第186話 5連戦にする? 5連戦にする? それとも5・連・戦?

 麗華は恭介に見送られ、ブリュンヒルデに乗ってコロシアムにやって来た。


『5連戦にする? 5連戦にする? それとも5・連・戦?』


「全部5連戦じゃないのよ。そりゃ、5連戦にするけど」


『恭介君が着々と強くなってるから、麗華ちゃんとしても強くなりたいよね。強くならないと恭介君のお荷物、あっ…』


「わざとらしく言うのは止めて。しかも全部言ってるし。最低ね」


 フォルフォルのわざとらしい失言に麗華は冷徹な眼差しを向ける。


『だってほら、私が麗華ちゃんを追い込むことで麗華ちゃんは恭介君に甘えるでしょ。それで麗華ちゃんと恭介君の仲が深まれば、監視してる私としては見てて楽しいんだもの』


「ゲスフォルここに極まれりね。さっさと入場門を開いて失せなさい」


『はいはーい』


 入場門を開いたら、フォルフォルはそのままモニターから消えた。


 ブリュンヒルデを操縦してコロシアムの中に移動すれば、足場が一切存在しない水場の中心にクラーケンが待ち構えていた。


「機嫌が悪いの。悪いけど八つ当たりさせてもらうわ」


 そう言って麗華はジャバウォックと四対の翼の銃からビームを連射し、クラーケンを蜂の巣にして倒した。


 ブリュンヒルデ程のスペックがあれば、今の攻撃はぶっちゃけオーバーキルである。


 クラーケンの次に現れたモンスターは、上半身が女で下半身は魚、胴体から6頭の犬が生えている見た目のスキュラだ。


「スキュラだったわね。まだまだ八つ当たりさせてもらうわ」


 「「「「「「グルルルル」」」」」」


 スキュラの胴体に生えた6頭の犬は警戒心剥き出しであり、口の正面に水を圧縮してブリュンヒルデ目掛けて一斉掃射した。


 しかし、その攻撃速度は麗華にとって遅く感じたため、さっと躱して全武装で一斉掃射すればクラーケンと同じく蜂の巣になって力尽きた。


 恭介がスキュラと戦った際は、胴体に生えた全ての犬を倒したことでスキュラの顔が般若のように変化して激昂したけれど、麗華は一方的な八つ当たりをしてそうなる前に倒してしまった。


『自分よりもスタイルの良い相手を蜂の巣にするのって楽しい? ねぇ、楽しい?』


「失 せ ろ」


『あっはい』


 フォルフォルは麗華が気にしている点を突き、麗華をキレさせてしまった。


 本当に何度やれば学ぶのかと小一時間程問い詰めたいところである。


 そんなやり取りの間にスキュラの体が消失して、代わりに馬の上半身と魚の下半身を持ったヒッポカンパスが現れた。


 ケルピーではないのかと思うかもしれないが、麗華の目の前にいるヒッポカンパスは脚が水掻きになっているという点でケルピーと異なるのだ。


「ヒヒィィィィィン!」


 ヒッポカンポスが嘶いてすぐに、周囲の水が多数の槍を形成してブリュンヒルデに向かって一斉に放たれていく。


 その攻撃はスキュラのものと比べて速く、麗華は腰のビットを起動して三角錐のエネルギーバリアを展開した。


 フォルフォルのせいで頭に血が上っていても、敵との戦闘において正常な判断が下せる程度の冷静さは維持できているようだ。


 水の槍は直線的にしか飛ばず、それでいていつになってもエネルギーバリアを壊せないとわかってヒッポカンパスは攻撃を中断する。


 その隙を逃す麗華ではないから、ジャバウォックを機関銃形態に変えて頭部に連射した。


 頭部が原形を留めない程度に破壊すれば、ヒッポカンパスは力なく水面に浮かび上がった。


 先程からモンスターに容赦なく攻撃を浴びせる麗華を見て、モニターではフォルフォルがアワアワした姿になっているけれど、麗華はそれを無視して次に現れるだろうモンスターに備える。


 ヒッポカンポスが光の粒子になって消えた直後、水中からシーサーペントが出現する。


「シュロロ!」


 その音が麗華の耳に届いた時には、いくつもの水柱が現れてブリュンヒルデを攻撃し始めていた。


 (高い所に回避すれば良いだけの話よ)


 水柱の高さをしっかりと確認し、麗華はブリュンヒルデをそれが届かない高さまで移動させる。


 そこから宙返りして、シーサーペントの水面から出ている部分に接近しながら全武装で一斉掃射した。


「シュロ!?」


 猛スピードで接近するブリュンヒルデからの攻撃を喰らい、シーサーペントは慌てて水中に逃げた。


 水中に引っ込んだ時点で致命傷まではいかずとも、そこそこ大きなダメージを受けている。


 シーサーペントにはコロシアムの中から逃げ出す手段がないから、水中に隠れていても麗華が次に何をして来るかわからない。


 だからこそ、シーサーペントは賭けに出た。


 今までで最も大きな水柱を出現させ、水柱を盾代わりにブリュンヒルデに近づき、そのまま丸呑みにしようと大口を開けて接近したのである。


「馬鹿ね。そんなのお見通しよ」


 シーサーペントの動きを予想していたため、麗華は水柱から飛び出したシーサーペントに全武装で一斉掃射して蜂の巣にした。


 穴だらけになったシーサーペントの体は、水面に叩きつけられてから光の粒子になって消えた。


 シーサーペントに変わって次のモンスターが現れた瞬間、コックピットのモニターにフォルフォルの声が響く。


『サプラァァァァァイズ!』


 本来であれば、次に出現するべきはカリュブディスだ。


 ところが、フォルフォルの声と同時にコロシアム上空に現れたのは緑色の巨大な猛禽類だった。


『おめでとう、麗華ちゃん! 恭介君も戦ったことがないルフが相手だよ! やってね☆』


「気が散るから黙りなさい」


 フォルフォルと喋っていると高確率でイライラさせられるから、麗華はフォルフォルに黙るよう命令した。


「ルファァァァァ!」


 ルフの叫びで大気が揺れるが、麗華は冷静にブリュンヒルデの体勢を空中で固定し、ルフの両翼を狙って四対の翼の銃からビームを放つ。


 攻撃されたルフは羽ばたいて風の壁を用意したが、左右に4つずつのビームが放たれてあっさり風の壁を突き抜けた。


 両翼に4つずつ穴が空いてしまい、上手く飛べなくなったルフはそのまま地面に墜落した。


「ブリュンヒルデにその程度の力で勝てると思わないで。ギフト発動」


 ジャバウォックをビームライフルに変え、20万ゴールドをコストにして強力な一撃を放てば、ルフの体の中心に大きな風穴が開いて力尽きた。


 ルフの体が光の粒子になって消えて5連戦が終わり、麗華はブリュンヒルデのモニターに表示されたコロシアムバトルスコアを確認する。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①クラーケン②スキュラ③ヒッポカンポス

     ④シーサーペント⑤ルフ

部位破壊:①全身②全身③全身④全身⑤翼(左右)

討伐タイム:41分20秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

サプライズ撃破ボーナス:バンダースナッチ

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

ギフト:金力変換マネーイズパワーLv28(up)

コメント:麗華ちゃんが札束ビンタする未来が見える

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 (あっ、良い武器ゲットした)


 サプライズ撃破ボーナスにあるバンダースナッチは、ジャバウォックと合成可能な剣だ。


 この剣は真っ直ぐ刃を伸ばせるから、蛇腹剣のように鞭のような使い方はできずとも敵に間合いを悟らせないという点で優秀である。


 コロシアムから瑞穂に戻り、麗華はすぐに武器合成キットを使ってジャバウォックとバンダースナッチを合成してヴォーパルバヨネットが完成した。


 ヴォーパルバヨネットは実弾とビームを使い分け、狙撃も連射も自在にできるだけでなく、銃形態と剣形態を使い分けられる。


 剣形態ではバンダースナッチと同じく、刃を伸ばせるから剣だと油断して近付いた敵はあっさり斬られるか、貫かれることだろう。


 先程の自分と同様に満足した表情でコックピットから出て来た麗華を見て、恭介は麗華が説明したそうにしているヴォーパルバヨネットの話を聞いた。

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