第19章 クトゥルフ神話の襲撃

第181話 ドラキオンは止まらない

 恭介達が瑞穂に来て42日目にして第2回新人戦翌日、恭介はドラグレンに乗ってレース会場に来ていた。


『マグマ&ウェーブに挑戦するんだね?』


「正解。入場門を開けてくれ」


『はーい』


 ルーナは恭介のリクエストに従い、マグマ&ウェーブに繋がる入場門を開いた。


 新人戦に参戦できない恭介ならば、その翌日に新人戦のコースに挑みたいと言い出すのは容易に想像できたから、ルーナもこうなることは予想できていた。


 マグマ&ウェーブに移動してみれば、恭介は前から順番に土属性のスフィンクス、土属性のアラクネ、風属性のメビィ、火属性のジャンクバスターを目にした。


 いずれのゴーレムも黒金剛アダマンタイト製に強化されており、待機室パイロットルームのモニターで見ていた時よりも難易度は高く設定されている。


 ドラグレンが5位のスタート位置に到着した途端、レース開始のカウントダウンが恭介の耳に届く。


『3,2,1』


「ギフト発動」


 恭介がギフトの発動を宣言し、彼はドラグレンのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。


『GO!』


 スタートの合図と同時にドラキオンがスタートダッシュを決め、最下位になったジャンクバスターのコックピットからドラキオンに向かって鎖が伸びる。


 しかしながら、鎖が伸びるよりも速くドラキオンが飛んでいるため、鎖はドラキオンに届かず拘束魔鎖バインドチェーンは失敗に終わった。


「ドラキオンは止まらない」


『ドラキオンは止まらない。いただきました!』


「喧しい」


 ムッとした表情で恭介が抗議したけれど、その時には既にルーナはドラキオンのモニターから消えていた。


 気持ちを切り替えてレースに集中すると、恭介はコースのあちこちに散らばる漂流物のサイズが新人戦の時より大きいことに気づく。


 (空を飛べるドラキオンには関係ないけどな)


 ハーミットクラブは漂流物からぞろぞろ現れ、地面にトゲトゲな球体を投げ始める。


 撒菱をいくらばら撒かれようとも、ドラキオンには影響がない。


 スフィンクスとアラクネ、ジャンクバスターにとって邪魔なだけである。


 ここまでは妨害らしい妨害はなかったが、撒菱ゾーンに入った直後から火山弾がコースの至る所に降り注いだ。


 このギミックも新人戦より解禁されるタイミングが前倒しされている。


 火山弾の量は倍近くあり、恭介は上から振って来るそれらを冷静に避け続ける。


 それと時間差で火山の方からコースに向かってマグマが流れ込む。


 マグマの勢いはかなり激しく、漂流物にぶつかって上空まで跳ねるものもあり、うっかりしていれば機体にマグマが付いてしまうから注意しなければなるまい。


 恭介が2周目に入った途端、海側から大波がコースに向かって来る。


 大波は高さ5m超えであり、このギミックも新人戦は遊びだったと感じさせるものだった。


 変化はそれだけに留まらず、コース全体が激しく揺れて落とし穴が掘られ、足場や壁になりそうな岩が隆起した。


 落とし穴の中には尖った岩だらけだし、足場になりそうな岩は形が歪んでいるので足場にするポジションを間違えると理想的な跳躍は難しい。


 マグマと海水に触れて冷え固まり、コースの至る所がが1周目とは異なっている。


 ハーミットクラブに加え、トーチバードが出現したけれど、トップスピードで風を纏ったドラキオンに弾き飛ばされて全く邪魔できていない。


 ドラキオンを邪魔できなくてストレスが溜まったのか、トーチバードの群れが違うゴーレムに標的を変えてドラキオンから離れていく。


 火山弾は偏差射撃のようにドラキオンの行く手を阻むが、トップスピードのドラキオンを止められず通過した地点に落ちていくばかりだ。


 マグマと大波がコースを改造し、激しい変化に巻き込まれたスフィンクスとジャンクバスターが冷え固まったマグマに機体の一部を拘束されていた。


 (悪いが先に行くぞ)


 コースの変化に適応できなかった機体では、マグマ&ウェーブを完走することなんてできない。


 恭介はスフィンクスとジャンクバスターを追い抜き、あらゆるギミックを躱して3周目に突入した。


 マグマ&ウェーブは誰かが3周目に突入した途端、コースのあちこちから溶岩柱が噴き出すようになる。


 前方ではメビィが噴き出した溶岩柱に突っ込んでしまい、機体が熔けて走行不可能になっていた。


 天気は暴風雨に変わり、ハーミットクラブやトーチバードがコースから姿を消した。


 風が強くて津波の勢いが増す。

 

 火山弾も風の影響で落下地点が変わるから、1周目と2周目に火山弾が届かない場所を覚えて走行しても安全とは限らない。


 (雷まで落ちて来るか)


 天候はどう考えても新人戦の時よりも悪くなっており、雷がゴロゴロ鳴るようになった。


 高度を高くし続けていれば、雷が落ちて来る可能性は高い。


 そうだとしても、高度を下げていると機体を大波に攫われてしまうので、あまり低い位置を飛んでいられない。


 火山弾やマグマによる妨害もあることから、一番の攻略法はさっさとゴールしてしまうことである。


 2位のアラクネは糸を射出して固定したはずが、雨と大雨のせいで滑って地面に墜落してしまう。


 更に不幸が重なり、地面に落ちた直後に火山弾が頭部に命中した。


 (潤さんの不幸招来バッドラックが発動した? そんな訳ないよな)


 不憫なアラクネを見てそんな風に思った恭介だが、あり得ないことなのでそれはないと判断して先に進む。


 足止めされていたスフィンクスとジャンクバスターだが、マグマに呑まれたところに海水を浴びせられて生き埋めになってしまったらしく、恭介は3周目でそれらを見つけられなかった。


 これによって実質的にタイムアタックになってしまったから、恭介は最短経路を見極めてゴールした。


『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』


 アナウンスが聞こえた後、恭介は早々にマグマ&ウェーブから脱出して黄竜人機ドラキオンをキャンセルした。


 ドラグレンのコックピットに戻ったら、レーススコアがモニターに表示されたのでそれを確認し始める。



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レーススコア(ソロプレイ・マグマ&ウェーブ)

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走行タイム:30分13秒

障害物接触数:0回

モンスター接触数:0回

攻撃回数:0回

他パイロット周回遅れ人数:4人

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×6枚

   資源カード(素材)100×6枚

   60万ゴールド

非殺生ボーナス:魔石4種セット×60

ぶっちぎりボーナス:武器合成キット

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv34(up)

コメント:ギフトレベルの上限が40になったよ。やったね

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 (ドラキオンの稼働時間が204分に伸びたな。Lv40でまた新しい力が解禁されるんだろうか?)


 そうなったら良いなと思いつつ、恭介は瑞穂の格納庫に戻って来た。


 瑞穂に戻ってからは、ドラクールとジャッジオブドラグーンに順番に乗り換えてレジェンドブルーとクロノグリーンの合成作業を始めた。


 昨日は武器を合成する時間がなかったことに加え、武器合成キットが2つ揃ったから両方ともこのタイミングで合成することにしたのだ。


 レジェンドブルーはメカニカルブルーと合成してウェイルスカイになった。


 十字型の大剣がデフォルトの姿なのは変わらないが、分割してトンファーになったり、刃からエネルギーシールドを展開する盾に変形するだけでなく、チェーンソーやドリル、4つのビットにまで変形できるようになった。


 変型可能な数で言えばファルスピースに並ぶ6つであり、武器としても同格と言える。


 クロノグリーンはファンタズマグリーンの合成結果だが、こちらはアンヒールドスカーが完成した。


 大鎌デスサイズがデフォルトの姿だが、銃とビームキャノン、戦斧バトルアックス、錫杖、パイルバンカーに変形できるようになっている。


 こちらも変形可能な数はファルスピースとウェイルスカイに並び、ドラキオン以外のゴーレムの武器も高水準で並んだと言えよう。


 後はリミットブレイクキットが手に入り、ジャッジオブドラグーンを強化できれば恭介の理想とする戦力が揃う。


「恭介さん、ご機嫌だね」


「おう! 堪能した!」


「良いなぁ」


 武器の合成を終えて満足した恭介がコックピットから出て来たため、麗華はそれを見て羨ましがった。

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