第123話 息ぴったりだね。いつ式挙げるの? 私も出席する

 恭介と麗華はお昼までまだ時間があったため、宝探しに挑むことにした。


 沙耶は昼食まで我慢するのは辛かったため、遅めの朝食を取ってから午前はゆっくり過ごすと言ったので別行動である。


 タワーに移動した恭介達は、そのままさっさと昇降機に乗って地下4階層に移動する。


 昇降機から降りたところで、恭介と麗華の耳にアナウンスが届く。


『ミッション! 1時間以内にハートジェムを探せ!』


 ハートジェムとは、GBOにおいてマッシブロックから稀にドロップする換金アイテムである。


 モニターに映るハート型の石を見て、恭介達はそれがマッシブロックのドロップアイテムだと確信した。


「このフロアじゃマッシブロックの討伐祭りって感じかね?」


『もしくはマッシブロックがなかなか見つからないかも』


「それはありそうで怖いな。先を急ごう」


『うん』


 地下4階層は廃坑と呼ぶべき内装であり、あちこちにゴツゴツした岩がある。


「見つけた」


 恭介はナイトメアを銃形態に変形させ、マッシブロックが擬態している岩を狙撃した。


 タワー8階層で出て来るマッシブロックでは、黒金剛アダマンタイト製の銃弾に耐えることは不可能だ。


 一撃でバラバラに破壊され、マッシブロックの体は光になって消えた。


「残念。ハートジェムゲットならず」


『そう簡単にドロップしたら、レアドロップでもなんでもないでしょ』


「それもそうだな。次行こう、次」


 いくら恭介が幸運だとしても、流石に地下4階層で早々にハートジェムを手に入れられはしなかった。


 無論、宝探しの場合は通常のタワー探索とは違った要素も混ざっているので、状況によっては恭介の運がどれだけ良くても関係ないのだが。


 2体目のマッシブロックは麗華が先に見つけ、そのまま狙撃して倒した。


 属性的な相性の問題もあり、切替竜銃スイッチドラガンの弾丸はマッシブロックを粉砕した。


『うん、知ってた。私のラックは大したことないもの。ドロップしなくたって悔しくなんかないもん』


「声が悔しそうなんだよなぁ」


『次行くわよ、次!』


 先に進むにつれ、マッシブロックが擬態しないで現れるようになって来た。


 いや、正確には擬態せず数も多くなったと言うべきだろう。


「これだけいるとなれば、ドロップ率は間違いなく低いな」


『そうだね。でも、あれじゃない? 倒せば倒すだけドロップ率が上がるパターン』


「なるほどね。まあ、どちらにせよ数を倒さなきゃいけないのは間違いないから、サクサク倒すぞ」


『了解』


 恭介も麗華も視界のあちこちにいるマッシブロックを次々に撃ち抜いていく。


 24体目を倒した時、2人は赤銅色のマッシブロックを見つけた。


「GBOに色違いのマッシブロックっていたっけ?」


『いなかったはず。ここは恭介さんのラックで勝負すべき。撃っちゃって』


「OK」


 自分が撃つよりも恭介が撃つ方がハートジェムをドロップする確率が上がると判断し、麗華は恭介に色違いのマッシブロックを譲った。


 恭介はすぐに狙撃し、色違いのマッシブロックを倒した。


「Oh…」


『どうしたの恭介さん? 外人みたいなリアクションになってるけど』


「ハーフメテオジェムがドロップした。GBOにないアイテムがドロップしたぞ」


『ハーフメテオジェム? 確かに初めて聞くアイテムだね』


 ハートジェムが手に入るかもしれないと期待していたが、結果はまさかの違う初見アイテムだった。


「これはこれで集めたら何か起きそうだし、マッシブロックを狩りまくろう」


『今ほど爆弾が欲しいと思ったことはないかも』


「それな」


 ないものねだりをしていても仕方がないから、恭介達は切り替えて先に進む。


 そして、49体目を倒したところで再び赤銅色のマッシブロックが現れる。


「ハーフメテオジェム置いてけ!」


 赤銅色のマッシブロックを倒し、ハーフメテオジェムがドロップした。


 恭介の手元にハートメテオジェムが2つ揃い、それらが合体してメテオジェムが完成した。


 その直後にメテオジェムが光を放ち、それがリュージュの外に飛んで行く。


 光は石像に形を変え、光が収まると黄色い石像の大剣使いが現れた。


「こいつはなんだっけ? どっかでみたことがあるんだけど」


『メテオライトファイターだね。隕石で構成された戦士だよ』


「知ってるモンスターなのか。麗華、念のために相性の良い風属性で攻撃してみて」


『任せて!』


 切替竜銃スイッチドラガンで連射すると、メテオライトファイターは大剣を盾のように扱って防御した。


 黒金剛アダマンタイト製の弾丸で撃たれているはずなのに、メテオライトファイターの大剣は一撃で壊れたりしなかった。


 これなら戦えると思ったのか、メテオライトファイターは反撃の時間だと言わんばかりにセラフと距離を詰めて大剣を振り下ろそうとする。


『チェストなんてさせないわ』


 麗華が実弾からビームに変えて発射すれば、メテオライトファイターの胴体に大きな風穴が開いた。


 上段からの振り下ろしをする前に力尽き、メテオライトファイターは光になって消えた。


「お疲れ様。ハートジェムは手に入った?」


『ううん。多分、地下1階層の時のキマイラみたいな立ち位置なんじゃないかな。ほら、制限時間を削るための強い邪魔キャラみたいな』


「それっぽいな。残り20分を切ったところだ。先を急ごう」


『まったく、フォルフォルはこの層でも陰湿なことをするわね』


 麗華がやれやれと首を振った次の瞬間、フォルフォルが2人のゴーレムのモニターに現れる。


『誰が陰湿だって?』


「『お前だよ』」


『息ぴったりだね。いつ式挙げるの? 私も出席する』


「それは絶対にない」


『え?』


 恭介の頭の中では、もしも麗華と結婚式を挙げるようなことがあってもフォルフォルをそこに呼ぶことは絶対にないという意味だった。


 しかし、麗華はネガティブに恭介の発言を受け取ってしまい、恭介には自分と結婚する意思がないのだと受け取ってしまった。


 だからこそ、悲しそうな声が漏れてしまった。


 フォルフォルがモニターから姿を消したタイミングで、51体目のマッシブロックが現れた。


「そろそろドロップしてくれ」


 うんざりした感じで恭介がマッシブロックを倒したところ、ようやくリュージュのコックピットのサイドポケットにハートジェムが現れた。


 宝探しのミッションをクリアしたことで、宝探しスコアが恭介達の見るモニターに表示される。



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宝探しスコア(マルチプレイ)

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ミッション:1時間以内にハートジェムを探せ

残り時間:17分35秒

協調性:◎

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総合評価:S

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報酬:50万ゴールド

   資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

ランダムボーナス:アップデート無料チケット(格納庫)

レアモンスターキルボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv20(stay)

コメント:麗華ちゃんが式を挙げないって勘違いして落ち込んでるよ

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 (式を挙げない? ん? あぁ、そういうことか)


 フォルフォルのコメントを見たことで、恭介は先程から急に麗華が静かになった訳を理解した。


 恋愛に前向きになれない恭介だが、これまで一緒に過ごしてきたことで麗華が自分を好いてくれていることは疑っていない。


 結婚してほしいとプロポーズするまでの気持ちは芽生えていないが、恭介は麗華なら安心して背中を預けられると思っている。


 なんと声をかければ良いものかと悩んでいると、麗華が恭介に質問する。


『恭介さん、私のこと、嫌いになっちゃった?』


「そんなことはない」


『でも、結婚式は挙げないって言った』


「違う。俺は仮に結婚式を挙げたとしても、フォルフォルだけは絶対に呼ばないってつもりで言ったんだ」


 麗華の声は恭介の言葉を聞いて明るくなる。


『そっか! じゃあ、式は挙げてくれるんだね!』


「その、なんだ、もうちょっと待ってくれ。優柔不断なようで申し訳ないんだが、まだ恋愛に対して前向きになれなくてな。麗華のことはデスゲームのパートナーとして信頼してるんだが、恋愛ってなるとあの下半身直結野郎のせいでどうしても感情にブレーキがかかるんだ」


『…そうなんだ。でも、私は本気だから! 恭介さんを惚れさせて結婚してみせるから!』


「お、おう」


 恭介がアクセルを踏めないのなら、自分がアクセルを踏むと言う麗華に恭介は押されて頷いた。


 ちなみに、この2人のやり取りを見てモニターにはニヤニヤしているフォルフォルがいたことを補足しておこう。

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