第295話 こういうので良いんだよ

 恭介達が瑞穂に来て65日目、恭介と麗華はヤルダバオトとネクサスに乗ってコロシアムに来ていた。


「ルーナ、ニューイングランドメモリアルと崩壊の祖国をマルチプレイでできるようにした理由はなんだ?」


『新人戦では各国が協力できるか確かめるため、敢えて一国一人の制限にしたけどバトルメモリーでは制限する理由がないからだよ。それよりも、恭介君と麗華ちゃん、他の瑞穂クルーにも連係プレーを磨いてほしいからマルチプレイを解禁したのさ。ただし、マルチプレイにする代わりに他の国のゴーレムは出て来ないけどね』


「そういうことか。他国のゴーレムもいない方が邪魔されないから、別に構わない。まずはニューイングランドメモリアルからチャレンジする。縛りについても教えてくれ」


 ルーナが縛る内容を想定し、恭介と麗華はそれぞれヤルダバオトとネクサスに乗って来たがが、それを見てルーナはニッコリと笑った。


『恭介君はギフト+アンチノミー使用禁止。麗華ちゃんはシグルドリーヴァとヴォイドの使用禁止。私が言わなくてもわかってるじゃんか』


「予想はあくまで予想だ。縛りを聞かずに実は縛られてなかったなんてマヌケなことはしたくないんだよ。じゃあ、入場門を開いてもらおうか」


『はーい』


 入場門がルーナによって開かれたため、恭介達は各々のゴーレムを操縦してその中に進んだ。


 再現されたニューイングランドに転送され、恭介と麗華は懐かしいと感じた。


「こうしてみると無駄に再現度が高いな」


『作戦に参加してないパイロットが追体験する分には良いんじゃない?』


『ニューイングランドメモリアル、開始!』


 2人が言葉を交わしていると、開始の合図が聞こえて来た。


 すぐに頭を切り替えて周辺を警戒する2人は、すぐに黒い仔山羊=レプリカ30体に遭遇した。


 (あの作戦を経験した身としては、遭遇するのが3体だけなんて方が変だ。バトルメモリー版の方が新人戦よりも再現度が高い)


 恭介が考える通りであり、第3回新人戦におけるニューイングランドメモリアルは散々な結果だったけれど、それでもリアルなニューイングランド侵攻作戦に比べて難易度は低く調整されていた。


 30体いる黒い仔山羊=レプリカを見て安心してしまうぐらいには、新人戦は温かったというのが恭介の感想である。


 ヤルダバオトは今、歪認識鎧グノーシスを装備していることからソロネの外見に見えており、黒い仔山羊=レプリカはネクサスに比べて弱そうなヤルダバオトに攻撃を集中させる。


 (歪認識鎧グノーシスはしっかり機能してるようだ)


 機体を背景に同化させて消え、麗華が盾形態のパラダイスロストでそれらの攻撃を受ければ、黒い仔山羊=レプリカ達はヤルダバオトが何処に消えたのかわからなくて混乱した。


 パラダイスロストはある程度攻撃を吸収させなければ使えないから、麗華は今の攻撃だけでパラダイスロストを大剣形態に変形できるようにしたのである。


 これを言葉を交わさずにできるのだから、恭介と麗華の相性はとても良いと言える。


 混乱する黒い仔山羊=レプリカ達を正面から麗華が攻撃し、背後から姿を現した恭介がビームソード形態のプロヴィデンスで仕留めていけば、30体いても5分もかからず倒してしまった。


 もしもニューイングランドメモリアルに挑んだ博己がこの戦闘を見ていれば、口をぽかんと開けたままフリーズすることだろう。


 少し進んだ所でレンの蜘蛛=レプリカ90体が現れ、恭介達を見つけたそれらが一斉に糸を吐き出す。


「麗華、糸の処理を頼む。俺は奴等の動きを鈍らせて来る」


『任せて!』


 麗華は追憶砲レミニセンスを薙ぎ払うように放ち、吐き出された大量の糸を焼き払った。


 その隙に恭介がレンの蜘蛛=レプリカの群れに接近し、動きを鈍らせる粉を浴びせてそれらの動きを鈍らせる。


 のろのろ動いているレンの蜘蛛=レプリカなんて何体いても敵にならないから、後は仕留めるだけの簡単な作業を行った。


 数が多い分、黒い仔山羊=レプリカの群れを倒した時よりも時間がかかったが、それでもノーダメージで一方的に倒すのだから流石と言えよう。


 そこにマガ鳥=レプリカと忌まわしき狩人=レプリカの混成集団が現れ、攻撃できる個体からどんどん恭介と麗華を攻撃し始める。


 麗華も雑魚モブの攻撃なら大剣形態のパラダイスロストで捌けるようになったため、着々とダメージを吸収してパラダイスロストをビームライフルに変形させられるステージに到達した。


 しかし、麗華はビームライフルに変形させずにビームキャノンへの変形を目指すらしく、大剣で敵の攻撃を捌き続ける。


 恭介は麗華の狙いを素早く理解し、麗華が捌き切れない攻撃を使用としている個体から順番にビームライフル形態のプロヴィデンスで始末した。


 それから少しして、麗華が恭介に連絡する。


『溜まった! 恭介さん、待たせちゃってごめんね!』


「問題ない。討伐速度を上げるぞ」


『うん!』


 麗華の火力が上がれば、当たり前だが敵を倒すペースが上がる。


 マガ鳥=レプリカと忌まわしき狩人=レプリカの混成集団は一気に殲滅された。


 新人戦のニューイングランドメモリアルならば、そろそろクトーニアン=レプリカが出て来る頃合いだったが、恭介達が次に目撃したのはアトラク=ナクア=レプリカだった。


「おい、単一個体のレプリカまで出て来るのかよ」


『恭介さん、さっさと倒さないとイタカとラーン=テゴスのレプリカも来ちゃうよ』


「だろうな。速攻で倒すぞ」


『任せて!』


 麗華はビームキャノンを連射し、アトラク=ナクアに風穴を開けていく。


 恭介がダメ押しでビームキャノンに変えたプロヴィデンスで攻撃すれば、アトラク=ナクアは何もできずに倒れた。


 その直後に麗華が予想した通り、イタカ=レプリカとラーン=テゴス=レプリカが現れる。


「麗華はイタカ=レプリカを頼む。俺はラーン=テゴス=レプリカをやる」


『了解!』


 風属性のイタカ=レプリカを麗華に任せ、恭介はゴーレムチェンジャーでネメシスに乗り換える。


 この場で恭介がネメシスに乗り換えたのは、武器がアンヒールドスカーからライトニングメナスに変わったため、それを実戦で使いたかったからだ。


 ラーン=テゴス=レプリカは象の体に無数の吸入管と蟹の鋏がついた6本の触腕が生えた外見で、恭介をその全ての触腕を躱しながら接近する。


 大鎌デスサイズ形態のライトニングメナスで蟹の鋏と触腕全てを根本から切断すれば、帯電している攻撃を喰らったせいでラーン=テゴス=レプリカは吸入管による吸い込みをできずに痺れている。


「雷に当たる感覚を味わってみてくれ」


 そう言って恭介がライトニングメナスをパイルバンカーに変形させ、痺れて動けないラーン=テゴス=レプリカに放つ。


 声にならない悲鳴が響き、ラーン=テゴス=レプリカは力尽きた。


 その頃には麗華もイタカ=レプリカを仕留めており、まだ制限時間は残っていたにもかかわらずルーナのアナウンスが恭介達の耳に届く。


『はーい、そこまで! 侵攻率が100%に到達したよ! 戻って来てねー!』


 そのアナウンスが聞こえてすぐに、ネメシスとネクサスがコロシアム前に転送され、それと同時にそれぞれのゴーレムのモニターにはバトルスコアが表示される。



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バトルスコア(バトルメモリー・ニューイングランドメモリアル)

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出動時間:29分36秒

貢献率:55%

撃破数:黒い仔山羊=レプリカ30体

    レンの蜘蛛=レプリカ90体

    マガ鳥=レプリカ50体

    忌まわしき狩人=レプリカ40体

    アトラク=ナクア=レプリカ1体

    イタカ=レプリカ1体

    ラーン=テゴス=レプリカ1体

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×10枚

   資源カード(素材)100×10枚

   100万ゴールド

ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100

最短記録ボーナス:武器合成キット

デイリークエストボーナス:魔石4種セット×100

ギフト:黒竜人機ドライザーLv50(stay)

コメント:こういうので良いんだよ

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 (一昨日のニューイングランドメモリアルは失敗だったからな。成功してルーナがご機嫌らしい)


 ルーナがコメント欄に余計なことを書かなかったから、恭介はツッコミで無駄な体力を消費せずに済んだ。

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