第118話 エンタメは人生の潤いじゃないか
ゲリュオンの体が消滅したことで、フォルフォルのアナウンスが放送される。
『ピンポンパンポーン。速報が入ったから伝えるね。たった今、日本のトゥモローと福神漬けによってサプライズモンスターのゲリュオンが討伐されたよ。ビビッてた人達は良かったね!』
戦場にいるのは恭介と麗華を除き、晶とムッシュだけだ。
それがわかっていてこのアナウンスをするあたり、フォルフォルは陰湿である。
アナウンスが終わってから、晶の乗るリャナンシーが恭介達に合流した。
『全然戦えてなくてごめんね。南端スタートで合流するのに時間がかかっちゃった』
「こればっかりは仕方ないさ。スタート位置は決められないんだから」
『そうですよ。私は中央スタートだったので早く合流できましたが、それも偶然ですし』
サバイバルウォーを行うにあたり、スタート位置はランダムだから晶を責められる者はいない。
とりあえず、恭介がE国のトロフィーを奪い、麗華が日本のトロフィーを持っているのでこのままでも日本の勝利で終わる可能性は高い。
問題はF国のトロフィーをムッシュから奪うか、奪わずに済ませるかという点だけだ。
その問題を話し合う前に、ヨトゥンに乗るムッシュが恭介達の前にやって来た。
一般回線を使ってムッシュは恭介達に連絡を取る。
『降参する! 私に敵対する意思はない!』
言葉だけでは信じられないと思ったようで、ムッシュはヨトゥンを操縦して武器を捨ててorzの姿勢になった。
3対1で数的不利なのもそうだが、質の点でもムッシュに勝ち目はないからムッシュは全面降伏したのである。
『私には救わなければならない同胞がいる! どうか降参に合意してほしい!』
ムッシュの発言に対し、恭介はムッシュと通信を切ってから麗華と晶に相談する。
「どうする? 俺はムッシュに襲われたことがないし、沙耶がやられた借りはマーリンに返したから受け入れても良いと思ってる」
『私も受け入れて良いと思う。奪わなくて良い命を奪いたくない』
『僕も賛成。それに、こういう終わり方をした方がフォルフォルの思い通りになってないはずだから、胸がスッとするんだよね』
既に一度サプライズで邪魔しており、それもゲリュオンが討伐されたことでフォルフォルは失敗している。
これ以上の干渉はやり過ぎだと判断し、フォルフォルは恭介達のモニターに現れてはいるが何も言えずに悔しそうだった。
自分達の意見が一致したことで、恭介は一般回線を繋ぎ直した。
「良いだろう。降参を認める」
その瞬間、フォルフォルはどんよりした表情で口を開く。
『はい、誠に残念ながらそこまで。帰って来てね。はぁぁぁぁぁ』
深い溜息が聞こえた時には、サバイバルウォーが終わって恭介達の足元に魔法陣が現れ、そのままイベントエリアに転送された。
転送中にコックピットのモニターにバトルスコアが表示され、恭介はすぐにその確認を始める。
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バトルスコア(第4回代理戦争・サバイバルウォー)
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保有トロフィー数:1(E国)
サプライズモンスター討伐数:1回
ゴーレム撃墜数:1機
協調性:◎
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×12枚
資源カード(素材)100×12枚
120万ゴールド
ゴーレム撃墜ボーナス:リペアチケット
サプライズ撃破ボーナス:ホーム改造チケット
ギフト:
コメント:恭介君にダブルボーナスチケットを使わせちゃ駄目でしょ!?
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(儲かったな。ダブルボーナスチケットすごいわ)
フォルフォルが叫びたくなるぐらい、恭介がサバイバルウォーで会得した報酬は破格だった。
恭介達がイベントエリアに戻って来たところで、ホログラムのフォルフォルが現れて喋り始める。
『お疲れ様。弱い者虐めをしてた奴を似非紳士を成敗したり、ゴーレム土下座を見せてもらったりという点では楽しめるサバイバルウォーだったよ。最後の降参宣言さえなければ、もっと面白かったのにね』
フォルフォルはムッシュにジト目を向けるが、ムッシュはそっぽを向いた。
続いて恭介達にジト目を向けるフォルフォルだったけれど、恭介達は別になんとも思わないから視線を逸らすことなく見つめ返した。
『はぁ。じゃあ、総合順位を発表しよっか』
短く溜息を吐いてからフォルフォルが言えば、恭介達のコックピットのモニターに総合スコアが表示される。
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総合スコア(第4回代理戦争)
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1位:日本(生存者4人/獲得資源(食料)100×24/(素材)100×24)
2位:F国(生存者1人/獲得資源(食料)100×6/(素材)100×6)
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脱落国:A国/C国/E国
報酬:アップデート無料チケット(フリー)
コメント:このまま続けてもつまらないから第2回デスゲームは終わりだね
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(そんなことだろうと思った)
恭介はコメント欄を見て予想通りだったため、特に驚くことはなかった。
全員が総合スコアを確認し終えたと判断し、フォルフォルは小石を蹴っていじける素振りを見せる。
『はぁぁぁぁぁ。わかってないよ。君達はエンタメってものをわかっちゃいない』
「俺達はエンターテイナーでもなければ、フォルフォルを楽しませるためにいる訳じゃない」
『そもそもが拉致被害者でしょうが』
『あれれ~? おっかしいぞ~? 自称神は自分の都合の悪いことを人のせいにしちゃう無能ってことになっちゃうかな? かな?』
『…同胞を人質に取っておいてその言い方は許せない』
恭介と麗華は事実を淡々と告げ、晶はここぞとばかりにフォルフォルを煽った。
ムッシュは恭介達に負けたけれど、生き残っている自分がF国の生命線であるという自負があるので静かに怒りを口にした。
『エンタメは人生の潤いじゃないか』
「エンタメを楽しむのはフォルフォルの勝手だが、こちらを巻き込むのはそろそろ止めたらどうだ? 第3回も第2回と似た感じでデスゲームを開催するなら、ほとんど変わらない結果しか生まれないぞ。結果の見えてるものってのは、フォルフォルにとって退屈なんじゃないか?」
『…勿論、第3回デスゲームをやるならもっと大がかりなものにするさ。すご過ぎて参加者全員が失禁したって知らないんだからねっ。第4回代理戦争は終わりだよっ。バイバイ!』
それだけ言ってフォルフォルのホログラムは消えた。
ムッシュは資源を転送しなければと急いで自分のホームに帰って行った。
「俺達も帰ろう。沙耶が心配だ」
『そうだね』
『サーヤがメンタルを病んでないと良いんだけど』
恭介達も強制送還された沙耶が心配だったので、
恭介と麗華はコックピットから出ると、すぐに沙耶と晶のホームに向かった。
格納庫同士が繋がっているから、2人は沙耶達のホームの格納庫に移動するまでほとんど時間がかからなかった。
そこでは晶が既にラセツのコックピットを開けて中を覗き込んでいたため、恭介は晶に声をかける。
「晶、沙耶はどうだ?」
「いないんだ。気絶したなら自力で動けるはずないよ。多分、フォルフォルがサーヤの私室に移動させたんだと思う」
「行ってみよう」
ラセツのコックピットの中で気絶したままじゃなくて良かったと思う反面、沙耶の姿を自分の目で確認できていないから恭介達は一抹の不安を感じた。
沙耶の部屋の前に移動し、男性陣がその中に入る訳にはいかないので麗華がノックしてその中に入る。
麗華は1分もしない内に部屋から出て来た。
「沙耶さんが恭介さんだけと話したいって言ってる」
「…わかった。すまないが麗華と晶は待っててくれ」
「うん」
「了解」
沙耶がどういう意図で自分だけと話したいと言い出したのかいくつか心当たりはあったが、あれこれ考えるのを止めて恭介は沙耶の部屋に入った。
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