第296話 なんだって! それは本当かい!?
ニューイングランドメモリアルの報酬では、武器合成キットが手に入っても合成する武器がなかった。
おまけにクリアにかかる時間がかなり短かったから、恭介は麗華に提案する。
「麗華、時間にまだ余裕があるけどこのまま崩壊の祖国もやってみる?」
『そうだね。さっきの報酬で武器合成キットしか手に入らなかったから、合成する武器が欲しいんだよね』
「麗華もそうか。俺もだ」
『恭介さんもそうだったんだ。お揃いだね』
偶然なのかという点については、実は偶然ではなくルーナの仕業である。
恭介達の戦闘を見て、まだまだ戦えると思ったから続けて崩壊の祖国にも挑戦してもらえるように報酬を用いて誘導しているのだ。
「ルーナ、その計画通りだって悪い笑みを浮かべるのは止めろ。とっくにお前の仕業だって気づいてるから」
『なんだって! それは本当かい!?』
「ボケを重ねんな。ツッコむのが面倒だから」
『面倒って言わないで~。もっと私に構ってよ~』
ルーナは基本的に瑞穂クルーに気安く絡むが、特に恭介にダル絡みする。
これはルーナが麗華に少し話したけれど、恭介の言動がルーナの幼馴染に似ているからだ。
懐かしさから他のクルーよりも恭介に絡む頻度が高い。
それはそれとして、恭介は気持ちがだらけないようにルーナとの会話を手短に済ませようとする。
「断る。それよりも崩壊の祖国について質問だ。俺達が挑む場合に舞台は変わるのか? また、被害が現実にフィードバックされるのか?」
『舞台は4期パイロットの出身国の何処かにランダムで変わるよ。今回は被害が現実にフィードバックされないから安心して。あの措置も4期パイロットがもっと真剣になってくれると思ってやっただけだから』
「わかった。それじゃ入場門を開いてくれ」
『は~い』
ルーナによって入場門が開かれ、恭介と麗華はそれぞれのゴーレムを操縦してその中に進んだ。
入場門をくぐった先は、マイノグーラが新人戦当日に襲撃しようとしたA国のギャンブルが盛んな町だった。
(ここってA国の首都じゃなくね? いや、4期パイロットの出身国の何処かとしか言ってなかったか)
目にした場所がA国の首都ではないことに心の中でツッコんだけれど、恭介はすぐにルーナの説明を思い出してイレギュラーが起きた訳ではないことを理解した。
『崩壊の祖国、開始!』
開始の合図が聞こえたことにより、恭介達は自分のゴーレムを自由に操作できるようになった。
新人戦では
「麗華、一旦手分けして敵の数を減らそう」
『わかった!』
周辺の状況を確認し、レアエネミーが見当たらなかったことから恭介は麗華と別れて敵軍と戦うことにした。
麗華の実力を考えれば、別々に戦っても大丈夫だと判断してのことである。
若干距離が離れていることから、恭介はライトニングメナスをビームライフルに変形させてゲヘナキーパーを狙撃し始めた。
それゆえ、1機当たりに時間をかけずに済む狙撃を攻撃手段として選んだ訳だ。
5機連続で撃墜したところ、周辺のゲヘナキーパーが恭介を脅威判定して囲い込もうと接近する。
(かかった)
続々と集まるゲヘナキーパーを見て恭介は目論見通りだと笑った。
町を攻撃せず自分を攻撃して来るならば、近接戦闘に切り替えても何も問題ないからだ。
ライトニングメナスを
周辺の敵を一掃したら、ゴーレムチェンジャーでネメシスよりも1対多数が得意なソリチュードに乗り換えた。
その直後に恭介を狙って急接近する竜人型のゴーレムがいた。
「新型か」
『その通り。ドレイクノワールだよ』
恭介の呟きにルーナが応じた。
ドレイクノワールの見た目はレイダードレイクに似ており、得意とする奇襲でソリチュードを仕留めようという魂胆らしい。
だがちょっと待ってほしい。
ソリチュードには
ドレイクノワールの奇襲は高速回転する
そんな隙だらけの敵がいたとして、恭介がその隙を見逃すはずない。
蛇腹剣形態のビヨンドカオスを横薙ぎにすれば、パリィされてバランスを崩したドレイクノワールは真っ二つになった。
そこに、麗華が別の新型と銃撃戦をしながら近づいて来た。
「あれも新型か。装備はエインヘリヤルに似てるけど悪者っぽいな」
『そうだね。あれはダークヴィランだ。デザイン通りの名前でしょ?』
恭介がルーナから情報を引き出していると、麗華も恭介の手を煩わせたりしないと意地を見せ、ゴーレムチェンジャーでアルスマグナに乗り換えて攻撃パターンを変える。
急な変化に対応できず、ダークヴィランは隙を生じさせてしまう。
麗華も隙を見せた敵を見逃す甘い性格ではないから、フォビドゥンアサルトで威力を誤魔化したビームを連射する。
咄嗟に躱して更に隙が大きくなったため、麗華はフォビドゥンアサルトをトンファーに変えてダークヴィランの頭部を叩き潰した。
モニターが見えなくなって慌てるダークヴィランに対し、再び銃に変えたフォビドゥンアサルトで攻撃すればそれがとどめになった。
「麗華、お疲れ様。さっきの新型は厄介だった?」
『お疲れ様。シグルドリーヴァとヴォイドなら余裕なんだけど、ネクサスとアルスマグナだとちょっぴり時間がかかっちゃった』
「縛りがここで効いて来たか。俺の方はドレイクノワールって新型が現れたぞ。レイダードレイクに似てた」
『恭介さんも新型と戦ってたんだね。それにしても、あと何機新型がいるのやら』
麗華が溜息をついた時、町の外側から巨大なゴーレムが接近して来た。
そのゴーレムは通常のゴーレムに比べて倍以上大きく、黒がベースで武器が全て赤く染まっており、その重量感から歩く火薬庫と呼ぶのが相応しい。
「また新型か。ボスっぽい感じがするから、あれを倒せば崩壊の祖国が終わりそうだ」
『正解。あれはインフェルノだよ。倒せば崩壊の祖国は終了するね』
「倒さなきゃこの町が火の海、文字通りの地獄になるってか。嫌な名前だな」
『ほら、その方が絶対に倒さなきゃってやる気になるでしょ?』
ルーナの言う通りで、確かに恭介も麗華もインフェルノを倒さなければという気持ちになっていた。
上手く乗せられている気もするが、どの道撃破しなければ崩壊の祖国が終わらないのだから撃破するしかない。
『恭介さん、ギフトを使って仕留めるから時間稼ぎしてもらっても良いかな?』
「任せろ。存分に準備してくれ」
『ありがとう。ギフト発動』
恭介がソリチュードでインフェルノに接近している間に、麗華はネクサスに乗り換えて一撃で仕留められるチャンスを狙う。
全身銃火器のインフェルノから移動手段を奪うべく、恭介はビヨンドカオスをビームブーメランに変形させて投げた。
狙ったのはインフェルノの両脚であり、最初はインフェルノも狙いに気づいてジャンプして躱したが、ブーメランゆえに戻って来ることを失念していたせいで両脚が斬り落とされてしまった。
両脚を斬られて倒れ込んだら、無防備な背中がみえているだけだ。
麗華は
それが全身の銃火器に引火して大爆発を引き起こし、インフェルノは跡形もなく爆散した。
『しゅぅぅぅぅぅりょぉぉぉぉぉ! 町の損壊率は20%! ミッションは成功だよ!』
ルーナのアナウンスが聞こえてすぐに、恭介達はコロシアム前に転送される。
それと同時に個人用のバトルスコアがコックピットのモニターに表示されたので、恭介達はそれを確認し始める。
-----------------------------------------
バトルスコア(バトルメモリー・崩壊の祖国)
-----------------------------------------
出動時間:30分24秒
貢献率:50%
撃破数:ゲヘナキーパー20機
ドレイクノワール1機
ダークヴィラン1機
インフェルノ1機
-----------------------------------------
総合評価:S
-----------------------------------------
報酬:資源カード(食料)100×10枚
資源カード(素材)100×10枚
100万ゴールド
レアエネミー撃破ボーナス:ゲルプスティグマ
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:君達は本当に優秀だね。もうちょっと手加減してくれても良いんだよ?
-----------------------------------------
「既に縛りが2つあるんだが?」
『それじゃ君達の強さは抑えきれないってことさ。誇って良いよ』
「ドヤァ」
『…恭介君のドヤ顔を永久保存したよ』
「おい止めろ」
『嫌だね!』
ルーナはニヤリと笑ってモニターから姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます