第287話 前向きに考えてみたらどうかな。ここで活躍すれば君はモテる!
再現されたニューイングランドに転送され、博己はオルタナティブαのモニターを確認する。
その中心には自身を示す白い三角形のアイコンが映っており、残念ながら近くに他国のパイロットのアイコンは見つからなかった。
『ニューイングランドメモリアル、開始!』
「不味いな。これじゃ協力しようがにも交渉すらできない」
開始の合図直後に博己がそう呟いた時、モニターには敵の反応を示すアイコンが3つ現れた。
そのアイコンは黒い仔山羊=レプリカであり、博己は
「気味が悪いからさっさと倒すに限る」
オルタナティブαはロイヤルガードに似たゴーレムであり、その再現度は他のオルタナティブシリーズと比べても特に高い。
シンプルなデザインゆえに再現しやすかったのだが、シンプルイズベストという言葉もあるから弱いとは限らない。
剣と盾を握り、博己は黒い仔山羊=レプリカに急接近して左の黒い仔山羊=レプリカに斬りかかる。
幸い、黒い仔山羊=レプリカの行動速度はそれほど速くなかったから、ヒット&アウェイの要領で攻撃することでダメージを受けることなく一撃で仕留められた。
「まずは1体。まだあと2体」
そう呟いた博己は、残った黒い仔山羊=レプリカ2体のどちらかが隙を見せないかじっと観察している。
『『メェェ』』
「勘弁してくれ!」
直感的にその鳴き声は長く聞いてはいけないものだと判断し、博己は黒い仔山羊=レプリカが鳴き始めてすぐに攻撃を仕掛ける。
今度は右の黒い仔山羊=レプリカを仕留め、残った個体が暴れて体当たりして来たのを背後に回り込んで躱し、そのまま後ろから一突きにしてこちらも仕留めた。
「ふぅ。倒せたか」
『ここで博己君に耳寄りな情報をプレゼントだよ。恭介君達は一度の戦闘でこの10倍の相手と戦ったんだ』
「目標が高過ぎて辛いぜ」
『前向きに考えてみたらどうかな。ここで活躍すれば君はモテる!』
モニターに現れたフォルフォルの言葉を聞き、博己の体がピクっと反応した。
博己はイケメンの部類に入るのだが、どういう訳か癖のある異性にしかモテなかった。
しかし、日本でも生放送されている第3回新人戦で活躍すれば、博己のファンが増えてその中には普通の女性も紛れ込んでいる可能性がある。
素早くそこまで考えてから、博己は気を引き締めてニューイングランドメモリアルを再開した。
幸いなことに、コックピット内でのやり取りは
オルタナティブαを操縦し、周辺を探索してから少しするとA国のシュワシュワとC国のパッチモンが戦闘している所に出くわした。
「おい、お前等! 協力できないにしても人間同士で戦って戦力を減らすんじゃねえよ!」
『私は悪くない! C国のパッチモンが仕掛けて来たんだ!』
『違う! お前が誤射に見せかけて攻撃して来たのが始まりだ!』
博己が戦闘を止めるべく声をかけたところ、シュワシュワとパッチモンは互いに自分の言い分があって戦っていた。
どうしてこうなったと博己が舌打ちしていると、フォルフォルのアナウンスが聞こえる。
『醜い。醜いね。両国間に確執があるのはわかるけどさ、新人戦に乗じて邪魔者を消そうとするなんて醜い。あまりの醜さにワインが進むね』
実際にはC国のパッチモンが仕掛けたのだが、A国のシュワシュワも攻撃されたのを口実に仕留めてしまおうと応戦している。
フォルフォルはなんとも醜い争いだと言いつつ、それを見てワインを片手に愉悦を味わっている。
そこにレンの蜘蛛=レプリカが9体現れた。
「争うのは後にしろ! 1人3体はノルマだからな!」
『仕方ない』
『こいつらが終わったら次はお前だ』
「いい加減にしやがれ!」
博己はブチギレつつレンの蜘蛛=レプリカが吐く糸を躱し、糸を吐いている最中で隙だらけな個体を斬り伏せた。
シュワシュワの乗るメビィは空を自由に飛べるから、糸を躱すのに大して苦労しなかった。
しかし、パッチモンはラセツを狙うレンの蜘蛛=レプリカの数が多く、避け切ったと思って油断したところを拘束されてしまった。
それどころか、ラセツにレンの蜘蛛=レプリカが密集してバリバリとラセツを噛んで攻撃し始めた。
『嫌だぁ! 死にたくない! 助けてくれぇ!』
『チッ、何をやってるんだ』
シュワシュワは舌打ちしているが、その声は弾んでいた。
これならラセツが巻き込まれても仕方ない位置にレンの蜘蛛=レプリカが密集しており、ただ見ているだけでは見殺しにしたとレッテルを貼られてしまうから攻撃するしかないのだ。
メビィが連射してレンの蜘蛛=レプリカを撃ち抜くが、その内の一撃がレンの蜘蛛=レプリカによって喰い荒らされて剥き出しになったコックピットに命中した。
当然、攻撃が命中したことでパッチモンは死んでしまう。
『しまった!』
『
『違う! これは私が望んだ結果じゃない!』
『嘘を言うならその笑みを隠して言おうね』
フォルフォルは全てのゴーレムのモニターに姿を現せる。
したがって、各パイロットが今どんな顔をしているのかフォルフォルだけは突き止められるのだ。
フォルフォルの言葉が信じられるかという問題はあるが、それが嘘であると否定する材料もない。
それゆえ、A国のシュワシュワは危険であると他国のパイロットはみなすだろう。
ちなみに、博己は自分のノルマであるレンの蜘蛛=レプリカと戦うので精一杯だった。
2人で6体と戦っていたシュワシュワとパッチモンとは異なり、博己は自分の力だけでレンの蜘蛛=レプリカの2体同時攻撃を躱しながら倒していたのだ。
操縦の腕はまだ3期パイロットに及ばない博己だから、パッチモンを殺させずに助ける余裕なんてなかった。
自分のノルマを倒した時、シュワシュワが丁度パッチモンを殺したところだったのでどうしようもなかったのである。
シュワシュワは博己と戦いたいと思っていなかったから、自分の潔白を主張する。
『A業スマイル、違うんだ。私には殺すつもりなんてなかったんだ』
「その言葉を鵜呑みにして後ろから撃たれるのはごめんだ。もしも先程の件が事故ならば、ここで俺と別れて1体でも多くレプリカを倒せ」
『…わかった。そうしよう』
同行した方が生存率は高まるけれど、信頼されていない以上同行するのは難しい。
そう判断してシュワシュワはこの場から違う場所へと移動した。
博己もシュワシュワが進んだのとは違う方向に向かうが、その時にフォルフォルのアナウンスが聞こえる。
『人間同士の殺し合い第二弾だよ! D国のロッキがR国のミサイルライダーと相打ち! 両者の物的財産は全て没収されたよ! 残念!』
「馬鹿なことを…」
『ミサイルライダーが無差別に攻撃してロッキを巻き込んだんだ。それでロッキが反撃したらブラストボマーの爆弾に引火して両方吹き飛んだのさ。まったくもう、愉悦源が多くて困っちゃうね』
「困ってるならその顔止めろや」
フォルフォルがモニター上でとても良い笑みを浮かべていたから、博己は言葉と表情がマッチしていないと指摘した。
その後、博己は仕方なく個別で見つけた敵を順次倒していったが、制限時間の1時間が過ぎてしまった。
『はーい、そこまで! 侵攻率は64%! ミッションは失敗だね! 協力できなくてもせめて別々に敵を倒せば良いのに馬鹿ばっかで笑っちゃうよ!』
フォルフォルのアナウンスが聞こえてすぐに、博己のオルタナティブαがイベント会場に転送される。
それと同時にオルタナティブαのモニターには個人用のバトルスコアが表示されたので、博己は目を通す。
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バトルスコア(第3回新人戦・ニューイングランドメモリアル)
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出動時間:1時間
貢献率:36%
撃破数:黒い仔山羊=レプリカ3体
レンの蜘蛛=レプリカ3体
忌まわしき狩人=レプリカ3体
マガ鳥=レプリカ3体
クトーニアン=レプリカ3体
ディープワン=レプリカ3体
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総合評価:B
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報酬:資源カード(食料)100×4枚
資源カード(素材)100×4枚
40万ゴールド
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×40
ギフト:
コメント:足を引っ張る奴ばかりで大変だったね。君は独りでよく頑張ったよ
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一見労っているようなコメントに見えるが、わざと独りなんて言葉を使うあたりにフォルフォルの意地悪な部分が出ている。
なんにせよ、終わってしまったものはしょうがないので博己はバトルスコアのチェックを終えたら気持ちを切り替えた。
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