Golem Battle Online ～俺がゴーレムだと名乗れる世界はデスゲームだった～

第144話 レースとバトルをウキウキウォッチング、あっちこっちそっちどっちよきかな

　恭介と麗華が瑞穂に来て33日目にして第1回新人戦当日、3期パイロット4人は恭介達に見送られながらイベント会場に向かった。

　全参加国のパイロットが同時にイベントエリアに現れたが、イベントエリアはいつもと違って暗かった。

　明日奈達が到着した直後に、フォルフォルのホログラムではなく銀色の衣装をまとった3人のダンサーが姿を現す。

『『『レースとバトルをウキウキウォッチング、あっちこっちそっちどっちよきかな』』』

　オープニングテーマが流れている中、フォルフォルが堂々とした足取りでイベントエリア内に現れる。

『髪切った？』

　ゴーレムに乗っている時点で誰が髪を切ったかなんてわからない。

「くだらないことやってないで、さっさと始めてよ」

　明日奈は自分の活躍を恭介に見てもらいたいから、フォルフォルの茶番に付き合うつもりはないようだ。

『そんなこと言わないでよ。巻きでやるからさー』

　フォルフォルは新人の冷たいリアクションにしょんぼりした。

　第4回代理戦争に比べて参加者が倍以上いるので、仕方なく各国の参加者の紹介はカットすることにしたようだ。

『リクエストもあったことだし、新人戦の説明を始めるよ。ルールが一部追加されて変わったから、改めて紹介するね』

　フォルフォルが説明した新人戦の内容をまとめると以下の通りになる。

　・新人戦は参加国のパイロットが5,10,15のように5階層突破毎に開催される

　・例外として新人戦で一度でも総合優勝した国が突破した場合はノーカウント

　・もしも1ヶ月以上新たに5階層が突破されなければ、新人戦が強制開催される

　・新人戦はレース部門とバトル部門が順番に行われる

　・レース部門はランダムで2名が選出されて順番にレースに参加する

　・レース部門は毎回違うコースで行われる

　・バトル部門では生存者全員が毎回別のテーマで戦う

　・報酬は部門毎に用意されており、実績によって按分される

　・他国のパイロットを仕留めるとギフト以外全ての物的財産を引き継げる

　ルールは変わっておらず、相変わらず日本が一方的に有利にならないようにレース部門に参戦する者が完全にランダムになっている。

　また、バトル部門はレース部門の生存者全員が参加と明言されているので、レース部門で自身の乗るゴーレムを傷つけられないようにしないと後で困るだろう。

　恭介が参戦していないとはいえ、日本の3期パイロットのやり込み具合はフォルフォルも警戒しているから、このルールが変わらないのも仕方あるまい。

『さ～て、レース部門のコース選択を始めるよ』

　笑顔のフォルフォルが指パッチンしたことで24面ダイスが2つ現れ、レース部門で走るコースの選定が始まる。

　サイコロを上に放り投げてからフォルフォルが歌い出す。

『何が出るかな♪　何が出るかな♪』

　このコース決めの流れは新人戦になっても変わらないらしい。

　動きが完全に止まった時、サイコロの面に記されていた文字はそれぞれミラージュデザートとデンジャラスドックだった。

『やったね！　第1回新人戦のレース部門はミラージュデザートとデンジャラスドックで開催だよ！　まずはミラージュデザートでレースするパイロットをランダムに選出するよ！』

　フォルフォルが指パッチンすると、ドラムロールが何処からともなく聞こえて来る。

　ドラムロールが聞こえている間、スポットライトが国ごとに順番に参加者達を照らすようになり、ドラムロールが終わった時に日本チームは明日奈が乗ったハイピクシーが照らされていた。

　その瞬間、ハイピクシーや他の選ばれたゴーレムの足元に魔法陣が出現し、そのまま魔法陣でミラージュデザートへと転送された。

　転送が終わって視界が切り替わると、明日奈は既に5位の位置に移動していた。

　それと同時に、ハイピクシーのモニターにレース参加者の情報が映し出された。

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レース参加者（第1回新人戦・ミラージュデザート）

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1位：ルドルフ（D国/キュクロ/風）

2位：トーマス（E国/モノティガー/水）

3位：ジェイソン13（A国/アンダーテイカー/土）

4位：ジャンヌ（F国/エンジェル/火）

5位：ヨッシャア＝明日嬲る（日本/ハイピクシー/火）

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　（完全な勝利をトゥモロー様に捧げてみせる）

　明日奈のやる気が十分なところで、フォルフォルがレース開始のカウントダウンを始める。

『3,2,1,GO!』

　レース開始直後、ジェイソン13の乗るアンダーテイカーの右側に巨大チェーンソーが現れ、それがアンダーテイカーの周囲をぐるりと1周した。

　その結果、2位のモノティガーと4位のエンジェルの上半身と下半身が真っ二つにされ、そのまま爆発した。

『開始早々やってくれたね！　A国のジェイソン13がE国のトーマスとF国のジャンヌを撃墜して物的財産を没収！　遂にA国が搾取される側から搾取する側になったぁぁぁぁぁ！』

　ジェイソン13がレース開始と同時に発動したのはギフトだ。

　そのギフトは電鋸一閃（ジェイソンスラッシュ）であり、これぞジェイソン13に相応しい効果と言えよう。

　明日奈は電鋸一閃（ジェイソンスラッシュ）の射程圏外にいたことから、スタートダッシュを決めてちゃっかり2位まで順位を上げていた。

　1位のキュクロは風属性であり、火属性のハイピクシーと属性的に相性が良くないから、戦闘にならぬように全力で逃げている。

　それはさておき、ミラージュデザートも開始直後のドタバタに紛れて早速ギミックが発動している。

　ギミックの内容だが、それはゴーレムのレーダーをちゃんと見ておかなければ騙される幻影を創り出すというものだ。

　道なき場所に道があるように見せたり、障害物の岩があるはずなのにないように見せるというモニターに映る映像が信じられなくなるギミックだ。

　それにキュクロは騙され、後ろから迫る明日奈に怯えてパニック状態のルドルフは岩に気づかず正面衝突した。

　ぐしゃりとひしゃげた機体を見て、明日奈は冷静に双剣で仕留める。

『容赦なんてなかった！　ミラージュデザートに騙されたD国のルドルフに追い打ちをかけ、日本のヨッシャア＝明日嬲るがルドルフから物的財産を没収！　弱肉強食だね！』

　（戦場で容赦してもらえると思う方が甘ちゃんだわ）

　明日奈はそんな風に思いながら、コックピットのモニターを見て正しいルートを進む。

　進んで行く内にデザートスコーピオンが現れ、ハイピクシーに向かって針を飛ばし始める。

　しかし、針は明日奈の前方で突然消える。

　何故なら、明日奈の前方にはミラージュデザートのギミックによって見えなくなっていた岩があり、その岩に針が命中していたからである。

　デザートスコーピオンの攻撃は障害物を利用して躱し、明日奈はミラージュデザートをすいすい進む。

　2周目になった途端、いきなりミラージュデザートのギミックが解除される。

　これもミラージュデザートの仕様であり、1周目と2周目でパイロットの視覚情報を変えさせてコースに慣れさせないようにしているのだ。

　もっとも、明日奈は1周目にモニターを見て走行していたため、モニターと変わらぬコースにむしろ慣れてしまったのだが。

　明日奈にとって2周目はあっさりと終わり、3周目に突入する。

　再びギミックが作動してカメラを含む視覚が当てにならなくなる。

　ハイピクシーのスペックはアンダーテイカーと比べて高く、明日奈が3周目に入ってからは不快な音がミラージュデザート全体に流れ出し、パイロットの視覚と聴覚を試して来る。

　そんな中、前方にアンダーテイカーをモニター上で捕捉した明日奈はハイピクシーの鱗粉を飛ばす特性を利用して攻撃する。

　鱗粉の属性に応じて効果は異なり、火属性のハイピクシーの場合は鱗粉を一定量付着した物体が爆発するようになっている。

　空を飛べるハイピクシーがアンダーテイカーの頭上から鱗粉を飛ばして付着させれば、小さい爆発が連続して生じてアンダーテイカーが走行不能な状態に陥る。

「さよなら」

　しっかりと双剣でとどめを刺し、明日奈だけがミラージュデザートで唯一の生存者になった。

『仕事人だね！　A国のジェイソン13をあっさりと始末し、日本のヨッシャア＝明日嬲るがジェイソン13から物的財産を総取りだよ！』

　敵がいなければ慌てる必要もないので、明日奈は無理に急ぐことなくレースを完走した。

『ゴォォォル！　優勝は日本のヨッシャア＝明日嬲る＆ハイピクシーだぁぁぁぁぁ！』

　フォルフォルは明日奈が1位であることを宣言し、ハイピクシーは魔法陣によってイベントエリアに転送される。

　転送中に明日奈はモニターに表示されたレーススコアに目を通していく。

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レーススコア（第1回新人戦・ミラージュデザート）

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走行タイム：37分12秒

障害物接触数：0回

モンスター接触数：0回

攻撃回数：3回

他パイロット周回遅れ人数：4人

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総合評価：S

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報酬：資源カード（食料）100×6枚

　　　資源カード（素材）100×6枚

　　　60万ゴールド

戦闘勝利ボーナス：魔石4種セット×60

ギフト：偶像崇拝（アイドルファン）Lv4（stay）

コメント：明日奈ちゃんも恭介君みたいにギフトを使わないんだね

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「当たり前よ。敵に情報を与えずに済むなら与えないわ」

『うん、恭介君と同じこと言ってるね』

「えっ、トゥモロー様と私の相性がぴったりだって？」

『言ってないよ』

　フォルフォルが苦笑した直後には、明日奈はイベントエリアに戻って来た。