第318話 コスプレするぐらいゴーレムが好きだったとは驚きだね
仁志達がハイドラ=グリモアと戦い終えて移動し始めた頃、遥達もグリモアとはルルイエの写本が変身したクトゥルフと対峙していた。
『遥さん、博己さん、茜さん、気を付けて下さい。C203Gクトゥルフ=ルルイエアナザーです』
「クトゥルフそっくりというのは気味悪いわね」
『フォルフォルのせいでSAN値直葬しないのはありがたいけど、生で見たくはなかった』
『出て来たからには倒さなきゃだけど、中々手強そうね』
グラディスのアナウンスを受け、遥達はうんざりしているようだ。
これまでにミゼーア=グリモアとイブ=ツトゥル=グリモアとの戦いを終えており、遥にはまだ余裕があるけれど博己と茜には疲労が感じられる。
「とりあえず、私がメインで戦うので2人は自分の身を守ることに専念して。それと味方に応援の要請をしてちょうだい」
『『了解』』
遥は自分が戦うしかないと判断し、博己と茜にはせめて足を引っ張るなと言外に告げた。
博己と茜もここで足を引っ張って遥を死なせてしまったら、仁志に何を言われるのか容易に想像できるので素直に頷いた。
遥の乗るトリスタンには八角形のビットが2つ随行しており、それが自動的に迎撃してくれるから時間稼ぎをしつつチクチクダメージを与えることに決めた。
幸いにもクトゥルフ=ルルイエアナザーはクトゥルフ同様に水属性であり、土属性のトリスタンはクトゥルフ=ルルイエアナザーに対して属性的な相性が良い。
クトゥルフ=ルルイエアナザーは触手のような髭を束ねて巨大な槌を形成し、それでトリスタンを攻撃し始める。
「動きがそこまで速くない。それだけが救いね」
幸いにも、クトゥルフ=ルルイエアナザーの攻撃速度はトリスタンでも対応できる程度であり、回避に専念すれば問題ない。
回避している間に2つのビットがクトゥルフ=ルルイエアナザーに反撃し、土属性の攻撃が髭に当たってクトゥルフ=ルルイエアナザーは不快そうな表情になる。
それから30分程、遥は回避と自動反撃だけを行っていたが、ようやくそこに応援が来た。
『遥、お待たせ』
「遅いわよ。コピーとはいえ、上位単一個体を相手に独りで戦うのって怖いんだからね?」
『申し訳ない。とりあえず、4期パイロットは全員久遠に戻らせた。それと入れ替わりで等々力さんと潤さんが来る手筈になってる。一緒に時間稼ぎを頑張ろう』
「俺が倒してやるぐらい言えないの?」
『無茶言うなっての』
遥の厳しい切り返しに仁志は苦笑するしかなかった。
そんな会話もクトゥルフ=ルルイエアナザーの攻撃を避けながらしているから、遥も仁志も集中力が切れたら不味いので切り上げて戦闘に集中する。
戦闘スタイルは遥と仁志が合流したとしても変わらず、クトゥルフ=ルルイエアナザーの攻撃を躱しつつ無理のない範囲で反撃するに留まっている。
明日奈と潤の合流次第で自分達が攻勢に回れるから、今は耐える時と判断してのことだ。
クトゥルフ=ルルイエアナザーからすれば、2機のゴーレムがちょこまかと自分の攻撃を躱してチクチクとダメージを与えて来るのは非常に鬱陶しい。
それゆえ、束ねていた髭を解いて刃に変え、遥と仁志に対する攻撃を激しくした。
「ここで使うしかないわね」
遥は
まさか、クトゥルフ=ルルイエアナザーも自身の攻撃でダメージを負うとは思っていなかったから、自身の攻撃を喰らって怯んでしまった。
その隙に2つのビットに加え、プロヒビティブで反撃する。
プロヒビティブは
この銃による攻撃が当たる毎に当たった者に不幸ゲージが溜まり、ゲージが溜まれば溜まる程不幸に見舞われるという搦め手要素の強い効果がある。
今は反撃されるリスクも少ないから、ガトリングガンでクトゥルフ=ルルイエアナザーの不幸ゲージを高め、少しでも時間を稼げる不幸が敵に訪れるようにしている。
遥が畳みかけてくれたことにより、自分に対する攻撃の勢いが弱まったから、仁志はビームアックス形態のタクトオブタイラントで触手を切断していく。
『不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快』
「オリジナルと違って早口のようね」
『それかよっぽど不快なんだろうな』
遥と仁志のどちらが正しいかと言えば、仁志の方である。
クトゥルフ=ルルイエアナザーは遥と仁志を鬱陶しい蠅のように思っており、その程度の存在に体を傷つけられたことがとにかく不快なのだ。
怯みから回復したクトゥルフ=ルルイエアナザーは、斬られた髭を再生させて全ての髭の先を銃に変え一斉掃射し始めた。
「剣よりも厄介じゃない!」
『勘弁してほしいね!』
回避に専念してとにかく被弾しないように動き、遥と仁志は銃撃が止むまでひたすら避け続けた。
ビームが止むまで5分以上かかったが、それはクトゥルフ=ルルイエアナザーが爆発して攻撃が強制的に中断されたのだ。
『待たせたわね』
「おまたせしました」
クトゥルフ=ルルイエアナザーの攻撃を中断させたのは、4期パイロットと入れ替わりでミスカトニックアーカイブにやって来た明日奈と潤だった。
爆発は潤の
クトゥルフ=ルルイエアナザーは爆発に包み込まれてしまい、爆発が収まった時に全身を再生したからサイズが少し縮んでいた。
『不敬不敬不敬不敬不敬不敬不敬不敬不敬不敬』
怒ったクトゥルフ=ルルイエアナザーの全身に散らばる瘤が突然膨らみ始めた。
『みんな離れて! 瘤の中に高エネルギー反応だよ!』
フォルフォルに言われた途端、遥達はクトゥルフ=ルルイエアナザーから急いで距離を取った。
クトゥルフ=ルルイエアナザーの瘤が体から分離し、全方位に向かって射出されてすぐに爆発したが、距離を取っていたおかげで遥達は爆発に巻き込まれずに済んだ。
爆炎のせいでその奥で何が起きているかわからなかったが、それが消えた時にクトゥルフ=ルルイエアナザーの姿が繭に変わっていた。
『やるなら今しかない! 全員攻撃!』
明日奈の号令が聞こえた瞬間、3期パイロット全員が繭に向かって自分ができる限りの攻撃を行った。
繭状態のクトゥルフ=ルルイエアナザーに反撃する手段はないから、今の内に与えられるだけのダメージを与えておくべきだからだ。
繭は穴だらけになり、繭がボロボロになって剥がれ落ちた。
そこには不完全な変身で止まったクトゥルフ=ルルイエアナザーがおり、首から下がゴーレムで頭部がクトゥルフになっていた。
『コスプレするぐらいゴーレムが好きだったとは驚きだね』
『そうじゃないってことぐらいわからないの? だからフォルフォルなのよ』
『ねぇ、私が言うのも変だけどさ、フォルフォルってフォールンゲームズのマスコットキャラだからね? 馬鹿にする言葉じゃないからね?』
フォルフォルは明日奈にそこを間違えてはいけないと諭すように言った。
確かにその通りで、フォルフォルはルーナがデスゲームを開くのに都合が良いから乗っ取っただけで、元々はフォールンゲームズのマスコットキャラなのだ。
デスゲームから始まった一連の出来事の一番の被害者と言っても良いだろう。
それはさておき、ゴーレム形態のクトゥルフ=ルルイエアナザーはトリスタンと同じく八角形のビットを左右と頭上に浮かべており、それが高速回転しながらビームを発射し始めた。
しかし、プロヒビティブによって溜まっていた不幸ゲージが仕事をして、3つのビットが爆散した。
これで厄介な攻撃手段を破壊できたと共に、クトゥルフ=ルルイエアナザーは大ダメージを負った。
爆発によるダメージを再生させ、クトゥルフ=ルルイエアナザーは自身の体が小さくなってしまった。
3期パイロットには恭介や麗華のように高火力の攻撃手段を持つ者が少なく、まだクトゥルフ=ルルイエアナザーを倒し切るには時間がかかりそうだったのだが、突然現れた黒い布がクトゥルフ=ルルイエアナザーを包み込んで無理矢理圧縮し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます