第24章 2期パイロットのプライド

第231話 私はとんでもない化け物を生み出してしまったのかもしれない

 恭介達が瑞穂に来て52日目、ハイパードライブで高天原に向かって移動しているため、瑞穂クルーもパンゲアクルーも各々の時間を過ごすことになっていた。


 昨日、恭介はギフトが黄竜人機ドラキオンから黒竜人機ドライザーに強化されたから、それを試せるコンテンツをルーナに希望した。


 明日になるまで待ってほしいと言ったルーナから、恭介は準備ができたと言われてコロシアムにやって来た。


「ルーナ、早速来たぞ。コロシアムに挑ませてくれ」


『まったくもう、恭介君ってばせっかちなんだから。コンテンツは逃げないんだから落ち着いて』


「時間は有限だ。説明を頼む」


『はーい。今回追加されたコンテンツはコロシアムのソロプレイだよ。戦う相手が今まではモンスターだったけど、そこにゴーレムが追加されたんだ。今はお試しで10機と戦えるけど、5連戦する?』


「勿論だ」


 恭介の答えを聞いて、ルーナはすぐに入場門を開いた。


 マーヴェリックを操縦し、コロシアムの中に入った恭介を待ち構えていたのはアサルトノワールだった。


「ギフト発動」


 恭介が黒竜人機ドライザーの発動を宣言し、彼はマーヴェリックのコックピットからドライザーのコックピットの中に移った。


 アサルトノワールは消えようとしたけれど、それよりも先にラストリゾートをビームライフルに変えてビームを発射すれば、アサルトノワールのコックピットに命中した。


 (操作性が上がってる。これは素晴らしい)


 爆散するアサルトノワールを眺めつつ、恭介はドライザーが基本的な操作についてもドラキオンより優れていることを実感した。


 アサルトノワールの次に出て来たゴーレムだが、今度は真っ白なゴーレムだった。


『次の相手はブランスレイヤーだね。これもアサルトノワールと同じで敵限定のゴーレムだよ』


 ブランスレイヤーは大剣を装備しており、背中には光の粒子を撒き散らす一対の翼がある。


 ブランスレイヤーからの翼から出る粒子がドライザーに向かって飛んで来たけれど、嵐の鎧でそれはドライザーには届かず弾かれてしまった。


 この光の粒子はドラストムが発する粉と同様で、任意のタイミングで爆発させられる。


 その爆発で隙を作り、大剣でとどめを刺すのがブランスレイヤーの必勝パターンなのだが、ドライザーにはそれが通用しない。


「踊れ」


 恭介が短く言った直後、三対の翼からビットが射出されてブランスレイヤーを取り囲み、ビームを一斉に放った。


 逃げる隙間を与えてもらえず、ブランスレイヤーは4つのビームをギリギリ躱したけれど、残る2つのビームに当たってしまって爆散した。


『踊れ。ふーん、クールじゃん』


「ルーナ、余計なことは喋るな」


『はーい』


 ルーナがニヤニヤしながらモニターに出て来たため、恭介はすぐに彼女を黙らせた。


 そうしている間に次のゴーレムがコロシアムに現れる。


 3機目のゴーレムは2枚の盾をそれぞれの手に持っていて、恭介にとっては初見のゴーレムだった。


『余計なことじゃないから喋るけど、これはバッシュフォートレスだよ。頑丈さが特徴のゴーレムで、これも敵限定の機体だね』


「ふーん。緑ってことは風属性か。それなら、属性変更も試させてもらおう」


 今まで無属性のまま戦っていたが、恭介は火属性のスイッチを入れた。


 それにより、ドライザーの色が赤色に変わって火属性になった。


 バッシュフォートレスは風を纏って盾を体の正面に構えて突撃したが、恭介は高度を上げることでそれを回避し、バッシュフォートレスの頭上からパイルバンカーに変えたラストリゾートを打ち込んだ。


 脳天からがっつり削られたバッシュフォートレスは、当然のことながら機能を停止してドライザーが離れた直後に爆発した。


「良いね。ちゃんと火属性の補正が入ってる」


『私はとんでもない化け物を生み出してしまったのかもしれない』


「随分と失礼な物言いじゃないか」


『事実を言ったまでなんだよねぇ…』


 ルーナは恭介の抗議に対し、今回ばかりは自分が正しいだろうと退かなかった。


 実際のところ、恭介の戦闘シーンはリアルタイムで放映されており、トゥモローのレースを語るスレでは大騒ぎである。


 レースに関係ない戦闘だけれど、このスレは恭介のゴーレム関連のこと全てが語られているのだ。


 バッシュフォートレスの次に現れたゴーレムだが、水属性のメラクスだった。


 ここに来てようやく自分達も操縦できるゴーレムが登場したのである。


 メラクスはアラクネロボットの状態から変形し、航空戦闘機の姿になってドライザーから距離を取ろうとする。


「逃がさない」


 既に土属性のスイッチを入れ、黄色くカラーチェンジしたドライザーはメラクスの正面に回り込み、そのまま赤不動砲アチャラナータを発射してメラクスを撃墜した。


 (どうしよう。ドライザーが強過ぎて物足りない)


 事実ではあるものの、余計なことを口にすれば碌なことにならないとわかっているので、恭介はポーカーフェイスのまま5機目のゴーレムを待った。


 そして、5連戦最後の黄色いゴーレムがドライザーの正面に現れる。


 その見た目はセンジュによく似ていたが、センジュよりも意匠が豪華だった。


『センジュだと思った? 残念、マンジュだよ!』


「別に残念だとは思ってない。センジュにしては豪華な感じだったから、多分その上位互換だろうと予想してた。どうせあれだろ? 肩の穴から出せる光の腕の本数が増えたとか、そもそも光の腕を空中に出現させられるとかそんな感じだろ?」


『さ、さあね~♪♬』


 鳴っていない口笛だったらわざとらしさが増すのだが、ルーナの口笛は無駄に美味かった。


 それはさておき、ルーナの態度からして自分の立てた予想は外れていないと判断し、恭介はマンジュの型を破壊することにした。


 マンジュが土属性だったため、恭介は風属性のスイッチを押してドライザーを風属性に変える。


 それからマンジュが光の腕で次々に攻撃をして来るから、三対の翼のビットとビームにソードに変えたラストリゾートでそれらを撃破していく。


 (1対多数の戦闘を練習するのに丁度良い)


 1本の腕をなるべく素早く壊しては距離を詰め、当たる確信を持てたタイミングで竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムを放てば、マンジュが爆散して戦闘が終わった。


 予定していた5連戦が終われば、ドライザーのモニターにコロシアムバトルスコアが表示される。



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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)

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討伐対象:①アサルトノワール②ブランスレイヤー

     ③バッシュフォートレス④メラクス⑤マンジュ

部位破壊:①全て②全て③全て④全て⑤全て

討伐タイム:14分40秒

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総合評価:S

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報酬:100万ゴールド

   資源カード(食料)100×10

   資源カード(素材)100×10

ファーストキルボーナス:リベリオンの設計図

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

ギフト:黒竜人機ドライザーLv47(up)

コメント:あのね、15分かけずに5連戦を終わらせるのは想定外なの

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「そんなことを言われたって知らないっての」


『私が折角用意したコンテンツを15分で半分も終わらせるなんて酷いと思うんだ』


「悪いと思ったから、まだやれると思ったけど10連戦にはしなかったんだ」


『えっ、10連戦しようと思えばできるの? その集中力は人間辞めてない?』


 失礼な言い方に聞こえるかもしれないが、ルーナの考えに賛同する者は多いだろう。


 今回の5連戦で1戦目から4戦目だけならば、瑞穂クルーでもどうにかできる者は半数以上いるはずだ。


 しかし、5戦目のマンジュは手数が圧倒的に足りなくて苦戦するはずなのに、恭介はそれを捌き切って反撃できてしまった。


 これには人間を辞めているという感想を抱く者が多くとも、自然なことだと言える。


「俺は人間だ。それよりも、さっさと帰って2機目のベースゴーレムをリベリオンにしよう」


 恭介はギフトを解除してからコロシアムを脱出し、ご機嫌なまま瑞穂の格納庫に戻った。

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