第26章 思惑の交差
第251話 君のような感の良い男の子は大好物だよ
恭介達が瑞穂に来て56日目、今日も今日とて休むことなく恭介は麗華と一緒に屋敷を出て瑞穂にやって来た。
やりたいコンテンツはいくつかあったけれど、恭介はとりあえずアンチノミーに乗ってレース会場にやって来た。
『待ってたよ恭介君。新しいコースを解禁したら、絶対に恭介君が最初に挑むと思ってたんだ』
「当たり前だ。わざわざ勿体つけてここに来るまでコース名すら教えてくれないんだから、気になるに決まってるじゃんか」
『期待させた分それに見合った充実感を得られるはずだよ。実は、通常プレイと恭介君専用縛りプレイの2つがあるんだけど』
「ちょっと待て。今なんて言った?」
聞き捨てならない言葉がサラッとルーナの口から飛び出したため、恭介は流すことなくちゃんと立ち止まった。
楽しみなレースをお預けされていたとしても、細かいことなんて気にしないとは言わないのが恭介の慎重なところである。
『通常プレイと恭介君専用縛りプレイがあるって言ったね』
「後者のテコ入れ感が露骨だな。どういった縛りがあって報酬はどうなるんだ?」
わざと自分がハンデありで挑む縛りプレイをさせるからには、それなりの見返りがあると考えて恭介は訊ねる。
『恭介君専用縛りプレイは
「ふーん。なんでそんな大盤振る舞いをするつもりになったんだ? 日本以外の国が資源を要求したから釣り合いを取るためか? いや、ルーナがただで資源を渡すとは思えないから、パンゲアに日本以外の国からパイロットを送り込みたいって言われて認めた補填かな?」
『君のような感の良い男の子は大好物だよ』
「俺には麗華がいるから無理。それとタイプじゃない」
『冗談が通じない!? というか完全に拒絶!?』
ルーナは漫画のネタを自分なりにアレンジして言ってみたが、恭介にマジレスされてショックを受けた。
そんなルーナの様子なんて気にせず、恭介は話を先に進める。
「良いだろう。俺専用の縛りプレイをやってやるよ。入場門を開け」
『はーい。ミッドナイトパークを楽しんでねー』
恭介を相手に自分のペースで話すのは難しいとわかっているから、ルーナは新コースのミッドナイトパークに繋がる入場門を開いた。
開かれた入場門をくぐり、恭介はアンチノミーをミッドナイトパークに移動させた。
ミッドナイトパークとは、真夜中の遊園地をモチーフにしたコースである。
レースを妨害するために現れる敵はモンスターとゴーレムで半々だ。
スタート地点には既に7機のゴーレムが位置に着いており、アンチノミーが位置に着くのを待っている。
1位の位置には風属性のグローリア。
グローリアは晶がサブのゴーレムとして使っており、三対の翼に銃を内包しているだけでなく、機体からチャフをばら撒いてビームやミサイルを当たりにくくできる天使型ゴーレムである。
2位の位置には水属性のパラノイア。
パラノイアはパイロットが1つの戦闘で攻撃手段を絞れば絞る程、その攻撃の火力が上がる特徴を持つ翼人型ゴーレムだ。
3位の位置には土属性のドミネーター。
ドミネーターはハーロットに似た力を持ち、単体が対象だがドミネーターよりも低スペックの機体の操作を乗っ取れる身分の高そうな人型ゴーレムである。
4位の位置には火属性のアザゼル。
アザゼルは沙耶がサブのゴーレムとして使っており、両腕が大砲、両脚が
5位の位置には風属性のリフレイン。
リフレインは恭介がリベリオンと合成してソリチュードを完成させたゴーレムで、エグザイルとクライシスの良いとこどりをした機体であり、高火力なのに長時間稼働できる。
6位の位置には水属性のバーストゴリアテ。
バーストゴリアテは全身銃器を装備したゴリアテと称するのが相応しいゴーレムで、スペックはゴリアテとは比べ物にならないぐらい高く、背中にはフライトユニットも装備されている。
7位の位置には土属性のジグザグライカン。
ジグザグライカンはライカンスロープによく似たデザインだが、スペックはバーストゴリアテ同様にライカンスロープとは比較にならないぐらい高い。
獣人の外見で急な切り返し動作もスムーズにできるから、フェイントや小回りの利いた動作で敵を翻弄する。
レースに参加する全てのゴーレムの準備が整ったため、レース開始のカウントダウンが始まる。
『3,2,1,GO!』
縛りプレイのため、
前にいるゴーレムを抜き去る過程で、1位~6位のゴーレムの戦いぶりはカオスだった。
1位のグローリアのチャフがギリギリのタイミングで展開され、2位のパラノイアのミサイルランチャーが全て想定外の方に飛んで行った。
3位のドミネーターが4位のアザゼルを乗っ取ろうとしたけれど、スペックが変わらないせいで中途半端な効き目となり、それを強引に支配しようと集中しているところで2機ともパラノイアのミサイルが飛んで来てレース続行不可能になった。
5位のリフレインと6位のバーストゴリアテは、スタートと同時に激しいノーガードの撃ち合いで両方共大破して動けなくなった。
7位のジグザグライカンは恭介と同様に戦わずに先へ進んだため、ちゃっかり2位の座を手に入れている。
(序盤から4機離脱とか荒れてんな。後ろのジグザグライカンも鬱陶しい)
恭介はそう思いつつ、後ろでジグザグ走行するシグザグライカンの攻撃を躱しながら先に進む。
ドライザーに乗り換えられていたならば、とっくに突き放して独走状態のはずだった。
それでも縛りプレイを選んだのは自分だから、恭介は面倒だと思いつつも縛りを破らなかった。
ジグザグライカンは素早く動かせるように装甲が薄いため、アンチノミーが軽く攻撃しただけでも致命的な損傷を受けることになる。
だから、直線で走らない分最短距離を進むアンチノミーと徐々に差がつき始めた。
そこに群体のハザードゾンビアーミーが前方から押し寄せて来る。
アンチノミーは空を飛べるから問題なく進めると思いきや、ハザードゾンビアーミーは手に持つクラッカーでアンチノミーを攻撃した。
(クラッカーの出して良い音じゃない!)
通常のクラッカーからは絶対に鳴らないような絶叫があちこちから聞こえ、恭介の周囲が騒々しくなる。
その音に釣られて別のハザードゾンビアーミーも近寄って来るから、とにかく騒々しいコースをアンチノミーが全速力で飛ぶ。
ジグザグライカンは飛べないから、ハザードゾンビアーミーがびっちり広がったコースでペースダウンした。
ハザードゾンビアーミーの頭を踏みつけて進もうにも、ゾンビゆえの脆さで足場にするには硬度が足りないのだ。
1周目はとにかく数ハザードゾンビアーミーの数が鬱陶しいミッドナイトパークだったが、恭介が2周目に突入するとそこに敵専用ゴーレムが現れる。
ピエロ要素の入った警備兵と呼ぶべき外見で、その名はクラウンボマーという。
背負ったタンクからピエロ印の爆弾を取り出しては投げるのを繰り返し、レースに参加するゴーレムもハザードゾンビアーミーも関係なく倒そうとする。
(爆弾の威力は高いが当たらなければ問題ない)
幸いなことに、クラウンボマーはそこまで動作が素早くなかったから、恭介はアンチノミーでも十分に敵の攻撃を避けながら進めた。
ところが、ハザードゾンビアーミーに妨害されて追い詰められてしまったのか、2周目の後半でグローリアとパラノイアが爆散していた。
恭介が3周目に突入した瞬間、今度はどのアトラクションからも銃撃やミサイルが飛んで来るようになった。
メリーゴーランドの馬に乗る兵隊の人形がガトリングガンを放ち、ジェットコースターに乗っている人形から爆弾が投げられるような遊園地なんて勘弁してほしいと思わずにはいられない。
どこもかしこも銃撃と爆発の音が絶えなくなった3周目だったけれど、恭介はジグザグライカンがお金を入れて動くパンダのアトラクションに側面からぶつけられて吹き飛ぶのを横目にタイムアタックに移行した。
(不思議だな。銃弾も爆発も遅く感じる)
ドライザーに乗っている訳でもないのに、恭介はアンチノミーのビットを必要最低限だけ使って攻撃を防いで無傷のままゴールできた。
『ゴォォォル! 優勝は瑞穂の黒い凶星、トゥモロー&アンチノミーだぁぁぁぁぁ!』
ゴールのアナウンスが聞こえてすぐに恭介はコースから脱出し、レーススコアがモニターに表示されたのでそれを確認する。
-----------------------------------------
レーススコア(ソロプレイ・ミッドナイトパーク)
-----------------------------------------
走行タイム:37分23秒
障害物接触数:0回
モンスター接触数:0回
攻撃回数:12回
他パイロット周回遅れ人数:7人
-----------------------------------------
総合評価:S
-----------------------------------------
報酬:資源カード(食料)100×10枚
資源カード(素材)100×10枚
100万ゴールド
非殺生ボーナス:魔石4種セット×100
ぶっちぎりボーナス:ターミネーターの設計図
ギフト無使用ボーナス:メサイアの設計図
デイリークエストボーナス:設計図合成キット
ギフト:
コメント:恭介君が手に入れた資源カードの5割が日本にも送られたよ
-----------------------------------------
(縛りがきつかっただけあって日本にまとまった資源が送られたらしいな)
自分の貰った報酬も良かったが、日本に送れた資源のことも考えると大盤振る舞いである。
レジサイドの合成に使えそうな設計図も手に入ったため、恭介は満足した様子で格納庫に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます