第25章 ゴーレム開発プロジェクト

第241話 疑わしきは一斉掃射だよ

 恭介達が瑞穂に来て54日目、ルーナが宝探しのコンテンツを更新したことを知らせた。


 当然、挑めるコンテンツの少ない恭介は麗華と共に宝探しにチャレンジすることを決める。


 恭介はアンチノミー、麗華はシグルドリーヴァに乗り込んでタワー前に早速やって来た。


 タワーには入口の隣に昇降機があるので、恭介達はそれに乗って地下11階層に降りた。


 地下11階層の内装は大森林と呼ぶのが相応しく、緑が生い茂っていた。


『ミッション! 1時間以内に黄金の触手を探せ!』


「触手ってだけで嫌な予感がする」


『恭介さん、ニョロ即斬でお願いね』


「そうしよう」


 ルーナが用意する触手なんて碌なものではないと恭介達の認識が一致する。


 先に進んで行くと、恭介と麗華が進むのを邪魔するようにトリフィドが隊列を組んで待っていた。


「退け!」


『邪魔!』


 今頃になってトリフィド程度のモンスターに苦戦する実力ではないから、恭介達はあっさりとトリフィドの群れを倒した。


 それがトリガーだった。


 大森林の内装が急変し、地響きが発生する。


「なんだ!?」


『樹が動いてる!』


 麗華の気づいた通りで、大森林を構成する全ての樹が一斉に動き出した結果、地響きが発生したのだ。


「色が黄色に? そうか、こいつ等トレントだ! ギフト発動!」


 恭介が黒竜人機ドライザーの発動を宣言し、彼はアンチノミーのコックピットからドライザーのコックピットの中に移った。


 乗り換えてすぐに風属性のスイッチを押して、ドライザーが風属性に変質して機体の色も緑に変わる。


『全部敵なら容赦なんていらないね!』


 麗華は全武装を一斉掃射し、周囲のトレントを蹴散らした。


 その少し後に麗華の攻撃が当たらなかった個体を恭介が仕留め、恭介達を中心に半径5kmは更地になった。


「あっちに残ってる樹もトレントの擬態の可能性があるな」


『疑わしきは一斉掃射だよ』


『野蛮! 暴虐! 麗華ちゃん!』


『その2つの単語と私をセットにしないでくれる?』


 ルーナがここぞとばかりにモニターに映り出し、麗華のことを悪者に仕立て上げようとした。


 恭介の前で自分を暴力的だと言われたのは不快だから、麗華はルーナに冷たい声色でそう言った。


 これ以上刺激してはいけないと察し、ルーナはモニターから逃げるように消えた。


 前方にある森まで移動したところで、今度はトリフィドではなくローパーが待ち構えていることを恭介達は察知した。


「あいつ等を倒したらこの森も擬態を解除するんだろうな」


『そうだとしてもニョロ即斬!』


 麗華は正面のニョロニョロの存在をいち早く視界から消したいようで、全武装を薙ぎ払うように放って森を巻き込むようにビームを放つ。


 ローパーを攻撃した瞬間、周りの樹々が擬態を解除した。


 しかし、恭介達の予想は一部外れてしまった。


 擬態を解除して現れたのはトレントではなかったのだ。


 いや、正確にはただのトレントではないと言うべきだろう。


 恭介達を取り囲んだのは大量の触手を生やしたトレントだったのである。


『やったね! テンタクルトレントの群れだよ! 触手のヌルヌルプレイを楽しんでね!』


『ギフト発動』


 今まで聞いた中で最も抑揚のない声で金力変換マネーイズパワーを発動し、麗華は100万ゴールドを支払った。


 翡翠衛砲ジェイドサテライトを連結してから、薙ぎ払うように極太のビームを放った。


 結果として、視界に映るテンタクルトレントが一掃されて恭介達の半径10kmは更地になった。


 (俺が虫を嫌いなように麗華もニョロニョロは駄目なんだな)


 殲滅と称するのが相応しい現状を見て、恭介は誰だって苦手な者はあるものだと頷いた。


 視界がクリーンになったことで、恭介達は進行方向に光る何かを内部にしまっている触手の球体が浮かび上がっているのを見つけた。


「あの球の中に黄金の触手がありそうだな」


『とっとと終わらせようよ。こんなところに長居は不要だよ』


「そうだな。ゴールが見えてるのにゴールしない理由なんてない」


 2人が球体を壊してミッションを終わらせようとした時、その球体が光り出す。


 (到着が早過ぎたから時間稼ぎのモンスターを出すってところか?)


 どうなるにせよ、敵が出て来るかもしれないのにおとなしく待っている必要はないから、恭介は三対の翼からビットを射出してビームを放った。


 ところが、イベントスキップなんてさせないということなのか、球体を守るようにエネルギーバリアが展開されて恭介の攻撃は阻まれた。


 ドライザーの攻撃が通用しないならば無駄弾を撃っても仕方ないので、恭介と麗華は敵が現れるのを待つことにした。


 現れた敵は赤い薔薇を中心に触手が巨人を構成した敵であり、カラーリングは普通の薔薇と違って花以外も赤く染まっていた。


 球体はその敵の内部にしまわれているらしく、気づいた時には球体の姿が消えていた。


『おめでとう。レアモンスターのローズテンタクルスだね。ここまで10分かけずに到着したから、ダメージ量の多い属性の弱点属性として現れる設定だね』


「無駄な足掻きをするもんだ」


『ニョロニョロの分際で生意気だわ』


 そう言った時には既に恭介がドライザーを水属性に変更しており、麗華もシグルドリーヴァから水属性のハーロットに乗り換えていた。


 これで火属性のローズテンタクルスは一気に弱点丸出しの敵になり下がった。


「オーバーキルになってもルーナを恨め」


 恭介が竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムを放ち、それがローズテンタクルスに命中した。


 水属性の攻撃というだけでも十分に効果があるのだが、その攻撃が殺傷力抜群の竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムだったならローズテンタクルスに耐えられる要因はない。


 麗華がゴーレムチェンジャーを使うまでもなく、ドライザーの攻撃だけでローズテンタクルスは力尽きた。


 ローズテンタクルスの体が光の粒子になって消えることで、ドライザーのサイドポケットには黄金の触手が転送された。


 宝探しのミッションをクリアしたことで、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示される。



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宝探しスコア(マルチプレイ)

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ミッション:1時間以内に黄金の触手を探せ

残り時間:11分7秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ランダムボーナス:設計図合成キット

レアモンスターキルボーナス:アンチノミー専用兵装ユニット存在理砲レゾンテートル

デイリークエストボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:黒竜人機ドライザーLv49(up)

コメント:他のパイロット達のことを考えるとこれ以上難しくできないのが足枷

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「無理に難易度を上げる必要はないだろ」


『そうは言うけどね、折角用意したコンテンツをこうも簡単にクリアされると私だって心が折れそうになるよ』


「悪神を打ち負かせられるならそれもありだな」


『私のことを悪神呼ばわりするのは止めよう? これでも私、地球の存続のために頑張ってるんだよ?』


 恭介に悪神呼ばわりされてしまうのは、日頃の言動のせいであることをルーナは自覚すべきである。


 地球人にデスゲームで戦わせたり、資源の供給をストップすることでデスゲームを真剣にやらざるを得なくさせたりしたけれど、これもクトゥルフ神話の侵略者達が地球を襲わせないように考えてのことだ。


 もっとも、そこから生じる人間の醜さに愉悦を感じているので、ルーナを悪神と呼んでも間違いではないのだが。


『恭介さん、ギフトがLv40になって派生能力が増えたよ。屑再利用リサイクルだってさ。敵の破片や破壊した建築物等を集めて即席の盾や壁にできるの』


「遮蔽物をその場で調達できるのは麗華にとってメリットだな。失っても懐は痛まないから財布にも優しいし、使い捨てしやすいのもポイント高い。俺の方はアンチノミーの専用兵装ユニットだったわ。帰ったら見てみよう」


『うん。それじゃ帰ろっか』


「おう」


 恭介達はタワーを脱出して瑞穂に戻った。

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