第255話 笑えよルーナ

 恭介達が瑞穂に来て57日目、ルーナがコロシアムのマルチプレイでコンテンツを増やしたと知らせて来たので、恭介と麗華はそれぞれアンチノミーとシグルドリーヴァに乗ってコロシアムにやって来た。


「来たぞ。マルチプレイでもゴーレムと戦えるようになったのか?」


『…ネ、ネタバレ厳禁だよ。行ってからのお楽しみだよ』


 ギクッと何処からか効果音が聞こえそうな表情のルーナがいたが、恭介も麗華もそれ以上追究しようとはしなかった。


「それで、今日も俺と麗華に縛りがあるのか?」


『勿論あるよ。今日は2人共ギフトを使っちゃ駄目。流石にコロシアムの戦闘で麗華ちゃんに戦闘禁止なんて言えないので、一律でギフト禁止にさせてもらったからね』


「わかった。じゃあ、5連戦でよろしく」


『はーい』


 ルーナは5連戦と言われるのも慣れたため、驚くことなく入場門を開きながら頷いた。


 入場門が開いてその中に進むと、コロシアム上空に巨大な黒いUFO型ゴーレムが待ち構えていた。


 ソロプレイの31戦目と同様に、マルチプレイの31戦目もゴーレムが敵になるようだ。


「UFOじゃん」


『UFOだね』


 2人の感想が一致したタイミングで、黒いUFOの底面から2丁のガトリングガンが連射される。


 1丁ずつ恭介と麗華を攻撃しており、アンチノミーとシグルドリーヴァは連射のせいで分断された。


 上空から一方的に攻撃しているから、黒いUFOは自分が優位な状態でこの戦闘が続いていると錯覚していた。


 (そろそろ良いか)


 UFOが油断した隙を突き、アンチノミーとシグルドリーヴァが緩急をつけて急接近すれば、UFOは咄嗟に2機を照準から外してしまった。


「終わりだ」


『墜ちろ』


 蛇腹剣に変えたファルスピースで恭介がガトリングガンを切断し、麗華がアルテマバヨネットでUFOを撃ち抜いた。


『ディスクショッカーじゃ物足りなさそうだね』


「この程度じゃ苦戦しないわな」


 恭介がルーナに応じている間に、麗華は地面に墜落したディスクショッカーの残骸を屑再利用リサイクルで大太刀に作り替えていた。


 麗華が大太刀を用意するなんて珍しかったので、気になった恭介が訊ねる。


「麗華、大太刀を用意してるけど使うのか?」


『ううん、実験だよ。ただのゴーレムだったら倒した後回収されちゃうけど、私が屑再利用リサイクルを使えばキープできるでしょ? だから、一旦加工した状態でキープしといて、次に倒したゴーレムの残骸を残骸換金サルベージを使って小遣い稼ぎできないかなって』


『麗華ちゃんってば恐ろしい娘! ギフトの派生能力はギリギリギフトじゃないからってそんなグレーゾーンを攻めるだなんて!』


『使える力を使わないのは勿体ないじゃん』


 まったくもって麗華の言う通りである。


 特に代償なく使える力をわざわざ使わない理由はない。


 それも縛りプレイのルールに抵触しないなら尚更だ。


 そうしている内に2戦目のゴーレムが恭介達の前に現れる。


 今度現れたのはデュラハンを模した黒いゴーレムが待ち構えていた。


 モンスターのデュラハンはヘルムを抱えているのだが、このゴーレムのヘルムは衛星のように機体を中心に回っている。


『次はジャンクデュラハンだよ』


「麗華、ヘルムの対処を頼む」


『任せて』


 ジャンクデュラハンに接近すれば、その周囲を回るヘルムが何かしらの反撃をして来るだろうから、恭介は麗華にヘルムの狙撃を任せた。


 アンチノミーの天使の一対の翼はビームブーメランになっており、恭介はそれらを投げてジャンクデュラハンの動きを見る。


 ヘルムはジャンクデュラハンの周りを回る動きを止め、ビームブーメランを撃ち落とそうとしたが、止まった瞬間に麗華に狙撃されて爆散した。


 そうなってしまえばジャンクデュラハンに近づく障害はないから、恭介は戻って来たビームブーメランを回収して腰の両サイドにあったビットでジャンクデュラハンを追い詰める。


 同時攻撃で回避先を誘導してしまえば、狙い通りに動いたところをアンチノミーの悪魔の一対の翼から射出した蛇腹剣で絡め取り、それを勢い良く引くことでジャンクデュラハンの機体を真っ二つに切断した後に爆散した。


 ジャンクデュラハンを完封した恭介と麗華に対し、ルーナはモニターから戦慄の眼差しを向けている。


「笑えよルーナ」


『恭介君がドSになった…だと…?』


 いつもニヤニヤしていることの多いルーナが戦慄しているものだから、恭介が煽ってみた。


 ルーナのリアクションを待っている間に3戦目のゴーレムが現れる。


 それは空でも地上でもなく地中から現れた。


 烏賊を無理矢理人型にしたような赤いゴーレムは、頭の先端がドリルで両腕は鋭い爪を伸ばしていた。


「烏賊っぽいのに火属性とは違和感ありありだな」


『私達がばっちり連係を決めたから、型破りな敵を出して来たんじゃない?』


「なるほど。それはあり得る」


『こいつは私が倒しちゃうね。今度こそ換金してみたいし』


「あっ、ごめん」


『コロシアムの敵って変に手加減なんてできそうになかったから、換金することまで考えられなくてもしょうがないよ。ここは任せて』


 麗華には恭介を責めるつもりなんて微塵もなかった。


 そもそも実験に付き合ってもらっているのは自分であり、それは無理して試さなくても支障がないものだからだ。


 しかし、それはそれとして実験もしたいから、麗華はヴォイドに乗り換えてから敵の動きを見切り、地中に逃げようとした敵を揚棄双砲アウフヘーベンで撃ち抜いてみせた。


『モルゲソックが一撃…。だ、大丈夫。まだ2機残ってるから』


 ルーナがぶるぶると震えている間に、麗華はディスクショッカーから作り替えた大太刀とモルゲソックの残骸をそれが爆発する前に残骸換金サルベージを使った。


『ふーん、やっぱり加工して換金した方が貰えるゴールドは多いね』


『そりゃそうだよ。改悪じゃない限り、加工した物の方が残骸よりも価値が高いのは当然じゃないか』


 震えてばかりでは駄目だから、ルーナは気丈に振舞いながら麗華の独り言に反応した。


「麗華の実験は上手くいったようだな」


『うん。今後は屑再利用リサイクルからの残骸換金サルベージがお決まりの流れだね。これを使えば、金力変換マネーイズパワーの負担が大きく変わりそう』


 派生能力は基本的にギフトの役に立つ力だから、麗華の使い方は正しい。


 麗華がご機嫌になったところで、4戦目のゴーレムが恭介達の前に現れる。


 それは黄色い東洋龍型ゴーレムだった。


 (どう見てもボーナスタイムだな)


 水属性のヴォイドがモルゲソックとの戦いで大ダメージを与えた結果、ヴォイドに対抗するために土属性のゴーレムが現れた訳だが、それはメタ読みして既にネメシスに乗り替えている恭介にとってカモでしかない。


 両肩のガトリングガンで攻撃しながら距離を詰め、ビームキャノンに変形させたアンヒールドスカーにカウンターシステムを用いて発射することで、東洋龍型ゴーレムのコックピットが撃ち抜かれて爆散した。


『エイジアドレイクゥゥゥゥゥ!』


 ルーナが戦友を撃たれたかのように叫ぶが、恭介も麗華も5戦目のゴーレムがいつ現れても良いように準備していた。


 そこに現れたのは戦隊シリーズの合体ロボを想起させるゴーレムだった。


 何故なら、胴体と頭部が黒く、赤い右腕と青い左腕、黄色い右脚、緑の左脚という見た目だったからである。


「麗華、多分見掛け倒しだ。信号を頼む」


『任せて!』


 恭介の指示通りに麗華がヴォイドの信号をオンにしたことで、合体ロボは力なくたったまま動かなくなった。


 確実に敵を仕留めるため、恭介はアンチノミーに乗り換えてから存在理砲レゾンテートルでコックピットを撃ち抜いて5連戦を終わらせた。


 それと同時に恭介達が乗るそれぞれのゴーレムのモニターには、コロシアムバトルスコアが表示されたので2人ともそれを確認し始める。



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コロシアムバトルスコア(マルチプレイ)

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討伐対象:①ディスクショッカー②ジャンクデュラハン

     ③モルゲソック④エイジアドレイク⑤エレメンタリオ

部位破壊:①全て②全て③全て④全て⑤全て

討伐タイム:18分26秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ファーストキルボーナス:ネメシス専用兵装ユニット復讐脚剣リベンジシュート

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

ギフト無使用ボーナス:メイド型アンドロイド

ギフト:黒竜人機ドライザーLv50(stay)

コメント:家族も増えたことだし世話のできるアンドロイドも要るよね

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 (次はガンマと名付けよう)


 高天原の屋敷にいるメイド型アンドロイドはアルファとベータなので、恭介は新たに手に入れたメイド型アンドロイドをガンマと名付けた。


 報酬の確認が終わり、恭介達は瑞穂の格納庫に戻った。

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