第222話 私に味方なんていなかった!

 第六ウェーブで登場した敵は、モンスターではなくゲヘナキーパーだった。


 キメラパークで敵として現れたゴーレムが出て来たが、ハネムーンガーディアンの6つ目のルールを思い出して恭介はピンと来た。


「なるほど。全ての敵ってモンスターもゴーレムも問わないのか」


『風属性と水属性のゲヘナキーパーだね』


「参加者にとって相性の悪い個体が出て来るらしいな。マルチプレイだから、あんまり意味ないけど」


『そうだよね。私が風属性のゲヘナキーパーをやるから、恭介さんは水属性の機体をお願いね』


 役割分担が決まり、恭介は水属性のゲヘナキーパーと一瞬で距離を詰め、槍に形を変えたラストリゾートで水属性のゲヘナキーパーのコックピットを貫いた。


 ドラキオンのスピードを目で追うのがやっとだったから、水属性のゲヘナキーパーはその攻撃をまともに喰らって爆散した。


 風属性のゲヘナキーパーは、エクリプスを相手に逃げてはビームを撃つのを繰り返すが、その攻撃は盾形態のアヴェンジャーに吸収され、大剣に変形できた時点で麗華はゲヘナキーパーに反撃する。


『ゲヘナキーパーぐらいのスピードって、接近戦の練習に丁度良いんだよね』


 そう言って麗華はゲヘナキーパーの攻撃を躱しながら接近し、ゲヘナキーパーのコックピットをアヴェンジャーで貫いた。


 ゲヘナキーパー2機を倒して第六ウェーブが終わり、続く第七ウェーブではマザーフレームとファザーフレームが現れた。


 (第六ウェーブから先は敵がゴーレムに固定されるのか?)


 まだ2連続だから、次のウェーブでもゴーレムが敵として現れたら恭介の読みが正しいと考えられる。


 今回現れたマザーフレームは土属性であり、ファザーフレームは火属性だった。


 先程は弱点属性で攻めて来たけれど、今回は同じ属性で攻めて来るらしい。


 ゲヘナキーパーと違い、マザーフレームもファザーフレームもいきなりキュクロに向かって攻撃を始める。


「やらせないっての」


『私達を無視して攻撃するなんて認めないよ』


 恭介はラストリゾートを盾に変形させ、マザーフレームの攻撃を防いだ。


 その一方、麗華も盾に戻ったアヴェンジャーでファザーフレームの攻撃を防いでいた。


 ハネムーンガーディアンにおけるマザーフレームは、大剣を両手持ちして猛攻を仕掛けているのに対し、ファザーフレームは両手にビームライフルを持って攻撃している。


 どちらも盾を捨てて攻めに走っているあたり、ターゲットの抹殺を最優先としているのだろう。


「この程度の攻撃なら、攻撃吸収アタックドレインを使うまでもないな」


 マザーフレームの攻撃は大振りで攻撃と攻撃の間に時間があるから、恭介はラストリゾートを盾からソードブレイカーに変形させて振り抜く。


 それにより、マザーフレームが右手に持っていた大剣が折れてしまい、その事実にマザーフレームのパイロットが驚いている間にもう片方の大剣も折った。


 両手の大剣を失ったマザーフレームには、キュクロや空港を攻撃する手段が突進しかなかった。


 ハネムーンガーディアンが火山や森林のような環境なら、その環境を利用して攻撃することもできるのだが、空港という環境を利用して攻撃することはできないのだ。


 ラストリゾートをビームライフルに変形させ、恭介はマザーフレームのコックピットを撃ち抜いた。


 その時には既に麗華もハーロットに乗り換えているだけでなく、ファザーフレームを撃破していた。


 第八ウェーブに突入したところ、恭介達の前に土属性のオファニエルと風属性のエインヘリヤルが現れた。


「第六ウェーブから第十ウェーブはゴーレムが現れるって条件は確定だな」


『そうみたいだね。恭介さん、エインヘリヤルは任せて』


「頼んだ。俺はオファニエルを倒す」


 麗華は恭介にオファニエルを任せてすぐに、ブリュンヒルデに乗り換えてエインヘリヤルと銃撃勝負を始めた。


 (オファニエルは確か、背中の車輪の回転する方向で無効化できる攻撃が変わるんだよな)


 恭介はオファニエルの特徴を思い出し、大太刀に変えたラストリゾートを構えてオファニエルに接近する。


 オファニエルのパイロットは大太刀による攻撃に備え、背中の車輪を右回転させて物理攻撃を無効にする。


 ところが、恭介は竜鎮魂砲ドラゴンレクイエムを大太刀を振りかぶるフェイントの直後に放つことで、無防備なオファニエルのコックピットを撃ち抜いた。


「物理かビームか、片方だけ無効にしたってドラキオンはどっちでも攻撃できる。対策が甘かったな」


『基本的にはオファニエルのガードを貫けないんだけどね。ドラキオンって本当にチートだよ』


「準備したルーナがチートって言うなよ」


『そうだね。訂正するよ。恭介君とドラキオンの組み合わせがチートって言いたいぐらい強いんだ』


 ルーナのコメントは恭介と対峙した全ての者が思うことだろう。


 それぐらい相性抜群で不敗の組み合わせなのだ。


 エインヘリヤルと銃撃戦を行っていた麗華だが、早い段階でビームの数でエインヘリヤルを追い詰めており、恭介がルーナと話している間に戦いを終えていた。


 第八ウェーブが終わったことで、続く第九ウェーブの敵が恭介達の前に現れる。


 次に現れたのは土属性のガイアドレイクと風属性のセンジュだった。


 ガイアドレイクは既に機械地龍に変形しており、センジュも両肩から光の腕を大量に生やしている時点で敵は戦闘の準備が万端である。


 敵の狙いはキュクロ一択のようで、ガイアドレイクがビームを発射した。


「ここで使わせてもらうか」


 恭介が使うと言ったのは攻撃吸収アタックドレインだ。


 ガイアドレイクのビームを吸収して手に入れたエネルギーを利用し、恭介はガイアドレイクに向かってそのエネルギーを上乗せしたビームを放った。


 ビームランチャーに変形させたラストリゾートの元々の火力も十分強いけれど、それにガイアドレイクのビームの火力が上乗せされれば、ガイアドレイクを爆散させるのは容易い。


 麗華はハーロットに乗り換えて信号をオンにしたらしく、一瞬でセンジュを撃破していたらしい。


 敵が明日奈のサブのゴーレムとだったということもあり、麗華は何もさせずに仕留めたのだ。


 いよいよ進捗率が90%になり、残すところは第十ウェーブだ。


 このウェーブを乗り切れば、キュクロが宇宙に向かって発進してハネムーンガーディアンは完了である。


 さて、第十ウェーブで現れたゴーレムだが、偶然なのか麗華がサブとして使う水属性のハーロットと火属性のエクリプスだった。


『ルーナってマジで陰湿。恭介さんに私のサブゴーレムを撃たせようとするなんて』


『濡れ衣だよ!? 私は何も仕組んでないから! 麗華ちゃんの運が悪いだけだからね!?』


 麗華はルーナの仕業だと考えていたが、この件についてルーナは関与していないらしく慌てて麗華に抗議している。


 何が原因かわからないけれど、敵を倒さないとハネムーンガーディアンは終わらないから、恭介が麗華に声をかける。


「麗華、今は敵を倒すことに集中しよう」


『…そうだよね。ごめん』


「いや、麗華がルーナのせいだって思う気持ちはわかる」


『私に味方なんていなかった!』


 ルーナがガーンという効果音が聞こえそうなリアクションをするものの、恭介も麗華も見ていない。


 恭介が土精霊槌ノームハンマーをハーロットの真下に出現させて振り上げれば、ハーロットの残骸がバラバラに散りながら空に飛んで行く。


「ギフト発動」


 エクリプスのアヴェンジャーに吸収させる訳にはいかないから、麗華も一撃を強化するべく100万ゴールドをコストに金力変換マネーイズパワーを発動する。


 盾を構えるエクリプスに対し、ビームキャノンに変形させたアポカリプスでビームを放てば、属性的に相性が悪いこともあって吸収しきれず、盾ごとエクリプスを撃破した。


 全てのウェーブからキュクロを守り抜いたため、無事にキュクロは宇宙に向かって発進した。


 発進というよりも射出と呼ぶべき速度でキュクロが飛んで行き、それと同時にハネムーンガーディアンがクリア認定された。


『しゅぅぅぅりょぉぉぉ!』


 ルーナのアナウンスが聞こえると同時に、恭介達の乗るゴーレムのモニターにバトルスコアが表示される。



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バトルスコア(バトルメモリー・ハネムーンガーディアン)

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所要タイム:46分52秒

護衛対象被弾率:0%

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

   100万ゴールド

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

最短記録ボーナス:アップデート無料チケットⅡ(フリー)

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv43(up)

コメント:恭介君と麗華ちゃんのハネムーンは何処に行くのかな?

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「ルーナには絶対教えない」


『そんなぁ』


「当然の措置だ」


 話を切り上げ、恭介はギフトをキャンセルした。


 瑞穂に戻り、恭介と麗華はお互いが手に入れた報酬を発表し合った。


 麗華は武器合成キットだったらしく、アヴェンジャーをもっと使いやすい武器にするという目標ができた。


 恭介はアップデート無料チケットⅡ(フリー)を使い、トレーニングルームをver.8からver.10にアップデートした。


 これにより、瑞穂の共有設備は全てver.10になって戦艦としての完成に近づいた。

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