第278話 札束ビンタここに極まれりだね
恭介がご機嫌な様子であると知り、麗華も笑顔になって話しかける。
「恭介さん、お疲れ様。カラミティが一気に強化されたね」
「それな。ウェイルスカイとアンヒールドスカーぐらいには強くなったよ」
「私もアルテマバヨネット程とはいかなくても、6種変形武器が欲しいな。コピープログラム反乱に挑戦して来るね」
「気をつけてな。奪われる機体によってはかなりしんどい」
自分がアンチノミーを奪われて苦労したから、恭介の声がいつも以上に真剣だった。
麗華もそれを重く受け止め、シグルドリーヴァに乗り換えてコロシアムに向かった。
『麗華ちゃんもコピープログラム反乱だよね?』
「そうよ。私は今回、どんな制限を用意されてるの?」
『今回は止めといた方が良いんじゃないかな~。いくら麗華ちゃんでもこれはキツいと思うんだよな~』
「いつになく煽るじゃん。乗る乗らないは私が判断するんだから、勿体ぶらずに教えてよ」
わざとらしく言うルーナにイラっとしたため、麗華は眉間に皺を寄せる。
そんな麗華にルーナは悪戯っぽい笑みを浮かべて回答する。
『しょうがないなぁ。今回の縛りはシグルドリーヴァの使用禁止だよ』
「…なかなかエグい縛りだね」
『そうでしょ? だから、麗華ちゃんが無理して縛りプレイをする必要はないと思うんだ。別に損をする訳じゃないんだし、今回は麗華ちゃんにとって条件が不利だから止めておこうよ』
「舐めないで。やってやるわ。恭介さんだって
そのリアクションを見て、ルーナは釣れたと思ってニヤリと笑った。
それから、入場門を開いて麗華の意思を確認する。
『じゃあ、シグルドリーヴァ禁止で良いんだね? それで避ければ別のゴーレムに乗り換えて行ってらっしゃい』
麗華はゴーレムチェンジャーを使用し、シグルドリーヴァからヴォイドに乗り換えて入場門をくぐった。
入場門の先には瑞穂の格納庫にそっくりな格納庫が広がっており、そこに待ち構えていたのはヴォイドだった。
その証拠に自分がいつの間にか、ヴォイドからネクサスのコックピットに強制転送されていた。
(シグルドリーヴァじゃないのはありがたいけど、2番目に厄介なケースが来ちゃったか)
麗華が最も戦いたくなかったのはシグルドリーヴァだ。
自分が使える最も優れた機体を敵にしたくないと思うのは当然だろう。
その次に避けたかったのがヴォイドとの戦闘だ。
水属性のヴォイドに対し、属性的に有利な土属性のアルスマグナはスペックではヴォイドに敵わないから、ヴォイドの信号で動きを止められてしまう。
そうなれば、シグルドリーヴァ使用禁止の縛りを設けている以上、麗華が使えるのは火属性のネクサスに限られる。
麗華も麗華で恭介と同じ状況に陥り、縛りがしれっと2つになっている訳だ。
準備が整ったところで、コピープログラム反乱のルールがネクサスのコックピットのモニターに表示されたから、麗華はその全てに目を通してコンテンツ開始の合図を待つ。
『コピープログラム反乱、開始!』
アナウンスと同時にヴォイドはソードウィングを射出し、更にインジャスティスをガトリングガンに変形して撃つことでネクサスに先制攻撃を仕掛ける。
ネクサスに信号を使っても意味がないから、ヴォイドは属性の優劣を利用してガンガン攻撃するつもりらしい。
麗華は盾形態のパラダイスロストでそれらを防ぎ、反撃の機会が来るのをじっと伺うつもりのようだ。
メイン武器で守りに徹して二対の翼のビットだけで反撃すれば、パラダイスロストでインジャスティスからのダメージを吸収しつつヴォイドのソードウィングを迎撃できている。
当然、属性の優劣があるからビットから放たれたビームがソードウィングに当たったとしても、一度や二度じゃ破壊できない。
それでも、パイロットコピープログラムに負荷を与えることはできるから、麗華は堅実な操縦でじわじわとパイロットコピープログラムを追い詰めていく。
押し切れるはずの優位性があるにもかかわらず、自分が負荷をかけられている状況に耐えられなくなり、ヴォイドの
つまり、連続して命中すれば有利な水属性の攻撃が強化されてパラダイスロストを壊せるという考えのようだ。
(自分のゴーレムのことだもの。それぐらい対処できるわ)
麗華は矛をモチーフにしたドラゴンの顔の砲口から放たれたビームを躱し、盾をモチーフにしたドラゴンの顔の砲口から放たれたビームのみパラダイスロストで防いだ。
どちらか一方だけを防ぐだけなら、パラダイスロストでも耐えられるとわかっているからこそできる守り方である。
それと同時に十分ダメージを吸収できたため、麗華はパラダイスロストをビームキャノンに変形させた。
これにはヴォイドも警戒せざるを得ない。
ビームキャノン形態に変わったということは、パラダイスロストの最高火力の攻撃が撃ち込めることを意味する。
いくら属性的にヴォイドの方が有利だとしても、減衰する前の威力が高過ぎれば減衰したって致命的なダメージになる可能性は大きいのだ。
パラダイスロストに気を取られている内に、ソードウィングの操作が疎かになって撃破されてしまい、ヴォイドの攻撃手段はインジャスティスと
ヴォイドがインジャスティスを蛇腹剣形態に変え、麗華にビームキャノンを撃たせまいと攻撃の密度を上げていく。
(そうなることは読めてたわ)
麗華は4つのビットでヴォイドの動きを制限しつつ、インジャスティスによる攻撃先をある程度予測してビームキャノンを発射した。
ヴォイドにはビームキャノンを防げる手段がないから、当たらないように躱すしかない。
それを理解してビームキャノンを連射しつつ、麗華は本命の攻撃を準備する。
「ギフト発動」
300万ゴールドをコストに
威力が減衰されるとはいえ、普段の3倍のコストを払って発動した
ヴォイドのコックピットを極太のビームが貫通し、その直後にヴォイドが爆散することでルーナのアナウンスが麗華に届く。
『しゅぅぅぅりょぉぉぉ!』
コピープログラム反乱が終わり、ネクサスのモニターにバトルスコアが表示される。
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バトルスコア(バトルメモリー・コピープログラム反乱)
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所要タイム:26分38秒
撃墜機体:ヴォイド
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総合評価:S
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報酬:資源カード(食料)100×15枚
資源カード(素材)100×15枚
150万ゴールド
ノーダメージボーナス:武器合成キット
ギフト無使用ボーナス:マーブルガトリングガン
デイリークエストボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:札束ビンタここに極まれりだね
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「縛りプレイじゃなかったら、私だって300万ゴールドも使わなかったわ。でも、ギフトレベルが一気に2つ上がったのは儲けものね」
『金遣いの荒い奥さんを持って恭介君は大変だねぇ』
「好きで使ってる訳じゃないわ。浪費してる訳でもないんだから止めてよね」
『は~い』
ルーナの言葉にムッとしたため、コロシアムから瑞穂の格納庫に戻って来た時に麗華はムッとしていた。
そのままマーブルガトリングガンをアルスマグナのブラインドランチャーと合成し、デュアルアートと呼ばれる二丁拳銃が完成した。
エフェクトを操作して威力や撃ったビームの方向を誤魔化すトリッキーな武器である。
作業を終えても麗華の機嫌は良くなっておらず、アルスマグナのコックピットから出て恭介に抱き着いて甘えるのだった。
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