第9章 第3回代理戦争
第81話 ドラキオンは使うなよ
ホームに来て18日目、恭介は朝からリュージュに乗ってコロシアムに来ていた。
コロシアムに来て無駄話をせずに5連戦すると告げ、フォルフォルに入場門を開いてもらったら、リュージュを操縦してその中に進む。
コロシアムの中は今までと異なり、足場が一切存在しない水場だった。
その中心には巨大烏賊と表現すべきクラーケンがいて、リュージュを獲物として捕捉している。
フォルフォルがそのタイミングで真面目な表情のままモニターに現れる。
『恭介君?』
「なんだ?」
『ドラキオンは使うなよ』
「了解! ギフト発動!」
ダ○ョウ俱楽部を想起させるテンポでギフトの発動を宣言すれば、恭介はリュージュのコックピットからドラキオンのコックピットの中に移動した。
そして、ラストリゾートを大太刀に変形させてクラーケンに接近する。
クラーケンは口から墨の弾丸を連射するが、ドラキオンはそれを余裕で躱してクラーケンの足をどんどん斬り捨てていく。
「グラァァァァァ!?」
足を斬られた痛みと驚きに叫ぶクラーケンだが、その間に恭介がラストリゾートをビームランチャーに変えてクラーケンの顔にビームを放っていた。
それにより、クラーケンは自らの本領を発揮することもできずに光の粒子になって消えた。
『ほらー、だからドラキオンは使うなって言ったのにー』
「押すなよ、押すなよってノリだろ。わかってるって。というか集中途切れるから邪魔すんな」
『はーい』
恭介が優しく注意してくれているから、フォルフォルは口にチャックをしてモニターから姿を消した。
クラーケンの次に現れたモンスターは、上半身が女で下半身は魚、胴体から6頭の犬が生えている見た目だった。
(スキュラか。犬さえいなければ普通の人魚なのに)
「「「「「「グルルルル」」」」」」
スキュラの胴体に生えた6頭の犬は警戒心剥き出しであり、口の正面に水を圧縮してドラキオン目掛けて一斉掃射した。
(偏差射撃とはやるじゃん。当たらなきゃ意味がないけど)
恭介はスキュラの偏差射撃よりも速く動き、スキュラに接近してすれ違いざまにラストリゾートを太刀に変えて2頭の犬を切断する。
それだけでも攻撃する犬が減るから、次にスキュラに接近する時は先程よりも楽にもう2頭の犬を斬れた。
(人の顔が無表情なのって地味に怖いな)
スキュラの顔は表情が抜け落ちた人形のようであり、全ての犬を切断するまで何も言わないことが恭介にとって気味悪く感じた。
ところが、最後の1頭を切断したことでスキュラの顔が般若のように変化する。
「よくも私の可愛い下僕達を殺してくれたわね!」
「なんだ、感情はあるのか」
怒るスキュラを見て安心するというのも変な話だが、感情が残っていないのではと心配していたので恭介はホッとした。
これで心置きなく倒せると思い、恭介はラストリゾートを大鎖鎌に変えて鎖でスキュラを拘束する。
「離せ! 何をする!」
「こうするんだ」
恭介はスキュラを上空に放り投げ、重力に負けて落下するそれを大鎌の方で真っ二つにした。
『恭介君に人の心はないの? スキュラって美人だったじゃん』
「美人だからって手心を加えたら麗華を不安にさせるだろうが」
『ヒュ~♪ 恭介君マジイケメ~ン♪』
「だ ま れ」
『あっはい』
恭介の言葉に込められた圧力に屈し、フォルフォルは静かにモニターから消えた。
その間にスキュラの体が消失して、代わりに馬の上半身と魚の下半身を持ったモンスターが現れた。
それだけの説明だとケルピーのように思うかもしれないが、恭介が今目にしているそれは脚が水掻きになっているという点でケルピーと異なっている。
モンスターの名前はヒッポカンポスという。
「ヒヒィィィィィン!」
ヒッポカンポスが嘶いた直後、その周りの水が多数の槍を形成してドラキオンに向かって一斉に放たれていく。
その攻撃はスキュラのものよりも速く、恭介も触れずに躱すのは厳しいと判断した。
だからこそ、恭介はラストリゾートを盾に変形させてドラキオンを守り、急降下してヒッポカンポスに突撃する。
水の槍は直線的にしか飛ばなかったため、盾に当たることはあってもドラキオンに命中することはなかった。
トップスピードのドラキオンが風を纏って突撃すれば、ヒッポカンポスは水中に逃げ込んだ。
それと同時に攻撃が止み、恭介はラストリゾートをビームランチャーに変えて水中のヒッポカンポス目掛けて連射する。
最初は当たらなかったが、スキュラがやったように偏差射撃をすることでヒッポカンポスの尻尾に命中し、推進力を失ったヒッポカンポスが水面に浮上して来た。
恭介がラストリゾートをガトリングガンに変えて連射すれば、ヒッポカンポスは蜂の巣になって力尽きた。
ヒッポカンポスが光の粒子になって消えた直後、水中から青くて巨大な蛇が出現する。
(4体目はシーサーペント。水属性続きはありがたいね)
「シュロロ!」
その音が恭介に聞こえた時には、水柱がドラキオンを襲っていた。
ドラキオンのスペックをもってすれば躱すことは容易いが、ドラキオンを追いかけるように水柱が次々に出現する。
その攻撃を避けながら、恭介はガトリングガンを発射してシーサーペントにじわじわとダメージを与えていく。
属性的にドラキオンの攻撃は通りやすく、ガトリングガンによるダメージに怒ったシーサーペントはドラキオンを丸呑みにしようと大口を開けて接近する。
(わざわざ的が近づいてくれるとはね)
ラストリゾートをビームランチャーに変えて、シーサーペントの口内にビームを連射した。
連発したビームが口内から外に突き抜けてしまい、それが原因でシーサーペントの体が脱力する。
「斬り捨て御免」
大太刀に変形させたラストリゾートを振るい、恭介はシーサーペントの頭部を切断した。
4体目の敵が倒れれば、いよいよラストの敵がコロシアムに現れる。
コロシアムに突然渦潮が発生し、その中心から真っ青な体をした巨大な蛸が現れた。
この蛸はカリュブディスというモンスターであり、巨大な点以外で普通の蛸と違うのはその蛸の前面にある大きなモノアイと口の部分は鋭い牙が生え揃っていることだろう。
「ギョエェェェェェ!」
カリュブディスは鳴いた後に大きな口を開け、全力で息を吸い込み始めた。
その行動は水も空気も関係なく吸い込んでおり、空を飛ぶドラキオンも徐々にだが吸い寄せられている。
(予定通りに短期決戦だ)
再びラストリゾートをビームランチャーに変形させてから、恭介はカリュブディス目掛けてビームを連発する。
シミュレーターで模擬戦をした時にわかったことだが、カリュブディスはタフで倒すにはクラーケンに与える倍のダメージは必要だ。
それゆえ、恭介は惜しみなくビームランチャーでビームを撃っている。
最初は口内を狙って撃っていたけれど、砲口の向きを変えてモノアイにビームが命中した瞬間にカリュブディスが大きく跳ねた。
「ギョエェェェェェ!?」
(これを待ってたんだ)
恭介は大太刀に変えたラストリゾートでカリュブディスの足を次々に切断し、カリュブディスが着水する時にモノアイに大太刀を突き刺した。
大きな目が弱点だったカリュブディスにはそれが致命傷となり、光の粒子になって消えた。
5連戦が終わったため、恭介はドラキオンのモニターに表示されたコロシアムバトルスコアを確認する。
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コロシアムバトルスコア(ソロプレイ)
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討伐対象:①クラーケン②スキュラ③ヒッポカンポス
④シーサーペント⑤カリュブディス
部位破壊:①足×10/顔②犬×6③尾鰭/水掻き(左右)/両目
④牙×4⑤足×8/目
討伐タイム:41分17秒
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総合評価:S
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報酬:100万ゴールド
資源カード(食料)100×10
資源カード(素材)100×10
ファーストキルボーナス:
ノーダメージボーナス:魔石4種セット×100
ギフト:
コメント:今回の5連戦は恭介君にとってボーナスステージだったね
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(水属性5連戦はドラキオンに乗る俺にとっちゃ確かにボーナスステージだな)
そんなことは思っても、流石に少し疲れたので恭介はギフトを解除してコロシアムを脱出し、それから格納庫に帰還した。
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