第256話 何がお前をそこまで駆り立てるんだ?

 恭介達が格納庫に戻った時、ラミアスから2人のゴーレムのコックピットに連絡が入る。


『恭介さん、麗華さん、パンゲアが高天原から出航しました。4期パイロットが転送されて彼らに危機感を持ってもらえるように敢えて危険な旅をするそうです』


「了解。ラミアス、わかればで構わないんだが、4期パイロットに危険分子はいたか?」


『ノアから報告を受けた限りではいないようです。日本勢力下にいるよりも宇宙にいる方がホッとしている者もいるようですね』


『日本勢力下というよりも、私達の掌の上っていうのが怖いんじゃないかな?』


 麗華の言っていることは半分正解で半分違う。


 確かに4期パイロット達は高天原という恭介と麗華が管理する惑星基地にいることを恐れたが、それと同時に国から独立して惑星基地を持てる2人にも恐れをなしている。


 そんなことは恭介達にとって些細な違いなので、ラミアスはわざわざ補足したりしなかった。


 パンゲアのことはさておき、恭介と麗華はそれぞれコロシアムの報酬について確認を始める。


 恭介はネメシスに追加された復讐脚剣リベンジシュートをチェックしている。


 これは両脚の先からビームソードが出るようになり、蹴りの殺傷力が上がるだけではなく、エネルギーシールドで防いだ分のダメージがカウンターシステムとは別口でストックされ、ビームソードの出力を上げられるのだ。


 接近戦でアンヒールドスカーを使わないからといって油断していれば、復讐脚剣リベンジシュートでバッサリ斬られる可能性もあると思うとネメシスの歩く武器庫感が更に増したと言えよう。


 その一方、麗華はコロシアムのファーストキルボーナスでヴィステージという武器を手に入れており、それをアヴェンジャー2ndと合成していた。


 合成の結果、パラダイスロストという武器が完成した。


 アヴェンジャー2ndと同様に最初は盾形態の武器だが、ダメージを蓄積していくことで大剣とビームライフル、ビームキャノンに変形可能だ。


 ビームライフルとビームキャノンの形態ではダメージを吸収できないが、盾と大剣の形態ならばダメージを吸収できる上、吸収率はアヴェンジャー2ndの1.5倍上がっている。


 2人が報酬の確認と調整を終えた後、メイド型アンドロイドのガンマとデルタが高天原の自分達の屋敷に届くよう手配した。


 デルタは麗華がコロシアムの報酬で手に入れたメイド型アンドロイドである。


 それにより、ガンマが恭子のサポートをして、デルタが麗美と和紀のサポートをするようになった。


 アルファとベータは元通りに恭介達のサポートがメインになったため、負担が軽くなった訳だ。


 昼食までにはまだ時間がたっぷりと余っていたので、恭介と麗華はそれぞれアンチノミーとシグルドリーヴァに乗り込んでタワーに向かった。


 タワーの昇降機に乗って地下13階に移動してみると、そこは密林と呼ぶべき場所で戦闘音が至る所から聞こえていた。


『ミッション! 1時間以内に龍化薬を横取りしろ!』


 (これって龍○散じゃね?)


 ミッションが表示されたモニターでさっと調べてみたところ、龍化薬は某のど飴のような見た目をしていた。


 フレーバーテキストによれば、複数の東洋龍の角を一度粉末にしてから混ぜ固めて作られた丸薬であり、これをナーガが飲むことで龍になれるそうだ。


 地下13階層で戦う敵がナーガとわかったのはラッキーだが、恭介はどうにも龍化薬が龍○散にしか見えなくなってしまった。


 気持ちを切り替えて先に進むと、大量に集まったナーガが殺し合いをしている広場だった。


 (蛇腹剣を使うナーガまでいるじゃん)


 恭介の目に留まったのは、広場の奥の方で蛇腹剣でバッサバッサと同胞を斬り捨てている個体だ。


 その個体に任せておけば楽ができる気もしないでもないが、自分達が手を出せばもっと早く片付くので、恭介達も攻撃を開始する。


 蛇腹剣を持った個体に対抗して、恭介もファルスピースを蛇腹剣形態にしてまとめて敵を薙ぎ払い、麗華はその攻撃が届かないだろう位置を狙って全武装を一斉掃射した。


 あっという間に片付いたものの、龍化薬は恭介と麗華のコックピットに転送されて来なかったから、ここにいないナーガがそれを持っているのだろうと判断して先に進む。


 視界の開けた場所で多くのナーガが殺し合いをしていることもあれば、視界の悪い道でゲリラ的に襲い襲われるナーガもいた。


 それら全てを倒して進んだ恭介達は、一際大きな広場で3体のナーガが1体のナーガを取り囲んでいる所に出くわした。


『囲まれてる個体が龍化薬を持ってるみたいだね』


「そうらしいな。でも、気を付けろ。あいつの立ってるところにデーモンが使う奴によく似た魔法陣がある」


 恭介がそう言った時、魔法陣が光を放ってそこにトリニティワイバーンが現れた。


 トリニティワイバーンは現れて早々に目の前の3体のナーガを捕食するだけでなく、自分を召喚したことを不敬に思ったのか後ろに立つナーガも食べてしまった。


『トリニティワイバーンを倒せば終わりって考えれば手間が省けたかな?』


「そう考えよう」


 トリニティワイバーンはまだイライラした感情が収まっていないようで、アンチノミーとシグルドリーヴァに襲い掛かって来た。


 ところが、そこで予想外なことが起きた。


 未だに消えていなかったトリニティワイバーンを召喚した魔法陣に電流が走り、怪しげな光を放つとその消滅と引き換えにデメムートを召喚してしまったのだ。


 デメムートはトリニティワイバーンを捕捉した途端、大きく吸い込んでそのままそれを捕食してしまった。


「弱肉強食のピラミッドを体現しなくて良いから」


『恭介さん、一撃で仕留めるから気を引いてもらえる?』


「了解」


 獲物がより強いモンスターに食われ、それが獲物になってしまったことに苦笑する恭介に対し、麗華も輪をかけて面倒臭い事態になったことから大技で仕留めると宣言して恭介にそのサポートを頼んだ。


 恭介はネメシスに乗り換え、麗華がギフトを発動して狙撃するまでの時間を稼ぎ始める。


 わざとデメムートの注意を惹きつけるように動き、ネメシスに向かって攻撃させればこっちのものだ。


 水の弾丸を乱射されようとエネルギーシールドで器用に防ぎ、恭介はデメムートの後ろに回り込んで復讐脚剣リベンジシュートでその尾鰭を切断してみせた。


 尾鰭を切断されて怯んだ瞬間を狙い、麗華がギフト込みで連結した翡翠衛砲ジェイドサテライトから強烈な一撃を放つ。


『墜ちなさい』


 怯んで動けない今、デメムートの体に大きな風穴が開いてそのままデメムートは地面に墜落した。


 その直後にシグルドリーヴァのコックピットのサイドポケットに龍化薬が転送され、ミッションをクリアしたことになって宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示される。



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宝探しスコア(マルチプレイ)

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ミッション:1時間以内に龍化薬を横取りしろ

残り時間:41分48秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ランダムボーナス:結婚式プラン(要相談)

レアモンスターキルボーナス:魔石4種セット×100

デイリークエストボーナス:50万ゴールド

ギフト:黒竜人機ドライザーLv50(stay)

コメント:あれれ~? ランダムボーナスに結婚式プラン(要相談)があるぞ~?

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 (必死かよ!?)


「ルーナ、そこまでして俺と麗華の結婚式に参列したいの?」


『正直、土下座までならしようかと思ってる』


「何がお前をそこまで駆り立てるんだ?」


『他者のラブコメを演出してエンディングに進めると自分がその上位にあるって再認識できるじゃん』


 ルーナをクズだと思って溜息をついていた恭介だが、そんな恭介に麗華から追い打ちがかかる。


『きょ、恭介さん、ランダムボーナスでウェディングドレスが手に入っちゃった!』


 (仕組んだな、ルーナめ)


 そう思ってモニターを見た時、ルーナはとても良い笑みを浮かべていたのは言うまでもない。

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