第178話 何が敵だろうと構わない。敵は全て斬り捨てる
ターミナル攻略戦が始まり、明日奈は迷うことなくターミナルに接近した。
破壊すべき対象が近くにあるのだから、さっさと倒して新人戦を終わらせるつもりなのだ。
自分と潤、それ以外の位置を映し出す地図の範囲を広げてモニターでチェックした後、明日奈はターミナルを護衛するゴーレムが出入りする場所を見つけて接近した。
そこに入った途端、フォルフォルのアナウンスが聞こえる。
『誠に残念ながら不幸なパイロットがいたよ! D国のキルシュが乗るラセツは、結界によって上半身と下半身が分断されて爆発しちゃった! 物的財産は没収だよ! バイバイ!』
(馬鹿なくせに悩んで初動が遅れたからそうなるのよ)
心の中でバッサリと斬り捨て、明日奈は目の前からやって来るエイブラムスの集団と戦闘を始める。
ナグルファルのソードウイングを展開し、バッサバッサと斬り捨てて行くことで明日奈の脅威度が高まり、ターミナルの護衛をするエイブラムスが明日奈を倒すべく集まって来る。
そこに、敵が全然出て来ない穴を見つけたと思ったのか、他国のゴーレムが2機現れた。
2機の出方次第では斬り捨てなければと思っていた明日奈だったが、どういう訳かその2機同士で争い始めた。
外から見ればその2機は隙だらけだったため、明日奈を倒そうとしていたエイブラムス部隊が先にその2機を包囲して集中砲火を浴びせた。
『ピンポンパンポーン! A国のディーラーがE国のティーティーと戦ってたところをエイブラムス部隊にやられたよ! どっちの物的財産も没収だね! どんまい!』
(馬鹿ばっかりね)
明日奈は溜息をつき、ソードウイングだけでなく
ソードウイングも含めれば、明日奈は8本の剣を操って戦っていることになる。
エイブラムス部隊の力量は明日奈からすれば大したことなかったので、あっさりと殲滅してナグルファルはターミナルの奥に進む。
エイブラムスでは歯が立たないと判断したようで、ターミナルの奥から新しい黒塗りのゴーレムが現れた。
そのゴーレムは蟹のような見た目であり、右手の鋏が左よりも大きく、それが放つ熱で赤く光っている。
ゴーレムの名称はシューゾフィドラーだ。
宇宙空間あるいは水中が得意とされており、GBOでは使える機会が限られていて見かけることはほとんどない機体と言えよう。
「何が敵だろうと構わない。敵は全て斬り捨てる」
シューゾフィドラーが熱を持った鋏を突き出して前進して来るので、明日奈はその両脇からソードウイングでシューゾフィドラーの脚を切断する。
脚で機体のバランスを取っているシューゾフィドラーだから、脚を切断されてしまえば体勢を変えることも難しい。
操縦するパイロットは死を覚悟したのか、シューゾフィドラーのトップスピードでナグルファルに接近する。
「邪魔!」
シューゾフィドラーの側面に回り込み、明日奈はソードウイングを突き刺してターミナルの内壁にぶつけた。
ソードウイングを引き抜いて回収した直後、シューゾフィドラーが爆発してターミナルの内壁が壊れた。
フィドラークラブの撃破と内壁の破損により、ナグルファルに表示された明日奈による破壊率が3%になり、全体では21%に更新された。
まだまだ5分の1しか壊せていないから、明日奈はこんなところでボーっとしている訳にはいかないと思ってターミナルの内部に進む。
その後ろから、追いかけて来るゴーレムの反応が1つナグルファルのモニターに表示された。
(赤ってことは、また他国のゴーレムね)
近づいて来たゴーレムは土属性のヨトゥンだった。
『バゲットの恨みぃぃぃぃぃ!』
「バゲットって誰よ?」
ヨトゥンは戦艦でも斬れそうな大剣を突き出したまま、ナグルファルに突撃して来た。
明日奈はその刺突を横に回って避けるようにナグルファルを操縦し、避けるのと同時に
バラバラになったパーツは少し移動してから爆発し、その直後にフォルフォルのアナウンスが聞こえる。
『見当違いな復讐で命を落としたパイロットをお知らせするよ! F国のフルートが仇でもない日本のヨッシャア=明日嬲るに返り討ちにされちゃった! フルートの物的財産はヨッシャア=明日嬲るに移譲されたよ! m9(^Д^)プギャー』
フルートが口にしたバゲットとは、第1回新人戦のデュエルトーナメントにて仁志に殺されたF国のパイロットのことだ。
バゲットとフルートは恋仲であり、フルートが恋人を殺した日本のパイロットを皆殺しにしてやると襲撃した訳である。
フルートは復讐の相手を間違っているし、襲撃に失敗して返り討ちにされているのだから色々と報われていないと言えよう。
(悪趣味なアナウンスだったわね)
フォルフォルのアナウンスを聞いてそんな風に思いつつ、明日奈は気持ちを切り替えた。
前方から小型戦艦が姿を現し、ナグルファルに副砲を発射して来たからだ。
砲撃を躱して小型戦艦の周りを飛んでいれば、小型戦艦は苛立ってミサイルを発射し始める。
直進するだけのものもあれば、精度はそこまで高くなくともある程度敵を追尾するミサイルもあったため、明日奈はそれを見極めて小型戦艦に接近した。
小型戦艦のブリッジを
それから、小型戦艦の成れの果てにソードウイングを串刺しにして、爆発させることでターミナルの破壊率を上げる一助とする。
この戦闘により、ナグルファルに表示された明日奈による破壊率が8%になり、全体では32%に更新された。
攻略戦開始から1時間以内に破壊率50%まで到達しなければ、全員失格になって報酬は貰えない。
ナグルファルのモニターに映るストップウォッチは40分を過ぎたところであり、残り20分であと18%削らなければならない。
ターミナルの奥に向かって進むナグルファルに対し、それを撃ち落とすべく小型戦艦が2隻やって来た。
それらは横並びで近づいて来たため、明日奈はピンと閃いてナグルファルを2隻の間に移動させた。
ターミナルにとってナグルファルは十分に脅威認定されており、小型戦艦2隻は艦体の破損を気にせずにミサイルやビームを撃ちまくった。
結果として、明日奈がそれらをスルスルと躱して同士討ちに成功し、ナグルファルに表示された明日奈による破壊率が18%まで上昇した。
全体では44%まで上昇したため、残り8分で6%破壊する必要がある。
(微妙に時間が足りないかも)
どうしたものかと思っていた時、再び赤いアイコンがナグルファルのモニターに表示され、それがナグルファルに接近して来た。
そのゴーレムは風属性のパイモンであり、明日奈に通信によって話しかける。
『こちらF国のムッシュ。敵意はない。協力してターミナルを破壊したい』
「私はF国のフルートを倒したばかりだけど、それについてはどうなの?」
『バゲットを殺したのはサビザンであり、弱肉強食のデスゲームにおいて仕方のないことだった。それだけだ』
「…あっそう。万が一攻撃して来たら、誤射だろうとなんだろうと必ず殺すから覚悟しなさい」
『わかった。それで構わない。今はターミナルの破壊が最優先だ』
ムッシュは絶対にナグルファルを攻撃しないようにしなければと気を付け、明日奈と共にターミナルの内壁を破壊し始めた。
それを阻止すべく中型戦艦が現れたため、明日奈とムッシュは内壁の破壊を中断して中型戦艦を攻撃する。
明日奈が全武装を操り、真っ先に主砲2門を切断していく。
その一方、ムッシュは副砲1門を
(何やってんのよ。使えないわね)
ムッシュを助けるのではなく、明日奈はソードウイングでブリッジを破壊することを優先した。
一見非情な選択をしたように思えるが、そのおかげでナグルファルに表示された明日奈による破壊率が28%まで上昇し、全体では54%まで上昇したから1時間で破壊すべきノルマは達成できた。
ムッシュもエイブラムス部隊を確実に倒していき、明日奈が爆発する中型戦艦から距離を取った時には敵部隊を殲滅させていた。
(最低限の囮としては機能したわね。それだけでも良しとしましょう)
明日奈にとっては恭介が至高の存在であり、それ以外の日本のパイロットは恭介に褒めてもらうライバル扱いで、他国のパイロットは等しく急場凌ぎの駒程度にしか思っていないらしい。
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