第286話 う~ん、Nice boat
田中が1位でゴールしてからイベント会場に転送される間に、モニターにはレーススコアが表示される。
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レーススコア(第3回新人戦・ルルイエメモリアル)
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1位:エンディミオンのTANAKA(日本/オルタナティブΔ/33分17秒)
2位:バブルマン(A国/ザントマン/48分26秒/小破)
3位:ルカルゴン(F国/スイーパー/記録なし/死亡)
4位:ハフバリ(IN国/キュクロパワード/記録なし/死亡)
5位:チャオズ(C国/マッドクラウン/死亡)
6位:ペレストロイカ(R国/ライカンスロープ/死亡)
7位:ハスハス(D国/シーサー/死亡)
8位:フェアリス(E国/ハイピクシー/死亡)
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備考:舐めてるの? 戦争を舐めてるなら滅びちゃいなよ
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フォルフォルが滅びてしまえと言っている対象はパンゲアクルーの所属国だ。
実際、まだまだ改善点のあるオルタナティブΔに対し、あともう少しで周回遅れにされそうだったA国も含めてパンゲアクルーの4期パイロットは酷いとしか言いようがない。
「恭介君、2つのレースを見てどう思う?」
「新人戦の質が落ちたとでも言えば満足するのか?」
「質問に質問で返すとはやるじゃないか。でも、そうだね。これはヤバい。ヤバいを通り越してヤバイガだね」
(ヤバイラを通り越してヤバイガか。これは相当ヤバイっぽいな)
恭介はツッコまずに感想を心の中に留めておいた。
ツッコめばルーナがマシンガンの如く不満を吐き散らすのではないかと思ったからである。
ちなみに、パンゲアクルーの4期パイロットはレースで脱落した者が誰もイベント会場に戻って来ていない。
これはマイノグーラとの戦闘でパンゲアクルーの3期パイロットがスケープゴートチケットを使い切ってしまったからだ。
もっとも、スケープゴートチケットがあったとして、それでイベント会場に生還したとしてもその者が役に立つかは怪しいのだが。
モニターに映るイベント会場では、フォルフォルが嘆いていた。
『君達なんなの? あれだけ煽られといて何も言い返せないの? ハッ、情けないね。私やノアの制止も聞かずに飛び出して仲間が殺されてなお、真剣さがまるで感じられないよ。これだったら、日本以外の国を全て凍結した方が良いね。リソースを全部日本に集中させた方が勝率は高いと見たよ』
『ちょっと待ってくれ! そんなの横暴だ!』
『そうよそうよ! こっちだって祖国に資源を送らなきゃいけないのよ!』
『俺達のことを一方的に巻き込んどいて身勝手過ぎるだろ!』
『…君達には教育が必要なようだね』
フォルフォルは心の底から失望したと言わんばかりの視線を向け、指をパチンと鳴らした。
その瞬間、パンゲアクルーの4期パイロット全員の悲鳴が聞こえた。
それと同時にモニターに映る画面が切り替わり、荘厳な見た目の観光船が美しい自然を進むものに切り替わった。
しかも、画面上部にはこのコーナーは身勝手な4期パイロットのせいで、急遽映像が差し替えになりましたと表示された。
「う~ん、Nice boat」
「晶さん、そのコメントはどうかと思います」
「そうは言うけどさ、それ以外に言いようがないじゃん」
「それはまあ、否定できませんが」
晶の発言にツッコむ沙耶だったが、晶の言い分に頷けるところもあったため沙耶も強く言い返すことができなかった。
数分後、観光船の映像からイベント会場に切り替わったが、その時には見た目こそ変わっていなかったものの雰囲気がどんよりしていた。
『はい、お仕置きタイム終わり。君達にはトゥモロー達が戦った上位単一個体に囲まれてじわじわと殺される幻影を見せたよ。廃人になりそうになったらすぐに治したから、この後のバトル部門に支障をきたすことはないよね。ということで、次のバトル部門のテーマを決めちゃうね。今回は2つやるからよろしく』
フォルフォルが指をパチンと鳴らすと24面ダイスが2つ現れ、それを放るのと同時にフォルフォルが歌い出す。
『何が出るかな♪ 何が出るかな♪』
いつも通りに振った2つの24面ダイスが止まった時、その面に記されていた文字はニューイングランドメモリアルと崩壊の祖国だった。
『テーマ決定! ニューイングランドメモリアルと崩壊の祖国だよ! まずはニューイングランドメモリアルの説明から始めるよ!』
フォルフォルがそう言った直後に、ニューイングランドメモリアルのルールがモニターに映し出される。
・レースに参加しなかった各国の残りのパイロットの内1名が参加する
・ニューイングランド侵攻作戦の追体験が目的であり、侵攻率100%で豪華報酬
・難易度調整がされているため制限時間は1時間とする
・報酬は失敗しても侵攻率(=貢献度)に基づいて与えられるが、戦犯は物的財産を没収
・モニターには味方と他国のパイロット、敵の3種類のアイコンが映る
・敵はクトゥルフ神話の侵略者達のレプリカである
・各国のパイロットに協力する義務はない
・ゴーレムのサイズはレースの時と同じ
「これは意地悪なルールだな」
「そうかな? なんでそう思うんだい恭介君?」
「わざわざ各国のパイロットに協力する義務はないって書いてあるところに悪意を感じる。ニューイングランド侵攻作戦は個人プレーでどうにかなった訳じゃない、協力が必須だったのにこの書き方だと協力しなくてもなんとかなるって考える奴が出て来るだろ」
「それが狙いだよ。人間ってルールに縛られる生き物じゃん? だから、この状態で追い詰めた時にどんな醜態を晒すか見定めるんだ。世界の敵になり得る者は私の作戦の邪魔になるから、結果によっては国ごと凍結することも辞さないよ」
ルーナの狙いは足を引っ張る国の炙り出しのようだ。
疑似体験とはいえここで協力体制を築けないようなら、その国ごと凍結させた方が世界のためだと思っているらしい。
「建前は理解した。それで本音は?」
「醜態を晒したパイロットを肴にほうじ茶でも飲もうかなって」
「相変わらずのゲスじゃねえか」
「恭介君、疲れた時には見下しセラピーが効くんだよ」
真顔でとびっきりのゲス発言を連発するルーナに対し、恭介達は無言で軽蔑の眼差しを向けた。
向けられる軽蔑の眼差しなんて気にしていないらしく、ルーナはのんびりほうじ茶を飲んでいる。
ルーナの心臓は
全員が8つのルールを確認し終えたところで、フォルフォルがニューイングランドメモリアルに参加するパイロットを決める。
『難易度調整はしたけど舐めプなんてしてる余裕はないからね。レース部門に参加していないパイロットから、ニューイングランドメモリアルに参加するパイロットをランダムに転送するよ』
日本から選ばれたのは博己が乗るオルタナティブαだった。
『いってらっしゃーい。少しはまともなところを私を見せてねー』
フォルフォルがやる気なさそうに手を振った後、選出されたパイロットとそのゴーレム達が転送された。
それと同時にモニターには参加するパイロットの一覧が表示される。
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バトル参加者(第3回新人戦・ニューイングランドメモリアル)
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1位:A業スマイル(日本/オルタナティブα/無)
1位:シュワシュワ(A国/メビィ/風)
1位:トラフィック(E国/ジャンクナイト/土)
1位:ジャジャンヌ(F国/ニンフ/水)
1位:ロッキ(D国/トリッククラウン/土)
1位:パッチモン(C国/ラセツ/火)
1位:ミサイルライダー(R国/ブラストボマー/火)
1位:ターバン(IN国/ジャックフロスト/水)
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(速水さんがどう動くかで結果は変わりそうだ。大変だと思うけど頑張ってくれ)
全参加国が協力できるとは思えない恭介だけれど、営業経験が豊富な博己ならなんとかなるかもしれないと思い、恭介は心の中で博己にエールを送った。
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