第21章 高天原防衛戦

第201話 退け!!! 俺はドラキオンだぞ!!!

 恭介達が瑞穂に来て46日目、ハイパードライブを終えて瑞穂は地球に接近していた。


 それはそれとして、恭介は朝食後にドラグレンに乗ってレース会場にやって来た。


『恭介君、キメラパークに挑むのかい?』


「勿論だ。新しいコースがあるなら挑まないなんて選択肢は俺に存在しない」


『だよねー。はい、キメラパークに繋がる入場門を開いたよ』


「よし、早速行こうか」


 開かれた入場門をくぐり、恭介はキメラパークに移動した。


 キメラパークとは合成獣キメラ型モンスターが邪魔者として集まるサファリパークをモチーフとしたコースだ。


 モンスターが放し飼いされているため、射程圏内にいるゴーレムはもれなく襲われるようになっている。


 スタート地点には既に7機のゴーレムが位置に着いており、ドラグレンが位置に着くのを待っている。


 1位の位置には火属性のオファニエル。


 沙耶がサブのゴーレムに選んだこの機体は、ソロネの特徴を引き継いでいる。


 ソロネは三対の翼を背中に生やした天使型ゴーレムで、その翼は銃になっている。


 翼は有線式で伸びたり角度を変えられるから攻撃パターンは多いけれど、両手に武器を持たず、無数の目玉模様の車輪をモチーフにした盾を装備している。


 おまけに変形機能もあり、戦闘航空機の姿になることも可能だ。


 それに対し、オファニエルは三対の翼が消えて大きな車輪を背中に背負っている。


 車輪には目玉模様が刻まれており、車輪が回転する方向によって展開されるフィールドが変わる。


 右回転ならば物理攻撃を無効にし、左回転ならばビームを無効にできる。


 戦闘航空機への変形はできないが、両手にビームライフルを装備しており、ビームライフル同士は合体させられる。


 2位の位置には風属性のエインヘリヤル。


 仁志がサブのゴーレムに選んだこの機体は、二対の翼に銃が仕込まれており、オファニエルと同様に有線式だから伸びたり角度を変えられる。


 右手には剣、左手にはビームソードを持っており、守りは一切考えていない装備だ。


 当たらなければどうということはないというコンセプトとも言える。


 オファニエルとは逆に戦闘航空機にも変形可能であり、使いこなせればレースでもバトルでも優秀な成績を出せるだろう。


 3位の位置には土属性のアリコーン。


 遥がサブのゴーレムに選んだこの機体は、基本的にはペガサスの上位互換と呼べるスペックだが、人型形態の頭部に一本角が生えており、獣形態では角ありペガサスの姿になれる。


 角からはビームを発射できるようになっており、一対の翼はソードウイングになっている。


 両腕には盾を装備しているから、パイロットの操縦技術が下手でない限りなかなかコックピットに攻撃は通らないはずだ。


 4位の位置には水属性のアスタリスク。


 潤がサブのゴーレムに選んだこの機体は、背中にアスタリスクのユニットを背負っており、6つの着脱自在なビットを遠隔操作してビームで攻撃する。


 ビームソードと盾を装備しているから、近接戦闘も遠距離戦闘もできる機体である。


 5位の位置には火属性のハーロット。


 麗華がサブのゴーレムとして起用している機体がここで出て来た。


 6位の位置には風属性のエクリプス。


 一昨日、麗華がバトルメモリーでコレクト&ビルドを選択して挑み、完成させた設計図がこのエクリプスだ。


 竜人型ゴーレムのエクリプスは、敵の攻撃を吸収して強くなる特性のゴーレムだがクセも強い。


 7位の位置には土属性のゲヘナキーパー。


 妨害限定で登場するロストガーディアンとエイブラムスを合成したゴーレムであり、見た目はエリート警備兵と呼ぶべきである。


 頭頂部には赤いパトランプがあり、音を発すると同時に周りの動きを鈍らせる性能を有している。


 いずれも合成ありきなゴーレムの準備が整ったため、レース開始のカウントダウンが始まる。


『3,2,1』


「ギフト発動」


 恭介がギフトの発動を宣言し、彼はドラグレンのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移った。


『GO!』


 スタートの合図と同時にドラキオンがスタートダッシュを決め、5位のハーロットのアシストもあって一気に1位に躍り出た。


 ドラキオンのスペックならばハーロットの妨害は通用しないけれど、他のゴーレムはその限りではない。


 1位がドラキオン、2位がハーロット、3位がエクリプスであり、それより下の順位は団子状態である。


 スタートしてから最初に遭遇したのはキマイラの群れだった。


 (キマイラが群れるとかどうかしてるだろ)


 キメラパークだから、合成獣キメラ型モンスターが邪魔者として集まるのはわかるけれど、それでもコロシアムに出て来るようなモンスターが雑魚モブ扱いとは恐ろしいコースと言えよう。


 恭介はキマイラがたくさんいる現状にツッコんだものの、特に対策せずとも風のバリアで突っ切れるから無視する。


 キマイラの群れも馬鹿ではないから、追いつけない敵よりもこれから来る敵に襲い掛かる。


 それがハーロットとエクリプスの足止めに繋がり、1位と2位以下の差がここで広がった。


『強いられてるんだ! キマイラ達は恭介君に他の連中の足止めを強いられてるんだ!』


「ルーナ、ハウス」


『はーい』


 ルーナが余計なことを言うものだから、恭介は駄目な犬を躾けるように短く言って聞かせる。


 次に現れたのはケルベロスの群れだった。


 (ケルベロスが雑魚モブ扱いか。豪華だな)


 行く手を阻むように現れたケルベロスの群れに苦笑いし、恭介はケルベロス同士のフレンドリーファイアになるように攻撃をスイスイ躱して進む。


 ケルベロスは短気な性格の個体が多いため、味方であろうと攻撃されたらやり返す。


 その特性を活かして恭介は時間をかけずにケルベロスゾーンを通過した。


 もう少しで1周目が終わるというタイミングで、コカトリスの群れが待ち構えていた。


 しかし、コカトリス達の攻撃が届くまでに突っ切れば良いので、ケルベロスゾーンを通過するよりも簡単にコカトリスゾーンを通過して恭介は2周目に突入した。


 キメラパークは2周目に誰かのゴーレムが突入することで、出現するモンスターの種類が増える。


 スタート地点から少し離れた所では、ゲヘナキーパーがキマイラにやられて残骸になっており、半周地点ではアリコーンとアスタリスクがキマイラとケルベロスの混成集団に挟み撃ちにされていた。


 (そのままモンスター達を惹き付けといてくれ)


 恭介はアリコーンとアスタリスクを追い抜かし、コースの先へと進む。


 その先にはケルベロスとトリオレイヴンの混成集団と戦闘中のオファニエルとエインヘリヤルがいた。


 エインヘリヤルがドラキオンに気づき、自分達の戦いに恭介を巻き込もうとするが、恭介がガトリングガンに変形させたラストリゾートを向けたことでその考えを捨てた。


 周りの敵を倒してくれる可能性はあっても、自分まで蜂の巣にされてしまうと判断したから、そうなるぐらいなら先に行かせてしまえと判断したのだ。


 コカトリスゾーンにはミルメコレオの群れも追加されていたが、どちらもドラキオンのスピードを捕らえられずにあっさり通過されてしまった。


 ドラキオンが3周目に突入することで、キメラパークの空が暗雲に包まれる。


 雷の音が聞こえ始めるだけでなく、コースの上空にアンピプテラの姿まで視認できるようになった。


 前方にはあらゆる攻撃を吸収して強化中のエクリプスがいたのだが、キマイラとケルベロス、アンピプテラに包囲されながら攻撃を受けていたせいで強化に失敗して派手に爆発した。


 その爆発に巻き込まれ、モンスター達が一掃されたから恭介は3周目の半分を一切攻撃されずに進めた。


 残り半周というところで、恭介はアリコーンとアスタリスクを撃破した直後のハーロットを捕捉した。


 ハーロットは全ての邪魔者を消すスタイルだったけれど、囮になっていたアリコーンとアスタリスクを消してしまったせいで自分がモンスター達に囲まれてしまった。


 ハーロットもドラキオンを捕捉したらしく、どうにかドラキオンを自分の戦いに巻き込もうとしたけれど、恭介はそれを無視して通過したからハーロットの作戦は失敗に終わった。


 トップスピードのドラキオンには誰も追いつけないし、手出しもできない。


 恭介はそのまま1位でゴールした。


『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黄色い弾丸、トゥモロー&ドラキオンだぁぁぁぁぁ!』


 アナウンスが聞こえてすぐに、恭介はコースから脱出して黄竜人機ドラキオンをキャンセルした。


 ドラグレンのコックピットに戻ると同時に、レーススコアがモニターに表示されたのでそれを確認し始める。



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レーススコア(ソロプレイ・キメラパーク)

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走行タイム:35分47秒

障害物接触数:0回

モンスター接触数:0回

攻撃回数:0回

他パイロット周回遅れ人数:7人

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総合評価:S

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報酬:資源カード(食料)100×5枚

   資源カード(素材)100×5枚

   50万ゴールド

非殺生ボーナス:魔石4種セット×50

ぶっちぎりボーナス:惑星開発チケット

デイリークエストボーナス:魔石4種セット×50

ギフト:黄竜人機ドラキオンLv38(up)

コメント:退け!!! 俺はドラキオンだぞ!!!

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 コメント欄にあるような言葉は口にしていないが、操縦スタイルは間違いとも言えなかったので、恭介はルーナを喜ばせないように無言で瑞穂の格納庫に戻った。

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