侵攻作戦を成功させたいと考えていることに他ならない。
ギフトを解除してコックピットから出ると、恭介は麗華と共に
3期パイロット達は格納庫でそれぞれのゴーレムに乗っており、何かあった時には再び出撃できるように準備しているので、恭介達はグロースにやられてしまった2人の部屋に入る。
恭介は晶の部屋に入り、麗華が沙耶の部屋に入った。
沙耶の部屋にいきなり恭介が入る訳にもいかないし、2人で沙耶の部屋に入って晶を放置する訳にもいかないからである。
晶の部屋に入ってみると、恭介は横になっていた晶がぼーっと天井を眺めているのを目撃した。
「晶、意識ははっきりしてるか?」
「…あ、あぁ、恭介君。ごめんね、やられちゃったよ。スケープゴートチケットがあって本当に良かった。でも、使わせちゃってごめんね」
「いざという時のためにスケープゴートチケットがあるんだ。晶と沙耶が無事でいてくれるなら安いもんだよ」
「まったくもう、僕が女だったら間違いなく恭介君に惚れてるね」
晶は力なく笑ったが、まだ冗談を言う気力は残っていたようだ。
それを聞いて恭介は不幸中の幸いだと思った。
「冗談を言えるならまだマシだ。あんな攻撃を受けたんだ。瑞穂に帰艦できても植物状態とか廃人になってたらどうしようかと思ったぞ」
「爆発に巻き込まれたと思った時には僕はベッドの上にいたんだ。だから、燃え盛る炎で焼かれた痛みを感じた訳じゃないんだよ。それでも、自分がスケープゴートチケットのない状態だったら死んでたって思うとぞっとするけどね」
「多分、一撃必殺みたいな攻撃を受けたから、ダメージで苦しむ暇もなく瑞穂で復活したんだ。全身を焼かれる痛みなんて誰だって経験したくないだろうから、それだけでもありがたい話なんだろうな」
「そうだね。それにしても、サーヤは大丈夫かな? 僕はまだ一度目だけど、サーヤは二度目だ。心に大きな傷を負ってなきゃいいんだけど」
晶の懸念はもっともである。
恭介も晶の言う通りで沙耶のことは気になっていたのだ。
それを察した晶は再び口を開く。
「恭介君、僕はもう大丈夫だ。ちょっと休んだら合流するから、サーヤの様子を見に行ってあげてよ」
「…わかった。晶、これを渡しておく」
そう言って晶に渡したのはギフトレベルアップチケットⅤだった。
「これってギフトレベルアップチケットだよね?」
「ああ。Lv25以下のパイロットが使えばギフトレベルを5つ上げられるらしい。晶達が即死攻撃でやられ、俺と麗華が無事だったのはギフトレベルの問題もあるはずだ。使っておくに越したことはない。確か晶はLv20だったろ?」
「うん。ギフトレベルが25になれば、さっきの攻撃も効かなかったかもしれないし、純粋にギフトも強くなって生き残れる確率が上がる。ありがたく使わせてもらうよ」
晶は恭介からギフトレベルアップチケットⅤを受け取って礼を言った。
それから、恭介は晶の私室を出て沙耶の私室のドアをノックする。
「俺だ。恭介だ。沙耶はどうだ?」
「…恭介さん、中に入って来て」
「わかった。入るぞ」
麗華が許可したため、恭介は沙耶の私室の中に入った。
そこにはベッドの上で布団に包まる沙耶の姿があった。
「沙耶、俺だ。顔を見せてくれないか?」
「…わかりました。麗華さん、すみませんがしばらく兄さんをお借りできませんか?」
布団の中からゆっくりと出て来た沙耶の顔が酷く消耗しており、麗華は頷いた。
「わかりました。恭介さん、後をお願いね」
麗華が私室から出ていくのを確認した後、恭介は沙耶に近づいて声をかける。
「酷い目に遭ったな」
「本当に…、酷い目に遭いました…。兄さん、手を…」
その後の言葉は出してくれなんだろうと判断し、恭介はベッドの横の椅子に座って沙耶に手を差し出した。
沙耶は布団から手を出し、恭介が差し出した手を握る。
(震えてる。まだ恐怖と戦ってるようだな)
恭介は震える沙耶の手を握ってそのように感じた。
それに対して、沙耶の表情は恭介の手を握ることで少しだけ安心したようだった。
「この部屋にいるのは俺だけだ。泣きたかったり甘えたかったら、今の内に感情を吐き出しておけ。麗華の前では我慢してたみたいだから」
「…はい」
この後、沙耶は恭介の前で泣き出して感情を吐き出し、泣き止んだ後でそれが恥ずかしくなって布団の中に隠れた。
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