第75話 悲しいけどこれ戦争なのよね
ホームに来て17日目、恭介はリュージュで麗華はドミニオンに搭乗して朝からタワーに来ていた。
「はい、という訳で今日は午前中に一気に15階層まで行ってしまおう」
『おー』
恭介が発表した行動予定に麗華は賛同した。
正直に言って、タワー探索がヌルゲーなので13階層から15階層まで今日の午前中だけでも突破できる自信が2人にはあった。
その時、フォルフォルが彼等のコックピットのモニターに現れる。
『言っておくけど、君達の探索スピードは他のデスゲーム参加者達と比べて異常に速い。だから、2期パイロットの誰かが5階層に到着するまで第3回代理戦争は開かないからね』
「俺達は別に構わない。むしろ、ずっと代理戦争が起きなくても良い」
『私も拘ってない。むしろ、戦わなくても良いなら戦いたくない』
『悲しいけどこれ戦争なのよね。やらない訳にはいかないのさ』
(やらなきゃいけないと思ってるのはフォルフォルだけなんだよなぁ)
恭介はそんな風に思っているが、言うだけ無駄だし反応したことにフォルフォルが喜びそうだからスルーし、麗華と共に魔法陣で13階層に移動した。
13階層は湿地帯をイメージした階層であり、偽りの空が天井を塗り潰していて天井との距離感がわかりにくくなっていた。
それだけでなく、地面の泥濘のせいで陸を進むゴーレムは動きを阻害する仕様だ。
リュージュとドミニオンに搭乗していれば、泥濘による行動阻害は影響しないから、天井の高さにだけ気を付ければ良い。
早速現れて恭介達の進路妨害をするのは、槍を持ったリザードマンの群れだった。
リザードマン自体に属性はないようだが、持っている槍の色が個体によって赤青黄緑の4色に分かれている。
『恭介さん、ここは任せて』
「わかった」
麗華が自信たっぷりに言うから、恭介は麗華に任せて待機する。
ランプオブカースで狙いを定め、麗華は次々にリザードマンにヘッドショットを決めていく。
リザードマンを相手に
その途中で泥の中から黄色い巨大蜥蜴が姿を現した。
蜥蜴の背中にはあらゆる草が生えており、空を飛んでいるリュージュとドミニオンを親の仇のように睨んでいる。
「ウィードランは俺が貰う」
『了解』
ウィードランは泥濘に足を取られたゴーレムを空中にかち上げ、落ちてきたところを尻尾のスイングで吹き飛ばすのが得意だ。
ところが、恭介達が空を飛んでいるせいで得意とする攻撃ができず、機械竜に変形したリュージュのビームで瞬殺された。
戦利品がコックピットのサイドポケットに転送されたのを確認し、恭介達は昇降機を目指して進む。
昇降機までの道のりでは、麗華がサクサクとリザードマンを倒していったので大して時間はかからなかった。
多くの同胞を簡単に屠られ、昇降機を守るリザードマンバーサーカーはリュージュとドミニオンを見て吠える。
「ジュラァァァァァ!」
両手には赤と青の槍を握っているが、投げる以外で攻撃が届かないと判断したのか一心不乱に尻尾を地面に叩きつけ、泥を恭介達に当てようとする。
『ばっちいわね』
泥をぶっかけられるのは嫌だから、麗華がヘッドショットを決めてリザードマンバーサーカーは光の粒子になって消えた。
特にこのまま残る理由はないから、恭介達は昇降機に乗って14階層に移動する。
14階層は岩山の内装に変わったが、偽りの空が天井を塗り潰していて天井との距離感がわかりにくいのは13階層と変わらない。
恭介は目の前にレッドオーガの群れが現れたのを見て、ゴーレムチェンジャーを使ってみた。
それにより、恭介はリュージュのコックピットにいたはずなのに、格納庫に置いてあったアシュラのコックピットの中に移動していた。
ゴーレムチェンジャーを使うためにアシュラは格納庫に待機させていたから、今日はコピーパイロットなしの2機ゴーレムで来ていた。
アシュラが6本のシミターでレッドオーガの群れを肉塊に変えたところで、恭介は満足したように頷いた。
「ゴーレムチェンジャーは使える。代理戦争で使えば、これを俺のギフトと勘違いしてくれそうだ」
『確かに使用機会を1回に限定すれば、ギフトだと勘違いしそうになるね。ギフト名もそれっぽいのを用意する?』
「そうだな。
『良いと思う』
次の代理戦争に向けて抜かりなく準備をしつつ、恭介達は14階層をどんどん進む。
14階層で出て来るオーガだが、リザードマンと異なって体の色が属性によって異なる。
属性的に相性を考え、レッドオーガとグリーンオーガは恭介が倒してブルーオーガとイエローオーガは麗華が倒していく。
一本道を進んで行くと開けた場所の真ん中に宝箱があり、それを守るように双頭のオーガが仁王立ちしていた。
右半分が赤くて左半分が青いということは、恭介のリュージュと麗華のドミニオンを意識してのことだろう。
「「ウォォォォォォォォォォ!」」
ツインヘッドオーガは吠え、両手に握る棍棒を構える。
『飛べないオーガはただの雑魚よ』
麗華はそう言って青いオーガにヘッドショットを決めた。
「それな」
ワンテンポ遅れて恭介もツインヘッドオーガに接近し、
つまり、一突きした後で二度の突きの衝撃が敵を襲う。
それが
ツインヘッドオーガが光の粒子になって消えた後、恭介は麗華に声をかける。
「麗華、宝箱を開けてみるか?」
『良いの?』
「勿論だ」
『やった! 私も開けてみたかったの!』
麗華は嬉々として宝箱を開け、10万ゴールドとワイバーンを模ったビームランチャーを手に入れた。
『恭介さん、やったよ!
「おめでとう! 当たり引いたじゃん!」
10万ゴールドが出る宝箱は最も豪華なアイテムが手に入るから、リアルラックが高くない麗華は大喜びである。
恭介も麗華が報われたことが嬉しかったので一緒に喜んでいる。
宝箱で出た武器は基本的にゴーレムと同じ鉱物マテリアルで構成されるため、麗華はランプオブカースよりも上等な
試し撃ちの相手には昇降機を守るオーガシャーマンを選び、麗華が放ったビームはいともたやすくオーガシャーマンのどてっぱらに大きな風穴を開けた。
『あわわ…。これで麗華ちゃんが益々狂暴になっちゃった』
『煩い! 狂暴って言うな!』
アワアワしているように見せて、麗華をおちょくるのがフォルフォルだ。
麗華を怒らせてその反応を楽しんだら、さっさとコックピットのモニターから消えたらしい。
昇降機で15階層に移動すると、5階層毎にあるボス部屋の扉だけがあった。
その中に侵入してみれば、そこにはレッサーデーモンのパワーアップした姿と表現すべきデーモンが2体いた。
「「ここがゴカペッ」」
デーモン達の口上の途中だったが、機械竜姿のリュージュのビームと翼竜砲銃のビームで頭が吹き飛んだ。
麗華に至ってはギフトも使っているから、余波でデーモンの上半身が吹き飛んでいる。
デーモン2体は中ボスという立場のくせに、戦いという戦いをすることなく光の粒子になって消えた。
午前中のノルマを済ませたので、恭介と麗華は昇降機で16階層に移動してから魔法陣でタワーを脱出した。
それと同時に、タワー探索スコアが2人の乗るゴーレムのモニターに表示された。
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タワー探索スコア(マルチプレイ)
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踏破階層:13階層~15階層
モンスター討伐数:67体
協調性:◎
宝箱発見:○
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総合評価:S
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報酬:
60万ゴールド
資源カード(食料)50×1
資源カード(食料)10×1
資源カード(素材)50×1
資源カード(素材)10×1
ボスファーストキルボーナス:アップデート無料チケット(私室)
宝箱発見ボーナス:魔石4種セット×60
ギフト:
コメント:こんなの絶対おかしいよ
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「おかしくない。実現したのならそれは事実だ」
嘆きとも言えるフォルフォルのコメントに対し、恭介は真顔で返した。
『恭介さん、ギフトレベルが上がったよ! それと私室もアップデートできるって!』
「おめでとう。Lv10まであと少しだな。私室の方は俺も同じだ」
タワー探索スコアの確認を終え、恭介達は格納庫に戻った。
この時はまだ、恭介と麗華の私室があんなことになるとは思ってもいなかった。
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